『ロマンス』
2015/日本 上映時間97分
監督・脚本:タナダユキ
製作:間宮登良松
企画:加藤和夫
プロデューサー:佐藤現
撮影:大塚亮
編集:宮島竜治
音楽:周防義和
Jirafa
キャスト:大島優子
大倉孝二 他
78点
"あれってなんだったんだろうね、が時間を進める"
あれってなんだったんだろう、ってことで、少し道が開けることってあるよね。
いい映画でした。
映画始まってすぐ。
大島優子の出勤の場面から始まるんですが、ベッドにはまだ寝ている彼氏の姿が。
これがどうやらヒモ男らしくて、家を出ようとする大島優子にお金をせびる。
「一万…五千円… 千円??」
シーン変わって、二度寝をキメてる彼氏の枕元には二千円が。
この描写でまず親指グッ。
千円とせびられて、二千円を置いておくこの描写で彼女の性格のひだがしっかり伝わる。
例えダメな奴でも、情けをかけて放っておけない人なんだなということがそれとなく分かる。
それはつまり、今作が巡る母親への思いにも表れているということ。
例えダメな人でも、心のどこかで気にかけていて、そんなことを思っている自分に腹が立つ。
彼女の中では、自分の母との関係が彼女自身の時間を止めている状態。
そんな母との思い出で一番楽しく、そして最後になってしまったのが、家族三人での箱根旅行。
劇中で彼女が「それも少しあるかも」と言っていましたが、自分の一番幸福な記憶に、偶然も込みで知らず知らずのうちに引き寄せられるようなことは個人的に凄くよく分かります。
彼女は今作でロマンスカーから降りて、その自分の時間を止めている箱根の街を歩き回る思い出巡り、と同時に地獄巡りをする訳なんですが、この旅、結局のところ目的は果たせぬまま、終わってみると、なんだったんだろうねこの一日は、と言いたくなるようなもの。なんですが、この”なんだったんだろうね”な感じで、しっかり彼女の中の時間は再び動き出すのです。
それを証明する、ラストの快心の笑顔での映画の幕切れ…!!
全編に大島優子さんの演技は素晴らしいんですが、このラストの笑顔一発で決まり。
とはいえ序盤、物語を動かすキッカケになる出来事がちょっと強引に思えて気になる。
借金に困ってるとは言え、ロマンスカーに乗るお金はあるのに万引きはしないだろ。
大倉孝二のキャラも、中盤から人となりが明らかになっていくのは分かっていてもかなり突飛な性格をしている為、これがもうノレなくてノレなくて。
ただ、これが大島優子との演技アンサンブルの中で全く気にならなくなってくる。
むしろ好ましい…!!
大島優子が不機嫌になればなるほど、大倉孝二がそれに振り回されるほど、映画が魅力的になっていく。
今作、脚本協力に山下監督の盟友、脚本家の向井康介がクレジットされてるんですけど、二人のオフビートな会話を見ればそれも納得。
ただ、クライマックスのラブホテルでのシーンは、そのオフビートな会話の妙もなく、基本独り語りが続き、回想も挿みながらあまり画変わりもなく、そこは少し残念。
それにしても、『紙の月』と続いて、大島優子さんは本当に制服が似合う。
これは余談。
大島優子さんが箱根ロマンスカーでせっせか働いている間、富士山を挟んだ反対側山梨では前田敦子さんが”もらとりあむ”な生活を送っていると考えると、これはいい。
余談2
主題歌が凄く良い!!
CD発売の予定は無いらしいので、この動画で要チェック!!
<あらすじ>
新宿・箱根間を結ぶロマンスカーで、車内販売を担当しているアテンダントの北條鉢子。仕事の成績も常にトップで、今日もつつがなく業務をこなすつもりだったある日、鉢子は怪しい映画プロデューサーの桜庭と出会う。ふとしたきっかけで桜庭に母親からの手紙を読まれてしまった鉢子は、桜庭に背中を押され、何年も会っていない母親を探すため箱根の景勝地を巡る小さな旅に出ることになる。
映画.comより
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