『百円の恋』
2014/日本 上映時間113分 R15+
監督:武正晴
脚本:足立紳
製作:間宮登良松
企画監修:黒澤満
撮影:西村博光
編集:洲崎千恵子
音楽:海田庄吾
主題歌:クリープハイプ「百八円の恋」
キャスト:安藤サクラ
新井浩文
稲川美代子 他
90点
”人生、やるときゃやるんだよ”
『超能力研究部の3人』と同じタイミングで前売り券を買っていたもののタイミングが悪く中々行けず、年が明けてやっとこさテアトル新宿にて鑑賞。
平日の夕方の回にも関わらず客入りは良好。
評判の良さを感じつつ鑑賞し、映画が終り、劇場を出る頃にはなんだか走り出したい気分。出来もしないシャドーなんか始めて、新宿三丁目の駅まで駆け抜けたい気分。
あっぱれ安藤サクラ。
人生、やるときゃやるんだよ…!!
どん底からのスタートを切る、負け犬の物語。
人生やらなきゃいけない時がある。それは今だ…!!
”女ロッキー”ここに誕生。
この女ロッキーを一心に演じきった安藤サクラ。
彼女がとにかく素晴らしいんです…!!
この作品の心臓にして全て。
以前『6才のボクが、大人になるまで。』の文章で、”身体の変化がそのまま話の推進力になっている不思議。”と書きましたけど、今作も正にそう。
彼女が物語を駆動させて、彼女の肉体が物語を前へ進める。
デートの前日、下着姿でパンツのゴムからはみ出した贅肉を眺めていたあの姿から、ボクシングで鍛え上げた肉体への変化。この様だけで十分な見応え。
肉体以外にも目ですね。
死んだ目をした序盤から、映画が進むにつれて目に力が宿ってくる。
その変化の動機となるのが、新井浩文演じる中年ボクサー狩野との恋と、その終りによるもので、自分の気持ちが裏切られた瞬間、彼女の心に火がつくのです。今やらないでいつやる。やるなら今だ。人生やらなきゃいけない時がある。今がその時だと…!!
「少なくとも今では無い」と豪語した『もらとりあむタマ子』のタマ子も大好きですよ。
でも、自分の人生諦めてどん底で生活していた者が、己の魂に火をつけて立ち上がる。
負け犬の必死のファイティングポーズに心撃たれない訳ないでしょうよ。
決意の瞬間から劇伴も同調して盛り上がりを見せます。
ここは正に『ロッキー』を思わせる演出。映画がドライブし始める瞬間。
ストレートに燃える…!!
そして彼女にとってダメ押しとなるのが、狩野との再会で、彼が弁当を投げ捨てるシーン。
ここのシーンは見事でした。
狩野が去った後、無言で一人その場でシャドーを初め、颯爽と走り出す一子。
分かる、その気持ち分かるぞ一子!!
行き場の無い感情、今ならそれをぶつけられるものがある。
少なくとも今の私にはこれがある。
勝負の時。
万感の思いでリングイン。ゴングが鳴り試合開始。
圧倒的劣勢で防戦一方の一子。何度もダウンを取られ、観客席から彼女へ激が飛びます。
そこには狩野の姿も。「あしたのジョー」の丹下ばりに喝を入れます。嫌い合ってた姉も叫びます。「一発ぐらい当ててみなさいよ…!!」
渾身の力を振り絞って、左ストレート。
見事ヒット…!!
が、相手からクロスカウンターで勝負あり。
勝負には負けた。
でも一子、あなたは勝ったよ。
決意した時点、勝負しようと決めた時点で既に彼女は勝ってるのです。
例え勝負に負けたとしても、涙を流して、勝ちたかったと悔し涙を流せているんだから。
気になる所も無くは無かったです。
職場のコンビニの社員がデフォルメされた嫌な人として描かれていて、堪忍袋の緒が切れた一子がその社員をボコボコにする場面は間違いなくスカッと胸がすく思いだったんですけど、ちょっと描き方としてフェアじゃないかなと。
クライマックスでの、ワンカットでの入場シーン。
『レイジング・ブル』をやるのであればスローはいらない。
こっちは既にかなり思い入れて観ている訳だから、変に溜めずにストレートな演出をしてくれた方が盛り上がれたのに。
と、気になる所もあるにはありますが、そんなことは全体のプラスに比べれば微々たるもの。全く気になりませんし気にもさせない力強さを持った作品。
それもこれも安藤サクラ。
彼女が凄い。
<あらすじ>
不器用でどん底の生活を送っていた女性が、ボクシングを通して変化していく姿を描いた。実家でひきこもり生活を送る32歳の一子は、離婚して出戻ってきた妹とケンカしてしまい、やけになって一人暮らしを始める。100円ショップで深夜勤務の職にありついた一子は、その帰り道に通るボクシングジムで寡黙に練習を続ける中年ボクサーの狩野と出会い、恋をする。しかし幸せも長くは続かず、そんな日々の中で一子は自らもボクシングを始める。
映画.comより
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