2014年11月13日木曜日

誰よりも狙われた男


The Most Wanted Man
2013/米・英・独 上映時間122分
監督:アントン・コービン
脚本:アンドリュー・ボーヴェル
製作:スティーブン・コーンウェル
ゲイル・イーガン 他
製作総指揮:ジョン・ル・カレ
テッサ・ロス
音楽:ヘルバート・グリューネマイヤー
原作:ジョン・ル・カレ「誰よりも狙われた男」

キャスト:フィリップ・シーモア・ホフマン
レイチェル・マクアダムス
ウィレム・デフォー
ロビン・ライト 他

88点





”かすめ取られた正義”





シャンテだと14日に公開終了すると聞き慌てて駆け込み鑑賞。

お話は直線的で分かりやすい。
ショットの緩急も鮮やかでツボを付いてくる。
万人におすすめ出来るスパイ映画。

そしてフィリップ・シーモア・ホフマン、なんでもういないんだよ…。


ネタバレ注意です。




2014年11月8日土曜日

エクスペンダブルズ3 ワールド・ミッション


The Expendables 3
2014/米 上映時間126分
監督:パトリック・フューズ
脚本:シルヴェスター・スタローン
クレイトン・ローゼンバーガー
製作:アヴィ・ラーナー
ダーニー・ラーナー 他
製作総指揮:トレヴァー・ショート
ボアズ・デヴィッドソン 他
音楽:ブライアン・タイラー
撮影:ピーター・メンジュース

キャスト:シルヴェスター・スタローン
ジェイソン・ステイサム
アントニオ・バンデラス 他

86点






”原点回帰の世代交代、そして共闘”




今作に関しては、もう”有識者”と呼べるような激アツな方々がいらっしゃいますし、S級に出来の良いパンフレットもあるので、私の出る幕ではございません。

特に激アツ大火傷必至なお二方がいらっしゃるので、僭越ながらリンクを張っておきます。刮目せよ!!


明日から真似したくなる漢の映画/エクスペンダブルズ3 ワールド・ミッション〜男なら、さよならだけが人生ではないと言え!〜

放課後エクスペンダブルズByデッドプー太郎/今度は俺達がスタローンに伊藤ハムを送るべきだ!!「エクスペンダブルズ3」前編



そして劇場で販売しているパンフレット。
これが相変わらず素晴らしい出来でして読み物としても最高。
これさえ読んでおけば今作に関しては完全に怖いものなし。
映画界最強のパンフレットです。


とは言いつつ、自分も言いたい事があるぞ!!
そして、私なりのこの映画の見方もあるぞ!!






結論から先に言うならば、今作『エクスペンダブル3 ワールド・ミッション』シリーズ最高傑作。
間違いなくこれだけは言えるのは、シリーズ中最もバランスの取れた映画としてのグレードがグっと高くなった一本…!!

一番変わったなと感じたのは、随所のキメ画の格好良さ。
序盤のステイサムが運転するトラックでのカーチェイスシーン。
後ろからの追っ手を、車を横に向けてスライドさせ反撃。
この時、荷台の面々がそれぞれ配置に付いた状態でスライドするんですけど、これがめちゃくちゃ格好良い…!!

ぐーっとスライドするトラック。
スクリーンの端から端を使った綺麗な配置。
こちらに向けられる銃身。
し、痺れる!!

エクスペンダブルズの面々が最終決戦へ向かう途中。
丘の上に佇んでみせるカットにしたって一々格好良い。

そりゃそうだ。
あの面々がズラッと並べば画になるよ。
ただ、今回はそれを映画的にしっかり見せる、魅せる…!!

アクションシーン以外でもしっかり酔いしれる作りになってる。
随所に手堅く格好良いんです。

あの最終決戦に向かう前の、滑走路に立つ男達の背中は何なんですか!?
痺れさせ殺す気か!?

今作に大抜擢されたパトリック・ヒューズ監督、良い仕事しております。






一作目が、スタローンから若い世代への世代交代。
二作目が、80年代アクションスターの大同窓会。

だとしたら、今作のテーマはズバリ一作目の次の世代へのバトンタッチの原点回帰。
そしてその先へ行く若い世代との共闘。
その意味で、シリーズで一番バランスの取れた一本だと感じたのです。

で、スタローンパイセン、何が素晴らしいって、今作でほぼ新人監督を抜擢する作り手側の世代交代にまで手を伸ばす。そして抜擢されたパトリック・ヒューズ監督が前述の通り手堅く良い仕事してるのがまた素晴らしい。
スタローンパイセン、見る目ありますね!!

前作にあったような映画としての明るさが抜けた分、初登場の”デスペラード”アントニオ・バンデラスにコメディリリーフをやらせて空気を和ませる。

このバンデラスがまぁ良く喋るんですが、一見意味の無い無駄話が後々しっかり意味を持って効いてくる。しっかり仲間に加わるきっかけになってる。
底抜けの明るさの裏の、物凄い闇も同時に背負っているのだと知って、もうバンデラスがいじらしくて、もう!!

その彼の素性が分かった時、劇伴にさりげなくスパニッシュギターの旋律が…

泣かせるね!!
良い仕事してるねパトリック・ヒューズ!!






今作から登場したケラン・ラッツ筆頭の若い衆達。
彼等の登場で純度の高いエクスペンダブルズが薄まってしまった?

分かります。
ただ個人的な意見を言うならば、彼等はこの作品に必要不可欠!!
なぜなら、彼等の歳がズバリ自分と同じ。
つまり、エクスペンダブルズにもし自分が加入したらと妄想出来る共感度MAXのキャラ達なのだ!!

今まで端から眺めているだけだったお祭りを、今回はその輪の中でわっしょいわっしょい。

ラストの酒場での打ち上げですよ。
憧れのエクスペンダブルズに加入出来たと、その証のタトゥを見せ合う若い衆。
それを嬉しそうに眺めるスタローンパイセン。

若い衆が歌う無礼講なカラオケを、優しい眼差しで見つめるスタローンパイセンとステイサムパイセン。

その眼差しが自分へのそれのようにも感じられて思わず熱い涙が。

ああそうだ。自分だって所詮はこの世に生まれたからなにゃ、消耗品。
この命、擦り切れるまで派手に使い切ってやるぜ!!






今作で3ヶ月ぶりに日本での興収で洋画が1位になったそうで。
私にはこう言う会話が聞こえてきます。

エクスペンダブルズ3「仇は取った」
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー「ありがとうな」

老若男女に国籍問わず、心に消耗品魂がある者。
全員劇場に駆けつけるべし!!


<あらすじ>
バーニー率いる消耗品軍団=エクスペンダブルズの前に、チーム結成時のメンバーでありながら、バーニーと袂を分かち、悪の武器商人になったコンラッド・ストーンバンクスが現れる。チームの弱点を知り尽くした過去最強の敵に対し、エクスペンダブルズは崩壊の危機に直面する。「ブレイブハート」のメル・ギブソンがコンラッド役に扮し、エクスペンダブルズにコンラッド捕獲のミッションを下すCIAの作戦担当者ドラマー役で「インディ・ジョーンズ」のハリソン・フォードも出演。
映画.comより



 


2014年11月6日木曜日

ジャージー・ボーイズ


Jersey Boys
2014/米 上映時間134分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョン・ローガン
製作:ティム・ヘディントン
グレアム・キング
製作総指揮:ボブ・ゴーディオ
ティム・ムーア
フランキー・バリ
撮影:トム・スターン
編集:ジョエル・コックス 他

キャスト:ジョン・ロイド・ヤング
エリック・バーガン
ヴィンセント・ピアッツァ 他

90点




”齢84にしてこの軽やかさ”



丸の内ピカデリーにて鑑賞。
平日夜の回だからか客入りはまばら。
客層は年配の方が多めの様子。

ただ、映画の終盤では皆首を振ったり、身体を揺らしたり、それぞれ思い思いにリズムに乗って映画を楽しんでいる雰囲気。
もちろん自分も。

物凄く幸福な空気に満ちていました。


84歳でこの軽やかな語り口は脱帽。
いや、その歳だからこそ出来るのか。

映画だからこそ出来る優しさと幸せに満ちたラストにやられました。






とにかく映画全体軽やかの一言。
無駄無くサラッと流れるような、語り口、話運び、本当に鮮やか。

そして全体に照れというものが本当に無い。
フォー・シーズンズの、フランキー・バリの成功と挫折、再生を丁寧に、優しさを持って描ききる。
そこにはシニカルさだったり、意地悪な視点は皆無。
彼等へのリスペクトと、元のミュージカルの魅力をしっかりと描く、真っ当なエンターテイメント。

この照れの無さが観ていて本当に爽快。

この作品の何が良いって、観てる間、そして観終わった後の幸福感が半端じゃないんですよ。
前述の、皆で首を振ったり身体を揺らしたりってことはここから来てるんです。


合間に挿入されるフォー・シーズンズの楽曲もしっかり物語に寄り添っていて、物語に奥行きを生んでます。
あのタイミングで流れる「Fallen Angel」は本当にズルいし、「Sherry」のヒットでグループが軌道に乗る件の高揚感と、そこから次々ヒット曲が生まれる瞬間の省略の気持ち良さですよ。


細かな演出も冴えていて、個人的に一番好きな箇所は、フランキー達がレコード会社のビルに入ったところで、カメラがそのまま上昇して、一階、二階、と窓の外側か室内の色んなミュージシャンを写していくシーン。
この鮮やかさ、気持ちよさ。
そして、カットが変わってエレベーターホールにさりげなくいるあのトランペッター。
もうお見事という他ないです。

思わず「うわぁ、気持ちいいぃ…」と一人観ながら呟いてました。
本当に気持ちいい。


元のミュージカルから引っ張って来た、劇中の人物が観客に語りかける、いわゆる”第四の壁”を超える演出もこの映画でもしっかり効果的。

メンバーそれぞれがこちらに語りかけてくるから、一面的な窮屈なお話に終わらない作りに。






そもそもの話をするならば、フォー・シーズンズの楽曲が今聴いても良いんですよ。
勿論サントラ買いました。
これは必携です。
(アメリカン・ハッスル、インサイド・ルーウィン・デイビス、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。今年は必携サントラが多いなぁ)

その最たるものが「君の瞳に恋してる (Can't Take My Eyes off You)」ですよ。
この楽曲にそんなドラマがあったなんて。

何より、物語が自分の知っているこの曲に結びついたことに感動を覚えて鳥肌。
この一連のエピソードは滝のような涙を流してしまいました。


そしてラスト。
映画だからこそ出来る優しさと幸福感に満ちた演出に笑いながらもまた涙。
これはミュージカルでも小説でも不可能。
映画だからこそ出来るマジック!

そこからの畳み掛けるようにフィナーレのダンス。

拍手!
クリストファー・ウォーケンが踊ってる!
拍手!!拍手!!







来年6月にミュージカル版「ジャージー・ボーイズ」が来日するそうで。
言ってみようかなー。








<あらすじ>
2006年トニー賞でミュージカル作品賞を含む4部門を受賞した、人気ブロードウェイミュージカルを映画化した。アメリカ東部ニュージャージー州の貧しい町に生まれた4人の若者たち。金もコネもない者が町から逃げ出すには、軍隊に入るかギャングになるしかなかったが、彼らには類まれな美声と曲作りの才能があった。4人は息の合った完璧なハーモニーを武器に、スターダムを駆けあがっていく。ミュージカル版にも主演し、トニー賞でミュージカル男優賞を受賞したジョン・ロイド・ヤングが、映画版でも主演を務めた。
映画.comより




2014年10月31日金曜日

イコライザー


The Equalizer
2014/米 上映時間132分
監督:アントワン・フークア
脚本:リチャード・ウェンク
製作:トッド・ブラック
ジェイソン・ブルメンタル 他
製作総指揮:エズラ・スワードロウ
デヴィット・ブルームフィールド 他
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

キャスト:デンゼル・ワシントン
マートン・ソーカス
クロエ・クレース・モレッツ
デヴィット・ハーバー 他

79点







”この世の不条理の数だけ続編希望”





”チャック・ノリスのピースサインは、「あと二秒で殺す」の意味”
ー チャック・ノリス・ファクトより


これを地で行く最強無双ヒーロー映画、ここに爆誕。

スカッと晴れるルサンチマン。
そのエモーションに身を任せて、頭を空っぽに。

するとどうでしょう、もうあなたは”イコライザー”を求めているはず。






大味なアクション映画かと思いきや、序盤から抑制の利いたトーンと演出でビックリ。

事の発端となるエピソード、クロエ・グレース・モレッツ演じる娼婦のエピソードは、ゆっくりゆっくり描写を積み重ね、盛り上がりを抑えてタメて、ここぞの場面で一気にアクションを解放。しかもそれが気持ちいいぐらいに圧倒的な攻撃力。
こいつ何者なんだ感もしっかり出てる。
何よりスカっとする…!!
”必殺”の前に金銭で譲歩を提案するのもいいじゃないですか。言わば最後通告ですよ。


”必殺”の語り口もスマートでテンポが良い。
相手を追ったと思ったらシーン変わって血の付いたハンマーを拭いていたり、ジャンプカットでいきなり爆発を背に歩くデンゼル・ワシントンを見せたりと、間接的な”必殺”描写を挟む、オーソドックスなんだけど確かな語り口。

この何が良いって、間を省略することでデンゼル・ワシントンの圧倒的な存在感と底知れぬ凶暴さがより強調されて、最強感がより濃くなる。
涼しい顔して現場を後にするデンゼル・ワシントンしかこっちは見てない訳ですから、そのプロフェッショナルさにお前何者なんだよ感がビンビン。






ただ、言いたいこともあるにはある。
一番気になったのは主人公の動機に当たる部分。

序盤は、友人のクロエ・モレッツが何やら危ない仕事をしていて、ついに暴力を振るわれたから、堪忍袋の緒が切れた風に相手をこてんぱんにやっつける。
ここにはしっかりとしたカタルシスがあるわけです。
勧善懲悪的にとてもスカッとする。

しかし、その後の戦いの理由は、その相手組織に目を付けられたことで抗争に巻き込まれた形になる訳です。
これがどうも燃えきらない。
結局、相手から追われていること以外に主人公が相手組織と戦うモチベーションがあるように見えないから、アクションでは盛り上がれても、物語自体が中々アクションのカタルシスに繋がらないのが勿体ない。

クライマックスで申し訳程度に人質が登場しますけど、これも早々に解放。


ただ、これはしょうがないとも言えるんです。

この映画全体、とにもかくにもデンゼル・ワシントンが最強過ぎる。
その様はまるでチャック・ノリスであり、セガールであり、リーアム・ニーソン。

映画全体のバランスを取るか、デンゼル・ワシントンの圧倒的な最強加減を取るか。

これはもう、後者しかないでしょうに。

デンゼル・ワシントンが最強である程に、映画としてのバランスは取れなくなる。
何故なら地球上に彼以上の人類がいないからです、この映画内では。

でもどうです。
人類最強の男デンゼル・ワシントン、見たくないですか?
この作品には紛れも無く最強のデンゼル・ワシントンがいますよ。

ラストのケレン味なんてどうですか!?
あれ屋内ですよ。
さながら雨でしょ。
撃つのも拳銃じゃないですからね、釘ですからね。


序盤で登場したクロエ・モレッツが早々に映画からいなくなるんですが、これは”最強の男”デンゼル・ワシントンに心置きなく暴れてもらう為の配慮だということに自分の中ではしています。






この手の映画で132分は少し長く感じなくも無い。
せっかく”必殺”のテンポは良いのに、全体としては鈍い印象。
メリッサ・レオが出てくるとは言え、元同僚の元を訪ねるシーンはいるのか。

ただ、最強の男デンゼル・ワシントンが見られるんだから儲け物。
個人的には大満足です。

明らかに続編を匂わせる終わり方をしたので、どうかこのままにシリーズ化をお願いしたい。
元はテレビシリーズなので難なく出来るはず。
世の不条理の数だけ続編は作れますよ。



<あらすじ>
元CIAエージェントのマッコールは、いまはホームセンターで働く、ごく普通の真面目な人間として生活していた。しかし、ある夜、なじみのカフェで娼婦の少女テリーと出会い、彼女を囲うロシアンマフィアの非情さに、内に眠っていた正義感が目を覚ましていく。かつてのマッコールは、身のまわりにあるあらゆる物を武器に変え、警察では解決できない不正をこの世から瞬時に消してしまう「イコライザー」と呼ばれる男だった。マッコールはテリーとの出会いから、再びイコライザーとしての仕事を遂行していく。
映画.comより





2014年10月28日火曜日

悪童日記


A nagy fuzet
2013/ドイツ・ハンガリー合作
監督:ヤーノシュ・サース
製作:サンドル・ソス
パル・サンドール
製作総指揮:アルベルト・キッツラー
ジェルジ・ズーフ
音楽:ヨハン・ヨハンソン

キャスト:アンドラーシュ・ジューマント
ラースロー・ジューマント
ピロシュカ・モルナール
ウルリッヒ・トムセン
ウルリッヒ・マテス 他

86点




”したたかな力強さ”




日比谷シャンテにて鑑賞。

双子の健気さに胸を熱くさせ、次第にあらわになる彼等のしたたかさに鳥肌立たせて少しの怖さを感じつつ、最後の選択にまた胸を熱く。

全編に漂う戦時下のじんわりとした緊張感。
映画全体がパワフルでありながら、語り口は軽妙さも兼ね備えてる。

大変素晴らしい作品でした。

原作未読です。

ネタバレ含みます。







過酷な状況を生き抜く為の”訓練”、そのエスカレートと、段々と知恵としたたかさを手に入れて行く二人に鳥肌。

祖母の家に預けられて間もない頃こそ母への思いを抱きながらの生活だったものの、生き抜く”訓練”を積み、手に入れた強さとしたたかさをしっかりと内在化して、遂には母親の引き取りの申し出も拒否。

彼等の中の信念が確実に根付いてる証の出来事。
親も何も信用せず、頼るのは自分たちの力のみ。


個人的に一番唸ったのはラストの二人の後ろ姿。
父の屍を踏み越えて行く双子の一人と、今まで通りの生活を続けるもう一人。
励まし合って、引き離されることを一番恐れた二人が、遂に別々の道を進む選択にまたもや鳥肌ですよ。
生きて行くのにもう双子の相手さえいらない。

何よりこのラストに希望すら感じられるのは、二人の選択で作品を締めて、それぞれの歩き出す後ろ姿で終わっているから。

個人的に、後ろ姿で終わる映画が大好きなんです。
そこからは希望しか感じられないから。
目の前の道を歩く後ろ姿には、能動的な意思を感じるんです。

例えば、これは完全にハッピー指向ですが『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
あのマット・デイモンが運転する車と延々と真っ直ぐ続いた道は希望に満ち溢れているじゃないですか。

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q』
あの、3人が赤い大地を歩き出す後ろ姿は希望に満ちてます。

中でも、後ろ姿エンディングで一番印象に残っているのは是枝監督作の『誰も知らない』
どんなに悲惨で救いようの無い話でも、さんさんと照る太陽の下を彼等が歩いて行く後ろ姿にはたくましさと希望しか感じられないんです。
お高いところからの安易な慰めなんか拒否してるように感じるんです。

今作のエンディングもこれと同様。
可哀想だとか、切ないだとか、そんな視線を拒否する背中ですよ、あれは。

自分たちはこうやって生きて来たし、これからもこうやって生きて行く。
そのたくましい決意を切り取ったラストです。






全体に緊張感が漂いつつも、所々語り口は軽妙でクスっともさせられる。
凍死した脱走兵から装備を奪うシーンのあの無理矢理加減には笑いました。

それでいてギョッとするようなシーンもあって、ホラー的でもある。

本当に豊かな映画。



<あらすじ>
第2次世界大戦末期。双子の兄弟が、祖母が暮らす農園へ疎開してくる。彼らは村人たちから魔女と呼ばれる意地悪な祖母に重労働を強いられながらも、あらゆる方法で肉体的・精神的鍛錬を積み重ねる。大人たちの残虐性を目の当たりにした2人は、独自の信念に従って過酷な毎日をたくましく生きぬいていくが……。
映画.comより





2014年10月23日木曜日

ぶどうのなみだ


ぶどうのなみだ
監督・脚本:三島有紀子
企画:鈴井亜由美
プロデュース:森谷雄
プロデューサー:岩浪泰幸
音楽:安川午朗
撮影:月永雄太

キャスト:大泉洋
染谷将太
安藤裕子
田口トモロヲ
前野朋哉 他

9点




”北の大地も、この世界観は許容出来ない”




今年のワースト候補です。
最初はスルーする気満々だったんですが、北海道でオールロケ、しかもロケ地が毎年帰省している祖父母のある岩見沢の三笠と聞いて、これは何はなくとも観てみるかと軽い気持ちで劇場へ行ってみると、これが飛び切りの地雷でして。

しかも久々に踏んだ地雷なもんだからそのダメージも相当なもので、帰り道にて『燃えよドラゴン』のテーマを聴きながら必死で持ち堪えていました。


ー 李小龍よ、我を救いたまえ。


薄ら寒いファンタジー。
北の大地で展開されるオカルトホラー。

この世界観、雄大な北の大地でも許容することは出来ない。






ポスタータイトルの丸っこいフォントの雰囲気で、食べ物食べてほっこり癒される系映画だろうと高を括っていたんですけど、そんなの甘い。

世界観で言うと、『47RONIN』に近いです。
つまりはファンタジー。
しかもかなりちぐはぐな。

とにかく、この映画全体を包み込む世界観が気持ち悪い。
そして、その中で動く人物達の行動原理が一々意味不明などころか全く説明がされないから気味が悪い。

冒頭、農作業に精を出す大泉洋と染谷将太。
その格好が、泥一つ付いていない藍色の麻のシャツ。
そんなお洒落して農作業してる人なんていないよ、と思いつつ、でもそんな世界感ならばそれに乗りましょうじゃないかと心を広く持ちましたよ。

しかし、その決意を無惨に打ち砕く、もはや暴力的な描写の連べ打ちに私の目はどんどん濁って行きました。

その始まりを告げるのが安藤裕子演じる謎の女の登場。
その前の、夕飯をお洒落な木のプレートにちょこんと盛り付けて食べてる大泉洋と染谷将太を観て私の脳が死んで行く音がはっきり聞こえましたけど、そんなもんじゃない。

キャンプカーで大胆に大泉洋のぶどう畑に侵入して、おもむろにダウンジングを初めて、ここに穴を掘ると言い出す安藤裕子。
ここは俺の畑だと大泉洋が突っぱねると、あんたはここでなくてもいいけど、私はここじゃなきゃダメなのと言い放ち、勝手に穴掘り生活スタート。
その穴掘りってのが、アニメみたく丸く垂直に掘って行く類いのもので、これまたなんともまぁ。
我慢です。ここで思考を止めてはダメですよ。

見かねた大泉洋が警察を呼ぶと、もの凄くクラシカルな出で立ちでクラシックカー風のパトカーに乗った田口トモロヲ演じる警察が登場。
ああ、もう分かった。これはこう言う映画なのね!
分かった、本格的にそう言うつもりで観る!!

と、始まって何度目かの決意を新たにすると、安藤裕子においしい料理を出されてすっかり仲良くなっちゃう田口トモロヲ。

こんな調子で大泉洋を除く町の人みんなと仲良くなっちゃう安藤裕子。
その町の人の数、私のカウントだと4人です。
そして、総勢でも5人のはずです。






ここで何より怖いのは、安藤裕子の行動の目的が劇中で全く説明されないんですよ。
一応ラストでアンモナイトの発掘をしていたってことになるんですけど、なんでアンモナイトなのかは明かされず放ったらかし。

確かに、確かに三笠はアンモナイトの化石が発掘された土地です。
え!?もしかしてそう言う理由なのか。
その現実の土地柄で全てが説明が出来ていると思っているのか。

大泉洋のぶどう畑だってそうです。
彼、元々の指揮者の仕事を病気が原因で辞めて、そしてワイナリーの経営を始めたそうなんですけど、なぜワイナリー?
元々父がぶどうの木を一本持っていたからとか何とか言ってましたけど、なぜ彼がワインに固執するのかが全く分からない。
え!?もしかして岩見沢にワイナリーがあるからなのか。


つまりこう言うことです。
安藤裕子のアンモナイトも、大泉洋のワイナリーも、全てはその土地のもの。言わば名産品。
その名産品で、劇中のなんやかんやが全て説明出来ているのだとこの作り手達は思っている訳ですよ。
本当におめでたい人達ですね。

その癖にですよ、劇中で空知、空知と地名を出しておきながら、薄ら寒いファンタジーで現実の空知を手前勝手に掻き消す暴挙。


やってることが余りにちぐはぐ。

でも、そんなことはいいんです。
この理屈は観終わってから思ったことですから。

本当に困ったのは、この映画全体を包む世界観が気持ち悪過ぎること。
何度途中で出ようと思ったか。


劇中、『野のなななのか』よろしく、楽器隊がぶどう畑を練り歩くシーンがあるんですけど、その恥ずかしさったらないです。
逆説的に、大林監督のあのアバンギャルドさを支える圧倒的なバランス感覚を思い知らされました。
『野のなななのか』のパスカルズは素晴らしいですよ。

言わずもがな、基本台詞は全て心のうちを口で説明する”心のお漏らし”状態。
これに加えて、前述の全く行動原理が分からないキャラ達、5人しかいない町人。
それを包み込むお寒いファンタジー演出の数々。


ー 李小龍よ、我を救いたまえ。






役者さん達に罪はありません。
大泉洋さんがこの映画に出ているということだけが唯一この作品で好感の持てるポイント。
染谷将太さんが悪いはずが無い。
安藤裕子さんだって悪く無いです。

個人的に安藤裕子さんの大ファンでして。
(彼女が歌うオザケンカバー「僕らが旅に出る理由」が本当に本当に素晴らしい!!)
その意味でも彼女のこの扱いは許せない…!!

それでは、お口直しに安藤裕子さんの、「ぼくらが旅に出る理由」をどうぞ。

うん、良い曲だ。







<あらすじ>
北海道・空知で暮らす男性アオと、ひとまわり年の離れた弟のロク。アオは父親が残したぶどうの木でワインをつくり、ロクは小麦を育てている。アオは「黒いダイヤ」と呼ばれるピノ・ノワールの醸造に挑んでいるが、なかなか上手くいかずにいた。そんなある日、アオとロクの前に、キャンピングカーに乗った旅人の女性エリカが現れ、彼女の持つ不思議な魅力が、兄弟の穏やかな日常に変化をもたらしていく。
映画.comより





2014年10月18日土曜日

猿の惑星:新世紀


Dawn of the Planet of the Apes
2014/米 上映時間130分
監督:マット・リーブス
脚本:リック・ジャッファ
アマンダ・シルヴァー
マーク・ボンバック
製作:ピーター・チャーニン
ディラン・クラーク 他
製作総指揮:マーク・ボンバック 他
音楽:マイケル・ジアッキーノ
撮影:マイケル・セレシン

キャスト:アンディ・サーキス
ジェイソン・クラーク
ゲイリー・オールドマン

95点




”後戻りの無い「No」”




TOHO船橋の4番スクリーン。
TCX、ドルビーアトモス環境で鑑賞。

先行で観た人の評判は上々で、中には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』より好きなんて声もちらほらあったり。
なんだいなんだい、それはいくらなんでも言い過ぎじゃないのかい、と思っていたんですけど、実際に観てみるとこれが誇張でもなんでもなく本当に素晴らしい作品。

骨太でパワフルな傑作。






公開前の反笑いの下馬評を覆した前作『猿の惑星:創世記』に輪をかけて、何よりまずストレートに面白い作品にちゃんとなってる…!!

その要因の一つが、今作からクレジットにトップで名前を連ねているアンディー・サーキス演じるシーザーと、その仲間達の力強さ。猿力!!
もちろん彼等はCGによって肉付けされている訳ですけど、表情と仕草一つで感情がしっかり読み取れる。
彼等は少しの英語と手話でお互いにコミュニケーションを取っているんですけど、その動作全てに感情が込もっていて、その表情の豊かさと言ったらもう。






大挙してやって来た猿達と対峙する人間。
その黒い群衆の中でマルコムが着た白いヘンリーシャツだけが目立たせて、行動と共に彼の性格付けをサラッと済ませる語りのスマートさ。

猿と人間の違いをさりげなくも分かりやすく示す対比も素晴らしくて、ただの一喝で騒ぎを鎮められる猿達と、それすらも電気を必要とする人間達。
この、猿の進化を大げさでなく、これまたスマート且つ説得力を持って演出する辺り、ダグ・リーマン、やるじゃないか!!

そして、この猿と人間のコミュニケーションの差が、今作のテーマをより深く掘り下げているとも思います。
これは後述。






作品毎にその時々の社会背景をメタファーとして織り込んでいる『猿の惑星』シリーズ

今作で言うとそれは、争い、戦争の発生。
もっと言うと、誤解とコミュニケーションの齟齬から発生する憎しみの連鎖。そこから発生する一度始まったらもう後戻りは出来ない、戦争の発生するその瞬間。

これは紛れも無く今現在頻発している中東の民族紛争であり、日本を含めて世界各地で静かに高まっている不気味な争いの予感に対しての警鐘のように思えてなりません。

今作で一番唸ったのは、雨のテントの外で猿と人間がコミックを読みながら言葉を使いコミュニケーションを取るシーン。そして、そのシーンに被せるように次のシーンの射撃テストの銃声が森に響く場面。

この、相互理解の努力を打ち消すような暴力的な銃声の音。
ここでコミックが使われているのもピリッと効いてます。

本来はそのカウンターになるはずの文化や教育も、暴力や武力の前では全て犠牲に。
相互理解の努力を踏みにじっていくのです。

個人的にこのシーンでは『グランド・ブダペスト・ホテル』で語られていたテーマを連想したり。

戦争の発端となるのは、小さな誤解であったり、コミュニケーションの齟齬。
そしてそれは、何かの小さなきっかけで始まってしまえば、エゴや体裁、メンツと結びつき、もう後戻りは出来ないのです。
それが間違っていると分かってはいても。

この、相当骨太な社会派メッセージを、猿と人間の構図を使いつつ誰もが楽しめる真っ当なエンターテイメントで包み込んだその見事さですよ。


映画ラスト。
もう後には引き返せないシーザーとマルコム。
大きな何かが始める不吉な予感を感じさせつつ、もう会うことは無いその二人の男の友情の終りで締めるそのバランス感覚。見事!
シーザーの決意に満ちた目をした、冒頭と対になったラストショット。見事!!

全て鮮やか!お見事!!





今作での「No」の使い方も凄く良い。
もう後戻りは出来ない、決意の場面での「No」

もう、お見事!!!!!!


<あらすじ>
猿のシーザーが天性のリーダーシップを用いて仲間を率い、人類への反乱を起こしてから10年。勢力を拡大し、手話や言語を操るようになった猿たちは、森の奥深くに文明的なコロニーを築いていた。一方の人類は、わずかな生存者たちが荒廃した都市の一角で息をひそめて日々を過ごしていた。そんなある日、資源を求めた人間たちが猿たちのテリトリーを侵食したことから、一触即発の事態が発生。シーザーと、人間たちの中でも穏健派のグループを率いるマルコムは、和解の道を模索するが、彼らの思惑をよそに、猿たちと人間たちとの対立と憎悪は日に日に増大し、やがてシーザーは生き残るための重大な決断を迫られる。
映画.comより





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