進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
2015/日本 上映時間98分
監督：樋口真嗣
脚本：渡辺雄介
町山智浩
特撮監督：尾上克郎
撮影：江原祥二
美術：清水 剛
音楽：鷺巣詩郎

キャスト：三浦春馬
長谷川博己
水原希子
本郷奏多 他

80点

”この露悪さがいい”

荒れるだろうなぁと思っていたら、案の定荒れてる。

公開後、ネット上でのある作り手の方の発言等々でネットでは大炎上。
今作に対する風向きがかなり悪くなっている気がするんですが、ちゃんと面白いだけに勿体ない、勿体ないよ。


事前に書いていた雑感と一部重複する箇所もありますが、ネタバレを含みつつちょっと突っ根ところの感想を。
うん、やっぱりこの露悪さがいい。

・『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』を試写で観た。

雑感で書いたことをまとめると、

・巨人の残酷ショー的補食描写が最高
・特撮を使った巨人の造形
・溜めの効いた脚本
・『サンダ対ガイラ』のリメイク的展開に燃える

と言ったもの。

序盤の巨人残酷ショー。
ここがまず成功している時点で親指一つグッ。
とにかくここが露悪的で最高なのです。

そして、露悪的と言えば脚本も。
原作からの改変に難を示している方も多いですが、私は今作をこの”露悪”で見ると、今作のお話は一貫してエレンを追い詰めることに徹していると感じました。

今作でエレンを追い詰める役割を担うのがオリジナルキャラのシキシマです。
彼は物語中盤で、ミカサを救えなかったエレンの心をまず破壊。
終盤、今度はエレンをけしかけ彼の肉体を破壊します。

そして、全てを失い絶体絶命の状況でエレンのリビドーが爆発し、『ヱヴァ破』終盤的なカタルシスへと繋がっていく。

このエレンへの追い込みが一貫して露悪的。
つまり、エレンをいじめ抜くことに徹している。

例えば中盤でのある性的なシーン。
この部分で批判意見を多く耳にしますが、こここそ露悪の極み。
確信犯的にその後の展開のフックにしているのは間違いないでしょうし、物語上も、うんうん、そこでそんなことしていると、そうなるよな！！と思ってしまう。
エレンの目の前で行われることで、彼を追い詰める描写にもなっているし、映画的にも露悪極まりない。

巨人の補食含めたこの一貫した露悪描写。
エレンを追い詰めることに徹した脚本。

確かに原作ファンの方が反発するのは分かりますが、一本の映画としてはきっちりまとまっていると思います。

立体機動に関しては、確かに描写的な気持ち良さはあまり感じられないです。
ただ、ここも脚本上の溜めのおかげで、満を持して登場のテンションでカバーもちょっとは出来ていると思います。
ただ動き始めると、どうも…、とは思いますが。

役者さんの演技も悪い意味で漫画ぽいかなと思う箇所もあり。
原作ファンの方に評判のいいハンジさん演じる石原さとみも、声を張る台詞に違和感を感じてしまってどうも。

まだ前篇の段階ですが、私は一見の価値は間違いなくある良作だと思います。
特撮映画の枠を越えてもしっかり評価出来る部分もあります。

結論は後篇へ保留として、これだけは言えるのは、作り手の方が元の炎上騒ぎは、さすがにどうかと思います。
しっかり面白いんだから、どんと構えて仁王立ちしてるくらいの気持ちでいてください。勿体ないです！！


＜あらすじ＞
100年以上前、突如現れた巨人たちに人類の大半が捕食され、文明は崩壊。生き延びた人々は巨大な壁を三重に築き、その中で暮らしていた。壁に守られた安寧とした生活に苛立ちを覚えるエレンは、まだ見ぬ外の世界を夢見ていたが、ある時、そんなエレンの目の前に人類の想定を超える超大型巨人が出現。壁の一部を破壊し、そこから巨人たちが町になだれ込んでくる。次々と巨人が人間を食らう地獄をからくも生き延びたエレンは、2年後、対巨人兵器の立体機動装置で武装した調査兵団の一員になっていた。調査兵団は壊された壁の修復作戦を決行するが……。

映画.comより