2013年7月26日金曜日

パンズ・ラビリンス

2006/メキシコ・スペイン・アメリカ 上映時間119分
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
製作:ベルサ・ナヴァロ
アルフォソン・キュアロン 他

キャスト:イヴァナ・バケロ (オフェリア)
ダグ・ジョーンズ (パン)
セルジ・ロペス (ビダル)
アリアドナ・ヒル (カルメン) 他

物語の力
『パシフィックリム』が8月に公開されるってことで、ギレルモ・デル・トロ作品『パンズ・ラビリンス』を観てみましたよ。これがまあとんでもなく面白かった!
クリーチャーの造形、残酷描写、見る人はちょっと選んでしまうかもしれないですけど、観たらたちまちに大切な一本になること間違いないです。



悪いヤツなんだよヴィダル


おそらく不思議の国のアリスを意識したのではないでしょうか、劇中もろにアリスの格好をしてますし。
でも主人公のオフェリア、早々にアリスの服を脱いで、泥まみれになりながら冒険をします。これがこの映画を象徴するものの一つであると思います。要するに、ダークな不思議の国のアリスです。



奇麗な服を脱ぎ捨てて

冒険へ


内戦でお父さんを亡くしたオフェリアは、妊娠中の母と一緒に再婚相手で独立政権大尉のヴィダルの所に行くことになるんですけど、これがまあ絵に描いたような悪者なんですよ、もう。こんな救いようのない悪、『十三人の刺客』の稲垣吾郎ちゃん『ジャンゴ』のデカプリオぶりですよ。

生まれてくる自分の子供にしか気にかけないヴィダルと、そんな夫の気をうかがってオフェリアを顧みないお母さん。
新しい生活はオフェリアにとってただただ苦痛でしかないのです。
そんなある日の夜、オフェリアの前に妖精が現れて、森の奥の迷宮に連れて行きます。
そこにいたのが、頭は羊、身体は人間、足は逆間接の”パン”と名乗る迷宮の番人。
彼が言うには、”オフェリアは地底の王国の姫君で、この迷宮が王国の入り口である”と。しかし、”姫君であること確かめるには、3つの試練を果たさねばならない”と、読んでいた本と全く同じことを告げるのです。
そうしてオフェリアは、夜な夜な3つの試練に挑むことに。



迷宮の番人”パン”


観ている途中、真っ先に思い出したのは『ライフ・オブ・パイ』でした。
結末は違えど、語られているテーマは同じ”なぜ人は人生に物語を求めるのか”だと思います。
過酷な現実を前にして、なぜ人は物語を求めるのか。
それは、物語の持つ力が、過酷な現実にぎりぎりで対抗出来る力の一つであるからではないでしょうか。
それは、『パイ』がそうであったように、ある人にとっては宗教であるし、信仰であるし、オフェリアにとっての本であるし、空想でもあるでしょう。

現実の世界が容赦の無いほど過酷に描かれている分、ラスト、オフェリアの魂がついに救われる場面のカタルシスはもう凄いものですよ。
ただ、その裏の現実で起こっていることを思うと、もの凄い切なさが襲ってきますが。



第二の試練


ギレルモ流クリーチャーの存在感は凄いことになっていますが、全体の比率から言って幻想のシーンはそんなに多くありません。ほとんどは現実世界のお話と言っていいでしょう。少ない出番でしっかりインパクトを残すクリーチャー。その分人間描写も怠らず丹念に。
ギレルモ・デル・トロの底力、恐るべし。

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