『The Grand Budapest Hotel』
2014/独・英 上映時間100分
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
製作:ウェス・アンダーソン
スコット・ルーディン 他
原案:ウェス・アンダーソン
ヒューゴ・ギネス
音楽:アレクサンドロ・デスプラ
撮影:ロバート・D・イェーマン
キャスト:レイフ・ファインズ
F・マーリー・エイブラハム
マチュー・アルマリック
エイドリアン・ブロディ
ウィレム・デフォー
97点
”フェティシズムの塊”
公開初日に鑑賞。
その後再び観て、この間また観て、今のところ計3回鑑賞。
なぜこんなに観るのか。
それはこの映画の鑑賞が快感だからに他なりません。
詳しくは後述致します。監督のウェス・アンダーソンとは。
まだ知らない方も多いでしょう。
でもですね、パンフを読んでいた所、とある日本のCMの監督をしていたとのことでして、このCMは見たことあるって方も多いのでは。
そのCMがこれ。
ソフトバンクのCMを作ってたんですねぇ。
知らぬ間にウェス・アンダーソン作品に触れていたんです。
観てもらうと分かる通り、カチッとしたもの凄く作り込まれた作風。
役者の動き、衣装、カット、編集、全てが計算し尽くされていて、その結果グラフィカルな画に。
で、その彼の作風を端的に表すのが”シンメトリー”。
とにかく左右対称がお好きなようで、過去作を観ても多いこと多いこと。
海外の方が作った”ウェス・アンダーソンシンメトリー”動画があったのでご覧下さい。
好きねぇ、シンメトリー。
でですよ。
今回の『グランド・ブダペスト・ホテル』がですね、ほぼ全カット全シーンがシンメトリー。
もう怖い。
この執念怖いわ。
今回のこの執念のシンメトリーが前述の快感の理由でして、劇場で観てるととにかく気持ちいい。
もう快楽の類いです。
特にちょうど真ん中の座席で鑑賞したならば、それはそれはめくるめく悦楽へと私を連れて行ってくれました。
昇天。
自分の位置をちょうど境に、かっちり左右対称に映画が広がってる。
もう気持ちいぃいいい。
しかも今作においてはこのシンメトリーが、作品全体をある種の箱庭感、作り物感で包んでいまして、これがまた良いんですよ。
ミニチュアを使ったホテルの全景も相まって、映画全体がさながら人形劇のようなキュートさ。
その中で生き生きと演技をする役者陣も皆素晴らしい。
主演のレイフ・ファインズは言わずもがなで、今回特に気になったのは、今作がウェス・アンダーソン作品初出演のマチュー・アルマリック。
目がぎょろっとしててとてもウェス・アンドーソン顔。
素晴らしい。
甘さだけで終わらない反骨の効いたラストも良い。
戦争が彩りに満ちた文化を終わらせ、画面がモノクロに。
しかし、グスタヴからゼロへ。ゼロから作家、そしてその本を読む読者へ。
しっかりその残り香は継承されているのです。
かっちり作られた作風故に、全く受け付けないという人も結構聞きます。
嫌いな人はとことんダメでしょう。
ただ個人的には、もうここまでやられたら好きにならざる得ないと言うか、もうメロメロです。
完璧な映画の一つの形だとすら思ってます。
間違いなく今年の上位、もしかしたらベスト、なんてことも。
私、この作品好きで好きで堪らないです。
<あらすじ>
ヨーロッパ随一の高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を取り仕切り、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・Hは、究極のおもてなしを信条とし、宿泊客のマダムたちの夜のお相手もこなしていた。ホテルには彼を目当てに多くの客が訪れるが、ある夜、長年懇意にしていたマダムDが何者かに殺害されてしまう。マダムDの遺産をめぐる騒動に巻き込まれたグスタヴ・Hは、ホテルの威信を守るため、信頼するベルボーイのゼロ・ムスタファを伴い、ヨーロッパを駆けめぐる。
映画.comより