『Predestination』
2014/豪 上映時間97分
監督・脚本:マイケル・スピエリッグ
ピーター・スピエリッグ
製作:パディ・マクドナルド
ティム・マクガハン 他
製作総指揮:ゲイリー・ハミルトン
音楽:ピーター・スピエリッグ
撮影:ベン・ノット
原作:ロバート・A・ハインライン「輪廻の蛇」
キャスト:イーサン・ホーク
サラ・スヌーク 他
80点
”回る回るよ、時代は回る”
80点満点の80点。
ジャンル映画としては申し分なし…!!
観賞後にあれこれ考えると、あそこがここに、ここがあそこにとパチパチパズルがハマっていくような感覚がとても気持ちいい。
ただ、なんて病んだ話なんだ…。
ネタバレが危険な映画になってます。
一切の情報を入れずに観た方が間違いありませんのでご注意を…!!
この作品を鑑賞後、どうしても連想してしまったある曲はありまして。
それが中島みゆきの「時代」
まわるまわるよ 時代はまわる
喜び悲しみ 繰り返し
今日は別れた恋人たちも
生まれかわって めぐりあうよ
元々仏教思想的な”輪廻転生”がモチーフのような曲なので、今作とがっちり合うのは当然と言えば当然なんですが、この作品が持つ病んだ輪廻の構造を思うと、少し切なさが増してくる。
原作のタイトル「輪廻の蛇」
映画を観終わった後にこのタイトルを知ると、そうかなるほどと膝を打つ思い。
この作品のテーマはズバリ”輪廻”。しかもタイムスリップで時空を超えた物凄くこじれたもの。劇中では”運命”なんて説明されてましたけど、このこじれ方がまた切なく病んでる。
映画冒頭、爆弾魔を追ってタイムスリップした先である一人の男と出会うイーサン・ホーク。この男の身の上話の独白がほとんどを占めて、一体話がどこに向かうのかが分からない前半部。
私の拙い文章力と、あらすじを屑々と説明する無粋さではこの作品の魅力の一割も伝わらないと思うのでズバッと言ってしまうならば、この冒頭で出会う男とイーサン・ホーク、そして追っている爆弾魔、全てがなんと同一人物。そして、この構造が病んでいるのは、男は元々女性であって、ある男に恋をし、その人の子を身籠り出産。が、恋をした男は何処かへ消え、自分の子供も連れ去られ、後悔と怒りを抱えて生きている。
この、恋する男、その人との間の子、子を連れ去った人物、全てがなんと同一人物。
自分が自分に恋をし、自分を生み、唯一の目的であった追っている爆弾魔も自分であった。
どうですこの病み具合。
”輪廻”とは元々生まれ変わって次の時代に生きることを言いますが、これは見事な輪っか。
煉獄に捕われているようで救いが無い。
するとどうです、中島みゆきの「時代」の歌詞も、『プリデスティネーション』を観た後だと意味が変わって、物凄く病んだ歌に聴こえませんか。
全体の世界観に無駄が無くカッコいい。
SF映画は全体のビジュアル構築が魅力の9割だと思っているのでこれは良い。
観ていて思ったのは、この監督兄弟ジョン・カーペンター好きなんだろうなぁということ。そしてこれが語り口にドンピシャでハマってる。
劇伴が特にエンリオ・モリコーネを思わせるような、ボボボンボボボンとベースが強調された音で凄く良い。『遊星からの物体X』みたいでカッコいい。
『ニューヨーク1997』でカーペンター自身が音楽を担当したように、監督自身が音楽を担当してますから明確に作りたい音があったんでしょう。
シャンル映画はこう言う部分が凄く楽しくていい。
そして作り手と趣味が同じだと尚良い。
ただ、それが鼻白むような目配せに終わらず、しっかり映画の語り口として機能していることが絶対。
その点でいい出来、満足。
観終わった後の謎が解ける気持ち良さ。これだけで凄く満足。
お話を追うだけでも十分楽しい映画ですが、お話の語りを一歩間違えると空中分解しそうなところ、その微妙なバランスの情報の出し引き、綱を渡るような難しいことを無理無くやってのけている。
確かに感の良い人なら序盤で気付きそうなものですが、私は心底驚きました。
・オマケ
レゴでプリデスティネーションを再現してみました。
<あらすじ>
SF小説の大家ロバート・A・ハインラインによる短編小説「輪廻の蛇」を、イーサン・ホーク主演で映画化。時間と場所を自在に移動できる政府のエージェントが、凶悪な連続爆弾魔を追うためタイムトラベルを繰り返す姿を描いたSFサスペンス。1970年、ニューヨーク。ある流れ者によって不遇の道を歩まされたという青年の身の上話を聞いた酒場のバーテンダーは、自分が未来からやってきた時空警察のエージェントであることを明かす。青年の人生を狂わせた流れ者への復讐のチャンスを与えるため、バーテンダーは1963年にタイムスリップし、当時の青年をエージェントに勧誘するが……。監督は「デイブレイカー」でもホークとタッグを組んだピーター&マイケル・スピエリッグ兄弟。
映画.comより
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