2014年6月28日土曜日

グランド・ブダペスト・ホテル


The Grand Budapest Hotel
2014/独・英 上映時間100分
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
製作:ウェス・アンダーソン
スコット・ルーディン 他
原案:ウェス・アンダーソン
ヒューゴ・ギネス
音楽:アレクサンドロ・デスプラ
撮影:ロバート・D・イェーマン

キャスト:レイフ・ファインズ
F・マーリー・エイブラハム
マチュー・アルマリック
エイドリアン・ブロディ
ウィレム・デフォー

97点





”フェティシズムの塊”





公開初日に鑑賞。
その後再び観て、この間また観て、今のところ計3回鑑賞。

なぜこんなに観るのか。
それはこの映画の鑑賞が快感だからに他なりません。
詳しくは後述致します。


監督のウェス・アンダーソンとは。
まだ知らない方も多いでしょう。

でもですね、パンフを読んでいた所、とある日本のCMの監督をしていたとのことでして、このCMは見たことあるって方も多いのでは。

そのCMがこれ。







ソフトバンクのCMを作ってたんですねぇ。
知らぬ間にウェス・アンダーソン作品に触れていたんです。

観てもらうと分かる通り、カチッとしたもの凄く作り込まれた作風。
役者の動き、衣装、カット、編集、全てが計算し尽くされていて、その結果グラフィカルな画に。

で、その彼の作風を端的に表すのが”シンメトリー”。
とにかく左右対称がお好きなようで、過去作を観ても多いこと多いこと。

海外の方が作った”ウェス・アンダーソンシンメトリー”動画があったのでご覧下さい。







好きねぇ、シンメトリー。

でですよ。
今回の『グランド・ブダペスト・ホテル』がですね、ほぼ全カット全シーンがシンメトリー。
もう怖い。
この執念怖いわ。

今回のこの執念のシンメトリーが前述の快感の理由でして、劇場で観てるととにかく気持ちいい。
もう快楽の類いです。

特にちょうど真ん中の座席で鑑賞したならば、それはそれはめくるめく悦楽へと私を連れて行ってくれました。
昇天。
自分の位置をちょうど境に、かっちり左右対称に映画が広がってる。
もう気持ちいぃいいい。

しかも今作においてはこのシンメトリーが、作品全体をある種の箱庭感、作り物感で包んでいまして、これがまた良いんですよ。
ミニチュアを使ったホテルの全景も相まって、映画全体がさながら人形劇のようなキュートさ。

その中で生き生きと演技をする役者陣も皆素晴らしい。
主演のレイフ・ファインズは言わずもがなで、今回特に気になったのは、今作がウェス・アンダーソン作品初出演のマチュー・アルマリック。
目がぎょろっとしててとてもウェス・アンドーソン顔。
素晴らしい。






甘さだけで終わらない反骨の効いたラストも良い。
戦争が彩りに満ちた文化を終わらせ、画面がモノクロに。

しかし、グスタヴからゼロへ。ゼロから作家、そしてその本を読む読者へ。
しっかりその残り香は継承されているのです。






かっちり作られた作風故に、全く受け付けないという人も結構聞きます。
嫌いな人はとことんダメでしょう。

ただ個人的には、もうここまでやられたら好きにならざる得ないと言うか、もうメロメロです。
完璧な映画の一つの形だとすら思ってます。

間違いなく今年の上位、もしかしたらベスト、なんてことも。

私、この作品好きで好きで堪らないです。


<あらすじ>
ヨーロッパ随一の高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を取り仕切り、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・Hは、究極のおもてなしを信条とし、宿泊客のマダムたちの夜のお相手もこなしていた。ホテルには彼を目当てに多くの客が訪れるが、ある夜、長年懇意にしていたマダムDが何者かに殺害されてしまう。マダムDの遺産をめぐる騒動に巻き込まれたグスタヴ・Hは、ホテルの威信を守るため、信頼するベルボーイのゼロ・ムスタファを伴い、ヨーロッパを駆けめぐる。
映画.comより





2014年6月21日土曜日

ホドロフスキーのDUNE


Jodorowsky's Dune
2013/米 上映時間90分
監督:フランク・バビッチ
製作:フランク・バビッチ
ステファン・スカーラータ
トラビス・スティーブンス
製作総指揮:ドナルド・ローゼンフェルト

キャスト:アレハンドロ・ホドロフスキー
ミシェル・セイドゥー
H・R・ギーガー
クリス・フォス
ブロンティス・ホドロフスキー
ニコラス・ウィンディング・レフン

85点






”ああだこうだ計画してる時が一番楽しい”




ヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞。
平日だからか場内まばらな印象。


アレハンドロ・ホドロフスキーという映画監督がおりまして。
彼の作品『エル・トポ』はカルト映画の元祖とされておりまして、次作『ホーリー・マウンテン』も凄まじい作品でございまして。











口では説明出来ないので、予告をご参照くださいませ。
その凄まじさの片鱗はお分かりいただけるかと。

とにかくドラッギーな映像世界で、観る者の思考を停止させる類いの作品達。
そして、何よりそのドラッギーさが癖になる。
だから何度でも観る。
故にカルト化する。


この2作の監督ホドロフスキーが、デヴィット・リンチが監督した作品『DUNE/砂漠の惑星』を元々製作していて、各パート選りすぐりの精鋭を集め、製作に移ろうとした矢先に頓挫。
この、ホドロフスキー製作の『DUNE』の製作の過程、空中分解までのあれこれを描いたのが今作、『ホドロフスキーのDUNE』

未完の大作『DUNE』を、監督のホドロフスキーは勿論、製作に関わってたミシェル・セイドゥー、H・R・ギーガー、クリス・フォス、ブロンティス・ホドロフスキー、そしてニコラス・ウィンディング・レフン等々、彼の作品に影響を受けた人々の証言を元に紐解いていきます。

そして明らかになるのは、凄く面白そう。とてつもなく観てみたい。
完成してたのならばとんでもない作品になっていたのは間違いない。

ただ、いくらなんでもこれ作るの無理だよぉ






映画の歴史を変えるつもりだった。
間違いなく変えることが出来たと話すホドロフスキーの表情が本当に生き生き。

齢80を越えてあのバイタリティは何なんだ。

主演は私の息子だ。
デザインはギーガーに頼もう。
ミック・ジャガーにも出てもらって、敵役はダリでないとダメだ。

魂の戦士を集めて最高の映画を作る。

そう嬉しそうに語るホドロフスキーの顔を見てるだけでもうこっちまでニコニコしてくるし、話す全ては実現しなかった企画のあらすじ、つまり一切の妥協をしていない100%の理想系な訳で、面白くない訳がなかろうが!!てな訳ですよ。

彼を見ていて個人的に連想したのは、作風も含めて大林宣彦監督
年を重ねる毎にアバンギャルドさが増してるのに、作風は一貫している辺りも凄く似てる。
そして何よりあのエネルギッシュさですよ。

ホドロフスキー、間違いなく変態だと思います。
間違いないと思います。






企画が頓挫し、幻となったホドロフスキーの『DUNE』
だがしかし、そのDNAはしっかりと受け継がれました。

デザインを担当したギーガーはその後ご存知『エイリアン』のビジュアルイメージを担当。『プロメテウス』では『DUNE』で使うはずだったデザインを流用してみせます。

その他『スター・ウォーズ』『ブレード・ランナー』『マトリックス』『ターミネーター』
数々のSF映画に影響を与えたのです。

失敗はしたがこれでいいんだ。全てはイエスだ!と話すホドロフスキーの顔がまた嬉しそうで。
この野郎、デヴィット・リンチに企画を取られたことがショックで弱音を吐いて劇場に行かなかった癖に!
息子に励まされて観に行った結果、あまりの駄作ぶりにみるみる元気が湧いて来た癖に!!


未完となったのは間違いなくショックだったでしょう。
でも、


”失敗がなんだ?だからどうした?『DUNE』はこの世の夢だ。でも夢は世界を変える”


そうドヤ顔で語るホドロフスキーの顔はキラキラしてました。
そうです、あなたが蒔いた種は綺麗な花を咲かせたのです。



シナリオもビジュアルイメージも完璧なものがあるのだから、いつでも映像化出来るはず。
100%の出来で、ホドロフスキーのDUNEを観てみたい。

でも、何でもそうだけども、ああだこうだ計画を練って話してる時の方が、物事は一番楽しいのだ。



<あらすじ>
「ホーリー・マウンテン」「エル・トポ」などでカルト的人気を誇る奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督が映画化に挑んだものの、実現に至らず失敗に終わった幻のSF大作「DUNE」。フランク・ハーバートの「デューン 砂の惑星」を原作に、サルバドール・ダリやミック・ジャガー、オーソン・ウェルズ、メビウス、H・R・ギーガー、ピンク・フロイドら豪華スタッフ&キャストをそろえながらも、撮影前に頓挫した同作の驚きの企画内容や製作中止に追い込まれていった過程を、ホドロフスキー自身やプロデューサー、関係者へのインタビュー、膨大なデザイン画や資料などから明らかにしていくドキュメンタリー。
映画.com





2014年6月19日木曜日

女子ーズ

女子ーズ
2014/日本 上映時間97分
監督・脚本:福田雄一
製作:重村博文
撮影:吉沢和昆
編集:栗谷川純

キャスト:桐谷美玲
藤井美菜
高畑充希
有村架純
山本美月 他


48点





”基礎工事から違うからなぁ”



『X-MEN フューチャー&パスト』『グランド・ブダペスト・ホテル』『ホドロフスキーのDUNE』『インサイド・ルーヴィン・デイビス』等々、今劇場で観るべき映画が沢山あるにも関わらずなぜ『女子ーズ』を観たか。

それは面白そうだったからだ。

とは言え監督は福田雄一さんなんでね、去年の『HK 変態仮面』は鈴木亮平と安田顕の”漢気”で突き抜けた作品だけど、どうにも信用ならない”業界人”イメージは拭いきれない。


でもなんだ、今回は”女子が戦隊ヒーローをやるけど女子だから中々上手いこといかないコメディ”だと。
ふん、悔しいけど面白そうだ。
しかも主演の5人が桐谷美玲、有村架純を筆頭に、今をときめく女優ばかり。
その中に、個人的にプッシュ中の顔のパーツが全て丸い女優高畑充希がいるとなれば観ない訳にはいかない。

よし観に行こう。
キュートな女子達が観れればそれだけで満足だ。

その意味では、キュートな5人の女子達は非常に楽しめました。
ただ、やっぱり福田雄一監督の演出が一々余計で、この映画唯一の魅力である5人の魅力もかなり減じてるようにしか思えない。






何が一番ダメかって、恐らく作り手が笑わそうとしてる箇所が全く笑えない。

状況、心情は基本台詞で説明a.k.a”心のお漏らし”で説明する作りがぶさいく!!!

とはもう言いませんよ。
観る前から分かってたことですし。

ダメなのは、野放し状態の役者のひたすらにだらだらしたアドリブ。
ただただ笑えないわ間延びはするわで本当に勘弁。

主演の5人はいいんですよ。
特に有村架純さん。
立派なコメディエンヌでしたよ。
表情と台詞回しクスッとさせられる。

凄くいい、凄くいいのに、前述のだらだらした演出のおかげでせっかくの笑いが削がれるんですよ。

福田雄一さん、テレビと全く同じことして笑えるなら苦労はいらないよ。
映画でそれやられると本当にキツい。
やっぱり無しだよ。

あと、あの歩道橋のシーンは何なんですか。
意味が分からない。
同じ事を延々と見せることが面白いと思ってるの?

あの場面は、最後の一人が歩道橋を渡りきる前に引き返すとか、それをフライイングでカウントしちゃって高畑充希ちゃんが小さく焦るとかした方が絶対いいでしょ。その前の「”数え”をナメないでください」のフリも効くんだから。

間違いなく私のアイディアの方が面白い。
間違いない。

主演の5人はとても良いです。
でもやっぱり福田監督の演出、良く無い。
何より、嫌いです。

と、文句かかなり多めなんですが、そもそも普段見ている映画の基礎工事から違うので、こんな事を言っていても仕方が無いのかも。






今公開中の福田監督作『薔薇色のブー子』
これは矢口史靖監督の『裸足のピクニック』を参考にしたそうで。

その矢口史靖監督作で女子がわらわら出てくる映画『スウィング・ガールズ』

本仮屋ユイカ登場時の、ニコニコ笑いながらリコーダーを掲げるあのシーン。
あれ一発で、あ、この娘、変な娘だ、って分かる訳ですよ。
そして何よりその時の本仮屋ユイカが飛び切りキュートなんですよ。

映画の笑いってこれですよ。



<あらすじ>
世界征服を目論む邪悪な怪人を倒すため、名字に色が入っているという理由だけで司令官チャールズに集められた赤木直子、青田美佳、黄川田ゆり、緑山かのこ、紺野すみれは、不本意ながら「女子ーズ」として戦隊を組み、戦うことに。全員がそろって繰り出される必殺技「女子トルネード」が最大の武器だったが、いまどきの女子たちは恋愛や仕事、野暮用で忙しく、なかなか全員がそろうことができず……。
映画.com






2014年6月12日木曜日

X-MEN:フューチャー&パスト


X-MEN:Days of Future Past
2014/米 上映時間131分
監督:ブライアン・シンガー
脚本:サイモン・キンバーグ
製作:ローレン・シュラー・ドナー
ブライアン・シンガー 他
製作総指揮:スタン・リー
トッド・ハロウェル 他
音楽:ジョン・オットマン
原案:サイモン・キンバーグ
マシュー・ボーン 他

キャスト:ヒュー・ジャックマン
ジェームズ・マカヴォイ
マイケル・ファスベンダー 他

90点



”ブライアン・シンガーごめん!!”



先行上映、公開初日、その日にもう一回。
計3回鑑賞。

X-MENシリーズは私が初めて触れたアメコミヒーローで個人的な思い入れがかなり強いシリーズでして、2000年のシリーズ一作目から『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』を除いて全て劇場で鑑賞。
それ故に周りの反応には結構敏感になるんですよ。

特に世紀の駄作とまで言われてるシリーズ3作目『X-MEN ファイナル・ディシジョン』
分かります。明らかに物語はグダグダで、それまでのシリーズへの愛が全く感じられない。
ただただ物語を無理矢理盛り上げる為に主要キャラを殺すなんてありえない愚行です。
物語的にあの場面でプロフェッサーXが殺される理由は無いし、彼を殺したにも関わらずお話に起伏が出ないのはもう致命的。

でも、そんな3作目でも、私は好きなんです。
ダメだと思っても、良い所もあると信じて疑わない。
良い所だってあるんです。
と言い訳して回りたくなる。
そんな『X-MEN ファイナル・ディシジョン』

で、そんなエクスキューズを必要としない、X-MENシリーズ屈指の、いやSF映画史に残る傑作が、新三部作の一作目『X-MEN ファースト・ジェネレーション』

去年行われた男の魂に火をつけろ!SF映画ベスト10でもランキング8位に入れまして(今思えばもっと上でもいい)、キャストが良いわ、時代設定が良いわ、スタイリッシュな語り口が良いわ、それを支える60年代スパイアクション風味がいいわ、歴史的事件にヒーローが関わってたなんてよだれが出る程いいわで、全てが全て本当によく出来た映画。

監督のマシュー・ボーン、本当に良い仕事。

次作もこの調子でよろしく頼むよ。

え!?監督じゃないの!?

じゃあ誰よ。

え!?ブライアン・シンガー!!
帰って来たの!?

いやいいんだけどさぁ、マシュー・ボーンの力を見せられた今さぁ、別にブライアン・シンガーでなくてもさぁ。

いやいいよいいよ。
せっかく作ったんなら観るよ。

・・・
・・・・。

ブライアン・シンガーごめーん!!!!!!!
ごめんなさいごめんなさーい!!!!

面白かったよ、ブライアン・シンガー。
心の底から謝ります。







冒頭、ミュータント達が円形になったところをカメラがぐるっと回る”アベンジャーズショット”でもう興奮の涙。うおー!!

その後、ストーム、ウルヴァリン登場。うおー!!

そして、プロフェッサーX、マグニートー登場でうおー!
去年の『ウルヴァリン:SAMURAI』のラストで登場はしたけど、やっぱり生きてたのかー!

なんたる、なんたるこの同窓会感。
劇中では悲惨なことが起こってますけど、観てるこっちはかつてのメンバーが揃ってるだけで涙で前が見えません。
シリーズを線で追ってるのならば尚更。

劇中、ファンならニヤッと出来る過去シリーズに関連した小ネタが多数。
この部分が賛否を分けてる理由の一つだとは思うんですけども、いいじゃないですか。
もうね、同窓会なんでね。






では、X-MENファンで無ければ楽しめないのか。

否、そんなことはありません。

今回の舞台は1973年。
パリ協定にてベトナム戦争が終結した年。

様々な出来事が変化を生んだ時代にウルヴァリンが戻り、迫害、差別、偏見にさらされているX-MENの面々がより良い未来へ人類を導く。

現実の問題として、人種やLGBT等々、マイノリティのメタファーとしてX-MENがこれまで描いていたことの集大成と言えるクライマックスで、これは間違いなく自らがゲイであることをカミングアウトしたブライアン・シンガーでなければ出来なかった、祈りにも似た希望に満ちたラスト。

ヒーロー達によって未来が明るく照らされる。
いいじゃないですか。
X-MENでしか描けないテーマ。
これがX-MENですよ。

しっかりしたテーマを持ちながら、クイックシルバー絡みのシーン等々割と軽快なトーンになるところもこの作品の大きな魅力。
メリハリが効いてて凄くいいですよ。






こんなラストにして、次作の完結編はどうするつもりなのか。

でも心配はなさそう安心。

ラストに登場する次作のヴィラン、アポカリプスと、その奥に映るフォーホースメン。

ハルク並みのパワーを持ち、クイックシルバー並の早さで移動する。

敵に取って不足無し。
かかってこいやぁ。


・追記
今作から登場するミュータント、ウォーパス。
掟さんに似てるよね。






<あらすじ>
「X-MEN」シリーズ通算7作目で、シリーズ1作目「X-MEN」の前日譚を描いた「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(2011)の続編。ミュータントたちの生存をかけ、未来と過去の2つの時間をまたにかけた戦いが描かれ、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンをはじめ、プロフェッサーXとマグニートーの現在と若き日をそれぞれ演じるパトリック・スチュワート&ジェームズ・マカボイ、イアン・マッケラン&マイケル・ファスベンダーほか、ハル・ベリー、アンナ・パキン、ショーン・アシュモア、エレン・ペイジ、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルトら、これまでのシリーズに登場した豪華キャストが再結集。シリーズ第1作を手がけたブライアン・シンガーが、「X-MEN2」以来となる監督の座に就いた。

映画.comより





2014年6月7日土曜日

青天の霹靂


青天の霹靂
2014/日本 上映時間96分
監督:劇団ひとり
脚本:橋部敦子
劇団ひとり
プロデューサー:川村元気
音楽:佐藤直紀
主題歌:Mr.Children「放たれる」
原作:劇団ひとり「青天の霹靂」

キャスト:大泉洋
柴咲コウ
劇団ひとり
笹野高史
風間杜夫

77点





”芸人監督だからって偏見、良くない”





劇団ひとりさん、巧いです。
観る前から馬鹿にした態度を取って本当にすみませんでした。

松本人志、木村祐一、品川祐等々、吉本の芸人が映画を撮るとろくな事にならないと思ってましたけど、今回の劇団ひとりの仕事ぶりでその思いを更に強くしました。

評価が低いのは吉本芸人作の映画であって、芸人だからって悪い訳では決してない。

劇団ひとり監督だからと食わず嫌いしてるのならばそれは勿体ない。
一見の価値は間違いなくある作品です。






劇団ひとりさん、ちゃんと映画作ってますよ。

まずそもそも上映時間が96分なのが凄く好感。
往々にして処女作はやりたいことを詰め込んだあげくダラダラ長くなりがちなのに、抑えめに、必要なことだけ語りコンパクトに仕上げいてとても偉い。

冒頭の大泉洋のワンシーンでマジックを披露するシーンで引き込まれ、一気に映画の世界に。
個人的に、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』しかり、ど頭にワンカットのシーンが来てる映画が私は好きみたい。

説明台詞ではなくて、あくまで映像で人物の感情を表現。
水道管の水漏れで部屋が水浸しになるシーンからの、全て諦めようとする大泉洋。

いいですよ。映画ですよ。
ちゃんと映画になってますよ。
劇団ひとりさん、巧いですよ。

要所要所の撮影もとてもいいです。
やわらかい光、影の撮影、美しいです。

なぜ要所要所なのかは訳があるので後述しますが。

ロケーションもいいです。
川沿いの土手もいい味出してますよ。
ここでの夕日で影になった2人の姿を映すショットは本当に美しい。

ただ一つこの場面で非常に惜しいことがあるので、これもまとめて後述します。

でも、この土手に遡ってのラストの切れ味。
やっぱり素晴らしい。
このシーンだけで親指グっです。

劇団ひとりさん、映画作れるじゃん!!






ただ、やっぱり気になる部分もありまして。

前述の撮影。
要所要所は良いんです。

ただ、全編にワンシーンワンカットと手持ちカメラを使い過ぎで、上映時間が96分とタイトなのに、観ている間は間延びした印象。

もう少し的確にカットを割ってテンポが欲しかったし、ワンシーンワンカットはマジックのシーンとここぞの場面だけにしてメリハリを付けるべき。


ラストの土手に関しては、本当に良いシーンなのに、奥の高速道路にもろに70年代には存在しない車がひっきりなしに走っていて、それがかなりノイズになってお話の邪魔をするのが本当に勿体ない。

ただ、ここに関しては作り手も理解した上なのかも。
分かった上でこのロケーションの魅力を取ったんだと考えます。

あと、いくらなんでも過去に来た事を受け入れるの早過ぎるだろ等々、タイムスリップの矛盾は沢山ありますが、観ている間はあまり気にならなかったので割愛。






巧いです。良い映画です。
でも、観ていて一番気になったのは、”劇団ひとり印”がないこと。
全体にそつが無い代わりに芸人劇団ひとりの作家性が感じられない。

今作が初監督作品なのであと2作品は様子見が必要ですが、それにしても大人しい印象。

たぶん、たぶんですよ。
劇団さん、今回はやりたいこと(=作家性)よりも、映画の観られ方を意識したのでは。

この作品がどう映画として観られて、もっと言うとどう評論されるのかを意識した作りをしたのでは無いかと思います。
意地悪く言えば、置きにいった作品。
その結果作家性が消えたのでは。
完全な邪推ですが。

ただ、その意味では完全に成功しています。
結果、ちゃんと面白い映画を作った訳ですから。

劇団ひとり恐るべしですよ。



<あらすじ>
売れないマジシャンの男が40年前にタイムスリップし、生き別れたはずの両親との出会いを通して自分の出生の秘密を知っていく姿を笑いとユーモアを交えながら描く。39歳の売れないマジシャンの晴夫は、母に捨てられ、父とは絶縁状態。ある日、父の訃報を聞いて絶望した晴夫は、気がつくと40年前の浅草にタイムスリップしていた。そこで若き日の父・正太郎と母・悦子と出会い、スプーン曲げのマジックで人気マジシャンになった晴夫は、父とコンビを組むことに。やがて母の妊娠が発覚し、10カ月後に生まれてくるはずの自分を待つ晴夫は、自身の出生の秘密と向き合うこととなる。
映画.comより





2014年6月4日水曜日

ブルージャスミン


Blue Jasmine
2013/米 上映時間98分
監督・脚本:ウディ・アレン
レッティ・アロンソン
スティーヴン・テネンバウム
製作総指揮:レロイ・シェクター
アダム・B・スターン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
編集:アリサ・レプセルター

キャスト:ケイト・ブランシェット
アレック・ボールドウィン
ボビー・カナヴェイル
ルイス・C・K 他

90点




"あいたたた”



新宿ピカデリーにて公開初日に鑑賞。

夜の回だからなのか、ウディ・アレンだからなのか、場内は年配のご夫婦が多かった印象。
観賞後、ロビーに降りるエレベーターで、あそこはどうだ、あそこの音楽が、やっぱりウディ・アレンは、ケイト・ブランシェットは、と映画トークに花を咲かせておられました。

いくつなっても夫婦で映画を観るっていいね。
そして、この映画を楽しめる夫婦って尚更いい。






痛い、痛い。
あいたたた。

ウディ・アレン節効いてます。
ケイト・ブランシェット演じるジャスミンの行動が痛くてですね、もう最高。


序盤、かつての優雅な生活に返り咲くことを動機にあれこれ行動をしているんだと思いながら観ているとですね、ほとんど病的と言っていい程に誰かに依存しないと生きていけない人だってことが段々と分かってくる。

もう彼女はそう言う生き方しか出来ないんですよ。

プライドが高い割に、まともに働いたことは無いから生きる力は無い。
確かに美しいけども、男を手玉に取る若さもない
八方ふさがり。

だから何が何でも、セレブに返り咲きたいんです。


確かに彼女の今までの行ない、態度からすると、彼女の現状は自業自得なんですよ。
反省も無しにいけしゃあしゃあとセレブに返り咲こうなんてあんたねぇ!!
とも思います。

ただ、そうすることでしか生きていけない彼女の姿を見ると、なんだかもの凄く不憫に思えてですね、後半は大分思い入れて観てまして。
その分クライマックスの全てが暴露される件は本当に本当に痛かった。
笑いはしましたけどね。
車から追い出されるところで爆笑でしたよ。

そして、ジャスミンを演じたケイト・ブランシェットが素晴らしい。
あの独り言をぶつぶつ呟くとこなんか最高です。
ちゃんと痛い女に見えてますよ、素晴らしいですよ。





では、ジャスミンのように優雅に生きることを望んで玉の輿を狙って生きるよりも、近場で相手を探してこじんまり生活した方が幸せなのか。

ジャスミンとは真反対の生活を送る妹ジンジャー。
この人はこの人で妥協にまみれた生活を送っていてですね、本人達が幸せそうならいいんですけど、端から見ると結構な問題を抱えてるようにしか見えないんですよ。

しかもこの二人に血のつながりがなく、肉親は既に他界してるってとこで更に寄る辺無い。


ジャスミン、いいよ。
そのままでいいよ。
頑張れよ!!!!







ずばりウディ・アレン作品で一番好きです。
彼のフィルモグラフィーでもかなり毒っ気効いてる方ですよ。

故に痛い。
だから私は最高に楽しめました。



<あらすじ>
ニューヨークの資産家ハルと結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミンは、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。サンフランシスコで庶民的な生活を送る妹ジンジャーのもとに身を寄せたものの、不慣れな仕事や生活に神経を擦り減らせ、次第に精神が不安定になっていく。それでも再び華やかな世界へと返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが……。
映画.com




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