『Inside Out』
2015/米 上映時間94分
監督:ピート・ドクター
脚本:ピート・ドクター
メグ・レフォーブ
ジョシュ・クーリー
製作:ジョネス・リビラー
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッキーノ
製作会社:ピクサー・アニメーション・スタジオ
キャスト:エミリー・ポーラー
フィリス・スミス
リチャード・カインド
ビル・ヘイダー 他
100点
”感情のグラデーション”
映画始まって冒頭の数分、ある予感が頭をよぎりました。
これはもしや、驚くべきところに着地する、素晴らしい映画なのではないのか…!?
予感は当たってました。
今作、大大大傑作です。
いや驚いた。そしたいや泣いた。
まさか色で泣かされる日が来るとは。
とはいえ、観る前は少し不信感もあったり。
というもの、感情ってそれ単体で成り立ってるものなのかな??と考えてしまって。
「心の中の感情を擬人化する」というのも、着想としては面白いけども、よっぽど上手くお話を転がさないと、設定から来る面白さだけで終わりかねないぞ、とも思ったりもしました。恐れ多くも天下のピクサーに向かって。
もうそんなことは全て杞憂。
観る前に感じた「感情ってそれ単体で成り立ってるもの?」という疑問。
映画クライマックス、この疑問がスっと解消された時の感動。ガツンとやられました。
そう来るかと!!
手前味噌で申し訳ないのですが、以前『海街diary』を観た直後、簡単な雑感を上げまして。その文章に凄く今作に近いものを感じてしまいまして。いやお恥ずかしい、お恥ずかしいけど少し引用します。
”人の感情にはひだがある。一面的な感情なんて存在しない。
どんなに落ち込んでいても、お腹は空くし、転べば痛いし、変なものを見たら可笑しくて笑う。
一日中悩み事を考えている訳ではない。”
要約するならば、人間の感情というのは多面的であって、ひだがあるということ。
どんなに悲しくても、美味しいものを食べれば嬉しくなるし、食べながらまた、ふと思い出して悲しくなったりする。恥ずかしいことがあっても、実は嬉しかったりもする。
今作『インサイド・ヘッド』が最後に着地するものは正にこれ。
そして今作は、その感情の多面性を、カラフルな色彩で表現するのです。
ヨロコビとカナシミは裏表であり、対局に位置する感情。
このペアリングで心の世界を冒険させる活劇がもう最高にナイスなのですが、物語が終盤に至って、ヨロコビとカナシミがお互いの感情を理解し合い、ヨロコビの中にもカナシミが、カナシミの中にもヨロコビがあること知る場面。涙腺決壊。
説明してしまえば野暮ったいのですが、今作は、それを、色彩で表現する上品さでもってガツンと強烈なパンチを放ってくる。
黄色と青が混じり合った思い出のボールがライリーの中に生まれた瞬間。
もう本当においおいと大号泣でした。
ヨロコビとカナシミ、その間にイカリがあって、ビビリがあって、ムカムカがある。
そしてそれぞれが混じりあって無限の感情が生まれる。
感情のグラデーション。
感情が増えると言うこと。
それは言わば、他者への思いやりだとか、共感だとか、何かに対する情熱だとか、これはほんの一例ですが、生きていく中で、何を感じるかと言うことそのものでは無いでしょうか。
もうほぼ人間讃歌に近いようなメッセージを、”多感な時期での慣れない土地への引っ越し”という凄くパーソナルなお話から物語は出発させて、最後にはもーんの凄く普遍的な物語へと着地させて語る。
本当に、自分の人生、感情を、優しく肯定されているようでもあって、たまらなく嬉しいです。
映画序盤、ライリーの誕生と共に、彼女の心の中に”ヨロコビ”の感情が生まれるところから映画は始まります。
そこから様々な感情達がやって来て、思い出が出来て、”性格の島”が出来てくる。
まず、このライリーの成長と平行して、心の中の世界観を同時に説明するこの手際の良さがアッパレ。ピクサー恐るべし。
ライリーパートでの物語的な動きが少ない分、心の世界での活劇が物語を動かしていく訳ですが、この心の中の世界が素晴らしく楽しい。
夢の製作所なんてワクワクが止まらないし、やっぱりビンボンですよ、ビンボン。
イマジナリーフレンドをこんなに愛のある描き方をするなんて何ともピクサーらしい。
彼のことを思うとまた涙が…。
ライリーの感情の司令室では、ヨロコビがリーダーでしたが、人によってチームが異なっているのも上手いなぁ。
お母さんの心の中はそれぞれの感情をカナシミが担っていたり。ああ上手い…。
心の中に擬人化した感情達がいて…と、普通なら恐ろしく理屈っぽくせせこましいお話になりそうなところ、不安定な感情の少女の心をこんな風に描くなんて…!!と驚き、さらにその先へと易々と行ってみせる。
どプロの仕事を感じました。感嘆、拍手、溜め息吐息。
<あらすじ>
ミネソタの田舎町で明るく幸せに育った少女ライリーは、父親の仕事の都合で都会のサンフランシスコに引っ越してくる。新しい生活に慣れようとするライリーを幸せにしようと、彼女の頭の中の司令部では「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」の5つの感情が奮闘していた。しかし、ある時、カナシミがライリーの大切な思い出を悲しい思い出に変えてしまう。慌てて思い出を元通りにしようとしたヨロコビだったが、誤ってカナシミと一緒に司令部の外に放りだされてしまう。ヨロコビは急いで司令部に戻ろうと、ライリーの頭の中を駆けめぐるのだが……。
映画.comより
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