『魔女の宅急便』
2014/日本 上映時間108分
監督:清水崇
脚本:奥寺佐渡子
清水崇
製作:梅川治男
製作総指揮:森重晃 他
原作:角野栄子「魔女の宅急便」
キャスト:小芝風花
尾野真千子
平田亮平
筒井道隆
宮沢りえ 他
ナレーター:角野栄子
51点
”隠しきれない作家性”
思いがけず、公開初日に鑑賞。
客層はまんべんなく、小さい女の子、カップル、学校帰りの高校生等々、席は埋まってる方でした。
確実にジブリ版『魔女の宅急便』ブランドでの集客でしょう。
実写化が発表された段階で、多くの人がポカンとしたこの企画。
ジブリ版の実写化では無いとは言え、そのネームバリューにあやかることは明白な上に、いくら原作の実写化だと強調したところで、映画「魔女の宅急便」と聞けば、皆の頭にはジブリ版がチラつく訳ですよ。
つまり、ジブリ版『魔女の宅急便』を知ってる人々を取り込もうと。
少なくとも製作側は、ここら辺に関しては確信犯なのでしょう。
実にセコい。志が低いぞ。
ただし、それは越える事が難しいハードルともなる訳で、自分で自分の首を絞めてることでもあるんですよ。
だってね、改めて考えてみて下さいよ。
みんなのイメージが既に最高の形で固まってる映画の実写化ですよ?
無理でしょ。
(だから『AKIRA』も実写化止めなさいって)
これらを全て理解した上で、こんな無茶にも程がある企画を受けて、今作を実際に作った方々にこの言葉を送りたいと思います。
・・・・・
・・・・・・
小芝風花ちゃん、良かったよ!!!
清水崇監督、一言、お疲れさま(肩ポンポン)
良い所は確かにあります。
ただ、無茶なもんは無茶なんだ。
小芝風花ちゃん初め、キャスト陣はとても良かったです。 |
まず良い所。
主演の小芝風花ちゃんですね。
表情豊かで人間味も感じるし、彼女、しっかりキキでしたよ。
今作で誰がキキを演じるのかは一番の批判のポイントだったでしょう。
実際、発表の段階ではうるさいなんやかんやは聞いてました。
でも、いざ公開されたら彼女への批判の声は皆無ですね。
むしろ評価の声ばかり。
これって結構凄いこと。
あと、やっぱり監督の作家性なんでしょう、中盤でキキが何年も表舞台に姿を表していない歌手が住む屋敷にパンを届けるんですけど、その一連のシーンがもうそれはそれは呪怨チックでして、階段にしゃがみ込んで手すりの隙間からこっちを覗くカットなんてもろに俊雄くんなんですよ。
しかも屋敷の主がマツコDXに体型含めて激似で。
このシーン全体が明らかに映画から浮いてるんですけど、どんなものであれ観たいものが観れたって意味では印象的なシーンにはなってるんで、好きなシーンです。
相当偏った見方ですけどね。
役者さんは良かったです。何度でも言います。 |
80年代風の世界観がちぐはぐだとか、描き込みが無いから新井浩文が頭のおかしい人にしか見えないとか、CGが残念過ぎるだとか、ダメな箇所は沢山あるんですけど、一番気になったのは、キキの成長の仕方がうやむやな点ですね。
キキは、ほうきで飛べなくなったことを乗り越えて、再び飛ぶことで成長をする訳ですけど、そのきっかけが、飛べなくなるきっかけと対になってないからカタルシスが全く無い。
こんなことをしてはダメだと思いながらジブリ版と比較してしまうと、ジブリ版のキキは、”少女から大人に変わる時期”で魔法が弱まったってことに、誰かに恋をするってことが大きく含まれてたと個人的には考えてるんですね。
つまり、本人は気が付いてないけど、キキはトンボに恋をしたから飛べなくなったと。
で、再び飛ぶエピソードですけど、あれはそのトンボを助けたい思いがあったから、再び飛べるようになるんです。
ジブリ版はしっかり飛行を巡るエピソードが対になってるんですよ。
今作だとそれが無い。
ジブリ版のキキとトンボの関係でないにしても、壁にぶつかる、乗り越える、成長、がこの話には必要不可欠。
それが無いんですよ。
今作だと、魔力が弱まったキキが飛べなくなって、悩んで、そして必要に迫られて急に飛べるようになるんですよ。
動物園のカバを医者に見せなきゃいけないとかで。
皆の為に飛ぶ!!
って言う決意のシーンなのかもしれないですけど、だとしたらあの場面での物語上のキキへの追い込みが足りない。
大人達がキキに無理させてるようにしか見えないです。
もうキキしか頼れ無い!!
でもキキは今飛べない!!
・・・私飛んでみせます!!
って言うシーンに見せなきゃ。
飛行シーンは残念の一言 |
でも、飛んでる最中キキが力尽きかけるシーンがあるんですよ。
お!?なんかドラマが生まれる予感!!
なんて期待してると、なんと、中盤に登場した偽マツコDXがラジオから流れるキキの奮闘に鼓舞されて、今まで封印してた歌声を暴風雨の中突然披露しだすんです。
その歌がまた、なんて言うんですかね、”今風”の曲で適度に安っぽい。
その歌声が届いて、なんとキキは回復するんです。
これはオカルトか何か??
笑いを堪えるのに必死でした。
歌声がまた爆音なのが更に笑いを誘うんですよ。
ただ!!
このギャグとしか思えないシーン。
好きか嫌いかと問われれば、私は好きだ!!凄く好きだ!!!!
映画としてはダメですよ。ダメです。
でもね、前述の呪怨シーンしかり、こう言うインパクトのあるシーンがあるのと無いのとでは、思い出した時の印象が大きく異なるんですよ。
だってあのシーンだけもう一回観たいですもん。
周りを気にせず大笑いしたい。
映画としては評価出来ません。
ただし、その勇気みたいな何かにプラス5点。
冗談ぽく言いましたけど、本当に好きですよ。
トータルで、この映画に対して私はプラス印象です。
0 件のコメント:
コメントを投稿