2014年2月21日金曜日

ラッシュ/プライドと友情


Rush
2013/米・英 上映時間122分
監督:ロン・ハワード
脚本:ピーター・モーガン
製作:ロン・ハワード
ブライアン・グレイザー 他
製作総指揮:トビン・アームブラスト
タイラー・トンプソン 他
音楽:ハンス・ジマー
撮影:アンソニー・ドッド・マントル

キャスト:クリス・ヘムズワース
ダニエル・ブリュール
オリヴィア・ワイルド
アレクサンドラ・マリア・ララ 他

98点




”俺を脅かし続けてくれ、チャンプ”



私、この映画相当好きです。
”あなたの生涯の一本を塗り替える”って言うあまりにもな宣伝文句も、あながち大げさでもないとさえ感じてます。
少なくとも、まだ2月ですけど今年上半期のベストですね。
思い出す程に胸がどきどきします。
これは恋だと思いたい。



実車を使ってる誠実な作り




凄く表面的な所から話を始めると、映画館のスピーカーで聞くF1カーの排気音の臨場感でまず鳥肌。
映画館の座席がさながらコックピット。
TOHOららぽーと船橋のメインスクリーンで観たので、尚のこと耳をつんざくエキゾーストノートに身も心も包まれ最高でした。

映像は、テンポ優先でカット数多めの編集。
出会ったら次のシーンではもう結婚式。
何か合ったら、すぐ次。
とにかく話運びはタイト。

レースシーンだと、車の空力パーツの揺れだったり、エンジンタービンが燃焼爆発してるカットを入れたり、カーナンバーからなめてコックピットを映す等々、全体にF1のスピード感を活かした演出がなされてます。

ただただ、意地悪く言えば、映像化困難なレースシーンを撮る”逃げ”とも思える編集で、少しチャカついてる様にも思えなくもないので、好みが分かれそうな所ですけど、個人的には全く持って好みです。
スピーディーにシーズンを見せていく演出は興奮ものでした。

と言うより、はっきり言いますと、この映画全体を構成している全てがもう私の好みです。ジャストミート。
これはもう恋の部類なのでね。ご容赦頂きたいです、はい。




でも、”逃げ”なんて表現を使いましたけど、元々脚本のピーター・モーガンの中では劇中でレースシーンを入れる気は無かったのだと。

なんでも彼は、F1に関してはずぶの素人で、レースの描き方がわからないからないから実際の記録映像を使ってお茶を濁すつもりだったんですって。



では、彼は何を描きたかったのか。
それは、F1でも無く、レースでも無く、二人の男の濃密かつドライなライバルとしての関係ですよ。

この二人に物語の焦点を絞っているから、結果F1に関する知識なんて無くても、誰もが共感しうる普遍的なお話にしっかりなれているんですよ。

とにもかくにも、この焦点の絞り方が上手い!!

実車を使ったり、クラッシュシーンに実際の映像を撮った少年が映っていたり、F1的な見所も随所に沢山あります。
だけども、物語の中心はニキ・ラウダとジェームズ・ハントの二人。
知識がある人は、その裏に透けて見えるフェラーリvsマクラーレンの構図も分かりますが、そんなことはどうでも良い。

下手な作り手だったなら、彼らのチーム内での葛藤、チーム同士の対決等々要素を沢山盛り込んだあげく収集が付かなくなりそうな所を、焦点をしっかり絞った描き方をしたのは全く持って大正解。




訛り、容姿全て完璧。



超合理主義のニキ・ラウダと、一瞬に生きるジェームズ・ハント。
正反対の二人を結びつけていたものが勝利すること。

ドイツGPで大クラッシュしたニキ・ラウダ。
病院で過酷なリハビリを受けている最中も、自分が出場するはずだったレースを、彼はテレビで観てるんです。
心は完全に彼に感情移入してるので、なぜそんな惨いことをする!テレビ止めてやれよ!!と心の中で叫びました。なんなら泣いてますよ。

それがですよ、彼は42日間で奇跡の復帰を遂げ(しかもイタリアGPでフェラーリの聖地モンツァなのがまた泣けるんだ)彼は謝るジェームズ・ハントにこう言うんです。

「確かにあのレースはやるべきじゃなかった。ただ、ここに戻って来させたのもお前だ」

お前を倒す為に俺は戻って来たんだと。
ニキ・ラウダよ、そんなことを思っていたのか!?


この距離感ですよ。
勝負することで結びついたこの距離感。

もう汗のような熱い涙を流してました。

以下、最終戦のネタバレ全開でいきます。



沸き立つフェロモン、容姿、全て完璧。



最終戦の舞台はなんと日本、富士スピード・ウェイですよ。しかも豪雨。
日本人からしてみれば、棚ぼた的にアガるクライマックス。

その後のそれぞれの二人の選択にまた涙ですよ。

ラウダはスタートから2周でリタイアする訳ですけど、これは映画中盤でのハネムーンのシーンでの台詞が効いていて。
つまり、彼には守るものがあって、だからあの選択。

対してジェームズ・ハントは、守るものなんて何も無い。命を掛けてでも勝ちたい。
ピットで「もう無理だ、自分の命を大事にしろ。また来年がある」なんていわれても、一言「Fuck」と捨て台詞を吐いてレースに戻る彼。

要するにこう言うことです。
自らの命を掛けられる程に、守るべきものが何一つ無いハントが、少なくともあの最終戦では一枚上手だったと言うことです。

ただ勝ちたい。
例え死んだとしても。

もうなんだよ、魅力的過ぎるよ。


しっかりそれぞれの性格を描き込み、それを積み上げて、最終戦にしっかり二人の勝利に対する考え方を反映させ、それがしっかり最高のクライマックスになってる。もう、最高です。

今まで出会った人々がテレビで二人の勝負の行方を見守る「あしたのジョー」演出も、分かってるねぇ、ロン・ハワード。
もう、最高としか言いようが無いです。








ラストのナレーション。
あれはおそらくニキ・ラウダ本人の言葉でしょう。
思わず胸が熱くなります。


ハンス・ジマーの少し古臭さを感じなくもない劇伴もど真ん中度ストライク。
サントラ買いましょう。

あえて言及しませんでしたが、主演の二人は100点満点ですよ。
そんなの当たり前です。


前述の通り、この映画に対してはもう恋をしている状態なので、この映画の全てが好きです。
まだこの状態から冷めるのには時間が掛かりそうですが、今の所、おそらく今年のベストには入ってくるかな、と。
そして出来るだけ長い時間この状態が続いてほしい。







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