2013年7月16日火曜日

リアル〜完全なる首長竜の日〜

2013/日本 上映時間127分
監督:黒沢清
製作総指揮:平野隆
田代秀樹
脚本:黒沢清
田中幸子
原作:乾緑郎『完全なる首長竜の日』

キャスト:佐藤健 (藤田浩市)
綾瀬はるか (和淳美)
オダギリジョー (淳美の担当編集者)
染谷将太 (淳美のアシスタント)

『和製インセプション』ではない!!
TBSが出資している、いわゆる”テレビ屋映画”って時点で、普段ならあまり積極的には行かない類いの映画だし、予告を観た印象が「もろにインセプションじゃん!!」だったので、観ることはないだろうと思っていたのですが、監督が黒沢清だと知り、態度を改め観てきましたよ。
どんな映画であれ、観ずに作品に対する態度を決めるのはダメですね、反省しています!

で、まず感想を先に述べると、
前半は面白い!!ただ後半が退屈。
和製インセプションではありませんでした


相手の深層心理に入る機械「センシング」

黒沢清作品を初めて観たのは、中学生の時、主演の麻生久美子目当てでレンタルした『回路』でした。
これホラー映画なんですけど、もの凄い、不気味に恐ろしいんですよ。ビックリ箱的に人を脅かすんじゃなくて、人のようだけど人じゃない、何かが立ってるんですよ。それが不穏にこっちに向かってくるんです。それもぎこちない、奇妙な歩き方で。それをカットを割らずに、ワンカットで撮るんです。全編そんな感じで進むもんだから、映画全体の雰囲気がもの凄く不気味で、怖いんです。
この映画にある、違和感みたいなものに見事に魅了され、同じ黒沢作品の『CURE』を続けて観て完全ノックアウトです。


 『舟を編む』でも出版会社で働いてましたよ、オダギリジョー

では、今回の『リアル〜完全なる首長竜の日〜』はどうかと言いますと、前半はもう前述のホラー的と言っていいような演出全開です。もう、怖かったです。
例えば、劇中で佐藤健が物を探すシーンがあるんですけど、極端に画面の右に佐藤健の身体がアップで寄っていて、左ががら空きなんです。そのシーンが無音のワンカットで結構長く続くもんだから、観ているこっちは、怪しい、絶対左に何か来る!!と身構えて緊張しますよね。そしたら何事も無くカットが変わり、ホッとしていたらエレベーターの中になんと!!!!
声上げちゃいましたよ。
考えてもみてください、舞台は相手の頭の中、深層心理な訳ですよ。その時点でもう不気味なことが起こる舞台は整っている訳です。
前半はそんな演出てんこ盛りで、観ていて飽きません。

しかし中盤で、ある物語上重大な事実が明かされてから、すーっと尻すぼみ。と言うか、全く別の映画が始まってしまいます。




ネタバレしつつ、このお話を要約すると、自殺未遂で昏睡状態に陥った妻(綾瀬はるか)の深層心理に侵入して、意識を回復させる、ってのがお話の流れなんですが、中盤で、実は昏睡状態になっていたのは佐藤健であったことが明かされるます。なんと!!
で、なぜ意識が回復できないかと言うと、幼少期に、2人の仲に嫉妬した友達モリオ君が溺死するのを見殺しにしてしまい、罪悪感を首長竜のせいにして絵に描いて封印するんです。つまり、ずっと深層心理に存在していた、友達に対する罪の意識が佐藤健を縛っているために、現実世界に戻って来れないんです。首長竜は2人の秘密であると同時に、罪の意識でもあるわけです。


幼少期を過ごした島


お話だけ聞くと面白い展開になりそうじゃないですか。それがそうでもないんですよ。全体的にテンポが悪いんです。正直、退屈でした。
佐藤健の容態が悪化、もう手の施しようがない、ってことで、最後の望みを掛けて綾瀬はるかが意識下に潜り込みます。すると、モリオ君と健くんが船に乗って海の向こうへ行こうとしているではありませんか。大声で止める綾瀬はるか。あっさり戻ってくる佐藤健。
するとなんと、怒ったモリオ君、首長竜に変身。
賛否は置いておいて、首長竜凄く良かったですよ。違和感ない。観てて楽しいです。
ただ解決の仕方がね、お粗末ですよ。


首長竜は凄い良く出来てましたよ


最後は首長竜を追っ払って万事解決、となるわけですが、そもそもこれ佐藤健の頭の中の話なんですよね。罪の意識を乗り越えたってことになってるけど、凄い手前勝手な気がしてならないんですよ。結局あんたの案配じゃんと。2人の力で乗り越えたことに意味があることは分かってるんですけど、何か腑に落ちない。
ただ、オープニングと台詞を呼応させて終わらせるラストのカットは中々味わい深かくて、余韻には浸れます。あの場面は現実なのか、意識下なのか。

ただ!!
その余韻をミスチルのテーマ曲がぶち壊しですよ!!
ミスチルは大大大好きなんですよ。去年のLIVE、[(an imitation)blood orange]tourにも参加しましたよ。大好きなんです。
あんなハードな曲この映画に合わないですよ。曲自体は凄くいいんですけどね。
過去にもあの悪名高き『恋空』『どろろ』にも楽曲提供してるんですよ。ちょっといただけない。
ミスチルの曲、あまり映画に合わない気が。

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