『NightCrawler』
2014/米 上映時間118分
監督・脚本:ダン・ギルロイ
製作:ジェニファー・フォックス
シェイク・ギレンホール 他
製作総指揮:ゲイリー・マイケル・ウォルターズ
ベッツィー・ダンバリー
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影:ロバート・エルスウィット
キャスト:ジェイク・ギレンホール
レネ・ルッソ
リズ・アーメッド 他
96点
”歩くビジネス書が夜を這いずる”
最低で最高のクソ野郎に感化されかけてしまった。
危ない危ない、映画って本当に危ない。
個人的には『ファイトクラブ』のタイラー・ダーデン、『ノーカントリー』のアントン・シガーと肩を並べるエクストリームな野郎でした。
ただ、彼等と比べて少しの人間臭さを随所に感じさせる辺りがニクい、最低、最高。
映画冒頭、鉄柵をボルトカッターで切るジェイク・ギレンホール演じるルー。
盗みを行っている様子。そこに一人の警備員。職務質問をされて、道に迷ったと笑顔で言い訳。チラッと警備員の腕時計に視線を向け、間髪入れずに飛びかかるルー。
シーンが変わり、ルーの腕には腕時計。後部座席には盗んだ鉄柵。
今作では、ルーがパパラッチとして一線を越える瞬間はあっても、彼自体の信条、思想、行動は序盤から一貫した、完成されたキャラクターとして登場します。
その、彼の中に貫かれた信条と言うのが、資本主義至上主義。
報道カメラマンは彼の”天職”だとは思うのですが、仮に彼が他の仕事でその資質を発揮したとしても、間違いなく成り上がっていくでしょう。
なぜなら、彼自身がその資本主義至上主義を体現した存在だから。
『ダークナイト』のジョーカーが”悪”、『ノーカントリー』のアントン・シガーが”不条理”、『ファイトクラブ』のタイラー・ダーデンが”暴力衝動”を存在で語っていたように。
凄くフランクな言い方をすると、ルーは歩く自己啓発本。
これが上記3人の洗練具合とは違って、俗っぽくていいんです。すごくいい。
そして、彼は簡単な過去の身の上話も披露するんですが、そこから漂う小物臭。
そこから抜ける為に必死でネットの情報を頼りに自己催眠を掛けたんだろうなぁと思われる描写の数々。結果仕上がったのが歩く自己啓発本。
この俗っぽさがいい。
何事も極限まで極めると気持ちがいいものだ。
「僕には学歴はないが、その気になれば」
「物覚えがよく、向上心がある」
「ネットには全てがある」
ビジネス書を擬人化したような人物のルーがとにかく最高で最低。
個人的に好きなのは、彼の会話術として、相手に対して何か指摘をする時、一つ褒めて二つ貶すあの感じだとか、逆に何かを提案された時、相手の話を遮らず、一部相手の意向を汲んだ上で結果手玉に取るあの感じだとか。強気に出る時は徹底的になあの感じだとか。
日常生活で使えそうな、正にビジネス書の章立てにありそうなことをサラッとやっているルー。
そんな彼の行動も、全ては自分の利益の為。
彼の処世術が周りを巻き込みつつ、次第に彼の思想信条が伝播していく様も『ファイトクラブ』のダーデンを想起。
関係を拒んでいたニナとの間に、ラストでモニターを前にセクシャルな空気が流れ出すあのシーン。ニナ落ちた。
こんなに陰鬱な話なのに、どこかヒロイックさすら感じてしまうのは、画がとんでもなくキマっているのも大きな理由。
随所に夜のL.Aの捉え方が美しいのですが、特に白眉は中華料理屋での引きの撮影からのカーチェイスシーンの緩急。
本当に素晴らしい。
劇伴も、あえて幻想的な音楽で暗さを回避。
ルーが一線を越える時ですらどこかヒロイックな雰囲気。
ただ目の前で彼がやっていることは最低な行為。
この、観ている側と、目の前で起こっていること、その捉え方のわざと違和感が生まれるような演出が最高に気持ち悪くて気持ちいい。
映画ラスト。彼の腕には冒頭で奪った腕時計が。
彼は最初から何も変わらずそこにいた。
<あらすじ>
まともな仕事にありつけず軽犯罪で日銭を稼ぐ男ルイスは、偶然通りかかった事故現場で報道スクープ専門の映像パパラッチの存在を知り、自分もやってみようと思い立つ。早速ビデオカメラを手に入れたルイスは、警察無線を傍受して事件や事故の現場に猛スピードで駆けつけ、悲惨な映像を次々と撮影していく。過激な映像で高額な報酬を得るようになったルイスは、さらなるスクープ映像を求めて行動をエスカレートさせていき、ついに一線を越えてしまう。
映画.comより
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