『The World's End』
2013/英 上映時間109分
監督:エドガー・ライト
脚本:エドガー・ライト
サイモン・ペッグ
製作:ニラ・バーグ
ティム・ビーヴァンズ
エリック・フェルナー
製作総指揮:ジェームズ・ビドル 他
音楽:スティーヴン・プライス
キャスト:サイモン・ペッグ
ニック・フロスト
バディ・コンシダイン
マーティン・フリーマン 他
87点
”このビール、苦いけどうまーい!!”
シネマイクスピアリにて鑑賞。
右手にはもちろん生ビール。
観る前の噂で、途中で席を立つ人が異常に多いと聞いてたんですけど、みんな考えることは一緒ね。
みんな正しい見方を分かってる。
自分は代謝がいいのか普段から結構トイレは近い方で、それはお酒を飲むと尚更。
一回トイレに行くとそこから堰を切ったように感覚が徐々に短くなってですね、最後の方は10分おきぐらいで行く勢いなんですよ。
居酒屋なんかで友人達と飲んでると、トイレに行ってる間に話題が変わってたりするじゃないですか。「えー、もっとスコセッシで話したいことあるんだけどー」
これが悔しいからいつもいつも我慢を、ってこんな話どうでもいい。
とにかくお酒を飲みまくる映画なんで、もちろんビールを飲みながら映画を観てたんです。
で、これが楽しくて楽しくて。
そしてビールが美味しくて美味しくて。
ただ、後味が苦め。
でもその後味含めてやっぱり上手いビール。
「旧友と会いたくなる!そして飲みたくなる!男の友情って素晴らしい」
少々詰め込みましたが、ネットにこんな”賞賛の声”が載っていて、私も正にこれを期待して観に行ったんです。
旧友と再会して、達成できなかった「ゴールデン・マイル」に再挑戦。
酔っぱらいつつも街の異変に気付き、へべれけ故の大胆不敵な行動で知らぬ間に世界を救い、俺たちやっぱり最高だな!!
こんな話を期待していた。
観た結果ですね、これは一面的には合ってます。
旧友と飲みたくなるし、友情って素晴らしいと思える。
ただ考えるほどにこの映画の苦みが増して来てですね、やっぱり最初から終わりまで全体にビターですよ。
特にラストですよ。
そんなのあり!?
気持ちよく酒飲んでる場合じゃない。
エドガー・ライトの過去2作でも同様に、大人になりきれない大人。もしくは大人になりたくない大人達が描かれて来た訳ですけど、それぞれがジャンル映画への深い深い愛でそれが包まれて、我々映画ファンの心に突き刺さりまくる作品に仕上がりに。
監督はグレッグ・モットーラですが、主演コンビが同じ『宇宙人ポール』でも過去のSF映画への愛とオマージュを捧げ、更に、オタクのままでも大人になることは出来る!!と言う力強いメッセージは、我々の心に深い余韻とエールを残しました。
改めてこの流れを見ると、今作のトーンも納得。
今までだったら親友がいるのに、今作は物語の中で唯一、主人公のサイモン・ペッグだけが社会に適合出来ない、青春を引きずる大人になりきれない大人。
彼だけが空回りしてるから、観てて凄く彼の幼稚さが際立つんですよ。
まずこれがすごく痛い。
この関係が作中一貫して変わらないから観ていて終止寄る辺無い。
劇中、彼だけが一人”世界”に取り残されてるんです。
そして、この構図が反転するのがクライマックスからラストにかけて。
地球を侵略し、画一的な”より良い”世界に作り替えようとする宇宙人に対して、「地球をスタバ化するな!」と吐き捨てます。
そして、この酔っぱらった大人の選択によって、世界は崩壊。
でも、この状況を喜ぶ者がただ一人。
そう、サイモン・ペッグ演じるゲイリー・キング。
彼は新時代の王(キング)になったのです。
住みづらかった世界もう無い。
求めていた世界がやって来た!!
だからもう酒に頼る必要も無い。
この、主人公をわざと成長させず、逆に世界を作り替えるラスト。
そう来るとは。
に、苦い。
だけどこの苦さ、嫌いじゃない。むしろ、むしろ好きだ!!
だけど、もう酒に頼らなくてもいい世界が来たって、この映画を観に来た者にとってなんたるラストなんだ!
個人的に今作かなり好きです。
三部作のラストでこれをもってくる辺りも、英国流の洒落の効いたユーモアの様で好感。
予告から受けるコメディ感とは真逆。
ただ、言わずもがなで、やっぱりエドガー・ライト、巧いです。
誰が観たってこれは間違いない。
<あらすじ>
20年前、一晩で12軒のパブをめぐる「ゴールデン・マイル」に失敗したことが忘れられないゲイリーは、再挑戦するために当時の仲間アンディら4人を集め、故郷ニュートンヘイブンに舞い戻る。やがて5人は、町の人々の様子がおかしいことに気づくが、戸惑いながらもひたすら12軒目のパブ「ワールズ・エンド」を目指して飲み続ける。
映画.comより
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