2014年7月7日月曜日

ノア 約束の舟



Noah
2014/米 上映時間138分
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー
アリ・ハデル
製作:ダーレン・アロノフスキー
アーノン・ミルチャン 他
製作総指揮:クリス・ブリガム
アリ・ハデル
音楽:クリント・マンセル
撮影:マシュー・リバティーク

キャスト:ラッセル・クロウ

ジェニファー・コネリー
エマ・ワトソン 他

79点






”なるほどこれはダーレン・アロノフスキーの映画だ”




公開週の朝一の回に鑑賞。
そしたらですね、少し奇妙な体験をしまして。

平日の朝。
たまに行けば、いるのは大体ご年配の方ばかり。

でもこの日は何故か場内ほぼ満席。
しかも、周りの会話に聞き耳を立ててみると、何やら皆さんお知り合い、というより何かの団体のようで。
少しの恐怖を感じつつ、その中にひとりぽつんと座る私。

普段はガラガラの劇場内がほぼ満席。
恐らくとある団体。
上映される作品は『ノア 約束の舟』
と、言うことは。

なるほどなるほど、そういうことかと合点がいっものの、そうしたら尚更の恐怖が襲って来てですね、うつむきながら上映開始を待っていたのですが、始まってみれば何の心配も無く、皆さん落ち着いて鑑賞されてました。

一つ気になるのは、この作品宗教の中心にいる人からはどう見えたんでしょうか。
ちくしょう、聞いておけば良かった。

私は特定の宗教を信仰していないので、この部分に関しては何も言うことが出来ません。
ただ、この作品に関して私が言えるのことは、この映画は間違いなく”ダーレン・アロノフスキーの映画”だってことです。









ダーレン・アロノフスキーの作品にほぼ全てに共通するのは、ある妄執にとらわれた主人公が、破滅に向かってこと。

『π』も『レクイエム・フォー・ドリーム』も『レスラー』も『ブラック・スワン』も。

例えば、私の生涯ベストの一つでもある『レスラー』は、一見男泣き映画に見えますが(間違いなく男泣き映画ですが)、ランディは、レスラーとしての自分=リングで喝采を浴びる自分こそが本当の自分なのだと信じ最後には破滅に向かい(間違いなく男泣き)、『π』はとある数式に魅了された天才の話だし、『レクイエム・フォー・ドリーム』はずばりドラッグの話。


”ノアの方舟”をダーレン・アロノフスキーが映画化!?
何でまた。
と観る前までは思ってましたけど、観終わってみれば納得。
なるほどこれはダーレン・アロノフスキーの映画だ。

ノアは何に取り憑かれていたのか。

それは神からお告げです。








最初は使命感に駆られて動いてたノアが、次第に常軌を逸した行動に出る辺りダーレン・アロノフスキー作の主人公そのもの。
聞けば『π』を撮った頃から元々温めていた企画なのだと。
あのカタストロフを描くにはCG技術の発達は不可欠。
そう考えると今のタイミングでの映画化は至極納得のいく話。

最初はノアの役をクリスチャン・ベールにオファーしていたらしいのですが、他の契約があって実現せず、彼が選んだ作品がリドリー・スコット監督のこれまた聖書を元にした『エクソドス(原題)』のモーセだと言うのは面白い話。

ここに来て宗教映画の大作が続きますが、聞く所によるとハリウッドは今やアメリカの1/3を占めるキリスト教福音派を一つの巨大なマーケットと見なして貪欲にビジネスしている様です。
このビジベス根性見習うべし。

ただですねこの映画、福音派をターゲットにしてる割に全体に宗教臭く無いんですよ。

よく聞く批判の一つに、ただの布教の為の映画だ、って声を聞くんですけど、そもそもダーレン・アロノフスキー自身は無神論者。
彼に布教する義理は無いはず。

で、そのことを端的に表すシーンが劇中にあるのですが、それは天地創造の件。
このシーンがですね、ナレーションでは旧約聖書の『創世記』冒頭をなぞってるんですけど、映像がもろに進化論。
海が出来て、生物が生まれて陸に上がり、四足歩行から二足歩行になって、猿人へと。
さすがに猿人から人間への進化は描かれてませんでしたが、このどっちつかずの折衷映像を観た瞬間誰もが思ったでしょう。
あ、ダーレン・アロノフスキー、日和ったなと。

私も思いました。
正直笑いが止まりませんでした。

ただ思い返すと、あれは彼の精一杯の苦慮の痕なんだと考えを改めました

今の世の中で聖書に忠実に、科学を無視したことをやったとしたら、物語の根幹を成す家族の話が宙に浮いて、途端に嘘くさくなりますよ。
ギリギリの所で現実の世界との繋がりを持たせたから普遍的な話になり得てるんだと。
ギリギリでですよ、ギリギリで。






心配してましたけど、大変楽しく鑑賞しました。
表面的なことで言えば、前半のファンタジーちっくなパートも好きですし、岩の妖精も格好良くて好みです。

ただ、確かにダーレン・アロノフスキーの映画になってるんですけど、なぜにノア?
もっと他に良い題材あっただろ、と思わずにはいられないそもそも論。
プラス、やっぱり日本人の自分からすると聖書が題材って部分が、すこしばかりのノイズになって100の気持ちで楽しめないのは確か。

ダーレン・アロノフスキーよ、次に期待してるよ。



<あらすじ>
ある夜に見た夢で、世界が大洪水に飲まれ滅びるということを知ったノアは、強い使命感に突き動かされ、家族とともに罪のない動物たちを救うため巨大な箱舟を作り始める。ノアの父を殺した宿敵ルバル・カインは、ノアから力づくで箱舟を奪おうとするが、争いの最中に大洪水が始まってしまう。箱舟はノアの家族と動物たちをのせて流され、閉ざされた舟の中でノアは神に託された驚くべき使命を打ち明ける。
映画.comより




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