2013年10月4日金曜日

クロニクル

2013/アメリカ 83分
監督:ジョシュ・トランク
脚本:マックス・ランディス
製作:ジョン・デイヴィス
アダム・シュローダー
製作総指揮:ジェームズ・ドッドソン
原案:マックス・ランディス
ジョシュ・トランク

キャスト:デイン・デハーン (アンドリュー)
アレックス・ラッセル (マット)
マイケル・B・ジョーダン (スティーブ)
マイケル・ケリー (リチャード・デトマー)


90点

"実写版『AKIRA』、これでいいじゃん”
首都圏2週間限定公開。
しかも誰でも1000円で観られると言う、限定感プラスお得感満載で公開されています、『クロニクル』
めちゃくちゃ面白かったです。

『パシフィック・リム』に溢れていた日本への熱い情熱と愛が、『クロニクル』でも注がれていました。


奇妙な穴を見つけ、入る事に

その中で見つけた物体に触れ、能力を身につける3人


いじめられっこの高校生アンドリュー、その従兄弟マット、学園の人気者スティーブ。
この三人がとある物体に触れたことで、超能力を身につけてしまうんです。
最初はスカートめくりだとか、スーパーで人を驚かすだとか、可愛げのあるイタズラ程度に能力を使ってたんですが、段々とアンドリューがその力に溺れ始め・・・っていうのが大まかなお話の流れです。至ってシンプル。

要するに、”普通の者”が、”力”を手にするとどうなっていくのかというお話。

勘の良い方ならピンと来たはず。
そうです、大友克洋さん作『AKIRA』です。



確かに怖いわな。めちゃくちゃ笑いました


映画を観ている間『AKIRA』っぽいなとは思っていたんですが、監督のインタビューなんかを読むと、やはり大友克洋作品に影響されて製作したみたいで、他には『キャリー』なんかの影響を話していました。

『AKIRA』と言えば、ある日突然力に目覚めた鉄雄が、超能力を持ったことによって性格が豹変し、幼なじみであり先輩格に当たる金田と対決する、ってのが本当に本当に大まかなお話の骨格になります。

『クロニクル』で言うと、アンドリューと従兄弟のマットがその関係。
クライマックス、暴走して街を破壊するアンドリューをマットが止めに行くんですが、車を吹き飛ばすシーンなんかはもろに『AKIRA』でしたね。観ていて楽しい。

前半からしっかりお話を積んでるから、アンドリューが暴走する状態になってもしっかり感情移入出来るので、『AKIRA』ファンへの目配せ的なものに終わっていない、素晴らしいクライマックスでした。



ふわっと腕を振ると

周りの物が吹っ飛ぶ


あと、細かいところで言うと、「ズン」ですね。
大友さんは、何かが地面だとか壁にぶつかった時、球面にへこませることでその力を表現するんですけど、『クロニクル』でもしっかり出てきてましたね。



『童夢』より、通称”ズン壁”

着地で地面がへこむ描写


もう一つ特筆すべきは、この映画がPOV方式、主観映像のモキュメンタリーだってことです。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から始まり、『クローバー・フィールド』以降増えだしたPOV映画。その効果は、一人称にすることで、映画への没入度が増して画に緊迫感とリアルさが増すこと。そして制作費が安く済む!!
『パラノーマル・アクティビティ』なんてめちゃくちゃ制作費安いですからね。

今年の夏公開された『エンド・オブ・ウォッチ』も、主観視点のモキュメンタリーで、L.A市警の毎日の危険な勤務を追うといったものでした。主観モキュメンタリーならではの映像満載で、めちゃくちゃ面白かったです。

話は逸れますが、POV映画が急に流行りだしたのは、恐らくSNSの盛り上がりがあるんじゃないかと。
誰でも映像を撮ってネットで共有するのが当たり前になっている今、偶然撮れちゃった風のモキュメンタリーも一人称視点も、全く違和感は無いですからね。



能力を使ってカメラを浮かせる


でも主観映像にも弱点があります。それは、主人公がいつでもどこでもカメラを持っていないとお話が成立しないこと。そのルールによって、観ているこっちは頭にはてなマークが浮かぶんですよね。「えっ、あなた逃げながらまだカメラ持ってるの!?」なんて風に。
どうしても緊迫した場面になるほど間が抜けちゃうんですよね。

ただ、この『クロニクル』が凄いのは、主人公達が超能力が使えるって設定なので、カメラをプカプカ浮かせられるんですよ。
つまり、主観映像のルールから抜けて、三人称視点だったり、上からの俯瞰ショットだとかを挟み込めるんです。
これによって、間の抜けた画も状況もないし、ばっちりカッコいい。
超能力の設定を上手く活用した上手い演出だと思います。

しかも、超能力が強化されていく後半に行くにつれてカメラの三人称視点が増えるので、アンドリューの怒りに満ちた顔、やりとりがしっかり見える。
今までアンドリューの視点を共有していたのが、三人称視点になって視点が突き放されることで、こっちはアンドリューの暴走をただただ見守るしか無くなる。
もうそうなったら応援するしかないですよね。
やったれアンドリュー!!もっと暴れろ!!そんな奴ら蹴散らしちまえ!!


こういう三人称ショットがいい!!


上映時間が90分も無いあっさり風味なのも良い所ですよね。
長くなる一方の最近の映画に対して、83分はとてもポイント高い。
さくっと観て、めちゃ面白い。最高ではないですか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...