2014年1月16日木曜日

麦子さんと


『麦子さんと』
2013/日本 上映時間95分
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
仁志原了
挿入曲:松田聖子『赤いスイートピー』

キャスト:堀北真希(小岩麦子)
松田龍平(小岩憲男)
余貴美子(赤池彩子)
温水洋一(井本まなぶ)
麻生裕未(ミチル)



80点





"二人を繋ぐ、赤いスイートピー”




鑑賞は去年、年の瀬も押し迫った12月28日。

『ばしゃ馬さんとビッグマウス』も最高だったし、吉田監督の作品を年にふたつも観れる何てと、ウキウキ気分でテアトル新宿に向かった訳ですが、これが良くてですね、年末の慌ただしい新宿の街をニコニコで歩く帰り道でした。

耳に流れるのはもちろん、赤いスイートピー。



ミズタク!もとい、麦子さん兄


鑑賞中に真っ先に思ったことは、なるほどこれは『あまちゃん』に通ずるものがあるだと。

『あまちゃん』の天野アキとその母春子さんにクローズアップして、90分に凝縮させたらこんな感じになる、気がする。
松田龍平も出てるし。

つまりどういうお話かと言うと、母の生きた軌跡を巡り、母の人生を知り、過去と現在が一つに繋がる。
そんなお話。

最大の共通点は、過去と現在を繋げる役割を担う要素が”アイドル”と言う点。

物語の主人公麦子さんは、母の死をきっかけに彼女の故郷へと向かいます。
そして、母の故郷で過ごしてるうちに、今まで知らなかった母の人生を知り、麦子さんの中にある止まっていた時計、母との時間が再び動き出すんです。

自分と同年代の時の母の話を聞き、母になる前の彼女が登場するあたり、もの凄く表面的ですが『あまちゃん』ぽい。


そして、ふたりを繋ぐもう一つの大きな要素となるのが、松田聖子の”赤いスイートピー”ですよ。

余貴美子さん演じるお母さんが、料理を作りながら”赤いスイートピー”を口ずさみます。
彼女が昔、アイドルを目指していた時に、地元のお祭りで披露した曲。

その曲がラスト、娘である麦子さんが東京に帰る際に流れる演出。
それまでのタメも効いてもう反則。
静かに涙を流してしまいました。

これは『あまちゃん』で、鈴鹿ひろ美が「潮騒のメモリー」を遂に自分の歌声で歌い、その瞬間、その役目を終えたかつての春子の姿、有村架純が消えた演出同様、過去と未来を一つの曲が繋ぐ演出じゃないか。

私、こう言うのに弱いんですよ。



母の当時の姿と一人二役。これがまた良い。


他の方も沢山話題にされてるんですが、これは言及しない訳にはいかない。

麦子さん役の堀北真希がめちゃ可愛い。

コンビニで兄と立ち読みをしながら母の動向を探ってるシーン。
妹が兄の肩を殴るあの感じ、もう、なんか、たまらん。
本当に監督分かってらっしゃる。

『純喫茶磯辺』の仲里依紗、『さんかく』の小野恵令奈、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』の安田章大

しっかり役者さんを映画内に納めてる辺り、吉田監督は役者さんの使い方、撮り方が本当に巧い。

間違いなく現時点での堀北真希の代表作でしょう。



余貴美子さんの佇まいは本当にお母さん


ただ、母のお墓の前での堀北さんの語りは少しウェット過ぎないかなと思ったりもしたんですけど、この作品は吉田監督自身のお母さんに捧げたものだと聞き、自分のそんなちんけな思いなんかどっかに吹っ飛びました。

細かい話、テレビを観てるのにやたらと話しかけてくる感じ、苦笑いにも見えるなんとも言えない表情等々、余貴美子さんの母親感が凄くてですね、なるほど、これは吉田監督の実体験込みなのだろうと。

それを存在感込みで演じる余貴美子さんが素晴らしい。



過去と未来を繋ぐ、赤いスイートピー。


ラスト、麦子さんの横を通り過ぎる、自転車を二人乗りする親子で涙。
麦子さんは何を思うのでしょう。








0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...