『Saving Mr.Banks』
2013/米・英・豪 上映時間125分
監督:ジョン・リー・ハンコック
脚本:ケリー・マーセル
スー・スミス
製作:アリソン・オーウェン
イアン・リー 他
製作総指揮:クリスティーン・ランガン
トロイ・ラム 他
音楽:トーマス・ニューマン
撮影:ジョン・シュワルツ
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ
キャスト:エマ・トンプソン
トム・ハンクス 他
86点
”物語の力であなたを救う”
軽い気持ちで劇場へ行ったら、まんまと泣かされて帰って来ました。
もう昔みたいに無邪気に『メリー・ポピンズ』を観れなくなってしまいました。
雲からふわふわとやって来てなんだかすごく楽しいぞ!なんてこと思いながら小さい頃から観てましたけど、そんな思いを込めてたなんて聞いてないよ。
フィクションにしか癒せない傷がある。
物語の力に共感。
傷を癒すファンタジーの力に涙。
『メリー・ポピンズ』含め、今作のネタバレ全開なのでご注意を。
原題の『Saving Mr.Banks』とは何か。
日本語に訳すと、『ミスター・バンクスを救う』
ミスター・バンクスとは、『メリー・ポピンズ』に登場する、銀行に務める厳格男。
ジェーンとマイケルのお父さんのことです。
原題の『Saving Mr.Banks』とは、意訳をするならば、『父を救う』と言う意味。
うん、確かに『メリー・ポピンズ』のラストでは、あんなに厳しかったお父さんがジェーンとマイケルと一緒に凧揚げをして終わる。
それが救われたことなのかい??
そうなんです。
今作で次第に明らかになるのは、原作者トラヴァースにとって、メリー・ポピンズを含め登場人物達は皆実在の人物であって、それは自分の家族そのものであること。
バンクスとは自分の父のことなのです。
この、『メリー・ポピンズ』の元となったトラヴァース自身の過去が回想で描かれるんですけど、そこには『メリー・ポピンズ』にあった無邪気な救いは何も無いんですよ。
優しかったお父さんは酒浸り。
銀行の仕事を放っておいて娘と遊び、家計は圧迫。
そして病いに倒れて、看病の甲斐も空しく亡くなる。
現実は全く甘くはありません。
しかし、トラヴァースは小説『メリー・ポピンズ』を書き、物語の中で父を救うのです。
つまりトラヴァースは、実際には救う事が出来なかった父への思いを『メリー・ポピンズ』に込め、物語の中で彼を救済しようとしたのです。
するとどうですか。
あの能天気なラストに胸がクッと疼くでしょ。
彼女にとって、『メリー・ポピンズ』は極私的な物語。
映画化を頑に拒むのは、ヘタな映像で自分の思いを汚されたくないから。
ハリウッドで”帝国”を築き上げてるディズニーなんてもってのほか。
でも、ウォルトの気持ちに触れ、ディズニーがファンタジーに掛ける気持ちによって『メリー・ポピンズ』が包まれた時、私的な物語は、凄く普遍的な物語へと昇華したんです。
ただ、それもこれも元をたどれば、世界中でただ一人の父へ向けた思いに寄るものだったなんて。
プレミア試写のシーンで、トラヴァースが泣き出すのと同じタイミングでおいおい泣いてしまいました。
えーえーいーやーもらい泣き。
ラストの雲のショット。
あれはズルいです。
あれはズルいです。
<あらすじ>
ウォルト・ディズニーは娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化を熱望し、原作者パメラ・トラバースに打診するが、トラバースは首を縦に振らない。やがてイギリスからハリウッドへやってきたトラバースは、映画の製作者たちが提案する脚本のアイデアをことごとく却下。なぜトラバースは「メリー・ポピンズ」を頑なに守ろうとするのか。その答えが、幼い頃の彼女と父親との関係にあると知ったディズニーは、映画化実現の最後のチャンスをかけ、トラバースにある約束をする。
映画.com
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