『Dawn of the Planet of the Apes』
2014/米 上映時間130分
監督:マット・リーブス
脚本:リック・ジャッファ
アマンダ・シルヴァー
マーク・ボンバック
製作:ピーター・チャーニン
ディラン・クラーク 他
製作総指揮:マーク・ボンバック 他
音楽:マイケル・ジアッキーノ
撮影:マイケル・セレシン
キャスト:アンディ・サーキス
ジェイソン・クラーク
ゲイリー・オールドマン
95点
”後戻りの無い「No」”
TOHO船橋の4番スクリーン。
TCX、ドルビーアトモス環境で鑑賞。
先行で観た人の評判は上々で、中には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』より好きなんて声もちらほらあったり。
なんだいなんだい、それはいくらなんでも言い過ぎじゃないのかい、と思っていたんですけど、実際に観てみるとこれが誇張でもなんでもなく本当に素晴らしい作品。
骨太でパワフルな傑作。
公開前の反笑いの下馬評を覆した前作『猿の惑星:創世記』に輪をかけて、何よりまずストレートに面白い作品にちゃんとなってる…!!
その要因の一つが、今作からクレジットにトップで名前を連ねているアンディー・サーキス演じるシーザーと、その仲間達の力強さ。猿力!!
もちろん彼等はCGによって肉付けされている訳ですけど、表情と仕草一つで感情がしっかり読み取れる。
彼等は少しの英語と手話でお互いにコミュニケーションを取っているんですけど、その動作全てに感情が込もっていて、その表情の豊かさと言ったらもう。
大挙してやって来た猿達と対峙する人間。
その黒い群衆の中でマルコムが着た白いヘンリーシャツだけが目立たせて、行動と共に彼の性格付けをサラッと済ませる語りのスマートさ。
猿と人間の違いをさりげなくも分かりやすく示す対比も素晴らしくて、ただの一喝で騒ぎを鎮められる猿達と、それすらも電気を必要とする人間達。
この、猿の進化を大げさでなく、これまたスマート且つ説得力を持って演出する辺り、ダグ・リーマン、やるじゃないか!!
そして、この猿と人間のコミュニケーションの差が、今作のテーマをより深く掘り下げているとも思います。
これは後述。
作品毎にその時々の社会背景をメタファーとして織り込んでいる『猿の惑星』シリーズ
今作で言うとそれは、争い、戦争の発生。
もっと言うと、誤解とコミュニケーションの齟齬から発生する憎しみの連鎖。そこから発生する一度始まったらもう後戻りは出来ない、戦争の発生するその瞬間。
これは紛れも無く今現在頻発している中東の民族紛争であり、日本を含めて世界各地で静かに高まっている不気味な争いの予感に対しての警鐘のように思えてなりません。
今作で一番唸ったのは、雨のテントの外で猿と人間がコミックを読みながら言葉を使いコミュニケーションを取るシーン。そして、そのシーンに被せるように次のシーンの射撃テストの銃声が森に響く場面。
この、相互理解の努力を打ち消すような暴力的な銃声の音。
ここでコミックが使われているのもピリッと効いてます。
本来はそのカウンターになるはずの文化や教育も、暴力や武力の前では全て犠牲に。
相互理解の努力を踏みにじっていくのです。
個人的にこのシーンでは『グランド・ブダペスト・ホテル』で語られていたテーマを連想したり。
戦争の発端となるのは、小さな誤解であったり、コミュニケーションの齟齬。
そしてそれは、何かの小さなきっかけで始まってしまえば、エゴや体裁、メンツと結びつき、もう後戻りは出来ないのです。
それが間違っていると分かってはいても。
この、相当骨太な社会派メッセージを、猿と人間の構図を使いつつ誰もが楽しめる真っ当なエンターテイメントで包み込んだその見事さですよ。
映画ラスト。
もう後には引き返せないシーザーとマルコム。
大きな何かが始める不吉な予感を感じさせつつ、もう会うことは無いその二人の男の友情の終りで締めるそのバランス感覚。見事!
シーザーの決意に満ちた目をした、冒頭と対になったラストショット。見事!!
全て鮮やか!お見事!!
今作での「No」の使い方も凄く良い。
もう後戻りは出来ない、決意の場面での「No」
もう、お見事!!!!!!
<あらすじ>
猿のシーザーが天性のリーダーシップを用いて仲間を率い、人類への反乱を起こしてから10年。勢力を拡大し、手話や言語を操るようになった猿たちは、森の奥深くに文明的なコロニーを築いていた。一方の人類は、わずかな生存者たちが荒廃した都市の一角で息をひそめて日々を過ごしていた。そんなある日、資源を求めた人間たちが猿たちのテリトリーを侵食したことから、一触即発の事態が発生。シーザーと、人間たちの中でも穏健派のグループを率いるマルコムは、和解の道を模索するが、彼らの思惑をよそに、猿たちと人間たちとの対立と憎悪は日に日に増大し、やがてシーザーは生き残るための重大な決断を迫られる。
映画.comより
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