2014年2月26日水曜日

大統領の執事の涙


The Butler
2013/米 上映時間132分
監督:リー・ダニエルズ
脚本:ダニー・ストロング
製作:ローラ・ジスキン
バメラ・オアス・ウィリアムズ
リー・デニエルズ 他
製作総指揮:レン・ブラヴァトニック
音楽:ロドリーゴ・レアン
撮影:アンドリュー・ダン
編集:ジョー・クロッツ

キャスト:フォレスト・ウィテカー
オプラ・ウィンフリー
レニー・クラヴィッツ 他

58点




”100%正しい映画が、100%面白い映画だとは限らない”





凄く良い映画だと思います。
描かれているメッセージは100%正しいです。ぐうの音も出ません。

ただ、それが映画としての面白さになっているかと言われたら、個人的には首を捻ってしまう。



『プレシャス』に続いて登場のマライヤ・キャリー



大統領執事のセシルと、公民権運動に参加する息子ルイスから見た、当時のそれぞれのアメリカ人種差別の歴史を、物語は『フォレスト・ガンプ』方式で辿って行きます。

『フォレスト・ガンプ』では、当時のアメリカを体現するフォレスト。
ヒッピー、フリーセックス等々、そのカウンターカルチャーに参加したジェニー。

『フォレスト・ガンプ』が二つの視点で当時のアメリカを語ったように、今作はアメリカの人種差別の歴史を、父はホワイトハウス側から、息子は差別に抵抗する黒人側からの視点で描いていくんですけど、ここに『フォレスト・ガンプ』と異なる部分が。

それは、主役のセシルが全く歴史に関わらないんですよ。
アメリカの中心から、黒人としての彼の視点で歴史が語られるでも無く、ただセシルは事態を静かに見守るんですけど、これが勿体ない。

差別に対して積極的にアクションを起こしていたのは息子のルイスの方で、ルイスの物語の方がよっぽどドラマチックなんですよね。

だから観ている間、二人をどう観ていいのか分からなくてすごく居心地が悪いんですよ。

最終的にセシルはルイスの活動に参加する訳ですから。
やっぱり讃えられるべきは困難に屈さなかった息子じゃないかよ、と。



ロビン・ウィリアムス、アラン・リックマン、大統領夫人にジェーン・フォンダ。豪華。



この映画で描かれているもの、メッセージ、全てが正しいです。
オバマ当選で終わるのも納得です。

ただ、何でしょう、これは好みの問題かもしれないんですけど、正し過ぎるんですよねぇ。
正論を振りかざされて天の邪鬼になってるんではなくて、映画としてお利口すぎるんですよねぇ。事実がどうとかでは無くて、映画としてのお話で。


でも、そここそがこの映画の魅力なのかもと、観終わって数日経って思い始めました。
全体に軽快でサラッとしてるのも、魅力なのだとも感じます。
鑑賞に体力が要る『プレシャス』に比べたら、気軽に誰もが観られますからね。



役者陣は皆素晴らしいです。




あくまで主観なんですけど、100%正しいメッセージを持つ今作と、最低野郎が最低最悪の限りを尽くす『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
映画としてどっちが魅力的かと言われたら、断然『ウルフ・オブ・ウォールストリート』なんですよねぇ、『アメリカン・ハッスル』なんですよねぇ。

映画って、本当に不思議。


2014年2月21日金曜日

ラッシュ/プライドと友情


Rush
2013/米・英 上映時間122分
監督:ロン・ハワード
脚本:ピーター・モーガン
製作:ロン・ハワード
ブライアン・グレイザー 他
製作総指揮:トビン・アームブラスト
タイラー・トンプソン 他
音楽:ハンス・ジマー
撮影:アンソニー・ドッド・マントル

キャスト:クリス・ヘムズワース
ダニエル・ブリュール
オリヴィア・ワイルド
アレクサンドラ・マリア・ララ 他

98点




”俺を脅かし続けてくれ、チャンプ”



私、この映画相当好きです。
”あなたの生涯の一本を塗り替える”って言うあまりにもな宣伝文句も、あながち大げさでもないとさえ感じてます。
少なくとも、まだ2月ですけど今年上半期のベストですね。
思い出す程に胸がどきどきします。
これは恋だと思いたい。



実車を使ってる誠実な作り




凄く表面的な所から話を始めると、映画館のスピーカーで聞くF1カーの排気音の臨場感でまず鳥肌。
映画館の座席がさながらコックピット。
TOHOららぽーと船橋のメインスクリーンで観たので、尚のこと耳をつんざくエキゾーストノートに身も心も包まれ最高でした。

映像は、テンポ優先でカット数多めの編集。
出会ったら次のシーンではもう結婚式。
何か合ったら、すぐ次。
とにかく話運びはタイト。

レースシーンだと、車の空力パーツの揺れだったり、エンジンタービンが燃焼爆発してるカットを入れたり、カーナンバーからなめてコックピットを映す等々、全体にF1のスピード感を活かした演出がなされてます。

ただただ、意地悪く言えば、映像化困難なレースシーンを撮る”逃げ”とも思える編集で、少しチャカついてる様にも思えなくもないので、好みが分かれそうな所ですけど、個人的には全く持って好みです。
スピーディーにシーズンを見せていく演出は興奮ものでした。

と言うより、はっきり言いますと、この映画全体を構成している全てがもう私の好みです。ジャストミート。
これはもう恋の部類なのでね。ご容赦頂きたいです、はい。




でも、”逃げ”なんて表現を使いましたけど、元々脚本のピーター・モーガンの中では劇中でレースシーンを入れる気は無かったのだと。

なんでも彼は、F1に関してはずぶの素人で、レースの描き方がわからないからないから実際の記録映像を使ってお茶を濁すつもりだったんですって。



では、彼は何を描きたかったのか。
それは、F1でも無く、レースでも無く、二人の男の濃密かつドライなライバルとしての関係ですよ。

この二人に物語の焦点を絞っているから、結果F1に関する知識なんて無くても、誰もが共感しうる普遍的なお話にしっかりなれているんですよ。

とにもかくにも、この焦点の絞り方が上手い!!

実車を使ったり、クラッシュシーンに実際の映像を撮った少年が映っていたり、F1的な見所も随所に沢山あります。
だけども、物語の中心はニキ・ラウダとジェームズ・ハントの二人。
知識がある人は、その裏に透けて見えるフェラーリvsマクラーレンの構図も分かりますが、そんなことはどうでも良い。

下手な作り手だったなら、彼らのチーム内での葛藤、チーム同士の対決等々要素を沢山盛り込んだあげく収集が付かなくなりそうな所を、焦点をしっかり絞った描き方をしたのは全く持って大正解。




訛り、容姿全て完璧。



超合理主義のニキ・ラウダと、一瞬に生きるジェームズ・ハント。
正反対の二人を結びつけていたものが勝利すること。

ドイツGPで大クラッシュしたニキ・ラウダ。
病院で過酷なリハビリを受けている最中も、自分が出場するはずだったレースを、彼はテレビで観てるんです。
心は完全に彼に感情移入してるので、なぜそんな惨いことをする!テレビ止めてやれよ!!と心の中で叫びました。なんなら泣いてますよ。

それがですよ、彼は42日間で奇跡の復帰を遂げ(しかもイタリアGPでフェラーリの聖地モンツァなのがまた泣けるんだ)彼は謝るジェームズ・ハントにこう言うんです。

「確かにあのレースはやるべきじゃなかった。ただ、ここに戻って来させたのもお前だ」

お前を倒す為に俺は戻って来たんだと。
ニキ・ラウダよ、そんなことを思っていたのか!?


この距離感ですよ。
勝負することで結びついたこの距離感。

もう汗のような熱い涙を流してました。

以下、最終戦のネタバレ全開でいきます。



沸き立つフェロモン、容姿、全て完璧。



最終戦の舞台はなんと日本、富士スピード・ウェイですよ。しかも豪雨。
日本人からしてみれば、棚ぼた的にアガるクライマックス。

その後のそれぞれの二人の選択にまた涙ですよ。

ラウダはスタートから2周でリタイアする訳ですけど、これは映画中盤でのハネムーンのシーンでの台詞が効いていて。
つまり、彼には守るものがあって、だからあの選択。

対してジェームズ・ハントは、守るものなんて何も無い。命を掛けてでも勝ちたい。
ピットで「もう無理だ、自分の命を大事にしろ。また来年がある」なんていわれても、一言「Fuck」と捨て台詞を吐いてレースに戻る彼。

要するにこう言うことです。
自らの命を掛けられる程に、守るべきものが何一つ無いハントが、少なくともあの最終戦では一枚上手だったと言うことです。

ただ勝ちたい。
例え死んだとしても。

もうなんだよ、魅力的過ぎるよ。


しっかりそれぞれの性格を描き込み、それを積み上げて、最終戦にしっかり二人の勝利に対する考え方を反映させ、それがしっかり最高のクライマックスになってる。もう、最高です。

今まで出会った人々がテレビで二人の勝負の行方を見守る「あしたのジョー」演出も、分かってるねぇ、ロン・ハワード。
もう、最高としか言いようが無いです。








ラストのナレーション。
あれはおそらくニキ・ラウダ本人の言葉でしょう。
思わず胸が熱くなります。


ハンス・ジマーの少し古臭さを感じなくもない劇伴もど真ん中度ストライク。
サントラ買いましょう。

あえて言及しませんでしたが、主演の二人は100点満点ですよ。
そんなの当たり前です。


前述の通り、この映画に対してはもう恋をしている状態なので、この映画の全てが好きです。
まだこの状態から冷めるのには時間が掛かりそうですが、今の所、おそらく今年のベストには入ってくるかな、と。
そして出来るだけ長い時間この状態が続いてほしい。







2014年2月20日木曜日

ドライバー御用達/フィルソンのダッフルバッグ




買ってしまいました。
フィルソンのダッフルバッグ。
シアトル生まれの無骨なバッグでございます。

むふふ、カッコいいよ。








それまで使ってたバッグがへたってしまい、ほつれも目立ち始めたんで、こりゃ買い替え時かなぁなんて考えていたところ、次買うのはこれしか無い!!とめぼしを付けてたものがこれ。

前々から欲しかったものですけど、私の購買意欲を多いにふるわせた理由。
それは、映画『Drive』にて、ライアン・ゴズリングが劇中で使用してるモデルがこれなんです!!
厳密にはワンサイズ上のミディアムですが。





これです、これ。



デザインは無骨そのもの。
それは正に映画『Drive』のような無駄の無さで、細々とした収納ポケットなんてものは付いてません。
この潔さ、好きだぜ。

このバッグに、マクラビン・ワークスさんのドライブTシャツを合わせれば、気分はますますドライバー。


・めくるめく、キネマの思ひ出/マクラビン・ワークスのお洋服がツボ過ぎる


「I just drive.」


因に、マクラビン・ワークスさんの新作、『ショーン・オブ・ザ・デッド』も入手。
これまでの作品群の中で、間違いなくボンクラ度が最も高い一品に仕上がってます。







2014年2月16日日曜日

アメリカン・ハッスル


American Hustle
2013/米 上映時間138分
監督:デビット・O・ラッセル
脚本:デビット・O・ラッセル
エリック・ウォーレン・シンガー
製作:チャールズ・ローヴェン
ミーガン・エリソン 他
製作総指揮:マシュー・バドマン
ブラッドリー・クーパー 他
音楽:ダニー・エルフマン
撮影:リアヌ・サンドグレン

キャスト:クリスチャン・ベール
ブラッドリー・クーパー
エイミー・アダムス 他

90点




”みんな自分に嘘ついてる”



公開日初日の朝一の回に気合いを入れて鑑賞。
去年の年間ランキングに同監督の『世界にひとつのプレイブック』を入れたり、事前の情報から期待値MAXだったり、とにかく楽しみ公開日が待ち遠しかったんです。

しかも、同じ週に『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『スノー・ピアサー』、『ラッシュ/プライドと友情』の先行上映があったりして、映画館はお祭り状態。

『永遠の0』の牙城を崩し、『ゼロ・グラビティ』の仇を討つには今しかない!!と息巻いていたんですけども、ふたを開ければ依然1位は『永遠の0』。
『アメリカン・ハッスル』に至っては初登場9位ですよ。

落胆。
洋画って本当に観られていないのだと。


別に映画ファンは興収のランキングなんて気にしません。
自らの経験とカンを頼りに面白い映画を見つけます。

ただ、一般のライトな観客は、少なからず興行収入のランキングで、その作品に対しての態度を決めがちではないですか。王様のブラなんたらのランキングを見たりしてさ。

そうなってくると、ますます観られていない洋画は不利な状況になる一方。

なんだかんぁ、なんだかなぁ・・・。


と、愚痴から入りたくもなるくらい、観られていないのが悔しくなるくらい、『アメリカン・ハッスル』最高に面白い映画でした。
まだ観ていないのならば、今直ぐ映画館へ。
観れば面白いんだからさ。いいじゃない観れば。



このメンツで面白くない訳がないじゃない



監督のデビット・O・ラッセルと言えば劇中の音楽使いがとにかく抜群。
シーンにばっちり合った選曲で、そのセンスに観ていてとにかくアガるんですけど、何と言うか、お洒落では無いんですよ。ちょっと泥臭さを感じさせる選曲なんですよ。
それがセンスなんですけどね。

例えば『ザ・ファイター』で、中盤家族との関係を切ってマーク・ウォールバーグが勝ち星を挙げだすのをダイジェストで見せるシークエンス。
流れるのはレッチリとエアロスミス。
しかも試合のエモーションに合わせて選曲は「Back in the saddle」ですよ。

ベタか!?
デビット・O・ラッセルベタか!!

でも、このベタさ、泥臭さが最高にいいんですよ。
ともすれば最高にサムいことになりがちな選曲も、がっちり場面と合ってるから良いんです。





落ち込んだ時に聴く曲、空元気上げて行きたい時に聴く曲、人生の色んな場面で流れる曲って誰にでもあるじゃないですか。
まさに選曲がそれで、凄く泥臭い。ダサい。
でもそれが激しくエモーショナル。

”iPod感覚”とでも言いましょうか、曲が劇中の人物にしっかり寄り添ってるんです。

今作で言うと、まさかの『007/死ぬのは奴らだ』から「Live and let die」
この曲を聴きながら、ジェニファー・ローレンスが頭を振り乱しながら掃除をするんです。

この曲のこんな使い方ありますか!?
最高でしょ。

もちろんサントラ購入しました。
ただ今ヘビロテ中。



髪をいじられて憮然とするクリスチャン・ベール、最高。



映画始まって直ぐ。
画面に映るのは、頭をハゲ散らかし、ぼってりと腹が出ているクリスチャン・ベール。
その彼が、部分カツラを装着し、九部分けにする様を意地悪く我々に見せます。

カツラってなんでしょう。
自らの死んだ毛根を偽る帽子のことです。
つまり、嘘です。

この部分カツラ装着シーンは、これから始まる物語への高らかな宣言です。
この物語は、嘘を巡る話であると。


劇中、それぞれの目的の為に、みんな嘘をついてます。
そんなもんだから、それぞれの気持ちはあっちに行ったりこっちに行ったり。

そんなそれぞれの思惑が錯綜するのが中盤のクライマックスであるパーティーシーン。

前述の音楽使いも相まってこのシーンはもう最高ですね。最高です。
ライトが壊れ、煙の中からそれぞれ登場のケレンが効いた演出も最高。



パーティー中、それぞれ目的が違うもんだから、外目には同じ行動をしている様に見えても心は全く異なる方向へ。

それぞれが何をやりたいかしっかり理解した状態で観た2回目は倍面白かったですね。
スター俳優達を集めてここまで整理してキャラクターを描き分けるその手腕も見事。

”デニーロ・アプローチ”を実践してるクリスチャン・ベールが、その彼と対面するシーンも最高としか言いようが無い。前日に『レイジング・ブル』も観ていたから尚更。

改めて、キャスト豪華だなぁ。



「Live and Led Die!!!!!!」



個性溢れるスター俳優達を集めて、潰し合う事無くそれぞれがしっかり化学反応を起こして倍の魅力を引き出してるなんてそれだけで、奇跡だし観る価値あり。

なんでみんな観ない?
これを観ないで何を観ると言うの??

観てくださいよ。
絶対面白いから!!

恐らく、3月3日のアカデミー賞を終えて、何かしらの賞を取れば少しは関心も高くなる、かな?


2014年2月14日金曜日

ウルフ・オブ・ウォールストリート


The Wolf of Wall street
2013/米 上映時間179分 R18+
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:テレンス・ウィンター
製作:リザ・アジズ
ジョーイ・マクファーランド 他
製作総指揮:アーウィン・ウィンクラー
ジョージア・カカンデス 他
音楽:ハワード・ショア
撮影:ロドリゴ・プリエト

キャスト:レオナルド・ディカプリオ
ジョナ・ヒル
ジャン・デュジャルジャン
ロブ・ライナー

92点




”ファッキン最高な映画”


公開直前になってR指定、しかも18禁だと決定。
果たしてお客さんは入るのか、なんて心配してましたけど、ディカプリオブランドもあるのか場内はほぼ満員。大きな笑い声も出てたりして良かった良かった。

日本公開前から、映画内で発するFワードの回数が新記録の506回を樹立して堂々の歴代第一位(因に『グッドフェローズ』は300回で9位、『カジノ』は422回で4位)と言った情報を耳にして、ああ、もうそりゃ面白いわ。ファッキン面白いに決まってると。

そして見て参りまして、ファッキン最高な映画でした。

1から10まで全力で、何から何まで正しく無い映画を作ってくれた御年71歳のスコセッシに感謝と敬意を込めて。



拝金主義の権化



夢と野望を抱いてとある世界に飛び込んで、友と仲間を得て成功を謳歌するが、次第に歯車が狂いだして、仲間を売り、自らも破滅に向かって行く。

観ている間思ったことは、既にたくさんの方が言われている通り、ああ、なるほどこれは証券版『グッドフェローズ』だと。

ただ『グッドフェローズ』が、自分が憧れていた世界に巻き込まれて行く過程で薬に手を出し、その結果の友情の終り、破滅なのに対して、今作は主人公が拝金主義の権化たるジョーダン・ベルフォートですから、”金”が既にドラッグ。

つまり、最初から最後までラリパッパ。
金を稼いで社内でヤッて、クスリをキメて、また金稼ぐ。

これを180分間、スコセッシ流のナレーション進行の情報量の多い演出でみっちり見せてくる。
それに見る側も同調して、もっと派手なものが観たくなる。
映画の中の彼らがド派手な事をやれば、我々はさらに凄い事が観たくなる。

観客も、クスリのエスカレーションぶりを映画を通して体感です。



「Show goes on!!!!!!」



劇中、ディカプリオがカメラを向いて、会社の儲けの仕組みを観客に話すんですが、こんな事言ってもお前らには理解出来ないだろ、と言い放つシーン。

そうです、経済なんて分かりません。
そんなことはいいからもっと狂乱を見せてくれ!!
ヤリまくれ!キメまくれ!!

あと、忘れちゃいけないのが、みんな大好きマシュー・マコノヒーの兄貴。
ディカプリオ演じるベルフォートの、若手時代の先輩に当たる人物。

ベルフォートは彼に影響されて憧れたのでしょう、彼との食事シーンでもやりとりが、後半のディカプリオの振る舞いにしっかり反映されています。

ンーン、ンーン、ンーンーンーンーンンンンー・・・


「成功したければ一日に二回マスかけ。下半身にリズムを刻め」


冒頭のみの登場なのにしっかり爪痕を残す辺りファッキン最高です。







ディカプリオは去年も狂乱パーティーを『華麗なるギャツビー』で開いてましたけど、あれが可愛く思える程に3D無しでも狂ってます。
ファッキン最高です。

因に、中盤のクルーザーで海難救助されるエピソードは実話です。
なんと!!


2014年2月12日水曜日

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(IMAX 3D)


Thor:The Dark World
2013/米 上映時間112分
監督:アラン・テイラー
脚本:クリストファー・ヨスト
クリストファー・マルクス
スティーヴン・マクフィーリー
製作:ケヴィン・フェイグ
製作総指揮:ヴィクトリア・アロンソ
ルイス・デスポジート 他
音楽:ブライアン・タイラー

キャスト:クリス・ヘムズワース
ナタリー・ポートマン
トム・ヒドルストン
アンソニー・ホプキンンス

80点




”我々が求めているものは何だ。ロキだ!



去年公開して大ヒットした『アベンジャーズ
その敵役で、登場するや否やその噛ませ犬的な役回りで我々の視線と人気を一心に受けたロキ。
そのロキがメインキャラとして帰って来た『マイティ・ソー』の次作が、今作『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』

ロキが帰って来た時点でもう面白さは担保されてるんです。
いいんです。ロキでいいんです。
浅野忠信が隅に追いやられていても、いいんです。






『アベンジャーズ』の大ヒットの時点で、恐らく今作の方向は決まった事でしょう。
そうだ、ロキましましで行こう!!と。

なんでも海外ではロキのファンコミュニティまで出来てるようで。
恐るべしロキ人気。


なんでこんなにもロキは人々を魅了するのでしょうか。
とにかく彼、何を考えてるのか分からないんですよ。

今作で言うと、ソーに協力を求められた後の歩きながらの二人での会話シーン。
いろんな人に変身して、やたらと嬉しそうに喋りまくるんですけど、そんなはずは無い。
こいつがそんなに素直な訳が無い。お前、何を考えてる!

てな感じで、本心が映画中全く分からないし、彼もそれを出そうとしないんです。

しかし、そんな彼。
とある出来事で、母思いな一面を見せてくれるんです。

面と向かっては邪見にするくせに、本当はそんな事を考えていたのか!!
どんだけファンを増やす気だ!!






ロキだけじゃなくて、前作にあったカルチャーギャップ要素もしっかり前作を踏襲。
今度はソーがロンドンで暴れるんですけど、彼が地下鉄に乗ってりゃそれは笑いますよ。

ムジョルニアを玄関の壁掛けのフックに引っ掛けたのは爆笑。
お馴染みの「コスプレ?」突っ込みもあって満足です。






ただ、ロキが美味しい分、敵キャラと世界観の掘り下げ不足は否めないです。

これは映画化されたマーベル作品全体にも言える事で、主要キャラを立てる為なのか、敵キャラがどれも薄味。

今作に限っては、前作『アベンジャーズ』で敵だったロキが今度は味方になってるんでね。仕様がないと言えば仕様がない。

ただね、そんなことはどうでもいい!!

話は戻ります。
ロキがいればそれでいいんです。
ロキましましで行こうじゃない。

2014年2月7日金曜日

小さいおうち


小さいおうち
2014/日本 上映時間136分
監督:山田洋次
脚本:平松恵美子
山田洋次
音楽:久石譲
撮影:近森眞史
編集:石井巌

キャスト:松たか子
倍賞千恵子
黒木華
片岡孝太郎
吉岡秀隆


90点



”不本意な選択"


劇場は結構人は入ってました。
ただし、お客さんの層はお年寄りがほとんど。
いかんぞ、これはいかん。

かく言う私も、監督の作品を多く観ている訳ではないので、監督の作家性などは到底言及できませんが、今の時代に観らるべき、とても素晴らしい映画でした。

原作は未読です。



和服も洋装もどちらもお美しいです、松さん。



お話自体は非常にミニマムなものでも、作品の持つメッセージは非常に大きなもので、その当時は誰しもが抱えていた様な、そして、恐ろしくも今の我々もそうなりつつあるのでは。

それは、”あの当時は、誰しもが不本意な選択を強いられていた”
ラストでのこの台詞が全て。

自分のある選択によって、タキさんはその後60年間苦しむことになる訳ですが、彼女にその選択を迫らせたのは、他ならぬ”戦時下の世間の雰囲気”があったから。

この部分は原作から大きく改変されたポイントらしいですが、個人的には今の時代の映画としてこれは正解だと感じました。

タキさんは、例え秘められた恋だとしても、あの時二人を会わせていればと、思わずにいなかった日はないと思います。
彼女の選択は、戦時下の雰囲気からのものであって、間違いなく不本意な選択であったはず。
私は、タキさんの当時のあの瞬間の気持ち、60年分の思いを想像すると、胸がきゅっとなって仕方ないです。


人の生き死にと同時に、戦争は、その時代を生きる小市民の小さな思いもかすめ取っていきます。

再びそうなりつつある今の時代。
同じ道を辿るなと、これは監督からの警告なのでは。

ただ、だから戦争は駄目だとか、声高に叫ぶのではなく、小さなお話の中から紡ぎだされたこのメッセージから、監督の、映画人としてきちっとリベラルでいようとする姿勢と、映画的良心を垣間見ました。


戦争は確実にじわじわと彼らの生活に迫ってきます。
この状況は確実に今とリンクするし、この映画を今観る価値はここにこそあるでしょう。

向いのシアターで『永遠の0』を同じ時間帯に上映していたんですけど、むずかゆい思いをせずにはいられませんでしたね。



妻夫木さんもとても良かったですよ



キャスト陣は皆さん素晴らしいです。

松たか子さんは相変わらずお美しくて、もう。
インタビューでもありましたが、声の高さが彼女の少しふわっとした性格を表してもいて、まさしく時子です。

吉岡秀隆も、あの当時のモテ男感ビンビンです。

そして、何と言っても黒木華さん、やっぱり凄くいい女優さんです。
古風な顔立ちで映画美人。本当にスクリーン栄えします。
山形弁もめちゃくちゃ板に付いててキュート。
佇まいでもう100点ですね。


今の時代を生きる者なら見るべし。
特に若い子、良い映画だから観てね!!


2014年2月5日水曜日

オンリー・ゴッド


Only God Forgives
2013/仏・丁 上映時間90分 R15+
監督・脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン
製作:ヴァンサン・マラヴァル
シドニー・デュマ 他
製作総指揮:ブラヒム・シウア
ライアン・ゴズリング 他
音楽:クリフ・マルティネス
撮影:ラリー・スミス

キャスト:ライアン・ゴズリング
クリスティン・スコット・トーマス
ウィタヤー・バーンシーガーム 他


80点



"この神様、知人に似てる人いるんだけど”


公開日初日に観に行ったんですけど、結構人は入ってまして、しかもカップル率が高いんですよ。どういう風の吹き回し?
お互い気心知れた仲なのか、趣味ががっちり合った二人なのか。


「お箸でふととも刺してたね、ウフ」
「手も刺されていたね」
「そう、目をくり抜かれていた」
「最後は耳をえぐられていたね」


こんな二人?
それはそれで羨ましいぞ。






前作の『Drive』以上に好き嫌いが分かれるでしょうし、『Drive』は好きな人でもこれは苦手だって言う人もいるでしょう。
逆に周りの反応なんかを聞くと、こっちはイケた!なんて人も結構したりして本当に奇妙な作品です。
主演のライアン・ゴズリングも脚本を読んで、これまで読んだものの中で一番奇妙だって言ってるくらいですから。

ただ言えるのは、これは間違いなく”ニコラス・ウィンディング・レフン監督の作品”だってことと、前作『Drive』から受けた印象は、彼の一面に過ぎなかったってこと。

そのくらい今作は彼の作家性が溢れ出してます。
要は、そこにノレるかです。

以下ラストのネタバレ含みます。





『Drive』同様、大筋のお話はシンプル極まりないです。
兄ちゃんが殺されたんで、その仇討ちをしようって話。

しかしながら、ここも『Drive』と同様、シンプルなお話をシンプルに描こうとはしない。煌びやかなネオン眩しいバンコクを舞台に、艶かしく、スリリングに、時に笑ってしまうような演出を挟みつつ、バイオレンス描写満載でそれを描くんです。

そしてこの映画を最も奇妙なものにしている要素が、元警察官のチャン。
刀で無慈悲に裁きを下す、神です。この人神なんです。

ただただ、チャンさんの風貌は見るからに華の無いただのおじさん。
猿顔具合が個人的に友人に似てたりもして、増々神に見えない。
しかもこのチャンさん、神として裁きを下し、一仕事終えるとスナック的な場所で歌謡曲を熱唱するんです。

意味が分からないでしょう。
観てる私も訳が分かりませんでした。

ただ、このチャンさんの奇妙な行動も、レフン監督が作り上げた世界観の中では正解なんです。
少なくとも、観ている最中は何の疑問も感じません。
そりゃ歌うよ。神だって一仕事終えたらカラオケで歌うよ。そうだよ。

そんな神に抗おうとするのがライアン・ゴズリング。

ラスト、出した両腕に刀を振り落とそうとするチャン。
そしてチャンの熱唱で映画は終わります。

神と、神に挑戦した男。
レフン監督の手に掛かると、それがこんな映画に仕上がる。





癖の塊みたいな映画ですけど、好きか嫌いかで言えば相当好きです。
オープニングのタイ語と、迫ってくる様な音楽で心掴まれてました。
あのめくるめく世界に浸ってたいです。

そして観終わって、ああそうだよな、レフン監督ってこうだったよな、と改めて思い知らされました。

本作観た後だと、『Drive』ってあれでもすごい可愛い映画だったなと。思わずそう感じてしまいます。


2014年2月3日月曜日

R.I.P フィリップ・シーモア・ホフマン




余りにも突然で、何が何やら。
実感なんてあったもんじゃない。
恐らくは彼もそうなのでしょう。

今日は『マネー・ボール』でも観ますかね。

安らかにお眠り下さい。


2014年2月1日土曜日

ビフォア・ミッドナイト

Before Midnight
2013/米 上映時間109分 PG12
監督:リチャード・リンクレーター
脚本:リチャード・リンクレーター
イーサン・ホーク
ジュリー・デルピー
製作:リチャード・リンクレーター
クリストス・V・コンスタンタ 他
製作総指揮:リズ・グロッツァー
マーティン・シェイファー 他
音楽:グレアム・レイノルズ

キャスト:イーサン・ホーク
ジュリー・デルピー

90点




”会話をやめないで”


1995年、ウィーンでの出会いを描いた『ビフォア・サンライズ』
再会の約束を果たせなかった二人が、その9年後に再びパリで出会う2004年の『ビフォア・サンセット』

そして、そこから9年後の二人を描いたのが今作『ビフォア・ミッドナイト』

40歳となって、色恋の季節を過ぎた二人はどう変わっているのか。
はたまた何も変わらずあの日のままの姿なのか。

二人はですねぇ、やっぱり年月分変わってました。
もう魔法に掛かった二人はいませんでした。

そりゃそうだ。
そこが描きたくての続編なのだろうから。



「永遠に続く愛って、意味があるのかしら?」



18年前のウィーンにて



このシリーズの特徴としては、とにかく主演の二人が延々と喋る。
会話自体は何気ない世間話から、壮大な死生観まで、とにかく色々なことを喋る。
しかも、会話がアドリブにしか見えない程自然な演技で、尚かつ劇中で出てくるのはほぼ二人だから実に濃密な時間。
そんな何気ない会話の端々から、二人の性格、価値観、恋愛観がうっすら垣間見えてくる。

一作目の『ビフォア・サンライズ』では、ウィーンの街で、日が出るまで。『ビフォア・サンセット』では、日が沈むまでの時間を、それぞれ限られた時間を惜しみながらのおしゃべり。

ただ、今作の『ビフォア・ミッドナイト』の二人は子供がいて、既に関係が出来上がってる。おまけにジェシーには前妻との子供もいて、それが二人にとって悩みの種。

今まで恋を盛り上げていた、お別れまでのリミットはもうナッシング。
あるのは、ひたすらに続く時間のみ。

あの時はあんなに一緒にいたいと思っていたのに。
あぁ、あのウィーンでの出会いをもってしても、時間には勝てないのね。

劇中では、二人のこれからの時間を強調するような台詞が随所に出てきて、それがまたこれからの途方も無さを感じさせて。



今回も喋る、喋る。



その途方も無さを強く実感するのが、ホテルに到着してからの喧嘩シーン。

子供を預け、二人水入らずで夜を過ごそうと。
早速ベッドで抱きしめ合ってると、一本の電話がきっかけで喧嘩を始める二人。
冒頭でも軽い甘噛みみたいな言い争いはありましたけど、今度は本物。

喧嘩は最初の話題を大きく逸れて、いつしか日頃の不満吐露大会に。

とにかくこの喧嘩シーンが長い長い。
ずーっと言い合いしてるんですよ、

今までは、今の瞬間の気持ちを伝えてればよかったのに、今の二人の話題はもちろんこれからのこと。

そりゃ終わらないよね。
終わる気配も全く無いからもうこっちは観てて苦笑いですよ。
ただ、この喧嘩がどんどんドライブしていく感じ、ただの傍観者からしてみれば最高です。
当事者にしてみればソファに倒れたくもなりますけど。

そして、堪忍袋の緒が切れたセリーヌが部屋を出て行き、でもなんだかこれじゃあ私が負けた気がすると直ぐさま戻って再び言い合い。
ただ、部屋を出て少し冷静になったのか落ち着きを取り戻す二人。

安心したジェシーはグラスにワインを注いで、セリーヌに渡すや否や、ブーメランが帰ってきたようにまた喧嘩を始めるセリーヌ。

もはや煉獄感。
抜け出せない無限ループ。

そして遂に決定的な言葉を残して部屋を出て行くセリーヌ。

ああ、ああ、あぁ。







この、ホテルに行って愛を確かめ合おうとするも失敗する流れ、どっかでも観たことあるなと思ってたら、あれですよ、『ブルーバレンタイン』での世にも恐ろしいベッドシーンからの喧嘩がそれですよ。

しかし、ジェシーとセリーヌはちゃんと、最後は仲直りをしてみせます。

『ブルーバレンタイン』に無くて『ビフォア・ミッドナイト』にあるものは何か。
それは、二人はまだ、ちゃんとお互いの意見を言い合える関係であると言う事です。
しゃべり続ける事。話を聞く事。

つまり、おしゃべりです!!

おしゃべりと、情熱的なセックス。
これが何より重要。

恐らく二人は、また幾度と無く喧嘩をするでしょう。
でも、あのおしゃべりが出来る限りは、二人はきっと大丈夫。

それでは最後に、観る前に勝手なイメージで連想してた曲をお聴きください。





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