2013年11月10日日曜日

キャリー (2013年版)

2013/アメリカ 99分
監督:キンバリー・ピアース
脚本:ロバート・アギーレ=サカサ
ローレンス・D・コーエン
原作:スティーブン・キング
製作総指揮:J・マイルズ・デイル

キャスト:キャリー・ホワイト (クロエ・グレース・モレッツ)
マーガレット・ホワイト (ジュリアン・ムーア)
デジャルダン先生 (ジュディ・グリア)
クリス・ハーゲンセン (ポーシャ・ダブルデイ)


79点


”真っ当ストレートなリメイク、ほんのり現代的”
試写会にて鑑賞しました。
吹き替え版だったのが悔やまれますが。

クロエちゃんで『キャリー』をリメイク!?と聞いた時は、クロエちゃんどう見ても可愛いけど大丈夫か??と思ってたんですが、技ありなキャスティングで不自然には見えなかったです。詳しくは後述。

なぜに今、『キャリー』のリメイクなのか。
その謎は残りますが、割と真っ当なリメイク、変な味付け無しでシンプルに面白かったです。



ダサい格好でも可愛いんだよなぁ



”クロエちゃんがどう見ても可愛く見える問題”はどう解決されたか。

元のオリジナル版のキャリーを演じていたシシー・スペイクは、薄幸そうなんだけどどこか美人にも見えて、でもラストの血を浴びた姿はもの凄くおどろおどろしいっていう絶妙なバランスだったんですけど、今回のキャリー役クロエちゃんにその要素は皆無。どう見ても可愛い。

さあどうしたものか。
そこで、クロエちゃんの周りの女子達に長身スレンダー美人を配置することで、相対的にクロエちゃんが元々持つ容姿の子供っぽさを際立たせると言う、技ありなキャスティングが成されていました。
劇中の他の女の子と比べて”浮いてる”存在にはなっていたと思います。

ただただ、女優としてのオーラが他の人とは段違いなんですよね。
だから、にじみ出るオーラでとても薄幸そうには全く見えない。
豚の血を被っても、どうしたものかやっぱり可愛いんですよね。

でも、そこはしょうがない!!
なぜなら、そんなことは見る前から百も承知だったから!!



ジュリアン・ムーア、イイ!!



キャリーの母親はオリジナルに比べて人で無し度は上がってまして、それをジュリアン・ムーアがいい感じに演じてました。

社会問題として、キリスト教原理主義者が徒党を組んでアメリカ社会の実験を握りつつある今、より母親の信仰の強さ描写は、リアルに気持ちの悪いものに感じました。

母親がキャリーの自宅学習を望んでいて、学校には行かせたくないって言うのは、実際に聖書が全ての方々は自分の子供に行っていることですからね。
自傷癖もオリジナルには無い演出ですから、いい改変なんじゃないですかね。

他にも、キャリーへのいじめ行為にスマホとSNSが使えわれてたり、ほんのり現代的なアレンジが加えられてました。
ここら辺も、割とあっさり目でさりげない程度のものだったんで個人的には好印象でした。



血を被っても可愛いんだよなぁ



見ていて全く飽きなかったですし、クライマックスの能力大爆発はやっぱりカタルシス満載で、キャリーもっとやったれ!!とグッときました。

ストレートなリメイクなので、やっぱり元のオリジナルの自力が強いって言ってしまえば身も蓋もないんですが、やっぱりそうなのかなぁ。

とにかく、言ってしまえばクロエちゃん演じるキャリーに乗れるか否かですね。
乗れなくても、クロエちゃんのアイドル映画と思えば、ね。

元のオリジナルは観たこと無いって人は十分楽しめると思います。
うん、楽しかった!!

2013年11月5日火曜日

スティーブ・ジョブズ

2013/アメリカ 上映時間122分
監督:ジョシュア・マイケル・スターン
脚本:マット・ホワイトレイ
製作:マーク・ヒューム
製作総指揮:マーク・ヒューム
ロナルド・バラード
ビル・ジョンソン 他
原題:『Jobs』

キャスト:アシュトン・カッチャー (スティーブ・ジョブズ)
ジョシュ・ギャッド (スティーブ・ウォズニアック)
アマンダ・クリー (ジュリー)
ダーモット・マローリー (マイク・マークラ)
マシュー・モディーン (ジョン・スカリー)


40点

"ジョブズはこの出来を許さないと思う”
アップルを作った人、スティーブ・ジョブズ氏の映画でございます。
ご存知の方も多いとは思いますが、スティーブ・ジョブズ氏の人生は本当にドラマティックで波瀾万丈。
彼のWikipediaを読んでいるだけでもうに無類におもしろいんですよ。

なので、元が面白いのでそのまま映像にすればある程度は面白くなることは確実、なはずなんですが、ダメだよこれ。ジョブズに怒られるよ。



スティーブ・ジョブズ


アシュトン・カッチャー


まず良かった所!!
劇中の世界観の作り込みは相当良かったです。
アップルの協力は無かったそうですけど、社内の雰囲気は恐らくはこんな感じだったのであろうと説得力をもった美術とセット。

役者さん達の演技も良いです。皆実在の人物に瓜二つ。
それを象徴するキャラクターが、アシュトン・カッチャー演じるスティーブ・ジョブズその人ですよ!!

似ているなんてもんじゃない。
本人かと見まごうシーンも何カ所かありました。
顔だけじゃなくて、ジョブズの猫背で歩幅を小さく歩く感じも、ぽい!!

この、アシュトン・カッチャー”ジョブズ”がこの映画の何よりの説得力。
恐らく作り手側もアシュトン・カッチャーのキャスティングに勝機を見たのでしょう。その意味ではこのキャスティングは大成功ですよ。

世界観の作り込み良し、役者陣良し、主演の俳優良し。
じゃあなにがダメか。お話ですよ。

本当にもったいない!!
実際の話が面白いのに、もったいないよ!!






確かに元のお話が面白いので、エピソード単位ではワクワクします。
その意味では面白いです。

ただ、会社の成長、初代Macintosh開発、Appleへの返り咲き等々、いくらなんでも重要なエピソードをジャンプカットで飛ばし過ぎ。
飛ばしちゃうから映画的にクライマックスに向かって盛り上がって行かないし、過程を飛ばしちゃうから感情移入も出来ない。ジョブズのクソ野郎ぶりが際立つだけです。

一番飽きれたのが、ジョブズが会社から追い出されてしまうことになる劇中で一番盛り上がるエピソード。
追い出されたと思ったら、一気に時間を飛ばして、その間のジョブスの活躍を大幅に省略して再び返り咲き。体感にして数分です。

その間のジョブズの苦悩ぐらい描こうよ。
しかもその間ピクサー絡みの激しく面白いエピソードあっただろ!!
入れろとは言わないけど、そこに触れるぐらいしようよ。






この映画全体に言えることなんですか、ジョブズが壁にぶつかっても、割とすんなり解決してしまうんですね。
何ですらすら解決してしまうかと言うと、それは”スティーブ・ジョブズ”だから。
「スティーブ・ジョブズってさ、ほら、なんか凄いこと考えてるじゃん、だからさ」と言わんばかりに、それ以上の描写が全く無い。

壁にはぶつかるが、割とすんなり解決するこの感じ。
例えるなら、修行のシークエンスがないジャンプ漫画です。
敵に勝つ理由が、主人公であること以外にない。

歯ごたえ無し。

あと全体に話が散らかってます。
最初は創立初期メンバーの友情を描いてた風で、途中から初期メンバー放っといて会社の経営のお話。その合間合間に雑に挿入されるジョブズの家族の話。
観終わったあと、あれ、結局なんの話だったったけ、と思わずにはいられない。

クライマックスもとても中途半端。
しかも、長年の同僚をクビにした直後に感動げなジョブズのナレーションと回想で終わりって、観ているこっちはどういう気持ちになればいいのさ。






ジョブズ氏は製品に完璧さを求めた人だと聞きます。

あるエピソードでは、iPodを開発していた時のこと、受け取った試作品のiPodを金魚鉢に沈め、「気泡が出ただろ。この分まだ無駄なスペースがあると言うことだ」と改良を命じたそうです。

この映画を観たジョブズは間違いなくこう言うでしょう。
「なんだこれは、作り直せ」

たーだただ、アシュトン・カッチャー”ジョブズ”は素晴らしいです。
そこだけがこの映画の救い。

2013年11月3日日曜日

朝と夕方の横移動

朝焼けか夕方の空を背にして、横移動で撮ってるショットが大好きだと最近気がついた。
それだけで映画的で、至福のショット。



山下敦弘監督『リンダリンダリンダ』より


是枝裕和監督『奇跡』より


『箱入り息子の恋』
自転車か走りで全力疾走していると、エモーショナルでそれもまた良し。



2013年11月2日土曜日

映画館で観る映画

劇場で観る機会を逃して、DVDで初めて観て、度肝を抜かれて、何回も観て、何回もその話題で盛り上がった映画を、今日、念願叶って映画館で、しかもIMAXスクリーンで観たその感動たるや。

ここまでの感動を得られるとは思わなかった。

映画館で観る映画って、やっぱり凄いんだ。と、感じずにはいられない。
そんな体験を致しました。

ヒース・レジャー、よかったなぁ。

よかったなぁ。

これだから映画は。






2013年11月1日金曜日

地獄でなぜ悪い

2013/日本 上映時間130分 PG-12
監督・脚本:園子温
音楽:園子温
井内啓二
撮影:山本英夫
編集:伊藤潤一

キャスト:國村準 (武藤大三)
堤真一 (池上純)
二階堂ふみ (武藤ミツコ)
友近 (武藤しずえ)
長谷川博己 (平田純)
星野源 (橋本公次)


90点

”たった一度の人生、地獄でなぜ悪い”
園子温監督最新作。
公開日初日にバルト9へ観に行って来ました。
『風立ちぬ』も初日に観に行きましたけど、明らかにそれとは毛色の違う好き者達が集まる感じ、これこそが園子温!!

場内満員御礼!!
比喩ではなくて、思わず呼吸を忘れてしまう程の圧倒的なテンション、爆笑の連続!!
うおーーーー!!
何だこれ!?

全力歯ぎしりレッツゴー!!



レッツゴー!!



個人的なお話、私、園子温監督の大ファンでして。
最近の著書『けもの道を笑って歩け』も拝読致しました。面白かったです。

園子温とは何者か。
どんな映画監督なのか。

自分の中での認識で説明をするならば、他の映画では味わえない唯一無二の作品を観せてくれる、替えの効かない映画監督。それが園子温と言う人。

何が唯一無二なのか。
それは、テーマ、描写、演出、上映時間、とにかくすべてがパワフルで圧倒的
観ている側に考える隙を与えずに、圧倒的な”何か”を必ず見せてくれるんです。
その圧倒的なパワーに一度でも魅了されてしまったら最後、もう抜け出せない。

よく監督は、自身の作品を「激辛カレー」と形容されるんですけど、正にそうで、一口食べると癖になるんです。



堤真一が本当に生き生きしていた



ただただ、その圧倒激辛加減に、好き嫌いがはっきり別れる監督でもあるんです。
嫌いな人は本当に嫌いみたいで、特にシネフィルと呼ばれるような方々からは毛嫌いされてるようで。

正直自分も、大好きな作品もあれば、作品内でここはどうかと思うところもあったり。
『ヒミズ』は大好きな作品で、ラストで二階堂ふみが叫ぶ「頑張れぇ!!住田ぁ!!」は今思い出しても涙ぐめる程なんですけど、余りにも親の描写が作品のバランスを壊す程で、ここはさすがにどうかなぁ、なんて思ったり。

だがしかし!!
今まで園子温を毛嫌いして、馬鹿にすらしていたお固い映画ファン達を一発で黙らせた作品が登場します。

それが『愛のむきだし』と『冷たい熱帯魚』でございますよ。

『愛のむきだし』に関しては、2009年度ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞とカリガリ賞をダブル受賞という快挙で、世界的にも評価されている作品、なんですが、その年は「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞した年でもありまして、完全に世間の関心はそっちに行ってしまったんですよね。

確かに「おくりびと」はいい映画ですよ。
でもあれから4年経ちまして、映画の話で「おくりびと」の話題を誰か出していますか?
日本映画の名作として、「おくりびと」は出てきているでしょうか?

否!!

方や『愛のむきだし』は、日本映画の新たな大傑作となり、映画秘宝のゼロ年代ランキングで日本映画最高位の6位に選ばれ、未だにリバイバル上映をされる度にチケットはソールドアウト(今年も新宿ピカデリーでリバイバルがありましたが満席で行けず)。
そして園監督への評価は『冷たい熱帯魚』の登場で決定的なものに。

もう一度言います。
「おくりびとは」確かにいい映画です。
でも、でも、ちょっと褒められ過ぎです。
アカデミー賞受賞も、競合が無かった故の棚ぼただと語りぐさです。

断言します。
『愛のむきだし』の方が語られるべき映画!!!!

「おくりびと」はいい映画です。
でもなぁ、でもなぁ。



極妻友近素晴らしいです



長くなってしまった!!
では、今作『地獄でなぜ悪い』はどうなのか。

震災後の世界を舞台として描いた『ヒミズ』と、原発問題と真っ向勝負した『希望の国』。
園監督の表現者としての実直さが出た去年の2つの作品。
その反動から出来たのが『地獄でなぜ悪い』です。
つまり、難しいこと抜きで、とにかく笑えて、楽しくて、バカで、そして映画愛が溢れまくってる映画になってます。



お別れのキスよ



登場人物もれなく全員バカです。
映画の為なら死んでもいいと思ってるんです。

でも、そんな馬鹿達が出てくる狂った映画でも、半分実話ってところが驚きで、長谷川博己演じる平田純と、星野源演じるヤクザの娘と関係を持ってしまう橋本公次役は監督の分身なんです。

長谷川さん演じる平田は、自主映画時代にくすぶっていた園監督その人。
当時の園監督は、永遠に刻まれる映画を撮れたら死んでもいいと思ってたんですよ。

”生涯の一本”を撮ることが出来たら命をも投げ出す。

風立ちぬ』とも似たテーマですよ。
着地は全く違いますがね。向こうは「生きねば」ですから。



園監督の生き写し



では、映画ファンでないと、園子温ファンでないと楽しめない映画なのか。

それは違います。

何かに情熱を持つと言うことは、誰もが共感しうる普遍的なテーマじゃないですか。
だから『風立ちぬ』は良いんです。『桐島、部活やめるってよ』も良いんです。

でも、その情熱も行く所まで行くとバカを生み出すんです。
この映画は、そのバカさ加減を徹底的にコメディへと昇華させて、誰が観ても面白い圧倒的なエンターテイメントにしてるんです。
徹底的に、大真面目であればあるほど、本当に笑えるんです。

そして、バカになった者だけが言えるんです。

「地獄でなぜ悪い」

映画を撮りたくて仕方が無い平田と、二階堂ふみ演じるヤクザの組長の娘ミツコに恋してしまった、園子温監督のもう一人の分身、橋本公次。そして、妻の為に映画を撮ることになったヤクザ達。この3つのパートが、クライマックスに向けて重なっていくんです。

全ての舞台が整ってからのタメ。
ぴんと張りつめた空気に劇場内も静まり返ります。
そして、タメにタメてからの平田の「よーい、アクション!!!!」のかけ声、流れ出す「第九」にもう鳥肌でした。

地獄でなぜ悪い!!!!!



「アクショーーーーーン!!!!」



演者の数も園子温オールスター登場なので過去最高に多いです。
そのせいか、無駄に思えるシーンもちらほら。
成海璃子のシーンははっきりいらないです。石丸謙二郎のシーンも、後ろの高橋ヨシキさんを映す為か無駄に長い。
最後の”ネタばらし”も、個人的にはバラさないでほしかった。

でも、そんなのどうでもいい!!!!
「全力歯ぎしりレッツゴー」の前では誰もがひれ伏すしかないのです。



國村隼さんが真面目であればあるほど笑えるんです



ちょうど昨日、AKB48の大島優子さんがこの映画を観て、血の海のシーンで吐きそうになったとのことをニュース記事で読みました。確か『悪の教典』でも気持ち悪くなったんですよね、大島さん。
生理的に受け付けないのだからしょうがない。

でももし興味があるのならば観て絶対に損は無いです。
そしてこのテイストを気に入ったのならば、ぜひ他の作品も。

因に、星野源による主題歌「地獄でなぜ悪い」で観賞後の清涼感はバッチリ。

2013年10月27日日曜日

謝罪の王様


2013/日本 上映時間128分
監督:水田伸生
脚本:宮藤官九郎
製作:門屋大輔
市川南 他
製作総指揮:城朋子

脚本:阿部サダヲ
井上真央
岡田将生
尾野真千子
竹野内豊


15点

”映画に謝ってくれ”
水田監督、クドカン脚本、阿部サダヲ主演で3作目。
なんか次回作への計画が始まっているらしいですけど、これを観る限りでは全く期待は出来ません。
エンドロールでのあの愚行を観るともう怒りが湧いてきます。






クドカンさんは大好きな方です。
ただ、映画での脚本だと当たり外れが激しい気が。
この映画に関してだと全く面白くない。ファニーって意味でも。

例えば冒頭の岡田将生さんのエピソード。
岡田さん演じるキャラクターは性格として謝ることが出来ないってことでこのエピソードは進んでいくんですよ。
だから阿部サダヲさんの謝罪センターに相談に行くんです。
なのに、さして阿部サダヲが活躍するでも無く、あっさり最後に岡田さん謝っちゃうんですよ。
なんで?岡田さんは謝る事が出来ないって件で話が進んでたんじゃないの?
しかも、岡田さんを嫌ってたはずの尾野真千子さんまで、謝られた途端に「お茶行きませんか?」なんてデートに誘う始末。

ん?
もしかたらこのふたりが芽生えるかもって描写あったっけ?
みたいな難解な思考が始まるんですよ。

このように、今のダメな日本映画にありがちな安っぽい感動に走る演出、本当にダメ。

阿部サダヲが謝罪センターを開くきっかけになったエピソードも全く納得が出来ません。
ラーメン屋で湯切りの時にお湯が飛んで来たと。
その場では文句を言わず、数時間悩んでやっと文句を言いに行ったと。
そしたら謝りに来たのは店長ではなくて親会社の社長で、店長はそれがきっかけで退職をしたと、ってなんだこれ。

その場で言えよ!!
そのくらいで辞めんなよ!!






ラストも全く訳の分からない展開で終わった。
と思ったら、噂のエンドロールが始まって場内がざわつきました。

このエンドロールに既に関しては多くの方が指摘されているので多くは語りませんが、要するに映画と全く関係の無いアイドルグループE-girls、EXILE、m-floが登場して、PVめいたものが突然始まるんです。

ザッツ大人の都合

どんなにいい映画でもこれをやられたら怒ります。
だって映画と全く関係がないんですもん。

史上最低のエンドロールを観ました。

楽しくない、面白くない。

2013年10月19日土曜日

そして父になる

2013/日本 上映時間120分
監督・脚本・編集:是枝裕和
製作:亀山千広
畠中達郎 他
撮影:瀧本幹也

キャスト:福山雅治 (野々宮良多)
尾野真千子 (野々宮みどり)
二宮慶太 (野々宮慶太)
真木よう子 (斎木ゆかり)
リリー・フランキー (斎木雄大)
黄升炫 (斎木流晴)
樹木希林 (石関里子)
夏八木勲 (野々宮良輔)


97点

”そして物語は続くのです"
もの凄くお客さん入ってるみたいですね。
自分の観た回もほぼ満席でした。
そして恥ずかしながら、どうかと思うぐらいに号泣してしまいました。
後半は垂れ流しでしたね。うん、良かった。
しみじみと。

自分のちょうど真後ろの席に、劇中に出てくる親子ぐらいの、お母さんと男の子の2人組がいたんですけど、エンドロールが終わって、お母さんはぐすぐす涙ぐんでいる様子。
それに恥ずかしくなったのか、男の子は「トイレいってくるー」と1人で先に劇場を出て行くと言うなんとも微笑ましい光景を目にしました。
男の子よ、気まずいよな、その気持ち分かるぞ。


素晴らしい映画がちゃんとヒットしている事を嬉しく思うと同時に、これを期に是枝監督の素晴らしい作品達にも目を通してもらえるチャンスだとも感じています。
『誰も知らない』の時は、賞のことばかり報道されていて肝心の内容があまり報道されていなかった印象なのでね。






まず何より、映画としてのクオリティが非常に高い。
しっかり画の力でお話を語って、無駄な説明台詞を省く。

例えば冒頭の、いかにも対策してきました的なお受験での面接シーン。
この場面で教科書通りの形式張ったことを話させることで、福山雅治演じる良多の性格、そして、家族内の距離感を、説明台詞に頼らずに一発で説明出来てるんですよ。

終盤の、家の中でキャンプをするシーンも素晴らしかったです。
みんな楽しそう。だけど、着替えているアウトドアウェアにまだタグが付いてるんですよ。
つまり買ってから一回も、慶太君がいた時には使用していない。
これまでの野宮家の様子がそこに垣間見えると同時に、そんな良多が変わり始めた瞬間にもう涙でした。

全編がこの丹念な演出で構成されてるので、この言い方が正しいのか分かりませんが、映画を観ている感覚が全くしなかったです。
テレビドキュメンタリー出身の是枝監督ならではのものです。素晴らしいとしか言えない。

この是枝監督の演出について、自身の著書の中でこんなことをおっしゃられていました。
少し長く引用させてもらうと。


劇場を出た人が映画の、物語の内部ではなく、
彼らの明日を想像したくなるような描写。
その為に演出も脚本も編集も存在しているといっても過言ではない。


こんなことも。


例えば脚本。
妻が夫に「ねえ○○(名前)、ハサミ取って」と言うのは文字だけ読んでいると普通だが、
実際の部屋の中で演じると随分説明的だ。

まずふたりしかいないのならお互いに名前を呼ばなくていい。
ハサミという単語は、目に見えているのであれば「それ」に変える。
指2本でチョキを作って動かせばそれだけで済む。
最終的に台詞として残るのは「ねえ」だけで良くなる。

そうすることでこの1行の台詞はリアルな生活の言葉として空間の中で活き始め、
空間をも結果的に活かすことになる。

是枝裕和著「歩くような早さで」より


是枝監督作に通底しているある種のリアルな生活感演出がばっちり説明されているので丸々引用させてもらいました。
演出の理想は、ドキュメンタリーの製作で出会った人々なのだそうです。

是枝監督作を観ている時に強く感じる、フィクションとは思えないような実在感は、ドキュメンタリーでの経験に裏打ちされたものだったんですね。






もう一つの是枝流演出が子役への演技指導です。
是枝監督は台本を渡さずに、その場で子役達に口伝えで台詞と状況を教えることで有名ですが、それによって子供達が本当に実在感たっぷりに生き生きとしてるんですよ。
何をやりだすか分からないハラハラ感もあるし、人見知りで緊張してるんだなってこともはっきり伝わってきます。
これも言わばドキュメンタリー的手法ですよね。






その子役達の親を演じる俳優達も素晴らしい。

特に福山雅治。
真夏の方程式」でも素晴らしい演技でしたが、素晴らしい俳優さんであるとまざまざと感じました。

福山さん自身にはどこかクールなイメージがついている訳ですよ。
彼が演じる役柄としては、”良き父親像”はなかなか想像出来ないです。
そのクールな印象が、良多役では、逆に子供への接し方になれていない父親として感じられて見事にハマってましたね。

元々、良多役は福山さんの当て書きだったらしく、ハマりっぷりも納得です。

福山さん演じる野々宮家の対比として出てくる家族が、リリー・フランキーさん演じる斎木雄大一家です。

リリーさん演じる雄大が画面に出てくるだけで心底ホッとするんですよ。
この映画における笑いどころを担ってる訳ですけど、リリーさんはドンピシャでしたね。
家族でお風呂に入ってるシーンは思わず顔がほころんでしまいました。

クールな福山さんの対になるキャラクターとして、どこかひょうひょうとしているリリーさんは人間的な魅力に溢れているように感じられて、本当にベストなキャスティング。
リリーさんは『凶悪』と合わせて、役の不利幅が素晴らし過ぎます。

ふたりの妻を演じた、尾野真千子さん、真木よう子さんも素晴らしい。
尾野真千子さん演じるみどりは、良多よりも長い時間を慶太君と過ごしていたこそ、より深く悩むし、葛藤する。
真木よう子さん演じるゆかりは、三人の子供を育てて来たから、他の子供達への心配もする。
それが何気ない台詞と演技で示されていて素晴らしい。

彼らの演技を観ているだけで、それだけで映画的に幸福な時間でした。







「取り違え」と言う、もの凄くセンセーショナルなテーマではありますが、この映画はもの凄く普遍的で、誰もが共感しうるお話になっています。

センセーショナルなのに普遍的。

ではどこが普遍的なのか。
それはこの映画が、「取り違え」を巡る結果を描いているのではなくて、そのことをきっかけにして、福山雅治が父性を獲得するまでを描いているからです。
つまり、お話の中心は福山雅治演じる野々宮良多なのです。

血か時間か、子供を交換するかどうかに焦点を持って行くと、その結果自体が物語のゴールになってしまって、ただのテーマの矮小化です。






冒頭、建築建設会社で働いている良多は、会議の場で模型に「もっと家族の人形足して。アットホームな感じの。犬なんか連れて」と注文を入れます。
つまり、イメージとしての”いい家族”は良多の頭の中にもあるんです。

でも、「取り違え」をきっかけにして思い知る訳です。
完璧だと思っていた自分の人生において、全く父親にはなれていなかったと。
ここで福山さんのどこか冷めた、子供慣れしていない演技が効いてくるんです。

それが決定的に変わるのが、クライマックスのカメラ演出。

中盤、慶太君と過ごす最後の日。
ふたりで公園で、どこかぎこちなく遊んで、カメラでお互いを撮ったりする訳です。

そして、慶太君と流晴君を「交換」して、戸惑いながら流晴君と向き合おうとする良多。

ある朝ふと、一眼レフのカメラを手にして、フォルダをさかのぼっていくと、昨日流晴君を撮った写真が。

ああ、なるほど。
最後の日に撮った写真を目にするのね。
いい思い出させ表現だ。なんてもう既に目に涙溜めながらしみじみ考えてた訳ですよ。

そしたら、やっぱり慶太君と最後に遊んだ日に、慶太君が撮ってくれた写真が。
もう泣いてますよ、号泣ですよ。

でもさらに次があったんです。

さらにフォルダをさかのぼると、良多の知らない所で、慶太君が寝ている良多を撮った写真が。
それは映画には出て来ない、慶太君だけが知っている時間。

もう涙が止まりませんでした。

つまり、慶太君はちゃんと良多を見ていたのです。
慶太君にとっては、父親だったんですよ。

そのことに気付いて、会いに行くんです。


「6年間はパパだったんだよ。出来損だったけど、パパだったんだよ」


情緒に流れやすそうなこのシーンも、前述の通り丹念に演出を重ねていて、過剰な演出と音楽を排しているから、より真に迫るものがあって、もう嗚咽でした。

別れて歩いていた道が、文字通り一つに繋がる映画的な演出も本当に素晴らしかったです。


分かりやす答えは映画の中では示されません。
この先どうやって良多は子供達と向き合って行くのか、それはこの先に続いて行くのです。

良多が父親としてのスタートラインに立ったところで映画は終わります。
そして、これから父になるのです。






良多が家族と向き合うきっかけになるエピソードも凄くよかったし、夫役にピエール瀧さんをキャスティングしたことによって、一瞬の出演であってもそこに無視し難いインパクトが生まれて、本当に大正解だと思いました。



評価と興行収入が一致している本当に希有な日本映画だと思います。
こう言う映画がヒットしていると、まだ日本映画捨てたもんじゃないなと、凄く嬉しく思います。

そして、是非これをきっかけに過去の是枝作品にも目を通してください。
どれもこれも素晴らしいので。
まずは前作の『奇跡』がおすすめです。

そして、まだ観ていないと言う人、今すぐ劇場へ行きましょう。



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