2015年8月1日土曜日

バケモノの子


バケモノの子
2015/日本 上映時間119分
監督・脚本・原作:細田守
製作:中山良夫
齋藤祐佳
編集:西山茂
衣装:伊賀大介
音楽:高木正勝
主題歌:Mr.Children「Starting Over」

キャスト:役所広司
宮﨑あおい
染谷将太
広瀬すず 他

70点




”楓ちゃん、なぜそんなことを言う…”



最寄りのTOHOにて鑑賞。
一部で激烈な反応もある細田作品ですが、私はどれも好き。
今作は特にどうかと思うくらいに鑑賞中涙涙。途中までは。

楓ちゃん。
彼女の登場で冷めて、また泣いて、また冷めてと結構忙しい鑑賞に。
で、クライマックス、楓ちゃんが言ったある台詞で引き返せないくらいに萎えてしまいました。とほほ。

楓ちゃんがなぁ、あと一郎彦の扱い。
ここにもの凄く違和感。





そもそも父子もののお話に弱いので、多少説明過多具合が気になろうが九太と熊徹が心通わせていく描写だけでもう涙腺は決壊。

ここはストレートに『ベストキッド』だし、『ロッキー』だし(生卵はロッキーオマージュ?)、それを細田監督の手際よい語り口で見せていく訳だから、面白くない訳が無い。
今回は脚本も書かれているので、少し台詞に説明臭さがあるんですが、そこは目をつむります。楽しいです。

ただ、九太が成長し、人間の世界とバケモノの世界を行き来し始めてからがどうも。
端的に言うと、楓ちゃんの登場による部分が大きいのですが。






人間の世界で学ぶことの喜びを感じる。「白鯨」を通して己の内面を知る。
良いです。凄く好きなディテール。この真っ当さも細田作品ぽくて好きです。

ただ、人間界で九太を導く楓の行動がご都合主義的過ぎて気になる。
いくらいじめっ子から助けてもらったからと言って、あんなに甲斐甲斐しく面倒見てあげちゃうなんて楓ちゃんちょっと女神過ぎやしないですかね。
ここで安易にベタベタした恋愛にもっていかない所に細田さんのバランスの取り方を感じて、そこには好感を持てるのですが、すると逆に際立ってくるのが楓ちゃんの聖人性。

キャラの描き方にも正直薄さを感じました。
突然悩みを吐露して、「こんなこと初めて人に話した。なんだかスッキリした」と台詞で葛藤を示すの、あまり上手いとは思えません。
この台詞以上の彼女の人となりが、映画全体通じて全く分からない。
正直キャラとしての魅力ゼロとすら感じました。
広瀬すずちゃんのちょっとしたたどたどした台詞回しで人間味は感じられますが、中身がどうにも感じられない。

この違和感が極に達するのがクライマックス。
渋谷でのバトル。九太が己の闇と対峙し、九太に全てを託し、自らが大太刀の姿に転生して九太の前に現れる熊徹。九太が熊徹の力を借りて自らの闇を打ち破る。それを「白鯨」をモチーフにするなんて、細田作品でもトップクラスに好きなディテール。好きな場面です。

ただ、それに水を差すのが楓ちゃん。
ここで彼女は九太とその相手一郎彦の”違い”についての台詞を言い放つのですが、これがどうにも納得いかないのと、そもそも楓ちゃん一郎彦のこと何も知らないだろ、と。

こちらは、一郎彦は一郎彦で葛藤を抱えていたということを直前にシーンとして見ている訳で、その状態で楓ちゃんのあの台詞を聞くと、え、何でそんなこと言うの??と思わずにはいられない。

そして、お話の構造上、九太と対にさせて配置された一郎彦に敵役としての役割を担わせすぎていることにも凄く違和感。
九太は九太で葛藤し、一郎彦は一郎彦で葛藤している。
本来二人に差はないはずなのに、差を生むために楓ちゃんにあの台詞を言わせたのだとしたら、かなり残念。






好きな箇所も沢山あるだけに残念。
細田作品に対する激烈な反応の中に、ヒロインがどうも…という声をよく聞くのですが、今作で初めてその感覚が少し分かったかも。

ただ、過去作への私個人の評価は変わりません。
変わらずどれも好きです。
しかし、今作に限っては、ただただ惜しい。

<あらすじ>
「おおかみこどもの雨と雪」の細田守監督が同作以来3年ぶりに送り出すオリジナル長編アニメーション。渋谷の街とバケモノたちが住まう「渋天街(じゅうてんがい)」という2つの世界を交錯させながら、バケモノと少年の奇妙な師弟関係や親子の絆を描く。脚本も細田監督が自ら手がけ、声優には、渋天街のバケモノ・熊徹に役所広司、人間界の渋谷から渋天街に迷い込み、熊徹の弟子となって九太という名前を授けられる主人公の少年に宮崎あおい(少年期)と染谷将太(青年期)、ヒロインとなる少女・楓に広瀬すずと豪華キャストが集結している。
映画.comより



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