2014年5月31日土曜日

野のなななのか


野のなななのか
2014/日本 上映時間171分
監督・脚本:大林宣彦
エグゼブティブ・プロデューサー:大林恭子
プロデューサー:山崎輝道
映画音楽:山下康介
原作:長谷川孝治

キャスト:品川徹
常磐貴子
村田雄浩
松重豊
柴山智加
山崎紘菜

95点





"まだ間に合いますよ”




『この空の花 長岡花火物語』から2年。
舞台を新潟県長岡市から北海道芦別市に変えて、大林監督の新作がやって来ました。

『野のなななのか』

いざスバル座へ。


観た人が口を揃えて言うことですが、前作の『この空の花』での体験が凄まじくてですね、恐らくこの先二度とは出来ないであろう映画体験をしまして。

この体験を味わってもらうにはとにかく観てもらうしか無いのですが、どんな事になってたのか出来る限り、出来る限り説明しますと、上映時間160分に余すところなく詰め込まれた情報量と、監督のこの映画に掛けるメッセージがスパークしまくりで、それが極に達するクライマックスの花火で涙腺が決壊。

処理しきれなくなった頭がオーバーヒートして、なんだかほっぺたが濡れてるなと思ったら知らぬ間に泣いてまして、しかも止まらない。頭は至って冷静なのに。


・めくるめく、キネマの思ひ出/この空の花 長岡花火物語


そんな強烈な体験をした『この空の花』の姉妹編と呼ばれている『野のなななのか』

76歳にしてこのパワー、この密度、このスピード。
恐れ入りました。








今作の舞台は北海道芦別市。
前作も明確に反戦を訴えた作品でしたが、今作はその思いが強くなっているよう。

映画は、芦別に住む家族の物語を語りつつ、芦別、樺太の戦後史を紐解きながら進みます。
説教臭くもなりそうな語りも、映画全体を強烈としか言いようが無い作家性とパワーで包み込むから、ただただ圧倒するのみ。

この”大林演出”は今作ももちろん健在。
細かくカットを割り、情報量の多い台詞で駆け抜け、過去と現在が錯綜する。
こっちに考える隙を与えない。
これが最近の大林監督作品の特徴。

前作から導入したデジタルカメラと、編集をパソコン一台でやってることが大きな理由だとは思うんですが、それにしても齢七十一でこのパワフルさは凄まじいです。



現在と過去、死者と生者が黄色い花咲く丘で交流するクライマックス。
この生と死が曖昧になった”なななのか=四十九日”は映画でしか表現し様の無いもので、生と死の境界というのは正に大林監督的なテーマ。






この映画の何がよかったかって、過去を語りながら、しっかり今作るべき映画になってること。
大林監督の誠実なメッセージに圧倒されると同時に、有無を言わさず打ちのめされます。


大林監督の映画をリアルタイムで観れる幸せを感じつつ。
次はどんな映画を観せてくれるのか。

空、野、と来たから、今度は海かな。



<あらすじ>
ひとりの老人の死によって郷里へ集まった家族の姿と、その老人の人生に大きな影響を及ぼした戦争体験を通し、3・11以降の日本再生のあり方を問う。芦別市で古物商を営む元病院長・鈴木光男が92歳でこの世を去り、離れ離れに暮らしていた鈴木家の人々が葬式のため帰郷する。そこへ現われた謎の女・清水信子により、次第に光男の過去が明らかになっていく。1945年の太平洋戦争終結直前、光男は樺太でソ連軍の侵攻を体験しており……。
映画.comより







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