2014年4月9日水曜日

ローン・サバイバー


Lone Survivor
2014/米 上映時間121分
監督・脚本:ピーター・バーグ
製作:ピータ・バーグ
サラ・オーブリー 他
製作総指揮:ジョージ・ファーラ
撮影:トビアス・A・シュリッスラー
編集:コルビー・バーカーJr.
原作:マーカス・ラトレル
パトリック・ロビンソン

キャスト:マーク・ウォールバーグ
テイラー・キッチュ
ベン・フェスター
エミール・ハーシュ 他

80点



”共感装置としての痛み”


評価割れてます。
批判意見の主なものは、これは結局米国のプロパガンダ映画だと。
擁護の意見としては、そこを越えてしっかり描かれてるものがあると。

批判されてる方は、結構しっかりした論理でもって意見されてるので、聞けば聞く程に否の意見に流されかけたんですが、鑑賞した自分の意見は、凄く良かったですし、プロパガンダだと流されない映像そのものの強さがあると強く感じました。

予告での「『プライベート・ライアン』以来の傑作!」ってねぇ、これまた大きく出たもんだ、なんて思ってましたけど、いざ観てみると、うん、それも納得。

とにかく観る側の痛覚を刺激してきて痛いんだ、この映画。

この映画のキーワードはこれです。”痛覚”です。






『プライベート・ライアン』と『ローン・サバイバー』に共通するもの。
それは、観る側の痛覚を刺激する痛み表現、銃弾が四方から飛び交う音、その状況に否応なく放り込まれる登場人物達です。

特に『プライベート・ライアン』では、冒頭20分で描かれるノルマンディー上陸作戦のあまりに悲惨な様子。


四方から飛んでくる銃弾に倒れる仲間。
飛び出た内蔵を拾う者、千切れた腕を持って呆然と歩く者、死の恐怖に発狂して母親の名前を叫ぶ者、散らばる身体の欠けた死体。

観ている我々は、映画内の登場人物共々戦場に放り込まれ、周りで起こっている事態を飲み込めもせず、ただ生きる為に銃を取るしかないのです。

なぜ戦争をしてはいけないのか聞かれたら、私はこう答えます。
『プライベート・ライアン』を観たからだと。

私はあんな所には死んでも生きたくないです。
もし観ているにも関わらず戦争に行きたいなどと言う人がいるのであれば、その人は相当な馬鹿だとしか思えません。

『プライベート・ライアン』が発する強烈なメッセージは、声高な主張なんかではなく、ありのままのリアルを視覚的に見せることで出来た、映画だからこそ成し得た奇跡、力強い一撃なのです。

戦争はいけないよ、人を殺しちゃだめだよ。
口で伝えることも確かに大切です。

でも映画だったら、目でちゃんと見せなきゃ。



冒頭20分の映像を貼っておきますが、残酷描写が多く含まれるのでご注意下さい。
因に、テレビ朝日にて地上波初オンエアされた際は、冒頭に注意が流れ、ノーカットにて放送されました。
その心意気に拍手。









話が大きく大きく逸れました。
戻しますと、『プライベート・ライアン』、特にその冒頭にあった描写が『ローン・サバイバー』にはあると。


今作で特に共通するのは痛み表現ですね。

逃げ場を無くして崖に追い詰められて、やむなく転がり落ちるシーンがあるんですけど、これがとにかく痛い、痛い。
尖った岩に背中を打ち付けたり、堅い地面に落ちたりと、想像するだけでも背中がゾクッットするシーンの連続、しかもいやらしくスローで見せたりして、観てて思わず声が漏れて顔が歪みます。

逃げたと思ったら、四方から急に銃弾が飛んでくる。
ここ音響は素晴らしかったです。

また崖に追い詰められて転がる。
また痛い、痛い。

手を打たれた、痛い。
足を撃たれた、痛い。

痛い、痛い、痛い。
とにかく痛い。


前述の通り、この痛み描写は戦争映画には不可欠だと思ってますし、そもそも残酷描写は、誰もが感情移入出来る共感装置としても機能するものなので、否応無くのめり込んで登場人物に思い入れてしまう。

だから心底助かってくれと願ってしまう。

これは映像だからこそ出来る映画の技。







ただ、明らかに美談めいて着地させたラスト。
こころ観ると、プロパガンダと言われても無理も無いかなと、思わなくもない。

特に、ゼロ・ダークサーティ』『キャプテン・フィリップス等々、割とグレーな着地を見せる最近のハリウッドのトレンドからすると、如何にも「ヒロイズムの国アメリカ」を感じさせるこのラストは、急にお話が甘くなる。

ただ、ただですよ。
やっぱり中盤で描かれたドラマには政治的な主張なんて皆無で、ただ逃げることに夢中な奴らのドラマな訳ですよ。

よって、私はこの映画好きです。


ピーター・バーグ、前作は『バトル・シップ』ですよ。
あのエイリアンからすると、成長したじゃない。
馬鹿なエイリアンも大好きですけど。



<あらすじ>
2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯で偵察活動中の4人のシールズ隊員は、あるひとつの決断によって、200人を超すタリバン兵の攻撃にさらされることになる。極限の状況を生き延び、奇跡の生還を果たした唯一の隊員マーカス・ラトレルが執筆し、全米ベストセラーとなったノンフィクション「アフガン、たった一人の生還」が原作。テイラー・キッチュ、エミール・ハーシュ、ベン・フォスター、エリック・バナらが共演。

映画.comより






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