『Inside Llewyn Davis』
2013/米・仏 上映時間104分
監督・脚本・製作:ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
製作:スコット・ルーディン
製作総指揮:オリヴィエ・クルーソン 他
撮影:ブリュノ・デルボネル
編集:ロデリック・ジェインズ
キャスト:オスカー・アイザック
キャリー・マリガン
ジョン・グッドマン
ギャレット・ヘドランド
ジャスティン・ティンバーレイク 他
96点
”あの兄弟がこんなに優しい映画を撮るなんて”
先日2014年上半期のベストを出しまして、この作品も6位に入れまして。
手前味噌で申し訳ないのですが、べた褒めで行きたいと思います。
思い返すほどに愛おしい。
こういう映画が私は好きです。
一見すると地味な映画ともされそうですが、その中でドラマを見いだそうとするならば、私はこの映画を”1曲目と2曲目の間の物語”と見ました。
映画冒頭、オスカー・アイザック演じるルーウィン・デイヴィスがステージで『Hang me,oh hang me』を歌う所からこの映画はスタート。
この歌はひたすら「俺は首を吊るー、いまに死ぬぞー」と歌ってる曲。
どん底の歌を朗々と歌い上げるルーウィン・デイヴィス。
歌い終わるとステージを降りて、ここから時勢は1週間過去に遡ります。
そして一週間、居候宅の猫を手違いで連れ回したあげく逃がしてしまったり、一夜を共にした女友達の妊娠が発覚して罵詈雑言を吐かれまくったり、自分のポリシーに反するポップスを歌って小金を稼いだり、オーディションに向かうため遠いシカゴまで車を走らせ結果断ったりとあまりにいろいろなことが。
NYに帰って来たルーウィン・デイヴィスはもう歌う自信が無い。
ミュージシャン稼業から足を洗って船員になろうとするもそれすらも上手く行かない。
精魂尽きて再び居候宅に戻ると、温かく迎えてくれる夫妻と、自力で帰って来ていた逃がした猫。
次の日。
再び馴染みのステージに上がるルーウィン・デイビス。
ここで冒頭のステージに時勢が戻り、『Hang me,oh hang me』を歌います。
そして、二曲目を歌いだすのです。
その曲が、中盤で明かされるかつていた相棒と二人で歌っていて、今まで歌うのを拒んでいた曲。
それはルーウィン・デイビスが決めた過去との決別なのか、決意の現れなのかもしれないですが、そうと分かるシーンは一切無い。
ただ、冒頭とラストを繋げる構成でルーウィン・デイビスの変化を見せる。
良いです。凄く良い。
主人公を、少しではあっても、この先のことはわからなくてしっかり成長させる。
この優しい視点。
コーエン兄弟がこんな優しい映画を撮るなんて。
しかも何が良いって、しっかり歌がエモーショナル。
その分日々の描写は淡白に。
この緩急も凄くいい。
劇中の猫も本当に動き。
猫が表すものは、今は亡き相棒でも、ルーウィン・デイヴィス自身なんだと2回目を見て。
車に猫を置いていくシーンは最高です。
劇中の歌も抜群に良い。
オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジャスティン・ティンバーレイク。
この三人の実際の歌、最高です。
サントラは勿論買いましたし、アナログ盤も思わず購入してしまいました。
今年のベストサントラは決まりです。
間違いない。
社長「毎日聞いて、"42”の完成を待ってるよ」 |
思い返すほどに味わい深くて、愛おしくなる映画。
日比谷のシャンテの地下のシアター1で観たのですが、平日でお客さんもまばらで、その中に会社帰りの方だったり、ギターを抱えた恐らくミュージシャンと思われる人、年配のご夫婦等々いろんな人がいて、シャンテの地下は段差が無い平面の劇場なので、スクリーンに反射する光で皆さんの顔が見えるんですよ。
その顔がまた皆さん良くてですね、自然に笑い声も上がるし、劇場内が本当に温かい良い雰囲気で。
この映画体験含めて、本当に思い入れのある一本になりました。
<あらすじ>
1960年代のフォークシーンを代表するミュージシャン、デイブ・バン・ロンクの生涯を下敷きに、売れない若手フォークシンガーの1週間をユーモラスに描いた。60年代の冬のニューヨーク。シンガーソングライターのルーウィンは、ライブハウスで歌い続けながらも、なかなか売れることができずにいた。音楽で食べていくことをあきらめかけていたが、それでも友人たちの助けを借り、なんとか日々を送っていく。
映画.comより
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