シンデレラ

『Cinderella』
2015/米上映時間105分
監督：ケネス・ブラナー
脚本：クリス・ワイツ
製作：サイモン・キンバーグ
デヴィット・バロン 他
音楽：パトリック・ドイル
撮影：ハリス・ザンバーラコス
編集：マーティン・ウォルシュ

キャスト：リリー・ジェームズ
ケイト・ブランシェット
リチャード・マッデン
ステラン・スカルスガルド 他

85点

”今の技術でビビディバビディブー”

去年の私的な映画ランキングでワーストに入れた『マレフィセント』
志は買うけども出来がアレな『イントゥ・ザ・ウッズ』
アナ雪旋風等と言われていても、どうしてもぱっとしない最近のディズニー実写映画。

監督にケネス・ブラナー起用と言われても、どうしたって不安は残る。
ハードルを最大まで下げた状態で鑑賞。

そしたらば、…え！？いいじゃん！！

例え古典であっても、奇をてらわず、照れず、作品の力を信じて今の技術でしっかり映画化すれば、ちゃんと面白くなる。
こんな当たり前のことに何故気が付かなかった。

お話自体は過去のディズニー作品と全く同じ。
ただその分浮き彫りになるのは、いくつかのエピソードの掘り下げ方の違いと、今の技術で華やかになった部分。

エピソードで言うと、王子のキャラをほんの少し掘り下げるだけで、お話全体がただシンデレラが受動的なだけな印象に終わらない。
例えば、王子とその父の関係を示すシーンを少し挿入するだけで彼の人柄が伝わってくるし、父の言葉を理解しながら、その気持ちに反してやんわりシンデレラに惹かれるのもまた押し付けがましく無くて良い。

そして、今作最大のポイントと言えば、継母を演じたケイト・ブランシェット。
彼女の佇まいと、さりげない演技から漂う継母としての圧倒的な説得力。
映画序盤、パーティに参加していない父とシンデレラの会話を覗き見てしまうケイト・ブランシェット。この彼女の表情が素晴らしい…！！
亡くなった元妻そっくりの娘。その娘と仲が良さそうな夫。
これは嫉妬の一つでもするでしょうよ。
その心の移り変わりを、表情一つでさらりと説明。

さすがブルー・ジャスミン。
何より彼女の存在で映画全体が締まる。

そんな彼女への逆襲。
”今風な再解釈”だと、安易に継母達へも配慮したお話になってしまいそうな所、ちゃんと溜飲が下がる作りになっているのも嬉しい。
ああスッキリした。

全体に美術、衣装も素晴らしい。
華がありつつ品もある絶妙なバランスの衣装。
シンデレラの青いドレスの優雅さ。対する継母達のドレスの草間弥生感。
全体にしっかり品があるから、継母達の派手さも良い意味で浮く。

今の技術で作り上げられた世界観も素晴らしい。
何と言っても白眉はビビディバビディブー。
技術がしっかり魔法として機能していますよ。
このシーンのきらびやかさと言ったら、正にきらきらとした魔法そのもの。
このシーンだけでも実写化の価値はあったと思える程。

目下大ヒット中とのことですが、それも頷ける良作ぶり。
恐らくリピーターの方もいらっしゃるのでしょう。
その気持ち、分かる！！



＜あらすじ＞
母を病気で、父を事故で失ったエラは、父の後妻である継母とその連れ子のドリゼラとアナスタシアに「灰まみれのエラ」を意味する「シンデレラ」と呼ばれ、召使いのように扱われていた。ある日、耐えきれずに家を飛び出したエラは、森の中で城で働いているという青年キットと出会い、心を通わせる。王子である身分を隠していたキットは、城に帰ると父である国王から政略結婚を勧められるが、森で出会ったエラが忘れられず、彼女を探し出すため国中の未婚女性を招いた舞踏会を計画する。

映画.comより