『FURY』
2014/米・英 上映時間134分
監督・脚本:デヴィット・エアー
製作:ビル・ブロック
デヴィット・エアー 他
製作総指揮:ブラッド・ピット
サーシャ・シャピロ 他
音楽:スティーヴン・プライス
撮影:ローマン・ヴァシャノフ
編集:ドディ・ドーン
キャスト:ブラッド・ピット
シャイア・ラブーフ
ローガン・ラーマン
マイケル・ペーニャ 他
79点
”極限状態で生まれる男達の連帯”
同じデヴット・エアー監督作『サボタージュ』は、かなり歪な出来のバランスを間違えた駄作だと思っているので、今回の『フューリー』はどうなんだろうと少しの不安を抱えて劇場へ。
『サボタージュ』はやはり外部からのなんやかんやが作品のバランスを崩していたのでしょう。
どっしり構えた重厚な戦争映画として見応え十分。
ただなぁ、勿体ないなぁ。
今作で描かれている、兵士達の男の友情。
この友情を描くに当たって、誰が欠けてもならない戦車が抜群の効果を挙げていて、劇中でブラッド・ピットが、戦車は家だと言うように、彼等は仲間を越えた家族も同然の関係。共に戦火をくぐり抜けて来た経験が、彼等の友情の根幹。
そして、もう一つ重要な要素が、敵であるナチス、特に武装SSへの憎悪で、この戦火の経験と敵への憎悪が戦場において彼等を繋ぐ連帯の根幹にあるものなのです。
劇中、それらが露になる食卓シーンからの一連のシークエンス。
隊長であるブラット・ピットと新兵が、現地のドイツ人親子と食卓を囲んでいると、そこに浮かれた様子の隊の面々が。
そこからの不快感に満ちた振る舞いの数々は本当に吐き気がするほど。これは褒めてます…!!
今年観た映画の中でもトップクラスに不快なシーンで、故に最高。
整頓された室内に粗野な男達がいるだけで何とも言えぬ緊張感で、目の前であの娘がレイプされてしまうんじゃないかと終止ハラハラ。
その後、味方からの連絡で食卓はお開き。
新兵は茶化されながら恋に落ちた現地の娘とお別れをするんですが、その直後に爆撃によって彼女は死んでしまうのです。
ここに至って彼は、戦場の厳しさを知ると同時に、敵への憎悪が芽生え、その後の戦闘で自ら進んで敵を殺していくのです。
敵への憎悪が生まれたことで、真に仲間になった瞬間です。
敵への憎しみで連帯が深まるなんて一見すると不謹慎なようにも思えますが、これが今作が描こうとしている、戦場の極限状態が生む男達の絆であって、そんなのは不謹慎と言ったところで、それは安全圏の外野からの物言いであって、実際の戦場ではあれが真実。
戦場を美化することなく、ありのままの戦争を描く。
従軍経験のあるデヴィット・エアー的な視点。
描くものは男達の友情でも、そこに過度なヒロイックさは皆無。
ラストショット、俯瞰したカメラが引くことで映る死体の山。
ここで映し出す、死屍累々の戦闘の後を意地悪く見せることで、”敵味方関係のない戦闘の結果”がガツんと来る。
ただ、ここが今作において個人的に一番残念な箇所でもあって、ラストの戦闘で味方の無惨な死体の描写は絶対に必要だったはず。
暴力の果てに敵味方関係なく死んでいくカオスこそが最も描かれるべき描写。
頭ではこのシーンの熱は理解出来る。
でもそれ以上に、生理に訴えかけてくる視覚的な意地の悪さが欲しかった。
デヴィット・エアーならそれが出来るはずなのに。
賞レースにも掛かってくるであろう大作。
やはりここでも偉い人とのなんやかんやがあったんだと邪推。
でなければ、自決したブラピの死体が残ってるなんてありえない…!!
基本大満足なんですが、ちょっと厳しめに。
『エンド・オブ・ウォッチ』では容赦なかったんだから…!!
今作の白眉であるタイガー戦車との戦闘。
手にあせ握って最高です。
ここだけでも観る価値ありです。
ただなぁ、勿体ないなぁ。
<あらすじ>
ブラッド・ピットの主演・製作総指揮で、第2次世界大戦下、たった一台の戦車で300人のドイツ軍部隊と渡り合った5人の兵士たちの姿を描いた戦争アクションドラマ。「エンド・オブ・ウォッチ」のデビッド・エアー監督が手がけ、共演にはシャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャら豪華俳優が集った。1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の米兵ウォーダディーは、自ら「フューリー」と命名したシャーマンM4中戦車に乗り、戦いを続けていた。ウォーダディーと3人の仲間に新兵のノーマンも加わり、5人となった部隊は絆を深めていくが、進軍中にドイツ軍の攻撃を受け、他部隊がほぼ全滅。なんとか生き残ったウォーダディーの部隊にも、過酷なミッションが下される。
映画.comより
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