『Begin Again』
2014/米 上映時間104分
監督・脚本:ジョン・カーニー
製作:アンソニー・ブレグマン
トビン・アームブラスト 他
製作総指揮:ナイジェル・シンクレア
ガイ・トースト 他
撮影:ヤーロン・オーバック
編集:アンドリュー・マーカス
音楽:グレッグ・アレクサンダー
キャスト:キーラ・ナイトレイ
マーク・ラファロ
ヘイリー・スタインフェイン 他
92点
”歌の力で景色が輝き出す”
新宿ピカデリーにて鑑賞。
何気ない気持ちで観に行ったらこれが素晴らしく力の抜けた、それでいて秘めたるパワーは物凄い映画。
大仰な演出は無しに、何気ない歌の力をストレートに感じられるフランクな映画。
サントラ必携必聴。
元々ミュージシャンだった監督ジョン・カーニーの、音楽の力を信じた演出が素晴らしい。
ドカンとラストステージに向かって盛り上げていく熱い音楽映画も大好きですが、今作のフランクな音楽描写もまた堪らない。
例えば映画中盤、お互いのプレイリストを聴かせ合いながらニューヨークの街を軽快に歩くシーンに見るあの多幸感。
相手がどんな曲が好きなのか、なぜ好きなのか。そこから垣間見えるその人の好みだったり価値観は、どんな言葉よりも雄弁にその人となりを語る気がするし、何より聴かせ合ってるこの時間が愛おしいし楽しい…!!
劇中のマーク・ラファロの台詞にあるように、歌は街の景色を変えるもの。
見慣れた景色も、そこに音楽があればその表情を変える。
このシーンで感じられる音楽の力は、普段の我々の音楽との付き合い方そのものだと思うんです。
音楽を聴くことで心が潤って、それが世界の見え方に影響を及ぼす。
言葉にすると陳腐でも、音楽を聴いた時の感覚ってこういうことなのかも。
個人的にMr.Childrenの「エソラ」を連想したり。
”二足歩行している 空っぽの生き物
無意識にリズムを刻んでいる
フルボリュームのL-Rに
萎んでた夢が膨らんでく”
”メロディーラインが放ったカラフルな魔法のフレーズ
輝きを撒き散らしては僕らに夢を見せる”
Mr.Children「エソラ」
ニューヨークの街並、その切り取り方も素晴らしい。
落ち目の音楽プロデューサーであるマークラファロが、起死回生のアイデアとして実行する街全体を使っての屋外レコーディング。
地下鉄のホーム、ビルの屋上、路地裏。様々な場所でゲリラ的にレコーディングを行う訳ですが、その少し悪さをしているドキドキ感も何とも楽しいところだし、音がニューヨークの街並に飛び出していくようで凄く解放的で気持ちいいし、その逆に街の喧騒が音楽に溶け合うにも気持ちいい。
皆で音楽を奏でる楽しい空気。これだってストレートに良いです。
ビルの屋上での録音。来たはいいものの遠慮して参加しない娘。意を決してギターを手に…!!
私も学生時代に音楽をかじっていたので、上手い人の演奏に飛び込むその気持ち、よぉ〜く分かります。
大概は上手い人がどうにかしてくれるから、多少のミス何てどうにでもなるんです。
むしろこっちが気持ちよく演奏出来るよう煽ってきたりしてくれる。
娘がその後バンドを組もうとする流れは至極自然な流れ。
その中で父親とも良好な仲にこれも自然な流れ。
キーラ・ナイトレイの歌声、これがちょうどよく上手くて良い。
劇中で彼女はプロではないので、少し声のかすれた感じとかが逆にリアルに感じられる。
マーク・ラファロが彼女に才能を見出すシーンも素晴らしい。
序盤でいまいちの盛り上がりだったステージ。時制は過去に戻り、今度はマーク・ラファロの視点から冒頭のステージを映す。すると、彼の頭の中で曲のアレンジがリアルタイムでハマっていく。彼の頭の中では音楽が最高の音楽が鳴っている。
元ミュージシャンの監督ならではの分かってる演出。いいよー。
ラストの着地も素晴らしいですよ。
まさに『Begin Again』、はじまりのうたですよ。
<あらすじ>
イギリスからニューヨークへとやって来たシンガーソングライターのグレタは、恋人デイブに裏切られ失意のままライブハウスで歌っていたところを、落ち目の音楽プロデューサー、ダンに見出される。ダンに誘われてアルバムを制作することになったグレタは、ニューヨークの街角で次々とゲリラレコーディングを敢行していく。
映画.comより
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