2013年11月1日金曜日

地獄でなぜ悪い

2013/日本 上映時間130分 PG-12
監督・脚本:園子温
音楽:園子温
井内啓二
撮影:山本英夫
編集:伊藤潤一

キャスト:國村準 (武藤大三)
堤真一 (池上純)
二階堂ふみ (武藤ミツコ)
友近 (武藤しずえ)
長谷川博己 (平田純)
星野源 (橋本公次)


90点

”たった一度の人生、地獄でなぜ悪い”
園子温監督最新作。
公開日初日にバルト9へ観に行って来ました。
『風立ちぬ』も初日に観に行きましたけど、明らかにそれとは毛色の違う好き者達が集まる感じ、これこそが園子温!!

場内満員御礼!!
比喩ではなくて、思わず呼吸を忘れてしまう程の圧倒的なテンション、爆笑の連続!!
うおーーーー!!
何だこれ!?

全力歯ぎしりレッツゴー!!



レッツゴー!!



個人的なお話、私、園子温監督の大ファンでして。
最近の著書『けもの道を笑って歩け』も拝読致しました。面白かったです。

園子温とは何者か。
どんな映画監督なのか。

自分の中での認識で説明をするならば、他の映画では味わえない唯一無二の作品を観せてくれる、替えの効かない映画監督。それが園子温と言う人。

何が唯一無二なのか。
それは、テーマ、描写、演出、上映時間、とにかくすべてがパワフルで圧倒的
観ている側に考える隙を与えずに、圧倒的な”何か”を必ず見せてくれるんです。
その圧倒的なパワーに一度でも魅了されてしまったら最後、もう抜け出せない。

よく監督は、自身の作品を「激辛カレー」と形容されるんですけど、正にそうで、一口食べると癖になるんです。



堤真一が本当に生き生きしていた



ただただ、その圧倒激辛加減に、好き嫌いがはっきり別れる監督でもあるんです。
嫌いな人は本当に嫌いみたいで、特にシネフィルと呼ばれるような方々からは毛嫌いされてるようで。

正直自分も、大好きな作品もあれば、作品内でここはどうかと思うところもあったり。
『ヒミズ』は大好きな作品で、ラストで二階堂ふみが叫ぶ「頑張れぇ!!住田ぁ!!」は今思い出しても涙ぐめる程なんですけど、余りにも親の描写が作品のバランスを壊す程で、ここはさすがにどうかなぁ、なんて思ったり。

だがしかし!!
今まで園子温を毛嫌いして、馬鹿にすらしていたお固い映画ファン達を一発で黙らせた作品が登場します。

それが『愛のむきだし』と『冷たい熱帯魚』でございますよ。

『愛のむきだし』に関しては、2009年度ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞とカリガリ賞をダブル受賞という快挙で、世界的にも評価されている作品、なんですが、その年は「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞した年でもありまして、完全に世間の関心はそっちに行ってしまったんですよね。

確かに「おくりびと」はいい映画ですよ。
でもあれから4年経ちまして、映画の話で「おくりびと」の話題を誰か出していますか?
日本映画の名作として、「おくりびと」は出てきているでしょうか?

否!!

方や『愛のむきだし』は、日本映画の新たな大傑作となり、映画秘宝のゼロ年代ランキングで日本映画最高位の6位に選ばれ、未だにリバイバル上映をされる度にチケットはソールドアウト(今年も新宿ピカデリーでリバイバルがありましたが満席で行けず)。
そして園監督への評価は『冷たい熱帯魚』の登場で決定的なものに。

もう一度言います。
「おくりびとは」確かにいい映画です。
でも、でも、ちょっと褒められ過ぎです。
アカデミー賞受賞も、競合が無かった故の棚ぼただと語りぐさです。

断言します。
『愛のむきだし』の方が語られるべき映画!!!!

「おくりびと」はいい映画です。
でもなぁ、でもなぁ。



極妻友近素晴らしいです



長くなってしまった!!
では、今作『地獄でなぜ悪い』はどうなのか。

震災後の世界を舞台として描いた『ヒミズ』と、原発問題と真っ向勝負した『希望の国』。
園監督の表現者としての実直さが出た去年の2つの作品。
その反動から出来たのが『地獄でなぜ悪い』です。
つまり、難しいこと抜きで、とにかく笑えて、楽しくて、バカで、そして映画愛が溢れまくってる映画になってます。



お別れのキスよ



登場人物もれなく全員バカです。
映画の為なら死んでもいいと思ってるんです。

でも、そんな馬鹿達が出てくる狂った映画でも、半分実話ってところが驚きで、長谷川博己演じる平田純と、星野源演じるヤクザの娘と関係を持ってしまう橋本公次役は監督の分身なんです。

長谷川さん演じる平田は、自主映画時代にくすぶっていた園監督その人。
当時の園監督は、永遠に刻まれる映画を撮れたら死んでもいいと思ってたんですよ。

”生涯の一本”を撮ることが出来たら命をも投げ出す。

風立ちぬ』とも似たテーマですよ。
着地は全く違いますがね。向こうは「生きねば」ですから。



園監督の生き写し



では、映画ファンでないと、園子温ファンでないと楽しめない映画なのか。

それは違います。

何かに情熱を持つと言うことは、誰もが共感しうる普遍的なテーマじゃないですか。
だから『風立ちぬ』は良いんです。『桐島、部活やめるってよ』も良いんです。

でも、その情熱も行く所まで行くとバカを生み出すんです。
この映画は、そのバカさ加減を徹底的にコメディへと昇華させて、誰が観ても面白い圧倒的なエンターテイメントにしてるんです。
徹底的に、大真面目であればあるほど、本当に笑えるんです。

そして、バカになった者だけが言えるんです。

「地獄でなぜ悪い」

映画を撮りたくて仕方が無い平田と、二階堂ふみ演じるヤクザの組長の娘ミツコに恋してしまった、園子温監督のもう一人の分身、橋本公次。そして、妻の為に映画を撮ることになったヤクザ達。この3つのパートが、クライマックスに向けて重なっていくんです。

全ての舞台が整ってからのタメ。
ぴんと張りつめた空気に劇場内も静まり返ります。
そして、タメにタメてからの平田の「よーい、アクション!!!!」のかけ声、流れ出す「第九」にもう鳥肌でした。

地獄でなぜ悪い!!!!!



「アクショーーーーーン!!!!」



演者の数も園子温オールスター登場なので過去最高に多いです。
そのせいか、無駄に思えるシーンもちらほら。
成海璃子のシーンははっきりいらないです。石丸謙二郎のシーンも、後ろの高橋ヨシキさんを映す為か無駄に長い。
最後の”ネタばらし”も、個人的にはバラさないでほしかった。

でも、そんなのどうでもいい!!!!
「全力歯ぎしりレッツゴー」の前では誰もがひれ伏すしかないのです。



國村隼さんが真面目であればあるほど笑えるんです



ちょうど昨日、AKB48の大島優子さんがこの映画を観て、血の海のシーンで吐きそうになったとのことをニュース記事で読みました。確か『悪の教典』でも気持ち悪くなったんですよね、大島さん。
生理的に受け付けないのだからしょうがない。

でももし興味があるのならば観て絶対に損は無いです。
そしてこのテイストを気に入ったのならば、ぜひ他の作品も。

因に、星野源による主題歌「地獄でなぜ悪い」で観賞後の清涼感はバッチリ。

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