2014年12月31日水曜日
2014年新作映画全ランキング
間もなく2014年も終わり。
今年も沢山の映画を観ることが出来ました。
今年は劇場にて147作品鑑賞。
その中から旧作を抜いた新作映画109本全てのランキングを付けました。
今年の総評としては、ベスト10に入らずとも、同じぐらいベスト級に素晴らしい作品が多い。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『6才のボクが、大人になるまで。』の2作品がベストに並んでいることがもう自分にとってはとんでもな事態。
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』も最後までベストに入れるか悩んでいたし、下半期のベストに挙げた『グランド・ブダペスト・ホテル』なんか誰もが認める大傑作。既に賞を取り始めてますし。
皆が好きだからという理由でベストからは外しましたが、そりゃ好きですよ。ベスト級に。
と言った言い訳をしたくて付けたランキング。
全て私個人の好みなのをご了承下さい。
2014年12月29日月曜日
2014年新作映画ワースト5
今年は明らかな地雷を踏みにいくのは止めにしたんです。
時間とお金が勿体ないし、何より見切れないほど良い映画が掛かっているのにそれらを差し置いて地雷を踏みにいくなんて虚しすぎる。
と言うことを、今年『トリック 劇場版ラストステージ』を見ている最中に気が付いたんです。
なので、今年はワーストはいいかなぁと思っていたものの、それなりの数見ればやっぱり出くわす駄目映画達。
世の中上手いこと出来てますね。
恐らく多くの人のワーストに入るであろう『ルパン三世』『魔女の宅急便』は外しました。
確かに出来の良い映画でないのは確か。間違いなく駄作の部類なんですけど、『ルパン三世』に関してはそんなに思い入れが無いのもあってかそんなに悪い印象はないんですよ。
正直言いますと殆ど印象に無い。思い出せないんです。
これはこれで問題である。
なので、ワーストの基準は、怒りです。
金返せ、時間を返せ、映画を何だと思っているんだ。
鑑賞中にふつふつと怒りを感じた作品を選びました。
2014年12月28日日曜日
2014年新作映画ベスト10
2014年も幸せなことに沢山の映画を観ることが出来ました。
1月1日に『ゼロ・グラビティ (吹替3D)』を観てたと思ったらあっという間に年末モード。
今年は劇場にて137作品を鑑賞。
そこから旧作を抜いた新作映画104本の中から私の2014年ベスト10を決めました。
12月の頭位からぼんやり作品を選んでみたりしてたんですけど、その時点で30数本。
その中から厳選に厳選を重ね、見返し、悩みに悩んだ10本。
ランキングの総評としては、10位にこの作品が入ってることがもう自分の中では苦慮の跡を表してます。
そして何と言っても、自分の人生においてかけがえのない大切な作品に出会えてしまったこと。これが非常に大きい。
以下ベスト10になります。
ウガチャカー!!
2014年12月27日土曜日
ゴーン・ガール
『Gone Girl』
2014/米 上映時間149分 R15+
監督:デヴィット・フィンチャー
脚本:ギリアン・フリン
製作:レスリー・ディクソン
ブルナ・パパンドレア 他
音楽:トレント・レズナー
アッティカス・ロス
撮影:ジェフ・クローネンウェス
編集:カーク・バクスター
原作:ギリアン・フリン「ゴーン・ガール」
キャスト:ベン・アフレック
ロザムンド・パイク
リース・ウィザスプーン 他
98点
”完璧なあなたと完璧な私で、クソみたいな結婚をするの”
最寄りのTOHOシネマズにて鑑賞。
北米でフィンチャー史上最高の興収だとか、その評価も高いだとか、先行試写会組のテンションがトンでもなく高いだとか、そもそもフィンチャーの新作だとか、どうにもこうにも上がり出すテンション。
そして、前のめりに、鼻息荒く鑑賞。
こりゃ参った。ただの大傑作じゃないか。
ネタバレが非常に危険な映画なので、ご注意下さい。
2014年12月25日木曜日
超能力研究部の3人
『超能力研究部の3人』
2014/日本 上映時間119分
監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ
向井康介
企画:秋元康
プロデューサー:根岸洋之
金森考宏
撮影:四宮秀俊
音楽:きただしゅん
原作:大橋裕之「シティライツ」
キャスト:秋元真夏
生田絵梨花
橋本奈々未 他
90点
決定版”裏”山下敦弘
山下監督最新作で、しかも個人的に待望のアイドル映画。
”劇映画を撮るドキュメンタリーをモキュメンタリーで撮る”何てレイヤーが重なりまくりの、一体どんな作品になっているのか見当も付かない情報に胸躍らせていまして、これは期待しない訳ないでしょうよと公開日初日、ユナイテッドシネマ豊洲にて鑑賞。
これがちゃんと面白いんだから困ったもんだ。
そして期待と同時に、鑑賞前に入ってくる情報である予感がしていたんです。
その予感と言うのが、山下監督のフィルモグラフィにおいて、『リアリズムの宿』『リンダリンダリンダ』等が代表する長編作品を監督の”表”の顔とするならば、その”裏”に当たる、より癖の強い短編作品達。今作はその決定版的作品になるのではないか。
ずばりこの予感は当たってました。
結論から言うと今作は、”裏”山下敦弘監督の決定版。
小品の様に見えてかなりの重要作ですよ…!!
長編商業映画を手掛ける一方、コンスタントに短編作品、TVドラマも多く撮っている山下監督。
その中に、モキュメンタリー手法を使った作品が多数ありまして、一番有名な作品が『不詳の人』(2004)と『子宮で映画を撮る女』(2005)。
そして、今作のテイストに一番近い作品がTVドラマとして放送された『谷村美月17歳、京都着。〜恋が色づくその前に〜』(2007)。
谷村さん主演のドラマ、なんですけど、モキュメンタリーとしてお話が進んでいく中で、彼女の素だったり演技を越えた表情が垣間見える今作に近い作りの作品になっています。
モキュメンタリーの腕はこれらの作品で実証されている訳です。
で、今作『超能力研究部の3人』で新たに加わった要素が、現役アイドルが主演の純”アイドル映画”だということ。
元々の企画は、乃木坂46の「君の名は希望」のPV監督に山下監督が選ばれ、映画のオーディションを兼ねてその様子をPVとして撮ったことが発端で、ただこの時はまだ今のような手法を使った作品になるなんて全く考えていなかったようで、普通の劇映画を撮る予定だった所を秋元康が、もっと変わったことをやらないかと監督に提案し、今作の語り口に移ったんだと。
秋元康が山下監督の資質を知っていたのかどうかは定かではないですけど、その判断、ナイス。
確かに谷村さん主演のドラマは今作に似たテイストです。
でも、谷村さんは既に立派な女優。
方や今作の主演の3人は、アイドルであり、”女優”としてはまだまだの未熟な状態。
今作は、その彼女達を山下監督が女優にするその過程を見せる映画であり、パンフレットの言葉を引用するならば、3人をなんとかペ・ドゥナに近づけようとする作品。
その過程にモキュメンタリーとしての本当のような嘘を混ぜ、彼女達それぞれの素の表情、苦悩、葛藤をより濃くあぶり出す。その様がアイドル的に輝きを放ってしまう。そんな構造の映画。
モキュメンタリー故に今作には、これ本当!?それとも演技!?な瞬間に溢れているんですけど、分かりやすい所で言うと、休憩時間にピアノを弾く生田さんへのインタビュー。
ここで監督のある言葉を聞かされた生田さんは思わずぽろぽろと泣いてしまうんですが、監督のインタビューによるとその直後ケロッとした顔で話しかけられたらしいんですよ。モキュメンタリーと言う構造上、劇映画パート以外の素の自分をも演じている訳で、そう考えるとあれはもしかしたら演技だったのか…。
一方で橋本奈々未さんの雨の中の休憩時間、ベンチでの会話のシーン。
たわいもない会話の中で、話題が乃木坂の卒業を考えているかという話になった時、はっきりした明言を避けてお茶を濁すんですけど、ここはインタビューによると、その時の撮影が辛くて、終わる頃には乃木坂を卒業してアイドルを辞めているかもしれないと思っていたんだと。その時の一瞬の表情は演技ではなくて、フィクション(嘘)と素の表情が混じり合ったもの。そう言ったレベルでの素が至る所に映っているんです。
しかもこのシーン、雨がシーンの終りでピタリと止んだりとフィクション度の高いはっきりと作られたシチュエーションだと分かるんですけど、その中に素が現れ出してしまう。
予期したものではないにしても、こう言ったバランスが作品全体凄く良い。
これらは自然に垣間見える素の葛藤。
劇中に演者としても登場する山下監督、ばっちり彼女達に鬼の演技指導をして負荷を掛け、何かの表情を引き出そうと彼女達を追い込みます。
それが今作の白眉、駐車場での喧嘩シーン。
これがまぁスリリング。
秋本真夏さんが駐車場にいるヤンキーに喧嘩をふっかけるシーンなんですけど、その啖呵が弱いとテイクを重ねまくるんです。
何度も何度も演技をするもOKが出ない。
このシーンはっきりと山下監督、秋元さんを泣かせに掛かってます。
どうにもならないと急遽ヤンキー役の方とエチュードを始めるんですが、そこでも言葉が上手く出てこない秋元さん。
横から声を出して秋元さんを追い込む山下監督。
演技も出来なくて、アイドルってなんなの?とヤンキーに喧嘩を売られ、その凄く漠然とした問いに秋元さんは苦し紛れに「(アイドルは)みんなを笑顔にする」と答えます。
この台詞は間違いなく彼女の思い出あり、それを山下監督が引き出した瞬間。
ただインタビューでは、どうにも泣かなかったと悔しそうに語っている監督。
いけずなんだからぁ。
『不詳の人』『子宮で映画を撮る女』でお馴染み、舟木テツヲこと山本剛史も今作にばっちり登場。
今作だと統括マネージャー舟木として、『不詳の人』を思わせる様な山下監督との熱いバトルを展開しています。これが最高に笑える。
やりとりそれ自体も笑えるし、乃木坂の3人との会話での車の窓を閉めるタイミングそれだけで笑える。
この舟木の登場によってグッと作品の”裏”山下度が高くなってます。
というよりも、彼が登場したらそれはもう山下監督も遊んでいるということですよ。
つまり今作は、アイドル映画としての構造に、今までの短編作品のノリを掛け合わせた一本ということ。
『ありふれたライブテープにfocus』は未見なのですが、今作、長編映画として今までの短編作品的なノリを盛り込んだ、”裏”山下敦弘の決定版と言った間違いないのでは。
山下監督とは何者かと聞かれたら、私は『リアリズムの宿』『リンダリンダリンダ』そして『超能力研究部の3人』を観れば分かると答えます。
アイドル映画としての最大の魅力。
乃木坂の3人がとびきり魅力的に映ってます。
ここだけでも十分。
それプラスしっかり山下敦弘作品、しかもより濃い”裏”の方の。
今作が”裏”山下敦弘の決定版ならば、次作『味園ユニバース』
こちらは”表”山下敦弘の新たな面が観られるのではと期待しない訳にはいかない。
山下監督がジャニーズをどう料理するのか。
<あらすじ>
人気アイドルグループ「乃木坂46」の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未が初主演を務めた映画。「乃木坂46」の5thシングル「君の名は希望」のミュージックビデオも手がけた山下敦弘監督が、同ミュージックビデオ内で行われたオーディションで選出した3人を主演に据え、超能力やUFOを真剣に研究する女子高生の青春と、そんな女子高生たちを演じる3人のアイドルが女優として初めて挑んだ映画の現場で苦悩し、成長していく過程を、メイキング風のフェイクドキュメンタリーとして描いた。原作は、大橋裕之の連作短編漫画「シティライツ」。北石器高校の超能力研究部に所属する育子、良子、あずみは、同級生の森が楽々とスプーン曲げをしているところを目撃し、強引に入部させる。森はスプーン曲げだけでなく、人の心が読めるという能力も持っており、実は宇宙人であると告白。それを聞いた3人は、森が故郷の宇宙に帰りたいに違いないと決めつけ、UFOを呼び寄せようと奮闘するが……。
映画.comより
2014年12月21日日曜日
2014年 新作映画予告編トップ10
沢山の映画を観る。
そうすると、その倍以上の数予告編を観ているはず。
その中から、特に印象に残っている今年の新作映画予告編10本を挙げてみました。
予告編としての本来の役割、しっかり本編を観たくさせるかに加えて、短い時間でどれだけ情報を詰め込むのか、削るのか。作品のどの側面を切り取るのか、どこを押すのか。リズム、テンポも選ぶ基準。
予告を観たら、本編も観たくなる、はず…!!
10位.『アメリカン・ハッスル』International Trailer #1
オフィシャル予告のレッド・ツェッペリン「Good Time Bad Time」も良いんですが(使われてるのは『ザ・ファイター』)、本編でもばっちり使われてるELOの「10538 Overture」が今作のテイストを象徴していてGOOD。
「We all hustle to survive」のキャッチもいいじゃないですか。
この一文でテーマも語れてます。素晴らしい。
9位.『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』International Trailer
ノリ良しテンポ良し。
渋めな声のナレーションで進行していく感じが80年代SF映画の予告を思わせて凄く好きなポイント。
8位.『ウルフ・オブ・ウォールストリート』Official Trailer
曲のリズムに合わせてクレジットが出るタイプの予告は無条件で身体が反応してしまう。
「MORE」の文字が段々と大きくなっていくのも気持ちよく馬鹿っぽい。
本編で短い出演ながらも強烈なインパクトを放っていたマコノヒーも大盤振る舞い。
最後にはしっかりチェストソングも披露。
7位.『エクスペンダブルズ3 ワールズ・ミッション』Offcial Trailer #1
口笛「クワイ河マーチ」ですよ…!!
これの影響でしばらくふとした瞬間に口笛吹いてました。
ラストの打ち上げ風景を見せてしまう当たりのサービス精神も楽しい。乾杯!!
6位.『思い出のマーニー』劇場本予告映像
本編も好きな方ですが、その良い部分だけを抜き取った純度100%果汁の『思い出のマーニー』がこの予告。
5位.『Godzilla ゴジラ』Teaser Trailer
今作最高のシークエンスの一つ、HALO降下シーンをたっぷり味わえるのがこのティーザー予告。
タメてタメてタメて最後にゴジラの咆哮で終わるのも、本編でのゴジラ登場を思わせて良し。
4位.『複製された男』Official Trailer #1
とにかく本編が観たくなったと言う意味では今年トップの予告。
お話への興味に加えて、弦楽器の不協和音がホラー的な雰囲気を醸していて、全編に漂う不穏な空気も凄く良い。
重要な要素である”蜘蛛”もいい案配で入ってる。
一瞬挟み込まれる、蜘蛛の顔をした女とすれ違うギョとするようなカットもいい具合に気持ち悪くてGOOD。
3位.『インターステラー』Official Trailer #2
本編同様、ノーランの照れの無い希望が感じられてこの予告大好きなんですよ。
合間に挟み込まれる打ち上げカウントダウンも凄く効果的で、一瞬無音を挟んでから娘を抱きしめるマコノヒーが凄く良い。
そこからの劇伴も希望に満ち満ちている。マイケル・ケインの詩の引用も凄く良い。
この予告本編より好きかも。
2位.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』Official"Extended Look"Trailer #3
トレーラー#1の「Hooked on a Feeling」ver.も勿論良い。
でも私が押したいのはこの「Cherry Bomb」ver.の#3。
リズムが強調されて勇ましさが増した「Cherry Bomb」が良くて、それに合わせてクレジットが出る最高に気持ちの良いテンポ。
しかもクレジットで登場する作品が「IRON MAN」「THOR」「CAPTAIN AMERICA」「THE AVENGERS」ですよ。フー!!アガるなこりゃ。
#1がキャラ紹介に、映画全体のトーンの説明だとしたら、”負け犬達が銀河を救う”ポイントを強調した所も良い!!
ラヴェジャーズ艦隊が勢い良く駆け抜ける最高に気持ちいいシーンも挟み込まれていて本当に楽しい。
1位.『6才のボクが、大人になるまで。』Official US Trailer
この予告が素晴らしいのは、本編を観た後に観てみると12年分のアルバムをパラパラめくっていくようなそんな感じがして、何とも言えない映画本編とはまた別の感動がある所。
Family of the yearの「HERO」で既にうるっとくるんですが、何よりメイソンの12年分の成長を一気に見せる冒頭が素晴らしい。
それもこれも、本編が何より素晴らしいから。
1位.『6才のボクが、大人になるまで。』Official US Trailer
2位.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』Official"Extended Look"Trailer #3
3位.『インターステラー』Official Trailer #2
4位.『複製された男』Official Trailer #1
5位.『Godzilla ゴジラ』Teaser Trailer
6位.『思い出のマーニー』劇場本予告映像
7位.『エクスペンダブルズ3 ワールズ・ミッション』Offcial Trailer #1
8位.『ウルフ・オブ・ウォールストリート』Official Trailer
9位.『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』International Trailer
10位.『アメリカン・ハッスル』International Trailer #1
さあ、次は今年のベストだ。
2014年12月20日土曜日
ホビット 決戦のゆくえ (3D)
『The Hobbit:The Battle of the Five Armies』
2014/新・英・米 上映時間145分
監督・脚本:ピーター・ジャクソン
脚本:フラン・ウォルシュ
フィリッパ・ボウエン 他
製作:キャロリン・カニンガム
ゼイン・ワイナー 他
製作総指揮:アラン・ホーン
トビー・エメリッヒ 他
音楽:ハワード・ショア
撮影:アンドリュー・レスニー
キャスト:イアン・マッケラン
マーティン・フリーマン
リチャード・アーミティッジ 他
80点
”家に帰るまでが冒険”
前作『ホビット 竜に奪われた王国』がテンションの高いラストで終り、このいけず野郎続きを早く観せやがれ、とスクリーンに叫んでから9ヶ月。
まさか年内にシリーズ完結するとは。
とりえず、『ロード・オブ・ザ・リング』から続く13年に渡る大河、ここに完。
言いたいことがあったとしても、まずはピーター・ジャクソンの労をねぎらうことが先であろう。
ピーター・ジャクソン、お疲れさまでした。
ただ、言いたいことはあるにはある。
前作が少年ジャンプの終わり方か!と思ってしまう位に激アツテンションMAXのクリフハンガー的な終わり方をしただけに、その続きを受ける今作序盤のあっさり加減に正直ガックリ。
倒したと思ったスマウグがレイクタウンへ向かう絶望感溢れるラストに痺れただけに、冒頭であっさり倒される展開、原作がそうだとは言え、ガックリ。
と言うのも、元々この『ホビット』は2部作として企画が進んでいたのだと。
それが当初の予定を外れ3部作構成になり、新たにシーンを付け足したのが3部作目に当たる今作。その為に元々の副題『ゆきて帰りし物語』から、物語に合わせて『五軍の戦い(原題)』へ変更。
なるほど、それならば今作の色々な箇所に合点がいく。
このシリーズにしては上映時間が比較的短いのはそう言うことだったのか。
冒頭であっさりスマウグを倒し、物語は王国を奪還したドワーフ達と、エルフ、レイクタウンの面々の連合軍。そこに目覚めかけたサウロンとオークの連合軍が絡んだ5つ巴の戦いに以降していく訳ですが、この急に違う映画が始まった感も、前述の”大人の事情”を知ったならば納得。
では、肝心の今作の大半を占める合戦シーン。
これが楽しいのかと言うと、画的に手堅く楽しいけども、長い分食傷ぎみで戦術的な見せ場は無く基本数の勝負の戦いなので、各キャラのドラマ的な見せ場で盛り上がっても、戦い自体にはそれほどの新鮮味は正直な所無し。
3部作にした結果、今作を貫く”行って帰ってくるお話”、つまり「ゆきて帰りし物語」感がブレてしまっている気もする。
ただ、それでもラスト、仲間との分かれ、家の扉を開ける瞬間、ここで泣かない訳は無いでしょうよ。
劇中でビルボ関連のシーンでいいタイミングで流れる優しいメインテーマの旋律が良くて良くて。思うのは故郷ホビット庄の風景。
旅の果てに故郷を取り戻した仲間達と別れ、友人ガンダルフともお別れ。
冒険を終え帰って来たその背中は頼もしいもの。
家に帰るまでが冒険なんです。
故郷に着き家の扉を開け、一気に時制が飛び、『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』へと繋がるラスト。ここは良いと言う他無し。
レイトショー終り、映画鑑賞後の帰りの駅のホーム。
自分含めた帰路についてる人を眺めてるだけで不思議とグっときていたし、家のドアを開ける手も、いつもより力が入っていた、気もする。
文句が多めになってしまいましたが、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズと言うだけである程度の面白さは確実に保証されています。
シリーズの完結。
ピージャクの労をねぎらう意味でも観ない手は無い。
<あらすじ>
J・R・R・トールキンの名作小説を映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」へと続く「ホビット」シリーズ3部作の最終章。ビルボ・バギンズ、トーリン・オーケンシールドら旅の一行は、邪龍スマウグからドワーフの故郷を奪還することに成功するが、怒りに燃えるスマウグは町を襲う。スマウグから取り戻した財宝に執着するトーリンは、友情や名誉も犠牲にしても財宝を守ろうとし、その行為をいさめようとするビルボは危険な選択をせねばならなくなる。そうした中、魔法使いのガンダルフは、さらに恐るべき存在である冥王サウロンの復活に気付いていた。サウロンはオークの大群を放ち、その危機にドワーフやエルフ、人間といった中つ国に生きる各種族は、わだかまりを捨てて団結するか、さもなくば滅びるか、究極の決断を迫られる。
映画.comより
2014年12月19日金曜日
フューリー
『FURY』
2014/米・英 上映時間134分
監督・脚本:デヴィット・エアー
製作:ビル・ブロック
デヴィット・エアー 他
製作総指揮:ブラッド・ピット
サーシャ・シャピロ 他
音楽:スティーヴン・プライス
撮影:ローマン・ヴァシャノフ
編集:ドディ・ドーン
キャスト:ブラッド・ピット
シャイア・ラブーフ
ローガン・ラーマン
マイケル・ペーニャ 他
79点
”極限状態で生まれる男達の連帯”
同じデヴット・エアー監督作『サボタージュ』は、かなり歪な出来のバランスを間違えた駄作だと思っているので、今回の『フューリー』はどうなんだろうと少しの不安を抱えて劇場へ。
『サボタージュ』はやはり外部からのなんやかんやが作品のバランスを崩していたのでしょう。
どっしり構えた重厚な戦争映画として見応え十分。
ただなぁ、勿体ないなぁ。
今作で描かれている、兵士達の男の友情。
この友情を描くに当たって、誰が欠けてもならない戦車が抜群の効果を挙げていて、劇中でブラッド・ピットが、戦車は家だと言うように、彼等は仲間を越えた家族も同然の関係。共に戦火をくぐり抜けて来た経験が、彼等の友情の根幹。
そして、もう一つ重要な要素が、敵であるナチス、特に武装SSへの憎悪で、この戦火の経験と敵への憎悪が戦場において彼等を繋ぐ連帯の根幹にあるものなのです。
劇中、それらが露になる食卓シーンからの一連のシークエンス。
隊長であるブラット・ピットと新兵が、現地のドイツ人親子と食卓を囲んでいると、そこに浮かれた様子の隊の面々が。
そこからの不快感に満ちた振る舞いの数々は本当に吐き気がするほど。これは褒めてます…!!
今年観た映画の中でもトップクラスに不快なシーンで、故に最高。
整頓された室内に粗野な男達がいるだけで何とも言えぬ緊張感で、目の前であの娘がレイプされてしまうんじゃないかと終止ハラハラ。
その後、味方からの連絡で食卓はお開き。
新兵は茶化されながら恋に落ちた現地の娘とお別れをするんですが、その直後に爆撃によって彼女は死んでしまうのです。
ここに至って彼は、戦場の厳しさを知ると同時に、敵への憎悪が芽生え、その後の戦闘で自ら進んで敵を殺していくのです。
敵への憎悪が生まれたことで、真に仲間になった瞬間です。
敵への憎しみで連帯が深まるなんて一見すると不謹慎なようにも思えますが、これが今作が描こうとしている、戦場の極限状態が生む男達の絆であって、そんなのは不謹慎と言ったところで、それは安全圏の外野からの物言いであって、実際の戦場ではあれが真実。
戦場を美化することなく、ありのままの戦争を描く。
従軍経験のあるデヴィット・エアー的な視点。
描くものは男達の友情でも、そこに過度なヒロイックさは皆無。
ラストショット、俯瞰したカメラが引くことで映る死体の山。
ここで映し出す、死屍累々の戦闘の後を意地悪く見せることで、”敵味方関係のない戦闘の結果”がガツんと来る。
ただ、ここが今作において個人的に一番残念な箇所でもあって、ラストの戦闘で味方の無惨な死体の描写は絶対に必要だったはず。
暴力の果てに敵味方関係なく死んでいくカオスこそが最も描かれるべき描写。
頭ではこのシーンの熱は理解出来る。
でもそれ以上に、生理に訴えかけてくる視覚的な意地の悪さが欲しかった。
デヴィット・エアーならそれが出来るはずなのに。
賞レースにも掛かってくるであろう大作。
やはりここでも偉い人とのなんやかんやがあったんだと邪推。
でなければ、自決したブラピの死体が残ってるなんてありえない…!!
基本大満足なんですが、ちょっと厳しめに。
『エンド・オブ・ウォッチ』では容赦なかったんだから…!!
今作の白眉であるタイガー戦車との戦闘。
手にあせ握って最高です。
ここだけでも観る価値ありです。
ただなぁ、勿体ないなぁ。
<あらすじ>
ブラッド・ピットの主演・製作総指揮で、第2次世界大戦下、たった一台の戦車で300人のドイツ軍部隊と渡り合った5人の兵士たちの姿を描いた戦争アクションドラマ。「エンド・オブ・ウォッチ」のデビッド・エアー監督が手がけ、共演にはシャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャら豪華俳優が集った。1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の米兵ウォーダディーは、自ら「フューリー」と命名したシャーマンM4中戦車に乗り、戦いを続けていた。ウォーダディーと3人の仲間に新兵のノーマンも加わり、5人となった部隊は絆を深めていくが、進軍中にドイツ軍の攻撃を受け、他部隊がほぼ全滅。なんとか生き残ったウォーダディーの部隊にも、過酷なミッションが下される。
映画.comより
2014年12月15日月曜日
滝を見にいく
『滝を見にいく』
2014/日本 上映時間88分
監督・脚本:沖田修一
製作:井田寛
前田直典 他
企画:深田誠剛
プロデューサー:春藤忠温
小野仁史 他
撮影:芦澤明子
キャスト:根岸純子
安澤千草
萩野百合子
桐原三枝 他
80点
”40越えたら皆同い年”
去年の年間ベストに『横道世之介』を挙げた自分。
その沖田監督の新作とあらばと喜び勇んで新宿武蔵野館(都内この一館のみ)へ向かい鑑賞。
山で遭難した7人のおばちゃんのコメディ。
有名俳優皆無、全編山。
一体制作費は『インターステラー』の何万分の何なんだ!?
でも負けてないぞ!!
沖田監督のオフビートな作風が、おばちゃん達が醸し出すバイブスにまぁ合うこと合うこと。
変に笑いを意識しなくても、おばちゃん達の何気ない会話がそのまま掛け合いになってる面白さ。沖田作品に共通してる、会話の間から生まれる笑いがこの作品だとドンピシャ。
「飲む?」「中身は?」「ほうじ茶」「ナーイス」
食い気味の「ナーイス」で笑いに包まれる劇場内。
ひと際大きな声で、実感こもった様に笑う劇中のキャストと同年代のおばちゃん達。
この4DX加減も中々味わい深い。
さっきからおばちゃんおばちゃんと連呼してますが、とにかくこの純度高めのおばちゃん達の連帯感がなんとも頼もしいのです。
7人それぞれのキャラの描き込みも、冒頭のバス車内での何気ない行動でさりげなくもしっかり示す。巧い。
普段の生活では相容れないようなそれぞれも、遭難した山の中、食料を分け合い、腹の内を見せ合い、思い出話に花を咲かせ、シートに包まり就寝、の前に熱唱。
ある人物の夢のシーン。
趣味のバードウォッチングをしていると、謎の男が近づき話しかけてくる。
どうやら死別した夫らしい。妙に年齢が若いのは、亡くなった頃のままの姿なのか、一番幸福な記憶の中の夫の姿なのか。
足早に去って行き、行かないでと涙ぐむ。
でも、起こされ目を覚ましたならば、目の前におばちゃん6人の覗き込む顔に、頼もしくかけられる「帰るよ」との声。
この友情いい!!
平均年齢高めの『サニー 永遠の仲間達』のようなこの友情いい!!
確かに、滝に直行して温泉に入っていても良い旅行になったでしょう。
でも、遭難して、寄り道して、連帯し友情を育んでから見た滝は、謎の充実感と満足感に満ちていたことでしょう。
寄り道って、いいよね…!!
沖田監督地力恐るべし。
『インターステラー』の何万分の一の制作費でも、負けない位面白い映画は撮れるんだ!!
<あらすじ>
幻の滝を見に行くツアーに参加した7人のおばちゃんたち。写真を撮ったりおしゃべりに花を咲かせたり、それぞれの楽しみ方で紅葉のひろがる山道を進んでいくが、ガイドの男性が先を見に行ったきり戻ってこなくなってしまう。携帯の電波も届かない山中に取り残されたおばちゃんたちは、食料も寝床もないサバイバル生活を送るハメになり……。
映画.comより
2014年12月13日土曜日
インターステラー
『Interstellar』
2014/米・英 上映時間169分
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン
ジョナサン・ノーラン
製作:エマ・トーマス
クリストファー・ノーラン 他
製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ
ジョーダン・ゴールドバーグ 他
音楽:ハンス・ジマー
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
キャスト:マシュー・マコノヒー
アン・ハサウェイ
ジェシカ・チャステイン 他
85点
”人類を救う、親が子を、子が親を思う気持ち”
ノーランがこんな優しくロマンチックな映画を撮るとは。
4児の父はこの映画で高らかに愛を謳ってます。
予告の段階で、今までに無い程の、照れの無い希望に満ちた作品になると期待していたのですが、その予感的中。
『2001年:宇宙の旅』の流れを汲む硬派SF映画として見応え十分。
地球が終わる。その危機に父は宇宙へ向かい、次なる生存可能な惑星を探す。
その様を、限りなく正しい考証でダイナミックに見せていく映像が何より素晴らしい。
宇宙空間にぽっかり空いたワームホールの質感(実態が無いのでこの表現は間違いなのですが…)、ブラックホール”ガルガンチュア”の荘厳ささえ感じる迫力。
土星の周りを周回する米粒だいの大きさで映る宇宙船は、映画館のスクリーンでなければ意味が無い。
宇宙船内部の作り込みも凄まじくて、全てが全て何かしらの機能を持たせているのだと。船の動きに合わせて水平を保つ座席なんかも、『スター・ウォーズ』が好きだと公言するノーランぽくてガジェット的にテンションアップ。
方や地球の撮影も凄まじい。
出来る限りCGを避けるノーランが1/1スケールの探査船を作ってることにはもう驚いたりしませんが、農地らしくない所に植えられている作物の画が欲しいからと、なんとトウモロコシ畑を一から5ヶ月かけて育てたんだとか。
確かに言われてみれば、周りが青々した山に囲まれた場所でなんだか違和感のある場所。
無意識レベルでもしっかりと効果を上げてると思います。
CG,VFXに頼り過ぎない骨のある撮り方をするノーラン。
正しいお金の使い方だと思います。
潤沢な制作費を使って何がやりたいのかと聞かれれば、自分が子供の頃観ていたような大作娯楽映画が撮りたいと答えるノーラン。
色んなことを言われて槍玉に挙がることも多いノーランですが、こういう辺り物凄く好感持てるし、信用も出来る。
ノーランの偉い所は、しっかりインパクトのある画で驚かせてくれること。
今作で言うと、ガルガンチュアは勿論、クライマックスの5次元表現。
突入直後の光りが粒子になって船体にパチパチ当たる表現も新鮮で良かったのですが、その後の無限に続く本棚。
ノーラン作品に度々登場するキーアイテム本棚。
今作でやって物語上の意味が与えられた…!!
『2001年:宇宙の旅』の流れを汲む硬派SFとして立派な仕上がり。
そこに一つ、ノーランが加えた物語の骨格になる要素。
それが、愛。
地球が危ない。人類が終わる。
その危機を救ったのが、ある一組の親子の時空を超えた愛。
劇中の台詞でアン・ハサウェイがこう言います。
「時間も場所も違って、もうこの世にはいないかもしれない。でも今でも想い続けてる。愛だけが時空を超える」
なんてロマンチックな台詞なんだ。
人類が終わるその危機を救ったのは、元を辿ればどこにでもある、親が子を、子が親を想う気持ち。
こんな優しさに溢れた映画を撮るなんて。
ノーランよ、あなたも子の親なのだね。
このテーマを一心に体現するマシュー・マコノヒー力の素晴らしさたるや、もう溜め息。
毛布をめくったその顔に涙。
23年分のメッセージを眺める顔に涙。
『ダラス・バイヤーズクラブ』の時もそうでしたが、彼のアドリブを含んだ人間臭い演技がこの映画に熱を与えています。
気になる所も無くは無いです。
地球から飛び立つ時は打ち上げ台からロケットを使うのに、その後惑星から離れる時はさながらスター・ウォーズ。
ここはご愛嬌としても、短い時間で連続してある人物達の嘘で話を動かすのはあまり巧くない。
クライマックスにかけての地球と宇宙とのカットバックの盛り上げも、助走が長い分あまり効果的では無い気が。特に地球側が放ったらかされてる時間が長い。
ただ、畑を突っ切る序盤からの繰り返しの演出は素晴らしいです。
前述のアン・ハサウェイの愛を巡る台詞も、初見時はやたら理屈っぽい上にテーマを口で説明されてるような気がしてどうかと思ったんですが、全体が掴めてる2度目だとグッと。
『トランセンデンス』の為に降りた常連ウォーリー・フィスターの代わりに撮影監督になったホイテ・ヴァン・ホイテマさん。彼の仕事ぶりも見事。
初めて聞いた名前だなと思っていたのですが、経歴を見ると『ぼくのエリ 200歳の少女』『裏切りのサーカス』でトーマス・アルフレッドソンと仕事をしていたあの人じゃないですか…!!
今年で言うと目に鮮やかな『her 世界にひとつの彼女』
来年は『007 スペクター』で、名称ロジャー・ディーキンスに代わり撮影監督を務めるそう。もう立派に巨匠です。
そんな彼。
氷の惑星での飛行シーンを撮りたいとノーランに提案されて、飛行機の先端にIMAXカメラを付けることを思いつき(『エクスペンダブルズ』で言うところの”死の飛行”)、世界で一番デカいGoProみたいだったよ、とインタビューで喜々として語ってました。
このノリ、ノーランと合いそう。
<あらすじ>
世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く。主演は、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。共演にアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ノーラン作品常連のマイケル・ケインほか。「ダークナイト」や「インセプション」同様に、ノーラン監督の実弟ジョナサン・ノーランが脚本に参加。撮影は、これまでのノーラン作品を担当していたウォーリー・フィスターが自身の監督作「トランセンデンス」製作のため参加できず、代わりに「裏切りのサーカス」「her 世界でひとつの彼女」などを手がけて注目を集めているホイテ・バン・ホイテマが担当。
映画.comより
2014年12月10日水曜日
天才スピヴェット (3D)
『T.S Spivet』
2013/フランス・カナダ合作 上映時間105分
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ギョーム・ローラン
製作総指揮:ジャン=ピエール・ジュネ
撮影:トマス・ハードマイアー
美術:アリーヌ・ボネット
原作:ライフ・ラーセン
キャスト:カイル・キャトレット
ヘレナ・ボナム・カーター
ジュディ・デイビス
カラム・キース・レニー
ニーアム・ウィルソン 他
87点
”子の気持ちを親は知らぬし、親の気持ちを子は知らぬ”
シネマイクスピアリにて鑑賞。
絶対に3D推奨!!
3Dであることに意味のある作品。
『6才のボクが、大人になるまで。』が、12年間の時間の流れをそのまま切り取ることで少年の成長を描いていたとすると、今作は10才の少年の世界に対する視点をそのまま映像として見せる楽しさ。
小さな子供が、どんな風に世界を見て、何を考えているのか。
彼の世界に対する見方がそのまま映像になっていて、その語り口に3Dが最大級の効果を上げています。
例えば、スピヴェットが紙に何かを書いたとします。すると、彼の頭の中にある絵がそのまま3Dの飛び出してくる。彼の頭の中の想像が飛び出してくるのです。
ギミック的に飛び出す映像も最高に楽しい。
そして何より彼の視点を追体験出来るという意味でこれは映画でしか出来ない体験。
過去の自分だって、ああやって世界を見ていたんです。
もちろん、彼のように知的な物の見方なんかしてません。
せいぜい泥団子を作って、美味しそうだなぁ〜位のことしか考えてませんでしたけど、でもあの時作った泥団子は間違いなく美味しそうに見えたんです。
誰でもそんな風に物を見ていたんです。
例えバカな私でも。
映像の煌びやかさに負けない芯のあるお話。
時代遅れのカウボーイの父、昆虫の研究に夢中な母、アイドルになりたい姉、双子の弟。
舞台は自然が多く残るアメリカ西部。
個人的に抽象化され過ぎててファンタジーに思えてくるような家族の話が苦手なんですけど、話がしっかりしてるから全く気にならないどころか、キャラのそれぞれが愛おしい存在に。
彼の天才的な頭脳でもっても想像出来ないもの。
それが家族の本当の気持ち。
でもそれは親も同じことで、親は親で色んなことを考えているし、子は子で色んなことを考えている。
そのそれぞれの気持ちが、彼の大胆な行動によって変化。
旅の果てに彼が得た家族の本当の気持ちで彼自身も成長するのです。
本当の気持ちなんか家族だって中々分からないんだから、一人で思い詰めること無いのよ。
3Dがしっかりお話を語っています。
必見!そして3Dで!!
<あらすじ>
米モンタナに暮らす10歳の少年スピヴェットは、天才的な頭脳の持ち主。しかし、時代遅れなカウボーイの父と昆虫の研究に夢中な母、アイドルになりたい姉という家族に、その才能を理解してもらえない。さらに弟が突然死んでしまったことで、家族は皆、心にぽっかりと穴が開いていた。そんなある日、スミソニアン学術協会から権威ある科学賞がスピヴェットに授与されることになる。家族に内緒で家出をし、数々の困難を乗り越えて授賞式に出席したスピヴェットは、受賞スピーチである重大な真実を明かそうとするが……。
映画.comより
2014年12月6日土曜日
西遊記 はじまりのはじまり
『西遊 降魔篇』
2013/中 上映時間110分 PG12
監督・脚本:チャウ・シンチー
共同監督:デレク・クォック
製作:チャウ・シンチー
アイビー・コン
製作総指揮:エレン・エリアソフ
キャスト:スー・チー
ウェン・ジャン
ホアン・ボー
ショウ・ルオ
80点
”これがアジアのサービス精神”
最寄りのTOHOにて吹き替えで鑑賞。
吹き替えの斉藤工さんに貫地谷しほりさん、お二人ともいい仕事していました。
全く違和感無し。
ただ、エヴァ芸人でお馴染み桜の稲垣早希がもろにアスカの声で「あんたバカァ」と言うシーンに、相変わらずだな日本の配給会社は…とガックリ来たりもしましたが、そんなことすら受け入れてくれる懐の深さがこの作品にはある…!!
作品から溢れる、観に来た人を楽しませよう、笑わせようとするサービス精神。
序盤からギャグ飛ばしまくり。手数が多いからスベってるのかどうかも分からない。
中盤であるキャラの首に取り付けたチューブから血が噴き出すギャグがあるんですけど、少し時間をおいてまたそのギャグが繰り出された時に完全に不意をつかれて劇場で一人「ハハッ…」っと割と大きめの声で○ッキーのように笑い、どうにも収まらずたった一人で爆笑してたんですが、今時こんなベタなギャグに笑ってしまうなんて悔しい…けど面白い。
妖怪ハンター揃ってのギャグの応酬ではもう諦めて笑ってました。
ギャグ一辺倒のコメディ映画かと言うとそれもまた違う。
アクション映画としても見せ場はきっちりあって、これもまた手数と勢い勝負。
でもこれが全く嫌いじゃない。
恐らく他作品からの引用と思われる箇所も多々あってそれもまた楽しい映画。
例えば序盤の妖怪を巡る話は『ジョーズ』的だし、皆が河に飛び込んで騒ぎ、一瞬で殺戮の場に変わる様子は『ピラニア』ぽい。予告にもあった巨大な脚はもろに「○ンピース」の麦わら帽子の船長を思わせる。
ギャグの連べ打ち、アクション、サンプリング。
これがごっちゃになって、ちゃ〜んと楽しいエンターテイメント。
全編に観ている人を楽しませようとする溢れんばかりの愛を感じるからやっぱり楽しいですよ。
土台のバランスも凄く良い。
この映画序盤から人が女子供関係なくあっさり死んで行くんです。
しかもそのことに対する大仰な演出は全く無く映画の進行が止まらない。
この、ギャグは全編に散りばめてあって笑える基本コメディだけども、この世界ではちゃんと人は死ぬってバランスがお話をキュっと締めているから、観ていてだれることなく適度な緊張感。
だから、クライマックスのある展開がストレートにグッと胸に来る…!!
ラスト、天竺を目指すことになった三蔵法師一行。
そこで流れるはなんとGメン75のテーマ。
これが何とも良い。
しかも最後の最後までギャグギッシリ。
今回は作り手側に徹したチャウ・シンチー、参りました。
<あらすじ>
「少林サッカー」「カンフーハッスル」で人気のチャウ・シンチーが、「ミラクル7号」以来6年ぶりに手がけた監督作。日本でも映画やドラマなどさまざまなメディアで描かれ、誰もが知る中国の伝奇小説「西遊記」を題材に、三蔵法師と孫悟空、猪八戒、沙悟浄が出会い、天竺を目指す前の物語を独自に描いたアクションエンターテインメント。三蔵法師は、得意の「わらべ唄」で妖怪の善の心を呼び覚まそうするが失敗ばかりの若き妖怪ハンター・玄奘として描かれ、孫悟空、沙悟浄、猪八戒もそれぞれ独特な姿で登場。映画オリジナルのキャラクターとして、人気女優スー・チーが扮する女性妖怪ハンターも活躍する。
映画.comより
2014年12月3日水曜日
書き逃した映画達2014
基本、劇場で鑑賞した映画はなるべく全ての記録を付けるようにしてるのですが、中にはタイミングを逃してしまった映画達もあって。
そんな映画達を、今月末のランキングに向けて記憶を掘り起こしつつ記録を付けました。
大分前に観た作品ばかりで、それ以来思い返していない放ったらかしのものもあるので、感想というよりほぼ印象です。
『17歳』
2013/仏 上映時間94分 R18+
監督・脚本:フランソワ・オゾン
製作:エリック・アルトメイヤー
ニコラス・アルトメイヤー 他
撮影:パスカル・マルティ
キャスト:マリーヌ・バクト
ジェラルディン・ペラス 他
79点
今作以降、『愛の渦』『ドン・ジョン』そして『ニンフォマニアック』と続く”2014年、性!!”シリーズの一作目。そう勝手に命名。
性に目覚め、それに群がってくる男どもを手の中で転がすかのような彼女の変わり様は見ていてとてもスリリング。表情の変化も見物。
彼女は情事の果てに何も見るのか。
続きは『愛の渦』で!!
『それでも夜は明ける』
『12 Years a Slave』
2013/米・英 上映時間134分
監督:スティーブ・マックイーン
脚本:ジョン・リドリー
製作:ブラッド・ピット
デデ・ガードナー 他
キャスト:キウェテル・イジョフォー
マイケル・ファスベンダ 他
90点
”ある種のライド系ムービー”と評している方がいたけども、正にそう。
突然拉致されて、訳も分からず奴隷になって、突然やってくる救いの瞬間もその意味で生々しい。
中盤でのある長回しは息が詰まる。
『あなたを抱きしめる日まで』
『Philomena』
2013/英・米・仏 上映時間94分
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本・製作:スティーヴン・クーガン
製作:トレイシー・シーウォード 他
キャスト:ジュディ・デンチ
スティーヴ・クーガン 他
80点
なんでそんなに大人になれるのか!?
と、劇中のスティーヴ・クーガン同様思わずスクリーンに叫びたくなったラスト。
宗教上の理由でやられた仕打ちを、”許す”という行為で包むラストの彼女の選択はとても尊い。
『リベンジマッチ』
『Grudge Match』
2013/米 上映時間113分
監督:ピーター・シーガル
脚本:ダグ・エリン
ティム・ケルハー 他
キャスト:ロバート・デ・ニーロ
シルヴェスター・スタローン
60点
これ以上に無い燃える企画なのにつくづく脚本が惜しい。
目配せて的なオマージュを散りばめるのはいいから(それはそれで楽しかったりするんだけど)、もっとお話を練ってやり直し!!
『とらわれて夏』
『Labor Day』
監督・脚本:ジェイソン・ライトマン
製作:リアンヌ・ハルフォン
ラッセル・スミス 他
製作総指揮:マイケル・ビューグ
キャスト:ケイト・ウィンスレット
ジョシュ・ブローリン 他
79点
犯罪者を匿い、恋心と現実の狭間で揺れるなんて、このグレーゾーンぶりは正にジェイソン・ライトマン的。
題材が今まで無くストレートなメロドラマで少々面食らったけどやっぱり面白い。
サスペンスとしても見応えあり。少年の一夏の成長としても素晴らしい。
薄幸な役をやらせればケイト・ウィンスレットの右に出る者無し。
ただ少し甘さの方が残る。
『300 〜帝国の進撃〜』
『300:Rise of Empire』
2014/米 上映時間102分
監督:ノーム・ムーロ
脚本:ザック・スナイダー
カート・ジョンスタッド
キャスト:サリバン・ステイプルトン
エヴァ・グリーン
50点
海上戦がメインなのにそれらしい戦い方が全く無いのは頂けない。
エヴァ・グリーンが素晴らしい仕事をしているのだから、両陣営の女同士の戦いにシフトすればよかったのに。最強の男達はもういないのだから、
『春を背負って』
『春を背負って』
2014/日本 上映時間116分
監督・脚本:木村大作
脚本:木村大作
瀧本智行 他
キャスト:松山ケンイチ
蒼井優
59点
みんな真面目ね。
いい人が、いい理想を持って、いい行ないをする。
するといい人が集まって来て、いいことが起こる。
真面目ね。
こう言う映画があってもいいとは思いますけど、なんでしょう、潔癖過ぎる気がしてしまう。
相変わらず撮影は素晴らしいです。
こんな大自然の前に自分なんて、と少し考えてみたりもします。
ただ全く人物達に現実感が無いから感情移入なんて無理。
『ポンペイ』
『Pompeii』
2014/米 上映時間105分
監督:ポール・W・S・アンダーソン
脚本:ジェネット・スコット・バチャラー
リー・バチェラー 他
キャスト;キット・ハリントン
エミリー・ブラウニング 他
30点
題材一発の陳腐な脚本。
どう見たってキーファー・サザーランドはイタリア人に見えないだろ。
ってことは置いておいても、安いテレビドラマを見ているようなあの締まりの無い画はどうにかならないのか。
『私の男』
『私の男』
2014/日本 上映時間129分 R15+
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
製作:藤岡修 他
製作総指揮:永田芳弘
キャスト:浅野忠信
二階堂ふみ 他
75点
前半の北海道での生活描写は素晴らしい。
寒さに頬を赤くしてる二階堂ふみさんなんて最高に可愛らしくて、ふと見せる女の顔にもゾッとする。
ただ場面が大きく飛ぶ度に色んなことがうやむやになっていて、映画的な省略とはいえ流石に物語に関わる部分は説明が欲しいところ。
『DANCHI NO YUME』
『DANCHI NO YUME』
2008/米 上映時間86分
監督:サム・コール
ジョナサン・ターナー
キャスト:ANARCHY
RYUZO
RUFF NECK 他
90点
中盤での本気度120%の喧嘩を観られただけでも大満足。
ジャパニーズドリームを己のマイクで掴み取ろうとしてる様に胸熱く。
ANARCHYのストレートな言葉が、彼が育った団地の中でより説得力を増す。
惜しいのは、録音の質があまり高く無くて、肝心のラップがあまり聞き取れないこと。
『ダイバージェント』
『Divergent』
2014/米 上映時間139分
監督:ニール・バーガー
脚本:エヴァン・ドーハディ
ヴァネッサ・テイラー 他
製作:ダグラス・ウィック 他
キャスト:シャイリーン・ウッドリー
テオ・ジェームズ 他
69点
どうせ『ハンガー・ゲーム』的なティーン向け作品なんだろと思って観に行くと実際にそうで。
ただ、好きな箇所もあるしそんなに嫌いではないです。
クライマックスで、序盤での勇気を試すアクションをまた繰り返しやってみせる所とか、良い部分も沢山あります。
ただ完全に続編ありきな設定の使い方、世界観の説明、ラスト。
この一作でのテンションは全体に低め。
『そこのみにて光輝く』
2014/日本 上映時間 R15+
監督:呉美保
脚本:高田亮
製作:永田守
菅原和博
キャスト綾野剛
池脇千鶴 他
95点
今年の邦画ベスト。
テアトル新宿での再上映で鑑賞。
どんなに悲惨な状況でも朝はやってくる。
何かの予感を感じさせる、ラストの朝日に染まった海岸と二人の笑顔が忘れられません。
『ヘラクレス』
『Hercules』
2014/米 上映時間98分
関東:ブレッド・ラトナー
脚本ライアン・J・コンダル
エヴァン・スピリオトポウロ
製作:ボー・フリン
バリーレヴィン 他
キャスト:ドウェイン・ジョンソン
イアン・マクシェーン 他
75点
ドウェイン・ジョンソンa.k.aロック様のアイドル映画。
惜しげも無く披露された肉体、汗。
彼に肉体にひれ伏すのみの98分。
面白かったです。
『デビルズ・ノット』
『Devil's Knot』
2013/米 上映時間114分 PG12
監督:アトム・エゴヤン
脚本:ポール・ハリス・ボードマン 他
製作総指揮:モリー・コナーズ
マリア・セストーン 他
キャスト:コリン・ファース
リース・ウィザスプーン 他
85点
ロッテントマトでは異常に評価が低くて解せないのですが、いやいや凄い面白いですよ。
胸くそ悪くて、救いが無くて、闇も深い。最高じゃないですか。
アメリカ南部の保守的な人々に悪魔崇拝。
本国だとあまり受けは良く無いのか。
『紙の月』
『紙の月』
2014/日本 上映時間126分
監督:吉田大八
脚本:早船歌江子
製作:池田史嗣
石田聰子 他
キャスト:宮沢りえ
池松壮亮 他
90点
主人公=「与えたい人」
と言うこの作品に対して最高に的を得た言葉を目にしてもう何も言うことが無くなってしまった。
反対のホームの階段を降りる時のスローモーション。
最高に映画的な演出に唸る…!!
吉田監督間違いないです。
手堅いです。
『MUD -マッド-』
『MUD』
2013/米 上映時間130分
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
製作:リサ・マリア・ファルコーネ
サラ・グリーン 他
キャスト:マシュー・マコノヒー
タイ・シェリダン 他
95点
少年の一夏の成長潭として傑作。
マイベストマコノヒーがここにいます。
焚き火を前に缶詰を食べるシーン一発で両者が打ち解ける瞬間を描く分かってる演出。
落ち着いた映画かと思ってたら銃撃戦等ジャンル映画的な見せ場もあったりの飽きさせない作り。
ドライ過ぎず、でもウェット過ぎない。
優しさに満ちた人物への眼差し。
『そこにみにて光輝く』同様、何かの予感を感じさせる、希望に満ちた水平線のラスト。
観終わって晴れやかです。素晴らしいです。
思い返すのに大分苦労しました。
来年からはしっかり全て記録をつけようと心に誓いました。
登録:
投稿 (Atom)