『青天の霹靂』
2014/日本 上映時間96分
監督:劇団ひとり
脚本:橋部敦子
劇団ひとり
プロデューサー:川村元気
音楽:佐藤直紀
主題歌:Mr.Children「放たれる」
原作:劇団ひとり「青天の霹靂」
キャスト:大泉洋
柴咲コウ
劇団ひとり
笹野高史
風間杜夫
77点
”芸人監督だからって偏見、良くない”
劇団ひとりさん、巧いです。
観る前から馬鹿にした態度を取って本当にすみませんでした。
松本人志、木村祐一、品川祐等々、吉本の芸人が映画を撮るとろくな事にならないと思ってましたけど、今回の劇団ひとりの仕事ぶりでその思いを更に強くしました。
評価が低いのは吉本芸人作の映画であって、芸人だからって悪い訳では決してない。
劇団ひとり監督だからと食わず嫌いしてるのならばそれは勿体ない。
一見の価値は間違いなくある作品です。
劇団ひとりさん、ちゃんと映画作ってますよ。
まずそもそも上映時間が96分なのが凄く好感。
往々にして処女作はやりたいことを詰め込んだあげくダラダラ長くなりがちなのに、抑えめに、必要なことだけ語りコンパクトに仕上げいてとても偉い。
冒頭の大泉洋のワンシーンでマジックを披露するシーンで引き込まれ、一気に映画の世界に。
個人的に、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』しかり、ど頭にワンカットのシーンが来てる映画が私は好きみたい。
説明台詞ではなくて、あくまで映像で人物の感情を表現。
水道管の水漏れで部屋が水浸しになるシーンからの、全て諦めようとする大泉洋。
いいですよ。映画ですよ。
ちゃんと映画になってますよ。
劇団ひとりさん、巧いですよ。
要所要所の撮影もとてもいいです。
やわらかい光、影の撮影、美しいです。
なぜ要所要所なのかは訳があるので後述しますが。
ロケーションもいいです。
川沿いの土手もいい味出してますよ。
ここでの夕日で影になった2人の姿を映すショットは本当に美しい。
ただ一つこの場面で非常に惜しいことがあるので、これもまとめて後述します。
でも、この土手に遡ってのラストの切れ味。
やっぱり素晴らしい。
このシーンだけで親指グっです。
劇団ひとりさん、映画作れるじゃん!!
ただ、やっぱり気になる部分もありまして。
前述の撮影。
要所要所は良いんです。
ただ、全編にワンシーンワンカットと手持ちカメラを使い過ぎで、上映時間が96分とタイトなのに、観ている間は間延びした印象。
もう少し的確にカットを割ってテンポが欲しかったし、ワンシーンワンカットはマジックのシーンとここぞの場面だけにしてメリハリを付けるべき。
ラストの土手に関しては、本当に良いシーンなのに、奥の高速道路にもろに70年代には存在しない車がひっきりなしに走っていて、それがかなりノイズになってお話の邪魔をするのが本当に勿体ない。
ただ、ここに関しては作り手も理解した上なのかも。
分かった上でこのロケーションの魅力を取ったんだと考えます。
あと、いくらなんでも過去に来た事を受け入れるの早過ぎるだろ等々、タイムスリップの矛盾は沢山ありますが、観ている間はあまり気にならなかったので割愛。
巧いです。良い映画です。
でも、観ていて一番気になったのは、”劇団ひとり印”がないこと。
全体にそつが無い代わりに芸人劇団ひとりの作家性が感じられない。
今作が初監督作品なのであと2作品は様子見が必要ですが、それにしても大人しい印象。
たぶん、たぶんですよ。
劇団さん、今回はやりたいこと(=作家性)よりも、映画の観られ方を意識したのでは。
この作品がどう映画として観られて、もっと言うとどう評論されるのかを意識した作りをしたのでは無いかと思います。
意地悪く言えば、置きにいった作品。
その結果作家性が消えたのでは。
完全な邪推ですが。
ただ、その意味では完全に成功しています。
結果、ちゃんと面白い映画を作った訳ですから。
劇団ひとり恐るべしですよ。
<あらすじ>
売れないマジシャンの男が40年前にタイムスリップし、生き別れたはずの両親との出会いを通して自分の出生の秘密を知っていく姿を笑いとユーモアを交えながら描く。39歳の売れないマジシャンの晴夫は、母に捨てられ、父とは絶縁状態。ある日、父の訃報を聞いて絶望した晴夫は、気がつくと40年前の浅草にタイムスリップしていた。そこで若き日の父・正太郎と母・悦子と出会い、スプーン曲げのマジックで人気マジシャンになった晴夫は、父とコンビを組むことに。やがて母の妊娠が発覚し、10カ月後に生まれてくるはずの自分を待つ晴夫は、自身の出生の秘密と向き合うこととなる。
映画.comより
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