2014年10月14日火曜日

アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜


About Time
2013/米 上映時間124分
監督・脚本:リチャード・カーティス
製作:ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
ニッキー・ケンテッシュ・バーンズ
撮影:ジョン・グレセリアン
編集:マーク・デイ
音楽:ニック・レアード=クロウズ

キャスト:ドーナル・グリーンソン
レイチェル・マクアダムス
ビル・ナイ 他

60点




”タイムトラベルの甘さが主人公を甘やかす”



船橋のTOHOシネマズにて鑑賞。

凄く可愛いらしい映画だと思います。
グッとくる場面、好きなシーン、沢山あります。

でもなんだろう、この違和感は。


凄い高評価の声ばかりを耳にします。
今現在『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を7回観に行ってる偏った人の話だと思って頂けたら。






あのロンドンの街並、海辺の家。世界観は凄く好きなんです。
キャラクターだって皆魅力的に描かれてはいる。

ただどうしても映画全体が主人公に甘過ぎる気がしてならない。
葛藤が無いからドラマが無い。ドラマが無いから話が無い。

その原因になっているのが、そもそものタイムトラベルの設定の甘さ。
タイムトラベルはあくまで設定で、この作品が描こうとしているのは当たり前にある普段の日常だと言うことは分かります。
でも設定で、肝心のお話がもの凄く主人公に甘く身勝手なものになってしまっている気が。

主人公は最初から最後まで、何か不都合が起こったら過去に戻り修正、過去に戻り修正。
それが裏目に出て予想外の未来になれば、また過去に戻り修正。

例えば中盤の妹を巡るエピソード。
過去に戻り妹を救ってしまったら、未来では子供が変わってしまう。
なので再び過去に戻りそれを無かったことに。

で、結局どうするかと言うと、病院のベッドで付きっきりで妹を説得。
結果子供も元に戻り、妹も救われ万事解決。
じゃあ最初からそうしなさいよ!!
過去に戻る能力の無い大半の人はそうしてるんだから。

端から見ればどうしようも無い彼氏でも、妹にとってはずっと付き合ってきた人で、そこには個人的な感情もある。
例え間違いだったとしても、それが経験になって、その失敗から学んで、思い出になる訳じゃないですか。

誰がそれを奪えるのか。

あの時私じゃなくても他の人に声を掛けてたのねってそれは描き方としてズルい。
少なくともこのテーマの映画でそれはやって欲しく無い。

何がおかしいって、このエピソードがただのタイムトラベルのルール説明になってること。
作劇としても上手く無い。


こんな感じで、劇中彼の人生における失敗だったり、間違いだったりが最初から最後まで全て綺麗に取り除かれてるから、こんなの理想の人生なんかに決して見えない。
選択と葛藤が無いから彼が成長してるように全く感じない。

失敗の無い人生が最高の人生と言うふうにしか、少なくとも私には見えませんでした。
あまりに潔癖過ぎる。

そう言う人生を通して最後に理想に気付いたのかもしれないですけど、最初から最後まで幸せで、そして最後に”理想の人生”に気が付くってそれはあなた、いくらなんでも甘過ぎるよ。


最初からこの流れだから途中から彼に感情移入出来ず、中盤の初恋の人に対しての”レズだから”発言も少しイラっときたり。

ラストのメッセージ。
未来から戻って来たように毎日を生きよう。

このメッセージ自体には凄く共感出来ます。
いい言葉です。

ただお前がそれ言うかと。
今まで好き勝手やって来てたじゃないか!?

あなた以外の大半の人は、繰り返しの無い毎日を、間違えて、失敗して、悩んで悩んで、選択して、そしてそういう考えを胸に抱いてポシティブにいようと努力して生きているの。

この映画に言われても説得力が無いよ。






ただ、身悶えしながら見ていたのはカップルのイチャつき描写。
ここはさすがラブコメを撮ってきた監督。
あの結婚式の段取りが決まって行く度に一枚ずつ服を脱ぐってなんですか!?
健康的なエロっていいね!!
変態よ変態!!

あの自然体でオープンなイチャつき描写はストレートにたまらない。

暗闇での食事から初めて顔を合わせた時のあの高揚感。
あれはまさしく恋ですよ。
確かにあれは過去に戻って再び会いに行く。

ビル・ナイのチャーミングな演技も素晴らしい。
海辺の散歩のシーンは思わず涙しそうに。






ディテールを取り出せば好きなところは沢山あります。
ただ全体を通すとやっぱり納得いかない。

この世界観、キラメキ具合ならタイムスリップなんかない方が十分魅力的な作品になったのに。

”無為だと思ってた日常の大切さに気付く”なら、旅先のダイナーで旅費の計算をしていた『LIFE!』の方が私は好きです。


<あらすじ>
イギリス南西部に住む青年ティムは自分に自信がなく、ずっと恋人ができずにいた。21歳の誕生日に、一家に生まれた男たちにはタイムトラベル能力があることを父親から知らされたティムは、恋人を得るためタイムトラベルを繰り返すようになり、やがて魅力的な女性メアリーと出会う。しかし、タイムトラベルが引き起こした不運によって、その出会いがなかったことになってしまい、再び時間をやり直したティムはなんとか彼女の愛を勝ち取るが……。
映画.comより





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