2015年10月15日木曜日

ファンタスティック・フォー


Fantastic Four
2015/米 上映時間100分
監督・脚本:ジョシュ・トランク
脚本:ジェレミー・スレーター
サイモン・キンバーグ
製作:サイモン・キンバーグ
ハッチ・パーカー 他
製作総指揮:スタン・リー
撮影:マシュー・ジェンセン
編集:エリオット・グリーンバーグ 他

キャスト:マイルズ・テラー
ケイト・マーラ
マイケル・B・ジョーダン
ジェイミー・ベル 他

10点





”すべてはお酒のお痛からはじまった”




公開初日…ではなくて、運良く抽選に当たり世界最速試写なる上映で二ヶ月程前に鑑賞。
上映終了後のお通夜のような雰囲気は忘れられません。

リブート版『ファンタスティック・フォー』
これはダメだ。
駄作というより失敗作。
駄目な映画ならではの可愛げもなく、登場人物にすら湧くイライラ。

何が駄目かって、今作が人を怒らせる類いのそれだということ。






手っ取り早く気になった点を箇条書きで列挙します。
・お話の配分が奇妙
・全体に雰囲気が暗い
・場面がほぼ室内かグリーンバック
・登場人物全員無表情
・登場人物のラストでの関係各所への無神経ぶり


順番にいきましょう。
まずお話の配分の奇妙さ。
こんなことは普段しないのですが(普通のエンターテイメント映画が当たり前に出来ていることなので)、今作を三幕構成に当てはめてみるとします。
映画における三幕構成は、1:2:1の割合。つまり、2時間の映画ならば、序盤が30分、中盤が一番長く60分。そして終盤に30分となり、各部の展開がこれに当てはまるように出来ています。

例として『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を挙げるなら、映画冒頭から4人が捕まるまでが一幕目。キルン刑務所から力を合わせて脱獄し、ノーウェアでオーブを奪われ、真に5人が団結するまでが二幕目。クライマックスのザンダー決戦が三幕目。
綺麗に1:2:1の割合で、展開にも当てはまっています。

これを今作に当てはめると、映画が始まり4人が能力を手に入れるまでが一幕目、なんですがこの時点で異様長い。
そして時制が一気に飛び、それぞれが各々の能力と向き合っている所から、敵役が登場し基地内の人々を殺しながらワープ先に戻っていくまでが二幕目、と言いたいところなんですが、ここから間髪入れずにファンタスティック4の面々が後を追い対決。勝利。終り。

この映画、肝心の三幕目がないんですよ。
いや、あるんですが、構成がめちゃくちゃな上に本来あるべき描写がないのでお話が盛り上がらず尻すぼみにスーっと消えていくような感じ。
体感としては、2:1で、三幕目が無い。

序盤の描き込みが丁寧だという声を結構聞くんですが、これは丁寧なのではなくて、配分を間違えて相対的な長さでそう感じてるんだと思います。
一言で雑に言えば、下手。
巧い人ならもっと効率よくスピーディに語るはず。
それこそ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でジェームズ・ガンが、ザンダーでのオーブの奪い合いの短いシークエンスでそれぞれのキャラを完璧に立ててみせたように。
…と、なぜ『クロニクル』を撮ったような人の作品にこんなことを言わなければならないのか…。


僭越ながら脚本をリライトさせて頂くならば、冒頭から4人が能力を手にするまでが一幕目で30分。そこから敵役の登場、まだチームになれていない4人が挑み、手も足も出ず負けるまでが二幕目で60分。そこから団結し、後を追い最終決戦。これが三幕目。

誰に言われなくたって、作り手はハリウッドのどプロ集団。
しかもアメリカの大作映画の脚本は複数人の手を介してとにかく改稿を重ねることで有名です。
なぜこんな事故を起こしたのか不可解極まりない。


全体がこんな体たらくな上に、場面がほぼ室内かグリーンバックを用いたシーンのみで画がとにかく窮屈。
登場人物皆無表情で何考えてるのか分からない、映画全体のトーンも重い。






ここからはお話の中身。

今作を良いと言う方もちらほらいらして、その言葉に共通しているのが、”若さの過ち”が描かれていることだと。
これには納得です。作り手もそこを意識していたことは間違いないでしょう。

ただ今作のそれは、飲み過ぎたお酒の失敗なんですよ。
お酒を飲みすぎてしまう程に彼等に同情する余地は確かにあります。
ただ、最終的に彼等(スーは完全に被害者なので除く)が向かうところは言ってしまえば自分達のミスの処理ですよね。その間には周囲に多大な迷惑と死者を出しながら。

これこそが”若さの過ち”なんでしょう。
まだです、まだ百歩譲ってかろうじて納得出来ます。

ここからが問題で、彼等、ここまで関係各所に甚大な被害を出しておきながら、全く反省する様子もなく、被害の跡地にヒーローでございと立つ。
そこから、尚も反省の色なく政府に対してヒーローとしての活動を半ば強引に認めさせ、立派な基地を貰い、満足げにチーム名を決め、映画は終わります。

”若さの過ち”って、その過ちに自分達が気付くところまでがセットだと思うんですよ。
”大いなる力には、大いなる責任が伴う”って『スパイダーマン』で言ってましたよね。
ピーター・パーカーは自分の過ちに気付き、真にヒーローとなるんでしたよね。

今作のファンタスティック4、この先一切応援する気になれないです。
スーパーヒーロー映画を観てこんな気持ちになるのは初めてです。

とりあえずお前等の最初のヒーローとしての活動は土下座周りだ。






映画ラスト。
マイルズ・テラー演じるMr.ファンタスティックが、自分が誘ったことで元の身体に戻れなくなってしまった友人に対してこんなことを言います。
「こうなる運命だったんだよ」
…え!?

チーム名を考える4人。
こんなのはどうだろうと皆案を出し合います。
ここが無駄に長い。
こんなのはどうだろう、と意味深にタメて、暗転してタイトルどん。
ダサい。今更の『ダークナイト』かよ。
ここで全て脱力しました。


監督本人が、これは自分の作品ではないと公言しています。
最終の編集で会社にハサミを入れられたのだと。
制作時のゴタゴタも漏れ聞こえていました。

もうどうだっていいです。
ただ、ジョシュ・トランクの前作『クロニクル』はその年のベストに入れたくらい大好きな作品です。傑作であることは揺るがない真実。
願わくば、これが二本目のジンクスだと信じて。



<あらすじ>
天才的な才能をもつ発明オタクのリード・リチャーズ、シャイな女性科学者スー・ストームと、何かと暴走しがちな弟ジョニー・ストーム、そしてタフで孤独なベン・グリムの4人は、ある実験の事故の影響でそれぞれ特殊な能力を獲得する。リードはゴムのように伸縮自在で強靭な肉体となり、スーは体を透明化し、ジョニーは炎に変化して空を飛ぶことができるように、そしてベンは、圧倒的な怪力と頑丈な岩石の体になった。その能力に戸惑い、思い悩む4人だったが、そんな彼らの前に異次元の脅威が迫る。
映画.comより




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