『La Vénus à la fourrure』
2013/仏・波 上映時間96分
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:デヴィット・アイヴス
ロマン・ポランスキー
製作:ロベール・ベンムッサ
アラン・サルド
音楽:アレクサンドル・デブラ
撮影:パヴェル・エデルマン
原作:レオポルド・フォン・ザッヘル・マゾッホ
「毛皮を来たヴィーナス」
キャスト:エマニュエル・セニエ
マチュー・アルマリック
88点
”良い奥さんを持ったものだな、ロマン・ポランスキーよ”
上映時間もさくっと短い。あっさりしてるようで実に濃密。ワンシュチュエーションでぐいぐい引っぱり役者の圧倒的な力。
出来れば去年の締めに観たかった…!!
なんてことを思いながらヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞。
うん面白い!
ワンシチュエーション、登場人物は2人のみ。
作品のテーマはズバリ”お仕置き”。
今作のレビューでなるほどそれはと膝を打ったのが伊藤聡さんのTwitterでのこれ。
『毛皮のヴィーナス』。これって脚本をブラッシュアップしていく話で、そこでお互いの価値観が前面にせり出してくるのがおもしろい。女性が核心を突く批評の言葉を口にするたびに、物語がぐっと前進する。それは作品を批評することのスリルや知的興奮で、批評がコミュニケーションにつながっている。
— 伊藤聡 (@campintheair) 2015, 1月 8
互いの批評の応酬で作品をブラッシュアップしているという視点は無かった。
”批評がコミュニケーションに繋がる”というのも新鮮。
『毛皮のヴィーナス』はそんな映画です、とこの素晴らしい批評でもって締めたいんですが、私が何を思ったのかと少しお話させて頂くならば、SMですよ、SMプレイ。そこから浮かび上がるトマの差別的な考えに、お仕置き…!!
2人だけの濃密な演技のやりとりは正にSMプレイそのもの。
虚であったプレイが次第に現実にも影響を及ぼしていくスリリングさですよ。
最初は理性的だったマチュー・アリマリックの段々と恍惚の表情を浮かべていく様子がなんとも堪らない。クリクリした大きな目がまた小型犬みたいで良い。首輪を付けられた様は正に犬そのもの。
演技合戦と言う名のSMプレイで段々と虚と実の境が曖昧になるにつれ、作品そのものの質も高くなる。と同時に露になるのマチュー・アルマリックの根底にあった偏った女性観。
ラスト、完全に”落ちた”マチュー・アルマリックへの反撃開始。
彼を縛り付けたままステージを後にするワンダ。
縛り付けたまま出て行くのは原作である『毛皮を着たヴィーナス』でも同様なのですが、違うのは着地がフェミニズム的なものになっていること。
監督のこんな言葉があります。
「男女間の闘いにおいては、いつも女性が勝利すると思っている」
この言葉で無視出来ないことは、この作品でワンダを演じているエマニュエル・セニエは監督ロマン・ポランスキーの実際の妻。
そして、マチュー・アルマリックは彼の若かりし時にとても似ていると言うではありませんか。
つまりこの映画、監督自身の女性観が如実に反映されているとも言える。が、実際の所脚本を渡されて受けた仕事とのことなので、違うか。
主演の2人の濃密なやりとりにあっという間の96分。
全く退屈しない確かな手堅さ。
<あらすじ>
自信家で傲慢な演出家のトマは、オーディションに遅刻してきた無名の女優ワンダに押し切られ、渋々彼女の演技を見ることになる。がさつで厚かましく、知性の欠片も感じさせないワンダだったが、演技を始めてみると、役への理解もセリフも完璧だった。最初はワンダを見下していたトマも次第にひきつけられ、やがて2人の立場は逆転。トマはワンダに支配されることに酔いしれていく。
映画.comより
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