2014年2月5日水曜日

オンリー・ゴッド


Only God Forgives
2013/仏・丁 上映時間90分 R15+
監督・脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン
製作:ヴァンサン・マラヴァル
シドニー・デュマ 他
製作総指揮:ブラヒム・シウア
ライアン・ゴズリング 他
音楽:クリフ・マルティネス
撮影:ラリー・スミス

キャスト:ライアン・ゴズリング
クリスティン・スコット・トーマス
ウィタヤー・バーンシーガーム 他


80点



"この神様、知人に似てる人いるんだけど”


公開日初日に観に行ったんですけど、結構人は入ってまして、しかもカップル率が高いんですよ。どういう風の吹き回し?
お互い気心知れた仲なのか、趣味ががっちり合った二人なのか。


「お箸でふととも刺してたね、ウフ」
「手も刺されていたね」
「そう、目をくり抜かれていた」
「最後は耳をえぐられていたね」


こんな二人?
それはそれで羨ましいぞ。






前作の『Drive』以上に好き嫌いが分かれるでしょうし、『Drive』は好きな人でもこれは苦手だって言う人もいるでしょう。
逆に周りの反応なんかを聞くと、こっちはイケた!なんて人も結構したりして本当に奇妙な作品です。
主演のライアン・ゴズリングも脚本を読んで、これまで読んだものの中で一番奇妙だって言ってるくらいですから。

ただ言えるのは、これは間違いなく”ニコラス・ウィンディング・レフン監督の作品”だってことと、前作『Drive』から受けた印象は、彼の一面に過ぎなかったってこと。

そのくらい今作は彼の作家性が溢れ出してます。
要は、そこにノレるかです。

以下ラストのネタバレ含みます。





『Drive』同様、大筋のお話はシンプル極まりないです。
兄ちゃんが殺されたんで、その仇討ちをしようって話。

しかしながら、ここも『Drive』と同様、シンプルなお話をシンプルに描こうとはしない。煌びやかなネオン眩しいバンコクを舞台に、艶かしく、スリリングに、時に笑ってしまうような演出を挟みつつ、バイオレンス描写満載でそれを描くんです。

そしてこの映画を最も奇妙なものにしている要素が、元警察官のチャン。
刀で無慈悲に裁きを下す、神です。この人神なんです。

ただただ、チャンさんの風貌は見るからに華の無いただのおじさん。
猿顔具合が個人的に友人に似てたりもして、増々神に見えない。
しかもこのチャンさん、神として裁きを下し、一仕事終えるとスナック的な場所で歌謡曲を熱唱するんです。

意味が分からないでしょう。
観てる私も訳が分かりませんでした。

ただ、このチャンさんの奇妙な行動も、レフン監督が作り上げた世界観の中では正解なんです。
少なくとも、観ている最中は何の疑問も感じません。
そりゃ歌うよ。神だって一仕事終えたらカラオケで歌うよ。そうだよ。

そんな神に抗おうとするのがライアン・ゴズリング。

ラスト、出した両腕に刀を振り落とそうとするチャン。
そしてチャンの熱唱で映画は終わります。

神と、神に挑戦した男。
レフン監督の手に掛かると、それがこんな映画に仕上がる。





癖の塊みたいな映画ですけど、好きか嫌いかで言えば相当好きです。
オープニングのタイ語と、迫ってくる様な音楽で心掴まれてました。
あのめくるめく世界に浸ってたいです。

そして観終わって、ああそうだよな、レフン監督ってこうだったよな、と改めて思い知らされました。

本作観た後だと、『Drive』ってあれでもすごい可愛い映画だったなと。思わずそう感じてしまいます。


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