『Warrior』
2011/米 上映時間140分
監督:ギャヴィン・オコナー
脚本:ギャヴィン・オコナー
アンソニー・タンバキス
クリフ・ドーフマン
製作:ギャヴィン・オコナー
グレゴリー・オコナー
製作総指揮:マイケル・パセオネック
リサ・エルジー 他
音楽:マーク・アイシャム
撮影:マサノブ・タカヤナギ
キャスト:ジョエル・エドガートン
トム・ハーディ 他
99点
”血湧き肉踊るとは正にこのこと”
こんな大傑作をよくも4年も放ったらかしにしていたな、日本の配給よ。
そして、劇場公開してくれたシネマカリテ、心の底からありがとう…!!!!
私は、何でそんなに沢山映画を観るの?と聞かれたら、沢山観てるとたまにすげぇ一本に出会えるんだよと答えます。
これがそれだ!
『ウォーリアー』大大大傑作。
”血湧き肉踊る”とは正にこのこと。
ガッツリネタバレしてますので注意。
物語は、ニック・ノルディ演じるある父親の元に、長年疎遠だった息子が帰ってくるところから始まります。
この親父がまぁダメ親父で。
二人息子の弟に肩入れし、アマチュアレスリングを教え込み選手として育てあげるも、挫折をしたところで酒に溺れ、他所に女を作り、家族に暴力を振るい、それに耐えきれず弟は母と共に家出。一方の兄は父から一切見向きもされないことにコンプレックスを感じつつ、しばらくは父と共に生活をするも、やはりそんな父の姿に耐えきれず家を後にし、家族は空中分解した状態。
そんな状況の父の元に帰って来たトム・ハーディ演じる弟トミー。
帰って来たのはいいものの自分のことは一切語らず、ふらっと立ち寄った総合格闘技UFCのジムでミドル級チャンピオンを倒したところから物語は動き出します。
打って変わって一方の兄ブレンダンは、今は高校の物理の教師として働きながら、妻と二人の娘と共に幸せに暮らす毎日…、と言いたいところなのですが、娘の一人が心臓を患い、その治療費で家計は切迫していて、銀行からは自己破産を勧められている状態。
多額の治療費が必要なブレンダンは、夜な夜な場末の総合格闘技の試合に出場し、家族には内緒でファイトマネーを稼ぐ日々。しかし、妻にバレて、学校にもバレて、稼ぎ口がゼロに。
そこでブレンダンは、総合格闘技の大会”スパルタ”への出場を決め、謎を背負いながら同じく大金が必要だと言う、父親をトレーナー付けた弟トミーと賞金を賭けトーナメントを戦うことになります…。
この雑にも程があるあらすじを自分なりにまとめると、いいですか、”過去に取り憑かれた弟”と、”家族を守りたい兄”と、”失った時間を取り戻したい父”。
このそれぞれで立派な一本の映画になりそうなドラマを、一本の大きな幹にまとめ、全てを絡めながら最後にはその全てがひとつに収れんする。
まずこの贅沢な、そして熱いドラマに胸を熱くする。
兄弟の生き様を肉体で体現する二人の俳優、トム・ハーディとジョエル・エドガートン。
その二人を遠くから眺めることしか出来ない父、ニック・ノリス。
俳優達の演技が究極にして最高レベル。
特にトム・ハーディは今作が間違いなくベストアクト。
序盤から後半に掛けて、特にトーナメントが始まってからの、何かに取り憑かれたような目を宿した狂気を孕んだ佇まいと、その奥にかすかに残る目の優しさ、そのバランスはもう、とてつもないです。とんでもないです。
その狂犬と化したトミーを、まるで猛獣使いのように”なだめる”兄ブレンダン。
この兄弟のバランスはもうとてつもなく最高。
父ニック・ノルディは言わずもがな。
その年のアカデミー賞助演男優賞ノミネートも納得です。
クライマックス。
相見える兄弟。
過去に取り憑かれた弟、家族を守りたい兄、失った時間を取り戻したい父。
その全てのドラマが、ラスト、あの”タップ”で収斂する。
全てはこの瞬間に向けての熱さだったと思うと、もう…、滝のように涙。
もう自分がいる必要がないことを悟り、小さく一人頷き、止まっていた時間が再び動き出す父。自分の過去の呪縛から解放された弟、その全てを力強く”抱きしめ”許す兄。
もう!もう!!もう!!!もう!!!!
もうそもそも個別のドラマがそれぞれで最高にエモい。
兄ブレンダンは高校教師ながら格闘家として戦い、その様子を教え子と理解ある校長がドライブインシアターで応援するという光景が熱いし、そのトーナメントの行く手を阻むのがロシアから来た”戦闘マシーン”と『ロッキー4』的な熱さも。
とにかく、映画ファンと自認している人でこの『ウォーリアー』を観ていないもしくは知らないのならばそれはもうグーパンチは覚悟だと思います。
とにかく、とにかく観てください。
これはそういう映画です。
観ないと何も伝わらない。
観ないことには始まらない。
4年の時を経てやっと日本にやって来たんですから。
ああ、日本人の二人に一人が『ウォーリアー』を観ている未来が来ますように。
<あらすじ>
アル中の父親から逃れるため母親と一緒に家を出たトミーが、14年ぶりに父親のもとを訪ねてきた。学生時代にレスリング選手として活躍していた彼は、高額の賞金がかけられた総合格闘技イベント「スパルタ」に出場するため、元ボクサーである父親にコーチ役を依頼する。一方、かつて格闘家の選手だったトミーの兄ブレンダンは、現在は教師として働きながら妻子を養っていたが、娘の病気に高額な医療費がかかり自己破産の危機に陥ってしまう。ブレンダンは愛する家族を守るため、総合格闘技の試合で金を稼ぐ事を決意する。
映画.comより
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