2015年1月24日土曜日

アゲイン 28年目の甲子園


アゲイン
2015/日本 上映時間
監督・脚本:大森寿美男
原作:重松清
音楽:梁邦彦
主題歌:浜田省吾「夢のつづき」

キャスト:中井貴一
波瑠
柳葉敏郎
和久井映見 他


77点







”ちゃんと負ける”




最寄りのTOHOシネマズにて鑑賞。
場内ガラガラに近い入り具合。
ただ、斜め後ろに劇中の中井貴一、柳葉敏郎とほぼ同い年位と思われるご夫婦がいて、その旦那さんが映画が終わる頃に鼻をすすって涙してまして、なんだかその光景にグッと。

言いたいことは確かにありますが、全く以て嫌いじゃないです。
良い映画でした。

原作は未読です。





勝ち負けがそれ程強調されてはいない分、人物描写を丁寧に。

高校野球であれば、熱のこもった試合なども期待してしまうところ、今作で描かれるのは主に中年の野球部OBが参加するマスターズ甲子園。
この題材がとても良くて、試合のちょっとした緩さも許せてしまう。
仮に高校野球が題材の野球映画だったなら、間違いなく映画の中心はその試合。生半可なプレーでもされたもんなら目も当てられませんよ。

ただそれがマスターズ甲子園だと、プレーは勿論本気ですよ。でも、実際はもう身体言うことを聞かない中年。そんな彼等が必死に白球を追いかける姿がなんとも良い。
あの頃の熱気そのままにわいわい盛り上がってるベンチも良い。

中井貴一以外のメンバーは皆野球経験者だそうで、西岡徳馬は元高校球児。
ラストの試合の撮影方法も、脚本とは関係なく試合をさせて、編集で辻褄を合わせる撮り方をしたらしく、あの悔しがってるギバちゃんの表情は本物だそうで。

勝ち負けではなく、あの頃にまた戻って野球をする。
マスターズ甲子園の題材にピッタリな描き方。

試合それ自体の面白さで映画を引っ張らないその代わりに描かれているもの。
それが再び甲子園へ行こうとする者達の物語。
劇中で何度も繰り返される、”ちゃんと負けること”。
これがこの映画の大きなテーマ。






あの時負けられせず終わった夢を、今度はちゃんと負けて蹴りを付ける。
この
クライマックスの試合。ワンカット(厳密にはワンカットっぽく見せてる)で現在と過去が入れ替わる演出も映画的に凄く良くて、間違いなく過去の夢に蹴りが付いた瞬間になってる。

が、その後が勿体ない。
中井貴一の疎遠になっていた娘が試合を見に来るんですが、彼女が観戦に来るその動機が描かれていないのは駄目。物語上来たようにしか見えない。

過去の夢には蹴りつけた。じゃあ現実に向き合おう…!!
って時にあれじゃ何とも締まりが無い。
せっかく門脇麦さんが好演してたのに勿体ない。


人物が突っ立って長めの説明台詞を始めるのもあまり関心しないです。
その間映画は止まってる訳で、そのせいでかなり映画が鈍重な印象。
和久井映見絡みのシーン、は回想なりなんなりでもっとダイエットの余地あり。

監督の大森さんは、森田芳光監督『39 刑法第三十九条』『黒い家』等々、元々脚本を書かれていた方だそうで、キネ旬のインタビューを読むと台詞での説明をなるべく避けて、画で見せるように心がけたそうですが、個人的にはまだ多い印象。






題材も良い、気になる所はあっても描き方も悪く無い。
それ以上にこの映画を決定的にプラスに持っていってるのが、血の通った人物達の実在感。
中井貴一を筆頭に、ギバちゃん、西岡徳馬。皆素晴らしいです。
そして、波瑠さん。彼女も素晴らしい…!!
彼女が絶妙なバランスで演じる美枝という役。
一見すると、こんな人現実にいないよと思われかねない、かなり偏っていい人な役を、彼女の凛とした佇まいがしっかり説得力を持たせてる。
波瑠さん、素晴らしいです。

甲子園での試合後のキャッチボール。
かなりクサい台詞を言い合うんですが、良い。
このくらいのクサさが、この映画にはよく合う。

良い映画でした。




<あらすじ>
46歳の晴彦のもとに、高校時代にともに甲子園を目指したチームメイトの娘・美枝が訪ねてくる。美枝は東日本大震災で亡くなった父の遺品から、出さずにしまいこんであった27年分の年賀状の束を見つけ、その宛先である晴彦に会いに来たのだった。美枝がボランティアとして働いている「マスターズ甲子園」に誘われた晴彦は、気乗りしないままかつての野球部員たちと再会を果たすが……。
映画.comより





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