2015年7月30日木曜日

悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46


悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46
2015/日本 上映時間
監督:丸山健志
企画:秋元康
製作:村松俊亮
北川謙二 他
エグゼプティブプロデューサー:窪田康志
プロデューサー:石原真 他
音楽:スズキマサヒロ
撮影:神戸千木

キャスト:乃木坂46


86点






”アイドル版『セッション』”




昨年『超能力研究部の3人』を観て以来すっかり乃木坂46のファン。
元々AKBドキュメンタリーはグループの年次報告的に楽しんでいたのですが、乃木坂ちゃんに関しては完全に活動を逐一追っかけてます。この前出たアルバムも買いました。あはは。

ただ、仮に特別ファンではない人が今作を観ても、きっと何か思う所があるはず。
それはアイディアの妙にあり。






今作、映画全編に西田尚美さんの語りが挿入されているのですが、その言葉がメンバーのお母さんの言葉になっているんです。ここが巧い…!!
つまり、作品中メンバーを見つめる視点がより個人的な”親目線”になることで、映画と観客に絶妙な距離感が生まれて、逆に過度なウェットさが無くなっていていい。
とかくこの手のドキュメンタリーでは、ナレーションの甘さがどうにも気になって映画に集中出来ないことが多いんですが、これは技あり。

そして何より、親目線から見たメンバーのあれこれ。そして親としての心境。ここが一番大きい。
まるで、『セッション』のような関係になっていることに驚きました。






映画はグループの始まり、オーディションの様子から始まります。

少し前まで普通の女の子だったのが、ある日突然アイドルに。
右も左も分からず、AKBグループの公式ライバルと言われていても実際はただの弱小チームもいいところ。乃木坂ちゃんのグループとしての少し微妙で歪な立ち位置が彼女達をより苦悩させます。
そこでメンバーのお母さんから語られる言葉は、皆一様に娘をアイドルにしてしまったことの後悔の言葉。
ただ、メンバーが悩みつつもたくましく活動を続けていると、それはそれで寂しそうでもあるんです。

私が決定的に『セッション』性を感じたのは、劇中、1stシングルから連続してセンターを張っていた生駒さんが、6thシングルのシングルでセンターから降ろされた時の出来事。
自分にはセンターを務める資質はないと思いながら、周りからのバッシングやプレッシャーと戦っていた生駒さんが、自分がセンターでは無いと分かった時、それまでの重荷から解放されるように楽しげにくるくる踊り出すんです。
そこでお母さんの、せっかく上京して来たのに、大丈夫だからと娘から会うことを拒否されたと伝えるナレーションが被さります。そして、そこではっきり、「手の届かない世界に言ってしまった」との言葉が。

我が子が手の届かない向こう側の世界に行ってしまう。
これは正に『セッション』のクライマックスで描かれていたニーマンとその父の関係と同じ。
ニーマンが乃木坂メンバーだとしたら、フレッチャーは彼女達に活躍の場を与えつつプレッシャーを与える大人達と、応援をするファンの構図。

葛藤を乗り越え、親の手が離れて嬉しいのかと思ったら、より心配の色を濃くする。
当たり前です。”普通の”女の子が経験しないような戦場で我が子が戦っていて、その悩みを理解してあげられず、手の届かない世界に行ってしまうなんて歯がゆい気持ちしかないでしょう。

それでも、娘の夢のため。
ささやかに出来る精一杯のことをする。
うん、泣ける。






個人的な勝手なイメージとして、乃木坂は容姿端麗の即戦力軍団だと思っていたですが、これが前述した通り弱小チームも良いとこ。
既にAKBが隆盛を極めているところに”公式ライバル”なんて肩書き背負ってデビューして、突然小船で大海に放り出されるようなもの。

この弱小チームがでもやるんだよ精神で前へ進んでいく感じはどうしたって『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

劇中、グループのお披露目ステージがなんとAKBグループ総出演のライブ。
その開演前、うん十人のAKBグループを前にして完全に居場所を無くして頼り無さげに立っているしかない乃木坂ちゃん。
これはもう応援するしかない。






内向的なメンバーが多いことにも驚き。
それぞれに何かを抱えて乃木坂に集まって、良くも悪くも完全にそれぞれが溶け合っていないのが凄くチームの魅力になっているなと感じました。

一番驚いたのが橋本奈々未さんのエピソード。
家庭があまり裕福では無く、家を出たい一心で都内の美大に進学。
学費は全て自分で稼ぎ、バイトを掛け持ちつつ授業に出席。ただそんな生活も無理があり、行き場の無い怒りでコンビニで買ったおにぎりを訳も無く地面に叩き付けたと笑いながら語る橋本さん。
どうしようもなくなり、芸能界=ロケ弁という漠然としたイメージから乃木坂のオーディションに参加。で、合格。

今は、自分がグループを辞めたとしても、自分含め家族全員を養えるくらいの安定した収入を得て、弟さんの進学費を一括で納入出来るまで乃木坂を辞めないと力強く語る橋本さん。
か、カッコいい。


毎度のことながら月並みな表現になってしまうんですが、やっぱり頑張ってる人を見ると元気を貰えますよ。


<あらすじ>
人気アイドルグループ「乃木坂46」初のドキュメンタリー映画。2012年に「AKB48の公式ライバル」としてデビューし、3年間で着実に人気・知名度を獲得してきた乃木坂46。その立場ゆえに、すでに国民的人気を獲得していたAKB48と常に比較されながらも、夢に向かってひたむきに走り続けてきたメンバーたちの素顔を、密着インタビューやメンバーたちの家族への取材を通してひも解いていく。監督は、乃木坂46のデビューシングルからミュージックビデオを多数手がけている丸山健志。ナレーションを女優の西田尚美が担当。
映画.comより





0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...