2014年3月30日日曜日

銀の匙 Silver Spoon


銀の匙 Silver Spoon
2014/日本 上映時間110分
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
高田亮
音楽:羽毛田丈史
撮影:志田貴之
編集:李英美
主題歌:ゆず「ひだまり」

キャスト:中島健人
広瀬アリス
市川知宏
黒木華

82点




”日本映画界に欠けてたものはこれだ”



漫画原作だから。
主演がジャニーズだからと食わず嫌いするのは勿体ない。
ちゃんと面白い。
青春映画としてもかなりの出来ですよ。

だって監督は吉田恵輔。
去年だとばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんですよ。

作品の規模がグッと上がりましたけど、この安定感は相当素晴らしいです。
今の日本映画界において、しっかり面白い娯楽映画を作れる人は本当に本当に貴重。
大作の娯楽映画枠はぽっかり空いた状態な訳です。

『舟を編む』の石井裕也監督しかり、これからの日本映画を背負って立つ存在になるでしょう。
いや、もうなってます。






何が素晴らしいって、もの凄く当たり前のことを言いますよ。
この映画、ちゃんと面白いんですよ。

この、”ちゃんと”って所が如何に重要か。

考えてください。
今の日本に、ある程度予算を掛けて、それなりに宣伝をして、その上安定してしっかり面白い映画を作ることが出来る人っていますか?

いないでしょ!!(某塾講師風)

吉田監督の存在が如何に貴重か。

繰り返しになりますが、石井監督共々、吉田監督にこれからの日本映画を任せます!!



で、肝心の本編の話。
漫画原作の今作ですけど、漫画っぽさは一切無く、本当に理想的実写化作品。

冒頭こそ主人公の八軒がオレンジ色のパーカーを着て登場しますけど、早々に作業着に変わるのでキャラクター感は皆無。
しっかり生きたキャラになってます。
彼がジャニーズだなんて言われなきゃ気付きませんよ。ちゃんと頼りなく見える不思議。

その分、黒木華さん映画の中で浮いちゃってますけど、そこはご愛嬌。



『ばしゃ馬さんとビッグマウス』の関ジャニ∞安田さん同様、引きのあるキャスティングなのにちゃ〜んと画に馴染ませる。
さすがです。



いきなり酪農の世界に飛び込む八軒の視点に寄り添った作りになってるから、同じく全く知識の無い我々観客が自然に感情移入出来る。巧い。

ブタのエピソードも良くて、屠畜の挿話もただのインパクトで終わらず、しっかり八軒の成長、物語の進行に絡んでる。巧い。

変に色恋を盛り込まない辺りも賢い。


広瀬アリスさんも素晴らしいです。
胸の谷間チラリズムは吉田節炸裂ですね。
変態です。褒めてます。


吉田監督と言えど、観る前は少しの不安もありました。
漫画原作で作家性は守れるのか。

そんなものは観て吹き飛びました。

青春映画としても中々の良作。
オススメ!!



<あらすじ>
進学校に通いながらも挫折し、逃げるように大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾は、将来の目標や夢を抱く同級生たちに劣等感を抱き、酪農実習や部活には四苦八苦。慣れない農業高校の生活の中で悩み、戸惑いながらも、次第に自分なりの答えを見つけ始める八軒だったが……。








2014年3月28日金曜日

LIFE!


The Secret Life of Walter Mitty
2013/米 上映時間115分
監督:ベン・スティラー
脚本:スティーブン・コンラッド
製作:スチュアート・コーンフェルド
サミュエル・ゴールドウィンJr 他
音楽:シオドア・シャビロ
撮影:スチュアート・ドライバーグ
編集:グレッグ・ハイデン
原作:ジェームズ・サーバー『虹を掴む男』

キャスト:ベン・スティラー
クリステン・ウィグ
シャーリー・マクレーン
ショーン・ペン 他

87点





”旅に出て気付く。自分の日常は誰かを支えてたんだ”



「毎日 同じ生活を繰り返してませんか?」

予告でこう問いかけられる度にうるせぇよ、ほっといてくれとうんざり。
毎日毎日同じ生活を送っててすみませんね。と言うかあんたは何様なんだと、若干の怒りモードを感じてたんですね。

と言うのも、この手の自己啓発系の本だったり映画が個人的に大嫌いで。

本屋で平積みされて、帯に「旅に出れば、本当の自分が見つかる」みたいなことが書かれている本には心底反吐が出ますし、旅に出ることを過度に美化する物語には何様なんだよと言ってやりたい。

旅それ自体が駄目だとは全く言ってませんよ。
時間に余裕のある学生じゃあるまいし、旅に出る者を良しとして、それ以外の者を、勝手につまらない日常を送ってる”普通の人”扱いするその手前勝手な考え方に反吐が出ると言ってるんです。


『ロッキー』『レスラー』、今年だったら『ダラス・バイヤーズクラブ』等々、自分のどうしようもない日常を、地べた這って泥水すすって、何とか打破しようとしてる主人公に心打たれる身としては、その日常の尊さを無視して、そんな日常なんて捨てて、旅に出ようぜ!!な作品なんてどうかしてるよとしか思えない。


予告で喧嘩売られたんだ。
もう文句言う気満々で劇場へ向かった訳です。

観てきましたよ。

結論から言わせてください。

・・・
・・・・


高を括っていてすいませんでした!!!
予告とは正反対、物凄い良かったです!!!!!

自分の想像と真逆の着地に思わず涙。
旅に出ることも、普段の日常も両方肯定する、誰に対しても優しい視点の注がれた素晴らしい映画でした。


1947年公開のオリジナル『虹を掴む男』は未見です。







妄想癖があってすぐにぼーっとするなんて、映画ファンとしては感情移入せざる得ないです。
エレベーターでのド派手な妄想アクションシーンはツボをついてくるし、現実から妄想のシームレスな繋ぎ方も見ていてすごく楽しい。

ヘリコプターに乗るかどうかの、決断の背中押す妄想も見事。
あの、気が付いたら乗ってた感もの凄く良いです。

何か重要な決断をする時は、アントニオ猪木じゃないですけど、バカになった方がいいんです。
バカになって飛び込んで、後々になって、あの時本当に何も考えてなかったなぁと思うくらいがちょうどいいんですよ。
チャンスなんて待ってくれないんだから。






ラストの表紙のショットは、分かっていながら涙。
自分の日常の、あまりに当たり前でもう努力とも思えないような小さなことが、誰かの何かをしっかり支えてたんだ。

その日常の優しい肯定に、もう分かっていながら涙。

ウォルターはそのことに旅に出たことで気付くんです。
旅に出る勇気を得て、普段の日常を肯定する。
素晴らしい。


この、自分を成長させる気付きを得ることが、旅には不可欠なのかも。
例えどんなに近くだろうと、そこで何かに気付いて自分が成長出来ればそれは旅だし、何も感じることが出来なければ、世界一周だろうと意味の無いものなんだと私は思います。

このことを、この映画を通して得られたってことは、劇場で映画を観るって行為もまた旅なんだと思います。


紙から電子、アナログからデジタルに移行するLIFE誌。
スマホでは決して味わえないのが旅であり、映画なんです。







全体に素晴らしいです。
素晴らしいんですけど、それ故に若干小綺麗に収まって、パンチが弱い感じは否めないです。

チベットでの現地の人とのサッカーは、深夜のNHK-BS感とでも言いますか、あまりに美しいショットで少しやり過ぎなんじゃないかぁ。

素晴らしいんですよ。
素晴らしいんですよ。

あと、サメの件は妄想との落差がないから急にフィクション度が増して、正直余計に感じました。


うーん、やっぱりそんなことどうでもいい!!

旅の出費を計算するシーンも、現実をピリッと感じさせて凄くいいです。






予告から受ける自己啓発ムードは皆無。
広がりのあるショットも映画的で素晴らしい。

今作と『トロピックサンダー』を作ったのが同一人物なんて、ベン・スティラー、あなたの幅の広さ凄まじいよ。




<あらすじ>
1936年の創刊から2007年に休刊されるまで、世界で幅広く読まれたアメリカのグラフ誌「LIFE」の写真管理部で働く臆病で不器用な男が、人生変える波乱万丈の旅に出る姿を描く。LIFE誌の写真管理者として毎日地下鉄に乗って通勤し、変化のない日々を過ごすウォルター・ミティ。彼の唯一の楽しみは、むなしい現実から逃避する刺激に満ちた空想をすることだった。そんなある日、LIFE誌の最終号の表紙を飾る大切な写真がないことに気付いたウォルターは、カメラマンを探すため一大決心をして一歩を踏み出す。





2014年3月26日水曜日

アナと雪の女王(3D)


FROZEN
2013/米 上映時間102分
監督:クリス・バック
ジェニファー・リー
脚本:ジェニファー・リー
シェーン・モリス
製作:ピーター・デル・ヴェッチョ
ジョン・ラセター
原案:ハンス・クリスチャン・アンデルセン『雪の女王』
音楽:クリストフ・ベック
編集:ジェフ・ドラヘイム

キャスト:クリスティン・ベル
イディナ・メンゼル
ジョナサン・グロフ 他

80点




”ありのままで”



公開日初日にTOHO船橋のTCX、ドルビーアトモス環境で鑑賞。
場内ほぼ満席で、そのほとんどがカップル、カップル、カップル。

そりゃそうだ。
その日は3月14日のホワイトデイ。
雪の王国の雪の女王の映画なんてその日にぴったりの映画じゃないか。
ディズニーだし、読後の清々しさも保証されてる。

それにしても皆うきうき楽しそう。
そんな中一人孤高な鑑賞スタイルの自分は妙な卑屈スイッチが入って、周りから聞こえてくる間違った映画知識を指摘して回りたい衝動を我慢しながら、映画が始まるのをじっと待ってました。

『アナと雪の女王』はそんな卑屈な私の心を溶かす、素晴らしい映画でした。


上映開始から一週間ぐらいは周りのレリゴー熱(『アナと雪の女王』と同義)がもの凄い事になってて、とにかくみんなレリゴーレリゴー。
口を開けばレリゴー、レリゴー、ヒアーアイスタンド状態だったたんですけど、時間も経って熱も落ち着いて来て、評判も賛否合わせてまんべんなくなって来た様子。
ここに来て否の意見が目立って来たかなと言った印象。

で、色んな評論を確認しつつ、2回目を鑑賞した私の感想は、駄目な所はハッキリある。だけど、それ以上にレリゴーだった!!
要するに、レリゴーが自分の琴線に触れまくって、そりゃもう好きだ!!
こんな感じです。


個人的な話、ディズニーキャラで誰が好きかと聞かれたら、「アイアンマンMk.7!!」なんて逃げの答えは抜きにして、今ならエルサ姉さんと答えるでしょう。
なんだかねぇ、好きなんですよねぇ。






予告で丸々流してた『Let It Go』
こんなことして本編大丈夫か、飽きられない??
と考えてたんですけど、これが本編の流れで観るとめちゃくちゃ良いんですよ。
そうだよね、自信が無ければ丸々流したりしないよね。


『Let It Go』は、自分の運命を必死で自分に納得させようとする曲なんですよ。
こんな力を持ってしまったけど、これでいいんだ。私は私のままでいいんだと。

その何が良いかって、必死で自分を納得させて、空元気上げてる感じがひしひしと伝わってきて、その健気さが胸にじんと来るんです。
そりゃそうですよ。彼女にとってありのままの自分でいるって事は、孤独になるってことですから。

この、ありのままでいる為に孤独を望んだり、その過程で自分を納得させる為に無理矢理に空元気上げてったこと、誰しも経験ないですかね。
この無理矢理自分を鼓舞することはある種のドーピングでもあるんで、しばらく経ってその反動でまた落ち込んだり。
これ誰でもあるでしょ。


高らかに歌い上げる美しいシーンですけど、エルサの心境はとても普遍的なものだと思うんです。

だから心底グッとくるし、エルサがエルサのままでちゃんと受け入れられる、孤独にならなくてもちゃんと自分の居場所があるラストに感動するんですよ。

しかもそのクライマックスで、序盤でアナが「雪だるまで遊ぼう」と唄う歌のそのメロディーが流れるんですよ。
これで、オラフが二人にとってどういう存在なのかを考えると心底グッとくるし、二人で雪で遊ぶクライマックスがより際立って良いシーンになってる。良いです。良いですよ!








映画全体を貫くテーマに関しては、ナイトウさんのブログにて素晴らしい考察がありますので、少し眺めに引用させて頂くと。


”それで話を最初に戻しますと、『愛は男女間にのみ生まれるものではない』というところね。愛にはいろいろな種類があって、恋愛だけではないのだよ。時代に合わせてきているなあということと、多様性について提示してきている。アナは最終的にクリストフとくっつくけれども、結婚には至らない。いずれするかもしれないが、それは今ではないし、結婚はゴールではない。”


アナの自己犠牲でもって二人の愛が証明されるラストを見ると、ディズニーが次のステップに行こうとしてる姿勢を感じます。
クリストフのキスかと思いきやそれを外しで使う辺り、恐らく意図的に今までのプリンセスストーリーを相対化した作りにしてきたんだと思います。

前作『シュガー・ラッシュ』の、全く別の方向から物語をスタートさせて、きっちりプリンセスストーリーに着地させるラストも見事でしたし、ディズニーも色々仕掛けて来てます。







ただ、やっぱり物語全体が性急で、キャラの描き込み不足は否めないです。
自分は結構汲み取ってキャラに対して思い入れて観てましたけど、それでも全体に駆け足なのは感じます。

あと、ハンス王子があまりにも物語に都合のいいキャラなのはどうなんでしょう。
前述の、これまでのプリンセスストーリーの相対化を際立たせる為とは言え、ちょっとあの性格の変わり様は唐突に感じました。


でもね、そんなことは観ている間は気になりません。
CGのクオリティには言及しませんでしたが、これは言わずもがな。
雪の結晶ももちろん素晴らしいですけど、今回は特に肌の質感表現ですね。
もうツルツルしたCG感は皆無。
寒さで肌が紅潮してる感じ素晴らしいです。


映画全体に欠点もあります。
ただ、個人的にエルサ姉さんにかなり思い入れて観てしまったので、自分は相当好きです。

日本での動員次第らしいですけど、間違いなく長編アニメーションの興行収入を塗り替えるでしょう。
あの予告編の『Let It Go』で観た気になってたら駄目ですよ!!



追記
短編も『ミッキーのミニー救出大作戦』も素晴らしい出来。
ディズニーが本気を出して劇場をアトラクション化して、それでいて過去の技術へのリスペクトも忘れない。
こんなの楽しいに決まってます。



<あらすじ>
触れたものを凍らせる秘密の力を持ったエルサは、その力を制御しきれず、真夏の王国を冬の世界に変えてしまう。エルサの妹アナは、逃亡した姉と王国を救うため、山男のクリストフとその相棒のトナカイのスヴェン、夏にあこがれる雪だるまのオラフとともに、雪山の奥へと旅に出る。
映画.comより







2014年3月22日土曜日

ロボコップ(2014年版)


RoboCop
2014/米 上映時間121分
監督:ジョゼ・パシーリャ
脚本:ジョシュア・ゼトゥマー
製作:マーク・エイブラハム
エリック・ニューマン 他
製作総指揮:ビル・カロッラ
ロジャー・バーンボーム
音楽:ペドロ・ブロンフマン
撮影:ルラ・カルヴァーリョ
原作:エドワード・ニューマイヤー:1987年版脚本

キャスト:ヨエル・キナマン
ゲイリー・オールドマン
マイケル・キートン
サミュエル・L・ジャクソン 他

75点




”技術者ゲイリーの苦悩”



賛否両論中。
周りの印象では遥かに否の方が多いリブート版『ロボコップ』
しかも批判されてる方がかなりの激烈なテンションだったりして、弱ったなぁ、自分は結構好きなんだけどなぁ、言いづらいなぁと、思っていたんですよ。

そりゃね、オリジナルの『ロボコップ』があまりに偉大な作品なんで、比較するとどうしてもアレですよ。

でも、結構見所もある作品だと思うんですよ。

なので、自分なりの今作の楽しみ方をご紹介したいと思います。



言われたことをやっただけなのに!




間違いなく今作最大の批判ポイント。
オリジナルにあった過激な残酷描写が皆無。

ただこれは仕様がない。
時代です。自主規制です。

確かに私もがっくりきましたよ。

今作、オープニングが凄くカッコいいんですよ。
中東でオムニ社のロボットが配備されてる様子を、サミュエル・L・ジャクソン司会のタカ派的な報道番組風なドキュメンタリータッチで描くんですよ。
これが『第9地区』みたいですごくカッコいい。

ただ、発生した自爆テロを映すは良いけど死体も血も映しやしない。
オリジナルの容赦の無さを知ってる身からすると物足りなくて仕方が無い。

ただ、前述の通りオープニング全体がめちゃカッコいいので、プラスマイナスでプラス。


二つ目。
ロボコップが完成したはいいけど、歩くときの音が軽すぎる。
いかにも後から付けた様な音で、まるでコントですよ。間抜け過ぎる。
銀のスーツにもズシンとした重みが感じられない。

ただ!!
このオリジナルと同色だった銀のスーツ、速攻で黒にカラーチェンジするんですけど、黒になったら軽快な動きに違和感が無い。
それどころか、カッコいい!!

スーツを黒にカラーチェンジ。
動きも派手にするこのアレンジ、私は大アリです。

専用のバイクも出てきてこれもカッコいいし、デザインを変えたED209も嫌いじゃないです。

と言うことで、これも結果プラス。



マイケル・キートン、ゲイリー・オールドマン、おじ様俳優全員良かったです。



3つ目。
人間の脳を経由して思考するロボコップは、どうしてもロボットの思考のスピードに追いつけないことが開発の過程で判明するんですけど、その解決がご都合主義もいいとこで。

戦闘ではコンピューター、通常時は人間の脳を経由して思考するハイブリッドな脳にするってちょっとねぇ、安直過ぎないかい。

だがしかし!
ここ含めたロボコップの開発が、私がこの映画で最も楽しんだパート。
もっと言うと、技術者ゲイリー・オールドマンが企業の無理難題をあの手この手で解決していく様。
こここそがこの映画の見所です。

キックアス2同様、相当偏った見方だとは存じてます。

ただ、企業とロボコップの家族との板挟みにあれこれ考えながら、一会社員として上からの命令を受け止めるゲイリー・オールドマンの姿は、さながら『プロフェッショナル〜仕事の流儀』に登場する専門家達のようで、なんか凄くいいんですよ。

結果、プラスマイナスで相当のおつりがくるプラス!!

前半にロボコップの活躍が無いから退屈、って声をよく聞きますが、いいじゃないか、開発秘話があるんだから。



サミュエル・L・ジャクソンの司会者役は激しくハマってました。




なぜアメリカはロボコップを必要としたのか。
なぜロボットでは駄目なのか。
今作ではしっかりした理由が語られてるんで納得度は高いし、ロボコップを巡る政治のあれこれも、アメリカに対する意地悪が入っていて楽しい。


今作、リブート版としては申し分無い部類なのでは。
ただ、本国アメリカでは興収が大コケしてしまったとのことで、おそらく続編は無いでしょう。
もったいない。


2014年3月20日木曜日

ダラス・バイヤーズクラブ


Dallas Buyers Club
2013/米 上映時間117分
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
脚本:クレイグ・ボーテン
メリッサ・ウォーラック
製作:ロビー・ブレナー
レイチェル・ウィンター
製作総指揮:デヴィッド・L・ブシェル
ニコラス・シャルティエ 他
撮影:イヴ・ベランジェ

キャスト:マシュー・マコノヒー
ジェニファー・ガーナー
ジェレッド・レト 他


88点




”物語を動かすのは、迫る死と役者の力



ヒューマントラストシネマ有楽町にて鑑賞。
場内は満席。

その前日がアカデミー賞受賞式の正にホクホクな気分。
上がりきったハードルを軽々越える作品に胸が熱くなり涙。

主演男優賞、助演男優賞受賞も納得。
ディカプリオには全国の映画ファンから特別賞を。


この二人がとにかくいいんだ



作品のトーンはもの凄く抑えめに、淡々と物語は進行。
大仰な演出は全く無く、主人公を特別英雄視もしない。
淡々とした物語を動かすのは、迫り来る死と無様にがめつく生きようとする衝動。

この語り口は凄く好感を持てたし、何より役者陣のパワーが空いた隙間に注入されて、なんかもう、それだけで胸が熱くなる。

やっぱりマコノヒーの兄貴ですねぇ。
今作の為に相当身体絞ったらしいですけど、とにかく彼の、特に顔に死相が漂ってるんですよ。

少しでも長く生きようと、なんならがめつく金でも稼ごうとする姿に笑いながら、結果的にそれが国と製薬会社のずぶずぶな関係を正す行動になっていくのにガッツポーズ。

ジャンプカットで時制を大胆に飛ばすドライな視点も凄く好きです。



最高にキュートで、最高にパワフル。




南部の保守的なカウボーイだった彼が、病気になって初めてマイノリティの立場を理解する過程も凄く良いです。

レーヨンが彼を呼ぶ名前が徐々に変わっていくのも良いし、最初の出会いの時にレーヨンが着てたピンクのバスローブをさりげなく彼が着てるのも良い演出。

そんなレーヨンが死期を悟って口から血を垂らしながら涙する場面はその悲痛さが胸にズシンときますね。






大仰な演出は無し。
映画を進行させる役者の力に涙。


2014年3月14日金曜日

ホビット/竜に奪われた王国(IMAX 3D HFR)


The Hobbit:The Desolation of Smaug
2013/米・英・新 上映時間161分
監督:ピーター・ジャクソン
脚本:ピーター・ジャクソン
フィリップ・ボウエン
ギレルモ・デル・トロ 他
製作:ピーター・ジャクソン
キャロリン・カニンガム 他
製作総指揮:アラン・ホーン 他
原作:J・R・R・トールキン『ホビットの冒険』

キャスト:イアン・マッケラン
マーティン・フリーマ
リチャード・アーミティッジ
ベネディクト・カンバーバッジ

90点




"『ホビット』観た。『LotR』が宝の山に変わった。”


2001年のこと。
その当時公開されていたのが、『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』『ハリー・ポッターと賢者の石』の二つのファンタジー映画。両方とも初編。

今思えば両方とも観れば良かった。
ただ、当時は『ロード・オブ・ザ・リング』の3時間の上映時間に尻込みしてしまって、気が付けば上映終了。

劇場で観なかった作品、しかもその理由が上映時間にあるものを自宅でDVDで観る気にもなれず、そのまま評判だけを耳にしながら、ノータッチの状態で翌年に続編『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』公開。当然観ない。と言うか観れない。
そのまた翌年2003年、完結編『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』公開。
これがその年のアカデミー賞を総なめ。

この完結編をもって、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズは、興行的にも、批評的にも大成功を納めて、その後のファンタジー映画の基準を”以前と以後”に分ける大傑作シリーズに。

当然ながら、ここに至るまで一作も観れてない。この歴史的大傑作を。

代わりに観ていた『ハリー・ポッター』は、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で観るのを止める始末。

あちゃー。


それから10年。

新たなシリーズ『ホビット/思いがけない冒険』も10年前と全く同じ理由でスルー。

人の気持ちなんてそう簡単にかわらんさ。
私はJ・R・R・トールキンとは無関係の人生を歩んで行くと心に刻んだその瞬間、なにやら耳慣れない新技術が使われているとの情報が。

その名は、『ハイフレームレート(HFR)』

通常の映画のコマ数が1秒間に24コマなのに対して、HFRはその倍の48コマ。
つまり、より映像の動きがなめらか且つクリアになってるんですって。

それプラスIMAX 3Dですから、こりゃ凄いに違いない。
これを観ない手は無い。

よし、来年こそは!!
と意気込んで今年2月、初めて『LotR』サーガに触れる喜びを感じつつ『ホビット/思いがけない冒険』をDVDで鑑賞。

そして観てきました、『ホビット/竜に奪われた王国』

その感想は、お、も、し、ろ、い!!おもしろい!!
ファンタジー映画っておもしろーーーーい!!!!!


だらだら前置きが長くなりましたが、以下、そもそも10年ぶりに劇場でファンタジー映画を観た『ロード・オブ・ザ・リング』未見、『ホビット』のみ鑑賞の中途半端な者の変に熱のこもった文が続きますので、どうかご容赦くださいませ。



「Step in to the light」




まずHFRについて簡単に感想。
滑らか過ぎてビデオっぽいとの声を聴いてたんですけど、おおなるほど、ビデオっぽい。
ど頭のワーナー・ブラザーズのロゴが移動する動きが既になんだか違う。
所々PS3のムービーっぽく見えなくも無い所もあったりして、正直違和感の方が勝ってます。

ただ、レゴラスとオークの戦いなんかのカット割が細かいスピーディなシーンはHFRの方が断然見やすかったです。


とまぁ、最初はHFR目当てだったんですけど、正直HFRなんて途中から気にしてなかったです。
だって、そもそもファンタジー映画を観たのが久々10年ぶりで、なんだか冒険っていいなぁ!!仲間っていいなぁ!!なんて観ている間鼻息荒くなってる状態でして。

中盤クライマックス、樽で川下りなんてあれはさながらスプラッシュマウンテンでしょ。
3Dも相まって思いっきりライド感覚びんびん。

そして竜ですよ。
今作の目玉、スマウグの姿。

金貨の山がさらさら崩れて、その巨体がIMAXの大画面に大写しになった瞬間思ったこと。
あ、こりゃ敵わん。逃げるしか無い。

ベネディク・カンバーバッチの喉を鳴らすような声もまた良くて、更に知性も感じさせる声なんですよ。

こんなんどうやって倒すんだよ。






物語に関しても、詳しくは知らなくても名前ぐらいは知ってるヤツが登場して、勝手にアガってました。

つ、ついに!!サウロン!!こいつが冥王サウロンか!!!!
炎ぶわーーー!!
なんか知らないけどアガるーー!!

ちょっと待てよ。
『ロード・オブ・ザ・リング』を観てないのにこんだけアガるんだから、予習してたらどんなことになってたのか!?
怖い、怖いよ。
『ロード・オブ・ザ・リング』怖いよ。

『ホビット』に触れて、今までノータッチだった『ロード・オブ・ザ・リング』が宝の山に変わりました。
あと12時間あの世界に浸れる喜び。
DVDボックスは既に購入済みです。


少年ジャンプの終わり方みたいなラストの切れ味。
早く続きを!!


<あらすじ>
魔法使いガンダルフやトーリン・オーケンシールド率いる13人のドワーフとともに、かつてのドワーフの王国エレボールを取り戻すため冒険を続けるホビット族の青年ビルボ・バギンズは、姿を変えることができる獣人ビヨルンや、巨大な蜘蛛の群れにも遭遇しながらも、やがて目指す「はぐれ山」へとたどり着くが……。
映画.comより


2014年3月12日水曜日

魔女の宅急便


魔女の宅急便
2014/日本 上映時間108分
監督:清水崇
脚本:奥寺佐渡子
清水崇
製作:梅川治男
製作総指揮:森重晃 他
原作:角野栄子「魔女の宅急便」

キャスト:小芝風花
尾野真千子
平田亮平
筒井道隆
宮沢りえ 他
ナレーター:角野栄子

51点




”隠しきれない作家性”





思いがけず、公開初日に鑑賞。
客層はまんべんなく、小さい女の子、カップル、学校帰りの高校生等々、席は埋まってる方でした。
確実にジブリ版『魔女の宅急便』ブランドでの集客でしょう。

実写化が発表された段階で、多くの人がポカンとしたこの企画。
ジブリ版の実写化では無いとは言え、そのネームバリューにあやかることは明白な上に、いくら原作の実写化だと強調したところで、映画「魔女の宅急便」と聞けば、皆の頭にはジブリ版がチラつく訳ですよ。

つまり、ジブリ版『魔女の宅急便』を知ってる人々を取り込もうと。

少なくとも製作側は、ここら辺に関しては確信犯なのでしょう。
実にセコい。志が低いぞ。

ただし、それは越える事が難しいハードルともなる訳で、自分で自分の首を絞めてることでもあるんですよ。

だってね、改めて考えてみて下さいよ。
みんなのイメージが既に最高の形で固まってる映画の実写化ですよ?
無理でしょ。
(だから『AKIRA』も実写化止めなさいって)


これらを全て理解した上で、こんな無茶にも程がある企画を受けて、今作を実際に作った方々にこの言葉を送りたいと思います。


・・・・・
・・・・・・


小芝風花ちゃん、良かったよ!!!
清水崇監督、一言、お疲れさま(肩ポンポン)

良い所は確かにあります。
ただ、無茶なもんは無茶なんだ。



小芝風花ちゃん初め、キャスト陣はとても良かったです。



まず良い所。
主演の小芝風花ちゃんですね。
表情豊かで人間味も感じるし、彼女、しっかりキキでしたよ。

今作で誰がキキを演じるのかは一番の批判のポイントだったでしょう。
実際、発表の段階ではうるさいなんやかんやは聞いてました。
でも、いざ公開されたら彼女への批判の声は皆無ですね。
むしろ評価の声ばかり。
これって結構凄いこと。


あと、やっぱり監督の作家性なんでしょう、中盤でキキが何年も表舞台に姿を表していない歌手が住む屋敷にパンを届けるんですけど、その一連のシーンがもうそれはそれは呪怨チックでして、階段にしゃがみ込んで手すりの隙間からこっちを覗くカットなんてもろに俊雄くんなんですよ。
しかも屋敷の主がマツコDXに体型含めて激似で。

このシーン全体が明らかに映画から浮いてるんですけど、どんなものであれ観たいものが観れたって意味では印象的なシーンにはなってるんで、好きなシーンです。

相当偏った見方ですけどね。



役者さんは良かったです。何度でも言います。



80年代風の世界観がちぐはぐだとか、描き込みが無いから新井浩文が頭のおかしい人にしか見えないとか、CGが残念過ぎるだとか、ダメな箇所は沢山あるんですけど、一番気になったのは、キキの成長の仕方がうやむやな点ですね。

キキは、ほうきで飛べなくなったことを乗り越えて、再び飛ぶことで成長をする訳ですけど、そのきっかけが、飛べなくなるきっかけと対になってないからカタルシスが全く無い。


こんなことをしてはダメだと思いながらジブリ版と比較してしまうと、ジブリ版のキキは、”少女から大人に変わる時期”で魔法が弱まったってことに、誰かに恋をするってことが大きく含まれてたと個人的には考えてるんですね。
つまり、本人は気が付いてないけど、キキはトンボに恋をしたから飛べなくなったと。

で、再び飛ぶエピソードですけど、あれはそのトンボを助けたい思いがあったから、再び飛べるようになるんです。

ジブリ版はしっかり飛行を巡るエピソードが対になってるんですよ。
今作だとそれが無い。


ジブリ版のキキとトンボの関係でないにしても、壁にぶつかる、乗り越える、成長、がこの話には必要不可欠。

それが無いんですよ。

今作だと、魔力が弱まったキキが飛べなくなって、悩んで、そして必要に迫られて急に飛べるようになるんですよ。
動物園のカバを医者に見せなきゃいけないとかで。

皆の為に飛ぶ!!
って言う決意のシーンなのかもしれないですけど、だとしたらあの場面での物語上のキキへの追い込みが足りない。
大人達がキキに無理させてるようにしか見えないです。

もうキキしか頼れ無い!!
でもキキは今飛べない!!

・・・私飛んでみせます!!
って言うシーンに見せなきゃ。



飛行シーンは残念の一言



でも、飛んでる最中キキが力尽きかけるシーンがあるんですよ。
お!?なんかドラマが生まれる予感!!

なんて期待してると、なんと、中盤に登場した偽マツコDXがラジオから流れるキキの奮闘に鼓舞されて、今まで封印してた歌声を暴風雨の中突然披露しだすんです。
その歌がまた、なんて言うんですかね、”今風”の曲で適度に安っぽい。
その歌声が届いて、なんとキキは回復するんです。

これはオカルトか何か??
笑いを堪えるのに必死でした。
歌声がまた爆音なのが更に笑いを誘うんですよ。


ただ!!
このギャグとしか思えないシーン。
好きか嫌いかと問われれば、私は好きだ!!凄く好きだ!!!!

映画としてはダメですよ。ダメです。
でもね、前述の呪怨シーンしかり、こう言うインパクトのあるシーンがあるのと無いのとでは、思い出した時の印象が大きく異なるんですよ。

だってあのシーンだけもう一回観たいですもん。
周りを気にせず大笑いしたい。

映画としては評価出来ません。
ただし、その勇気みたいな何かにプラス5点。
冗談ぽく言いましたけど、本当に好きですよ。

トータルで、この映画に対して私はプラス印象です。


2014年3月8日土曜日

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅


Nebraska
2013/米 上映時間115分
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:ボブ・ネルソン
製作:アルバート・バーガー
ロン・イェルザ
製作総指揮:ダグ・マンコフ
ジョージ・バーラ
ジュリー・M・トンプソン
音楽:マーク・オートン
撮影:フェドン・ババマイケル

キャスト:ブルース・ダン
ウィル・フォーテ
ジューン・スキップ
ステイシー・キーチ 他

95点


"この道をゆけば、どうなるものか”



嘘の宝くじ当選の通知を信じ込んで、賞金を手にする為にネブラスカ州リンカーンへ行くと言って聞かない父と、それに付き合うことになったその息子と家族。
スクリーンに映るのは、モノクロのアメリカ南部の殺風景な景色。

地味でつまらない映画?

いえいえ。
大変素晴らしい映画でした。

確かな演出、確かな演技。
映画全体を覆う哀愁と、読後の爽快感。

親戚、身内含めた家族の面倒臭さにあきれつつ、老いた両親の姿がなんだか胸にしみる。

全て素晴らしいです。

個人的には、アレクサンダー・ペイン作品ではベスト。
良い映画でした。



入れ歯は落としちゃダメですよ



まずファーストショット。
モノクロ画面に広々とした高速道路。
その真ん中に小さく映る、とぼとぼと歩くブルース・ダン演じるお父さん。

この開けた画がとても映画的でとにかく素晴らしい。
直前に『魔女の宅急便』を観てたんですけど、欠けてるものがこの作品にはありました。
画の構図一つでこうも違うかと。

画面の中央に映る、小さく頼り無さげに高速道路を歩くブルース・ダン一発で、この映画を包んでる”老い”もしっかり語れてるし、その素晴らしさで思わず前のめり。



そもそも、父と息子の話に弱い。


登場人物が愛らしい映画はそれだけで素晴らしい。
父子が旅の道中で会う親戚とかつての父の友人達がもう、会った直後の愛想は良いんだけどムカつくし頭に来るし、挙げ句に宝くじ当選と聞いて金にたかる始末。

でも、その親戚達との会話の中から、自分の知らなかった両親の姿が浮き彫りになって、親も親で結構な奴らじゃないかって気付いたりして。

トータルすると、家族って面倒くさい!!
って事です。

ただ、そんな両親とも老いて会話もままならない状態。
さらにその老いが頑固さを加速させて、一筋縄じゃいかない。手に負えない。

それと同時に、昔は親の存在は絶対だったのに、気が付けば足は細くなってるし、食も細くなってるし、老眼鏡は掛けるし、親の存在が自分の中で揺らぎだすのはどこか切ない。

だから、両親が笑い者にされればなんだか尚更腹も立つ。

あいつへのあの一撃。
胸がスッとしたよ。






そんな父との旅の締めくくりは、ティム・バートン監督『ビッグ・フィッシュ』を連想しました。
頑固な父の思いを叶える為に、息子が父の話に”乗って”あげるラスト。


『ビッグ・フィッシュ』のエモーショナルなクライマックスも好きですが、凄く抑えた演出はじんわり涙。

そして最後ですよ。
街を離れた所で運転を代わるショット。
そこからのエンドロール、凄く良い!!!!

老いた父に、ささやか見栄を張らせてあげる親孝行に涙。






アカデミー賞には小品過ぎたのかなと感じます。
そんなものは大作にくれてやらぁ!!

地味な映画だと敬遠してたら勿体ない。
ストレートに面白い作品なのでぜひご鑑賞あれ。


2014年3月7日金曜日

今日の社長 Vol.1



今日の夜食はニホンからの輸入品、オセンベイ。


バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち


20 Feet from Stardom
2013/米 上映時間90分
監督:モーガン・ネヴィル
製作:ギル・フリーセン
ケイトリン・ロジャース
モーガン・ネヴィル
撮影:ニコラ・マーシュ
グラハム・ウィロビー
編集:ダグラス・ブラッシュ
ジェイソン・ゼルデス 他

キャスト:ダーレン・ラブ
メリー・クレイトン
ジュディス・ヒル
リサ・フィッチャー

85点



"誇りを持って歌ってんのよ


祝オスカー!!
長編ドキュメンタリー部門受賞おめでとうございます。
去年の『シュガーマン 奇跡に愛された男』に続いて、音楽ドキュメンタリーが2年連続で受賞。

そんなアカデミー授賞式当日のベストタイミングに、”分かってる”シネコン、シネマイクスピアリにて鑑賞してきました。
因に、『シュガーマン 奇跡に愛された男』もシネマイクスピアリでの鑑賞で、本当に映画への理解がとても深いシネコンです、シネマイクスピアリさん。


音楽ドキュメンタリーに外れ無し。
オスカーも納得の素晴らしい作品でした。

音楽多めで行きましょー!








この作品一本に、アメリカにおけるバックシンガーの歴史、今、それぞれの苦悩、挫折、成功、これから、全てが詰まってます。
これを小気味よい編集と、シンガー達のインタビュー、そして素晴らしい歌声で彩り上映時間90分で収めてるんだから実に濃密な時間。



スターミュージシャン達と同じ、またはそれ以上の実力を持ち、彼らの歌を陰で支え、楽曲を深く理解し、個性を出さず、完璧に歌い上げ、尚かつ真心も込める。
それがバックコーラスの仕事。

こ、これは正に、究極のプロフェッショナルじゃないですか!?

そんなバックコーラスを、当の本人達も誇りに思っているし、彼女達に花を添えてもらってるミュージシャン達も、しっかりその実力を認めリスペクトしているのが映画から伝わってきます。


それを伝えるミュージシャンのメンツが豪華で、ブルース・スプリングディーンに、ミック・ジャガー。スティーヴィー・ワンダー、スティングなどなど、S級スーパースター達。

使われてる映像素材も豪華。
マイケル・ジャクソン、デビット・ボウイの当時の映像。
声で出演した『ライオン・キング』『アバター』の映像等々を惜しみなく使用してます。

これらの映像をしっかり使用させてくれてる辺りに、アメリカのショウビズ界がバックシンガー達にしっかり敬意を払ってることが感じられて、そこでもなんか胸が熱くなりましたね。

日本じゃ権利やらなんやらで絶対にこうは出来ない。

アメリカはエンタメが成熟してて羨ましいなぁ。






ただもちろん、そこからソロのシンガーとして成功しようと、更なる努力をする者もいる訳ですが、これがそう上手く行かないのがショウビズの世界。

スターとバックコーラスを隔てるものは何なのか。

スティングが言います。
スターになることは、実力の問題ではないんだ。タイミングが合うかどうか。運もあるし、それは偶然と言っていい。

もちろん高い能力を持ったこと前提の話ですが、その上で、運、タイミング、プロとしての心構えを身につけられるかだと。

そんな全く酷な世界に対して、心を込めて歌えば、スターになれると思ってたと、彼女達は言います。
実力十分ある。努力だってしてる。何がだめなのか。
バックシンガーとして生きてく道もある。でも、あのセンターに立ちたい。
だってそれが夢なんだから!!



ここで、マイケル・ジャクソンの追悼式でスターになるチャンスを掴んだジュディス・ヒルの歌を。






ソロになったものの、全くの鳴かず飛ばずで夢を砕かれ、一旦は夢を諦めるけども、家政婦として働いていた家のラジオから、あの時自分が歌っていた曲が流れ、改めて気が付いた。
自分には歌を歌うことが出来るんだから、この声を聞かせなくては、と。

こう言うエピソードはどうもまいります。

そのラジオから流れて来た曲がこの曲。




自分には歌の才能があるんだから。
だったら、声を聞かせてみんなに分け与えなくちゃ。

この言葉は目から鱗でしたね。
歌を皆に分け与えると。

私は全くの音痴でして、歌が上手い人を心底羨ましいといつも思ってるんですけど、なるほど、歌の上手い人は我々みたいな者の代わりに歌を歌って聞かせるって考え方もあるのかと。






あと、やっぱりソウルフルな歌を聴くだけでアガりますね。
ラストのコンサートシーンでの大団円的な終わり方もズルいけど感動。

途中情報量の多さと、それぞれのエピソードが同時進行で進む語り口に頭が混乱したけども、90分の濃密な彼女達の人生に乾杯!!

シンガーの顔を丸く塗りつぶして、隣に写るバックシンガーを強調した名盤のジャケがスライド形式で登場するオープニングも気持ちいい!!


2014年3月5日水曜日

キック・アス ジャスティス・フォーエバー


Kick-Ass2
2013/米・英 上映時間103分 R15+
監督・脚本:ジェフ・ワドロウ
製作:マシュー・ボーン
アダム・ボーリング 他
製作総指揮:トレヴァー・デューク・モレッツ
音楽:ヘンリー・ジャックマン
マシュー・マージェソン
撮影:ティム・モーリス=ジョーンズ
原作:『Kick-Ass2』『Hit-Girl』マーク・ミラー
ジョン・ロミータ・Jr

キャスト:アーロン・テイラー=ジョンソン

クロエ・グレース・モレッツ
クリストファー・ミンツ=プラッセ
ジム・キャリー 他

70点





”マザー・ロシアに免じて、ね?”



目下評価まっ二つ中。
若干”否”の方が多めな『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』

評判を聞いてみて、多くの人が言っていた否のポイントとしては、
1.こんなのキック・アスじゃない
2.人が大勢死ぬ
3.あまりにも下品

かなぁ。

ただただ私、この1から3までひっくるめて好きです。

言いたいことが無い訳ではない。
むしろある!!

が、好きか嫌いかで言われたら断然好きです。好きですよ。


期待値の低さは多いに関係してます。
予告を観た段階では、正直全く期待してませんでした。

何が気になったって、ヒットガールのテーマカラーでしょと言わんばかりに、クロエちゃん絡みで紫のアイテムがやたら多い。
クロエちゃんが訓練してるショットで見えた畳のへりも紫。

こう言う、記号的な前作要素、好きじゃないぞ!!
みんな大好きヒットガールに関しても、あの当時のクロエちゃんの小ささから繰り出されるアクロバティック且つ容赦のない攻撃にみんなノックアウトされた訳で、それを今のクロエちゃんでやられても、普通のアクションだよなぁ、あの感動はなぁ、無いよなぁ。
等々、予告を観る度に思っていたんです。

そうは言っても好きな作品の続編となったら、応援ぐらいしたくなるじゃないですか。
観る前の印象なんて気にしないよ。

しかし、そんなこちらの淡い思いを砕くように、試写で先に鑑賞した方々の評判は芳しくない。

こうなったらボロクソ言う覚悟で体当たりしてやらぁと、自分でもよく分からないスタンスで観に行ったところ、お!?悪く、ない。悪くないよ。むしろ好きだ。言いたいことはある。だけど、良いじゃないか!キック・アス2!!

てな感じで、個人的には好みの作品に。







はぁ、クロエちゃん。




















 観ていて一番気になったポイントは、映画の語り口と劇中で起ってる出来事にトーンが合ってないこと。

ここからネタバレ含みますよ。


劇中、割と人が沢山死ぬんですよ。
そして終盤、遂にはキックアスの父も殺されてしまんです。

前作『キック・アス』でも同じように人は沢山死ぬんですけど、一応全員悪い奴らなんで、観ている間のノイズにはならないんです。
ただ今作だと、一般の人も巻き込んで、身内まで死んで、自分の命さえ危ないんだと強調しておきながら、相変わらず能天気な着地なんですよね。

今作こそ突っ込むべき問題でしょ!!
自分の始めたことで、大勢の人が死んでいるってさ。

クライマックスですよ。
あれはお父さんの弔い合戦の意味もあったはずなのに、勝って円陣組んで終わりはないでしょ。
あと、絶対戦いで人は死んでるんだからその死体を映そうよ。

今作こそ、もっとダークに生身のヒーローについてを突き詰めるべきじゃないかなぁ。



ラストの総当たり展開はあまり好きじゃない。



はい、ここまで言い訳と譲歩です。
確かに嫌いな部分もあります。

じゃあなぜ良いかって。
それは、エログロナンセンスコメディ感と、覚醒ヒットガールとマザー・ロシア。
これを、”キック・アス風味”で包み込んであるから!!

確かに、キック・アスとしてはダメだと思います。
正直、ヒット・ガールの魅力は前作の半分以下です。
しかし、中の人クロエちゃんの魅力はスパークしてるんですよ(ドッカーン)!!!!

良いじゃないですか、勢い良く飛び出すゲロ。
最高じゃないですか。

キック・アスとしては不十分だと思います。
でも!!
観ていて飽きなかった。
これ重要。



芝刈り機の使い方



誰もが認めるところはマザー・ロシアの勇士。
彼女で5万ドル払う価値はあるんでね。

ね?ね?


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