2014年7月25日金曜日

好きっていいなよ。


好きっていいなよ。
2014/日本 上映時間102分
監督・脚本:日向朝子
撮影:月永雄太
照明:木村匡博
音楽:高見優
原作:葉月かなえ「好きっていいなよ。」
主題歌:ワン・ダイレクション「ハッピリー」

キャスト:川口春奈
福士蒼汰
市川知宏
足立梨花 他


5点



”最高のルドビコ療法”






最寄りのTOHOにて鑑賞。
本来なら”この手の作品”は避けてるんですけど、その時はTOHO一ヶ月フリーパスなるものを持ってたもので、いっちょ観るか!!と、割とそんなに後ろ暗い気持ちは無く鑑賞。

それにですね、鑑賞するにあたってもう一つ大きな理由がありまして。
それは、去年鑑賞した『カノジョは嘘を愛しすぎてる』
これが驚く程に良作だったこと。
全く期待せずに観に行って、何なら悪態でもついてやろうと、ちょっと不純な気持ちで観に行ったんですけど、まんまと絡めとられて劇場を後に、ですよ。
去年一番の掘り出し物の一つです。

中高生向きの映画だなんだと馬鹿にするのは良く無い。
良質な作品だってあるんだ。
そう思わせてくれた本当に素晴らしい映画でした。



・めくるめく、キネマの思ひ出/カノジョは嘘を愛しすぎてる



今作でも奇跡は起こるのか。
『カノ嘘』程の奇跡はないにしても、ある程度は楽しめるだろう。

私はその後に起こる悲劇も知らず、ただ映画を楽しもうとする気持ちだけを持って劇場へ向かいました。

結果、私が目にしたものは映画ではありませんでした。
映画に似た何か。
いや、映画に似せようともしてない映画みたいな何か、つまり”エーガ”です。

私が観たものは”エーガ”でした。

この”エーガ”を観ると言う行為はですね、さながらルドビコ療法のようで、ひたすらもがき苦しむだけの上映時間102分。


もう一度言います。
私は本当に映画を楽しもう。
その気持ちだけを持っていたのです。

中高生向けの映画に理解の無い映画ファンがわざわざ難癖を付けてる訳ではありません。

フラットな気持ちで鑑賞したのです。
で、結果がルドビコなんですよ。

こいつは結構な事態ですよ。




まず先に良かった所、と言いたいんですけど、無いです。
普段可もなく不可もない映画は、役者さんの演技はとりあえず悪く無いねみたいなことを言ってお茶を濁すんですけど、今作に関してはそれすらない。
と言うより、役者さん達が全く演技させてもらえてないですよこれ。
あまりに主演の二人が可哀想です。
意味も無く遠くにカメラを固定で置いて、その前でだらだらだらだら漫画からそのまま抜き出したような台詞を言うだけ。
こんなの演技じゃない。


要するに、役者に演出が全く付いてない。
挙げ句、明らかに川口春奈ちゃんが台詞に詰まってるのに、それがO.Kテイクになってる始末。

これは監督含め作り手の責任です。
役者さんに批は無いです。

責任と言うかやる気の問題だと思うんだけどなぁ。







原作漫画から映画化するに当たってのアイディアだとか工夫が全く感じられないずさん極まりない脚本。
漫画のエピソードをただ順番に並べてエンドロール流せば映画になるとでも思ってるの?
本当におめでたいですね。

どれだけ”漫画のエピソードを並べただけ”なのか、今から説明しますと、映画が始まって割とあっさり主役の二人がくっ付きます。
まず、この二人が付き合い出す馴れ初めに当たる部分が到底理解出来るものではないんですけど、いいです先に進みます。

あれ?もうくっ付いた。
スピーディーに話進めますねぇ、なんて思ってふと時計を見ると上映開始約20分。
あと残り80分。

ど、どどうするの?
と不安になっていると、ここから延々続く、二人のノ・ロ・ケ。
こここそがこの作品のルドビコ療法たる所以です。







とにかく二人がノロケる。
そして喧嘩する。
で、キッスで仲直り。

これが3回続くんです。
しかも、喧嘩の理由は全て同じ。
恋のライバルが出現して、片方が嫉妬に駆られて、険悪ムード。
そしてキスキスキス キスキスキース どこでもどこまでも。
これが綺麗に3回。

あれぇ、これさっきも観たなぁと思いながら。
また新キャラ登場。
あれぇ、これさっきも観たなぁと思いながら。
また新キャラ登場。

エンドロール。

えぇ!!!!!


あのねぇ、新キャラを登場させないと物語が動かせないって脚本としてあまりに致命的だし、原作マンガがそうなんだから仕様がない何てほざくのなら映画なんて撮るな。


考えてみると、これって本当に漫画の構成のそのもの。

冒頭で引き合いに出しました『カノジョは嘘を愛しすぎてる』ですが、あれは物語の焦点を絞って、例え恋のライバルが登場したとしても、話の中心に二人の関係があるから物語がぶれないし、その二人を繋ぐものとして音楽が登場するから、ヒロインがデビューに向かっていくのと同調してしっかりお話は直線構造になってる。
映画用のアレンジと工夫が行き届いてたんです。

ところがどうです今作は。

話があっちに行ったりこっちに行ったり。
少しは落ち着けよ。
落ち着いたはいいけどもうその話観たんだけど。

最後のエピソードに至ってはラスト15分に詰め込んだ投げやりムード。
その割に主人公がいきなりモデルデビューするなんてトンでも展開。



ルドビコルドビコー。







自分の中にダメ映画の基準があって。
私自身、そもそも「映画」自体が好きなので、どんな映画でも、それが映画であるならば、その中で良い悪いはあっても、劇場で観られるだけで一定の満足は得られるんです。


私が考えるダメ映画は、その「映画」への愛が無く、理解すら無いもの。
もっと言うと、映画を馬鹿にしてるとしか思えないもの。
これが私の中のダメ映画の基準なんです。

ただね、私だって、そんな愛を知らずに生まれてしまった”映画みたいな何か”を愛でる心の広さが欲しいですよ。

でもね、結構こいつら凶暴だったりして、手を出すと噛んで来たりするんですよ。
なんか胴体にネバネバした変な液体付いてるし。
ちょっと触るとそれが付くんですよ。

こんなのどうやって愛せと言うの!!


『好きっていいなよ。』なんていい、とにかく『カノジョは嘘を愛しすぎてる』を、騙されたと思って観てください。

完璧な作品とは言いません。
少女マンガ的な展開に恥ずかしくなってしまう箇所もあります。

でも、主演二人の瑞々しいやりとり、大原櫻子さんのスパークした魅力、音楽で心通わす瞬間の見事さ、ライブシーンのカタルシス、ラストのキレ。

どれも素晴らしいです。

騙されたと思って、是非。




<あらすじ>
友人も恋人も作らずに生きてきた16歳の女子高生・橘めいは、ある日、学校一のイケメン・黒沢大和に過ってケガをさせてしまう。しかし、大和はめいを気に入り一方的に友だち宣言した上、ピンチから救うためにキスをする。優しく一途な思いを秘めた大和との日々を通して、めいの周囲には初めての友だちや恋のライバルも出現。時には悩み、傷つくこともありながらも、めいは初めて恋というものを知る。
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