『The Secret Life of Walter Mitty』
2013/米 上映時間115分
監督:ベン・スティラー
脚本:スティーブン・コンラッド
製作:スチュアート・コーンフェルド
サミュエル・ゴールドウィンJr 他
音楽:シオドア・シャビロ
撮影:スチュアート・ドライバーグ
編集:グレッグ・ハイデン
原作:ジェームズ・サーバー『虹を掴む男』
キャスト:ベン・スティラー
クリステン・ウィグ
シャーリー・マクレーン
ショーン・ペン 他
87点
”旅に出て気付く。自分の日常は誰かを支えてたんだ”
「毎日 同じ生活を繰り返してませんか?」
予告でこう問いかけられる度にうるせぇよ、ほっといてくれとうんざり。
毎日毎日同じ生活を送っててすみませんね。と言うかあんたは何様なんだと、若干の怒りモードを感じてたんですね。
と言うのも、この手の自己啓発系の本だったり映画が個人的に大嫌いで。
本屋で平積みされて、帯に「旅に出れば、本当の自分が見つかる」みたいなことが書かれている本には心底反吐が出ますし、旅に出ることを過度に美化する物語には何様なんだよと言ってやりたい。
旅それ自体が駄目だとは全く言ってませんよ。
時間に余裕のある学生じゃあるまいし、旅に出る者を良しとして、それ以外の者を、勝手につまらない日常を送ってる”普通の人”扱いするその手前勝手な考え方に反吐が出ると言ってるんです。
『ロッキー』『レスラー』、今年だったら『ダラス・バイヤーズクラブ』等々、自分のどうしようもない日常を、地べた這って泥水すすって、何とか打破しようとしてる主人公に心打たれる身としては、その日常の尊さを無視して、そんな日常なんて捨てて、旅に出ようぜ!!な作品なんてどうかしてるよとしか思えない。
予告で喧嘩売られたんだ。
もう文句言う気満々で劇場へ向かった訳です。
観てきましたよ。
結論から言わせてください。
・・・
・・・・
高を括っていてすいませんでした!!!
予告とは正反対、物凄い良かったです!!!!!
自分の想像と真逆の着地に思わず涙。
旅に出ることも、普段の日常も両方肯定する、誰に対しても優しい視点の注がれた素晴らしい映画でした。
1947年公開のオリジナル『虹を掴む男』は未見です。
妄想癖があってすぐにぼーっとするなんて、映画ファンとしては感情移入せざる得ないです。
エレベーターでのド派手な妄想アクションシーンはツボをついてくるし、現実から妄想のシームレスな繋ぎ方も見ていてすごく楽しい。
ヘリコプターに乗るかどうかの、決断の背中押す妄想も見事。
あの、気が付いたら乗ってた感もの凄く良いです。
何か重要な決断をする時は、アントニオ猪木じゃないですけど、バカになった方がいいんです。
バカになって飛び込んで、後々になって、あの時本当に何も考えてなかったなぁと思うくらいがちょうどいいんですよ。
チャンスなんて待ってくれないんだから。
ラストの表紙のショットは、分かっていながら涙。
自分の日常の、あまりに当たり前でもう努力とも思えないような小さなことが、誰かの何かをしっかり支えてたんだ。
その日常の優しい肯定に、もう分かっていながら涙。
ウォルターはそのことに旅に出たことで気付くんです。
旅に出る勇気を得て、普段の日常を肯定する。
素晴らしい。
この、自分を成長させる気付きを得ることが、旅には不可欠なのかも。
例えどんなに近くだろうと、そこで何かに気付いて自分が成長出来ればそれは旅だし、何も感じることが出来なければ、世界一周だろうと意味の無いものなんだと私は思います。
このことを、この映画を通して得られたってことは、劇場で映画を観るって行為もまた旅なんだと思います。
紙から電子、アナログからデジタルに移行するLIFE誌。
スマホでは決して味わえないのが旅であり、映画なんです。
全体に素晴らしいです。
素晴らしいんですけど、それ故に若干小綺麗に収まって、パンチが弱い感じは否めないです。
チベットでの現地の人とのサッカーは、深夜のNHK-BS感とでも言いますか、あまりに美しいショットで少しやり過ぎなんじゃないかぁ。
素晴らしいんですよ。
素晴らしいんですよ。
あと、サメの件は妄想との落差がないから急にフィクション度が増して、正直余計に感じました。
うーん、やっぱりそんなことどうでもいい!!
旅の出費を計算するシーンも、現実をピリッと感じさせて凄くいいです。
予告から受ける自己啓発ムードは皆無。
広がりのあるショットも映画的で素晴らしい。
今作と『トロピックサンダー』を作ったのが同一人物なんて、ベン・スティラー、あなたの幅の広さ凄まじいよ。
<あらすじ>
1936年の創刊から2007年に休刊されるまで、世界で幅広く読まれたアメリカのグラフ誌「LIFE」の写真管理部で働く臆病で不器用な男が、人生変える波乱万丈の旅に出る姿を描く。LIFE誌の写真管理者として毎日地下鉄に乗って通勤し、変化のない日々を過ごすウォルター・ミティ。彼の唯一の楽しみは、むなしい現実から逃避する刺激に満ちた空想をすることだった。そんなある日、LIFE誌の最終号の表紙を飾る大切な写真がないことに気付いたウォルターは、カメラマンを探すため一大決心をして一歩を踏み出す。
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