2014年8月27日水曜日

STAND BY ME ドラえもん


STAND BY ME ドラえもん
2014/日本 上映時間95分
監督:八木竜一
山崎貴
脚本:山崎貴
音楽:佐藤直紀
原作:藤子・F・不二雄

キャスト:水田わさび
大原めぐみ
かかずゆみ
木村昴
関智一 他


5点




”下品、大味、節操無し”





「一緒に、ドラ泣きしませんか?」

この、いかにも広告代理店が考えそうな品の欠片も無いキャッチコピーが、この企画の全てを象徴。

そもそもドラ泣きってなんだよ。

でもそこは置いておきましょう。
恐らくこのキャッチコピーは外部が付けたものでしょうから。

ただ、本編を観てみると本気で”ドラ泣き”させようとしてるからビックリ。
さすが山崎貴クオリティ、お見事です。

断っておきますと、この映画においてドラえもんは完全に被害者であり、それは観ている私も承知しています。
ドラえもんは大好きです。



以下、今作に対する激烈な文章が続きます。
この映画を純粋に楽しまれた方も多いでしょう。
既にここまでの文章で気分を害された方もいるかと思います、すみません。

どうでしょう、良い感想をご覧になりたい方はYahoo!の星取り表などをご覧になられては。
折角楽しまれたのですから、その気持ちは大切にしましょう。






下品、大味、節操無し。

まず原作の過去の名作エピソードを7つ繋げただけの脚本に辟易。
最初に予告を見た段階では、これはそれぞれオムニバスでやるのかなと思ってたんですけど、まさか繋げてくるとは。
で、この7つのエピソードが所謂ドラえもんの中でも”いい話”に当たるもの達。

この時点で引っ掛かる部分は大いにありますが、いいです。
ちゃんと作品として立派なものが出来ていればいいんです。

しかし、ちゃんと上手くまとまってるなんて声もちらほら聞きますけども、言わせてもらえば一ミリも上手くないですよこれ。

原作エピソードからどこを抜き出して、どこを変えるか。
その選択の全てが見当違い。

例えば、原作だと『のび太の結婚前夜』に当たるエピソード。
しずかちゃんが結婚前夜に父親に本音を吐露する場面。

元の話だと、ドア越しに父親の咳き込む音を聞いて、せき止めていた気持ちが一気に溢れ出るように、「本当はお嫁に行きたくない」と心境を告白。
冒頭の衣装合わせの時、鏡越しに父の背中を見るシーン等々、微細な積み重ねがあってクライマックスに進むのに、なんと山崎監督、それら全てをすっ飛ばして、ドラえもんの道具を使って強制的にしずかちゃんに心の内を吐かさせるんです。

どんな神経をしたらこんな改変が出来るのか。



挙げ出すと切りが無いのですが、もう一つ例を。

本編最後、原作だと『帰ってきたドラえもん』に当たるエピソード。
1998年に公開されたものを観ると、未来へ帰ることになったドラえもんと、それを受け入れたのび太、二人の最後の夜の場面でこんなやり取りがあります。

「のび太くん、寒くない?」
「平気だよ」



この機微の積み重ねなんです。

その手前の、ドラえもんが未来へ帰ることを受け入れられないのび太が逃げ込んだ押し入れでのお父さんとの会話。最後の夕食(特別な派手さの無い、でも精一杯の食卓がまた良い)での、どら焼きの乾杯、未来と過去を繋ぐ桜等々、説明的になり過ぎない程度の細かな心情描写を積み重ねて、もの凄く味わい深い話になってるんです。

これが山崎監督の手に掛かると、間の描写を全てすっ飛ばし、まずとりあえずドラえもんを泣かせる。
何度も何度も。

そして間の描写をすっ飛ばした分、物語の重心を全てジャイアンとの喧嘩に寄せ過剰に演出。
結果残るものは、キャラクターそれぞれのアジテーション泣き。
とにかくお話が大味過ぎて観るに耐えない。

山崎監督は、原作からポイントを抜き出して最短距離で”泣かせ”にかかっているようですけど、その全てが的外れで見当違い。
これは監督の過去作を観れば明らかなことですけど、脚本に関してはこの人本当にセンスの欠片も無い。

山崎さん、悪いこと言わないからもうCGに専念しなって。






そもそもが名作エピソードにおんぶに抱っこのあまりに志の低い企画。

新しいことをやっての失敗ならフォローも出来るものを、完全に置きにいっての失敗。
3DCGで作品を作るならば、もっとそれ向きな題材はいくらでもあるでしょうよ。

タケコプターで空を飛ぶシーンは凄く良かったんだから、いつものドラえもんの冒険活劇を3DCGにして、ライド感満載に子供向けの夏休み映画にしたらよかったじゃない。

なぜ”ワクワク”を描かないの?
なぜ著名人をCMで起用して、試写で泣いている映像を使うの?
なぜ泣ける映画だと押すの?

本来子供達の為にあるべきものを、大人がいいように食いものにするこの構図に本当に憤りを感じます。

下品極まり無い。
恥を知れ。

宣伝と作品の評価は別ですが、あまりにこの作品を取り巻く宣伝のあれやこれやが気色悪過ぎる。


CGに関しては成長過程の技術的なことなのでとやかく言いたくないのですが、正直違和感。
全体にテンポがせかせかしていて台詞の間が無いもの気になる所。

エンドロールを観るに、恐らくピクサーの猿真似がしたかったんでしょう。
それなら比べて差し上げましょう。

もう何年も前からピクサーはキャラクターのCGでの表情、仕草一つで”泣かせる”ことが出来てますよ。
『モンスターズ・インク』ならばサリーの毛の表現、『カーズ』ならば質感表現、『メリダと恐ろしの森』ならばメリダの髪の毛等々、毎回作品を出す毎に力を入れたポイントがあります。
そのどれも素晴らしいです。

山崎監督、小手先未満のお涙頂戴で満足してる場合じゃないですよ。
勘弁してくださいよ。






山崎監督が本当にやりたかったことは、『ジュブナイル』であり『リターナー』であるはず。
そう考えると、本当に『Always』が彼を狂わせたんだと感じずにはいられない。
最新の技術を使ってキッズに夢を売る作品を作ってた人が、『永遠の0』なんて言う姑息なプロパガンダ映画を作ってしまうことにも驚愕。

恐らく本人は何も考えていないのでしょう。
でも、『ジュブナイル』『リターナー』『マトリックス』『M:I2』のパクリをする無邪気な無知はまだ許されても、『永遠の0』を無知が理由に言い逃れで来ませんよ。

そして、『Always』から脈々と受け継がれる浅はか極まりないレシピで「ドラえもん」を料理してしまったこと。もう何も言うことはありません。

なにやら今年の邦画ではNo.1ヒットとのこと。

どんなにヒットしようと、誰が褒めようと、私はこの作品が大嫌いです。



<あらすじ>
何をやらせても冴えない少年のび太のもとに、22世紀の未来から、ネコ型ロボットのドラえもんがやってくる。のび太の孫の孫にあたるセワシが、ご先祖様であるのび太の悲惨な未来を変えるために送り込まれたドラえもんだったが、当のドラえもんはあまり乗り気ではない。セワシはそんなドラえもんにやる気を出させるため、のび太を幸せにしない限り22世紀に帰ることができないプログラムを仕込む。かくして仕方なくのび太の面倒をみることになったドラえもんは、のび太がクラスメイトのしずかちゃんに好意を抱いていることを知り、のび太としずかちゃんが結婚できる明るい未来を実現するため、数々の未来の道具を駆使してのび太を助けるが……。
映画.comより





2014年8月24日日曜日

ホットロード


ホットロード
2014/日本 上映時間119分
監督:三木孝浩
脚本:吉田智子
製作:大角正
城朋子 他
撮影:山田康介
編集:坂東直哉
主題歌:尾崎豊「OH MY LITTLE GIRL」
原作:紡木たく「ホットロード」

キャスト:能年玲奈
登坂広臣
鈴木亮平
太田莉菜
木村佳乃 他

60点




”静の能年”





最寄りのTOHOシネマズで鑑賞。
入り具合はそこそこで、若い中高生からご年配の方までまんべんなく。
これは間違いなく「あまちゃん」効果。

結論から先に言ってしまうと、淡〜くて、青〜い雰囲気の、ぼんや〜りした映画でした。
でも悪い映画じゃないよ。






もともと能年玲奈中心に進んでいた企画で、彼女が出演している『カラスの親指』を観た原作者の紡木たくさんが、能年玲奈主演ならとGOサインを出したそうで。

しかもこの話が出ていたのが、『あまちゃん』放送前。
つまり、能年玲奈が本格的にブレイクする前のこと。

そう考えると、紡木たくさん結構な目利き。

結果的に「あまちゃん」のネームバリューを引っさげて今作の主演を張った能年さんですけど、仮に「あまちゃん」が無かったとしても、きっと今作を観た人は彼女のことを気になっていたのでは。

もう周知のことなので言うまでもないですけど、とにかく彼女の佇まい、特に目ですよ。
あんなにキラッキラしたビー玉みたいな目をした人がこの世にいるのか。
もう小動物のそれですよ。
なんなんですかあれ。

その目を持つ彼女が、この淡〜くて青〜い現実離れした世界観を辛うじて成立させてる。
彼女自身が現実離れした存在のようなものなのでね。

今作でも小動物のように目をキラッキラさせてますよ。






ただ、前述の能年玲奈要素を抜くと、残るのはこの平成ジャパンにはそぐわない時代感と、淡くて青くてのっぺりした世界観だけ。

確かに全体に統一された青さが強い色調と、バシッと決まった画は綺麗ではあるんですよ。
でも、その世界観を守る為に役者さんの演技が皆一様に気取っていて、生きた人間には見えない。これは能年玲奈さんも同様です。

お話に関しても、原作がそうだからと言われたらそれまでですが、盛り上がりは前半の能年さん達が地元の大学生に拉致されそうになる件がピークで、そこから緩やかな下降線で盛り下がり。

家族を巡るエピソードも、まるで現実感のある演出がされてないから感情移入は困難。

木村佳乃の役はまるで意味不明。
劇中で彼女に関する意味のある描写は皆無。
なぜ実の子を放ったらかしてまで高校時代の恋人に執着するの?
普段に何をやっている人なの?
なんで直ぐに叫ぶの?

それに、今時ガラステーブルに脚の長いイスに座って朝飯を食うってその80年代感どうなのよ。

族のエピソードも結局不発。
クライマックスの族同士の抗争は始まる前に警察の登場でうやむやに。
遅れて来たリーダー(しかもその理由が体調不良)は検問を引き返すところでトラックにひかれて重体。

物語はそこから病院へ。

なんだか締まりがない話だなぁ。






お前どう見ても族には見えないよ問題、尾崎に80年代間感を担わせ過ぎ問題等々、気になる箇所は沢山ありますが、淡さと青さとぼんやりさにごまかされて、観終わったあと特に負の感情は湧かず。

そして残ったのは能年玲奈だった。



<あらすじ>
和希がひかれる不良少年・春山洋志役は、映画初出演となる「三代目J Soul Brothers」の登坂広臣。望まれて生まれてきたわけではないと知り、心を痛める和希は、転校生のえりに誘われて行った夜の湘南で暴走族「Nights(ナイツ)」の春山に出会い、不良の世界に居場所を求めるようになる。次第に春山への思いを募らせていく和希だったが、Nightsのリーダーとなった春山は敵対するチームとの抗争に巻き込まれていく。
映画.com





2014年8月20日水曜日

GODZILLA ゴジラ (IMAX 3D)


Godzilla
2014/米 上映時間123分
監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:マックス・ボレンスタイン
フランク・ダラボン 他
製作:メアリー・ペアレント
ジョン・ジャシュニ 他
製作総指揮:坂野義光
奥平謙二 他
音楽:アレクサンドル・デスプラ
撮影:ジェイマス・マクガーヴェイ
原作:東宝株式会社

キャスト:アーロン・テイラー=ジョンソン
渡辺謙
エリザベス・オルセン 他

89点



”ゴジラがゴジラであるために”




初見を109シネマズ木場にてIMAX3D。
2回目を最寄りのTOHOシネマズにて字幕2Dで鑑賞。

日本に先駆けて”それ以外の国”で公開され、全ての国で初登場1位。
評判も上々、試写で観た方々のテンションも高め。
予告も相当期待が持てる映像。

期待する諸々の条件は揃ってる。
さあ、ゴジラよ、その咆哮を聞かせておくれよ!!!

私はハードルを上げに上げた状態で観に行きました。
観終わった後に思わず雄叫びを上げている自分の姿は容易に想像出来ました。

ただ、観終わった率直な感想は正直、び、微妙。


良い所は沢山あるし、絶賛派の意見も凄くよく分かる。
でも、何だか乗り切れないし、煮え切らない。
ゴジラを観てこんな気持ちになるとは思わなかった。

もしかして、自分にはゴジラリテラシーが無いのか!?

と、しばらくこの気持ちを引きずったまま日々を過ごし、もう一回観に行く時に為に今作のアートブック「ゴジラ/アート・オブ・ディストラクション」を読み、賛否含めて様々な評論に目を通し、ついでに平成ガメラ3部作を鑑賞。
いざ2回目、完全に置きにいくスタイルで鑑賞。

そしたらですね、参りました。
鳥肌が立つ程、帰りの道中興奮で鼻息が荒くなる程、寝る前にもう一度良かったシーンを反芻してしまう程に楽しめました。

確かに、2回目でも初見で気になった部分は残ってはいます。
でもそれ以上に、見方が分かっている分、良かった部分がより際立って良い。

恐らく3度目はもっと興奮して鑑賞出来るはず。

私はとあるシーンで最高のエクスタシーを感じてしまいました。
このシーンは今のところ今年のベストシークエンスです。
はぁ、エクスタシー。






初見で気になった箇所を挙げると、

・冒頭のファンタジー的ジパング描写
・サンフランシスコ決戦から怪獣側と人間側で話が分岐して話のエモーションが削がれる
・爆弾処理の件が怪獣プロレスに比べてお話として弱いからハラハラしない
・安易な核爆弾の使用

で、良かった点は、
・日本では間違いなく描けない3.11を思わせる原発事故の描写
・人間目線での怪獣描写
・ゴシラの見せ方
・ゴジラ
・ゴジラ
・ゴジラ

になります。

で、この先に挙げた気になるポイントが、2回目の鑑賞でどう変化したのか。

まず、『ラストサムライ』『ウルヴァリン:SAMURAI』的な”ジパング”描写。
これは半分は私の責任で、予告から受けた印象で、勝手に考証のしっかりした日本が描かれているはずと思い込んでいたので、そのおかげで面食らってしまった訳です。

なんだよそれなら先に言ってよと、個人的に”ジパング描写”は全く嫌いじゃないので、そうと分かればその気で観ますよ。

はい、問題なし。
それにこの一幕目は、日本では間違いなく不可能な原発事故を取り上げてくれた点で大いに好感が持てるのでそれで万事OK






二つ目が最も初見時に気になった箇所。

それまで米軍側も怪獣殲滅に動いていたのに、三幕目から爆弾処理に話が移って、怪獣側と人間側で物語が分岐するんですよ。

ゴジラvsムトーの怪獣プロレスに比べると、例え核爆弾が爆発したとしても、今まさに怪獣同士が街を破壊してる様の方が明らかに物語と画としては強さを持つので、爆弾処理の件がお話的に弱くなる。
結果、折角の怪獣プロレスの高いテンションが削がれるんですよ。

これが観ていて一番気になった。

ならば、そもそも安易な核爆弾の使用なんかせずに、『ガメラ2』よろしく、米軍は完全にゴジラの援護に回り微力ながら加勢して、物語を一本の太い話にした方がいいのでは。
それこそほとんど役割の無かった渡辺謙演じる芹沢博士にそこで活躍の場を与えるとか。

観終わったあとこのようにぶーぶー文句を垂れていた訳です。

そして2回目を鑑賞して、このクライマックスに関して完全に見方が変わりました。
これはこれで良かったのです。







まず、クライマックスに至るまでに、人間側の視点がしっかりゴジラへの視線としてしっかり機能していると言うこと。ここが素晴らしい。
見上げることでゴジラの巨大さを表現してるだけではなくて、日常に突然現れた巨大な異物感がしっかり出てる。

ハワイの空港で、爆発の炎をカメラが追うとそこにゴジラの巨大な足が。
そこからの初のゴジラ全身ショット、からの咆哮。

その直ぐ次のシーンではムトーとゴジラの戦闘を伝える報道映像。

この全体に行き届いてる人間の視点を通した怪獣への視線描写は本当に見事で、この視点を保つ為にはやっぱり、あくまで傍観者として別の行動をとる主人公達は必要不可欠。
下手に勇ましく行動されても困る訳です。


しかし、もっとそもそもの理由があります。
神聖なる怪獣同士の戦いに、人間の入る余地など無い!!!!!!

決戦を控えて、劇中にて渡辺謙がこう言います。


「...Let Them Fight」


これですよ。
この台詞が全てを説明しています。

この台詞は戦いへのゴングなのです。
戦わせましょう。この台詞は劇中では祈りにも似た言葉であり、間違いなく私達の願望そのものなのです。

そう考えると、どうです。
今までの不満ポイントが、フッと、消えていくではありませんか。







さあ、怪獣プロレスのゴングは鳴った。

順番は逆だが次はリングインだ。
両者相見える。
逃げる人間達。
奥にゴジラの闘いを見つつシェルターの扉が閉まる。

ここで一旦暗転。


ここから、ここから冒頭で前述した、私が最もエクスタシーを感じたHALO降下のシークエンスになります。
たまらないです。
何度観ても最高です。








雲の上の輸送機。
闘いに向う男達。
開くハッチ。
差し込む太陽の光。
雷鳴とどろく分厚い雲にHALO降下。
足に巻いた赤い発煙筒が一筋の血の様に伸びる。

雲の下はこの世の終りの様なサンフランシスコ。
目に見えるはゴジラとムトー。
聞こえるのは自分の呼吸だけ。



クライマックスの幕開けになるこのシーン。
本当に鳥肌が立つくらいにかっこいい。
素晴らしいです。

今年だと『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』もそうでしたけど、HALO降下ってなんでこんなに素敵なシーンになるのでしょうか。

「アート・オブ・ディストラクション」を読むと、このシークエンスはストーリーボードの段階から相当な気合いが入っていたようで、このシーンのアイディアをまとめた時に、”最高にクールな作品”になると確信したのだと。

間違いないです。
最高に痺れました。

今のところの今年のベストシークエンスです。


その他、見せ方として爆煙に浮かび上がる背びれの青白い光、そこからの放射熱線発射。
良い!良い!!

ギャレス・エドワーズ監督、一回小さくジャブを打って、次に大きく繰り出すのが好きみたいで。
本作だと一回鳥で驚かせて、次にドン!!
奥の墜落する戦闘機に注意を引かせて、次に手前に落とす!!

みたいな、ちょっとホラー映画チックな演出も。


こんな感じで、デティールを取り出せば話は尽きません。

次作の製作も既に決まっているとのことなので、本当に大いに期待して待ちたいと思います。



<解説>
1954年に東宝が製作・公開した日本の特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」を、ハリウッドで新たにリメイク。監督はデビュー作「モンスターズ 地球外生命体」で注目されたイギリス出身の新鋭ギャレス・エドワーズが務め、「キック・アス」のアーロン・テイラー=ジョンソンが主演。日本を代表する国際的俳優の渡辺謙が、オリジナル版の精神を受け継ぐ科学者役で出演するほか、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デビッド・ストラザーンらが実力派キャストが集った。
映画.comより








2014年8月16日土曜日

トランスフォーマー/ロスト・エイジ(IMAX 3D)


Transformers:Age of Extinction
2014/米・中 上映時間165分
監督:マイケル・ベイ
脚本:アーレン・クルーガー
製作:ドン・マーフィ
トム・デサント 他
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
マーク・ヴァーラディアン 他
撮影:アミール・モクリ
編集:ウィリアム・ゴールデンバーグ
音楽:スティーブ・ジャブロンスキー

キャスト:マーク・ウォールバーグ
ニコラス・ベルツ
ジャック・レイナー 他

75点




”足し算思考、ここに極まれり”




109シネマズ木場にて鑑賞。
もちろんIMAX 3Dで。

うるさ型の映画ファンには見向きもされないマイケル・ベイですけど、ここまでやられるともう無視は不可能。

話はあって無いようなものです。
上映時間も無駄に長いです。
クラクラします。
疲れます。
観終わった後ぐったりします。
過多、過多、過多。

でも、でも確かにベイの魂はここにある。

どうしても嫌いになれません。







ここでトランスフォーマーの成分を見てみましょう。
90%は爆発とどんがらがっしゃんで出来ています。
ごめんなさい少し盛りました。
70%ぐらいかな。

しかし、観終わって記憶に残るものは爆発とどんがらがっしゃんのみ。
結果、ベイ成分の90%は爆発とどんがらがっしゃんと断言して間違いないでしょう。


残りの10%には何があるのか。
それは、スローモーションと、空撮と、割と感傷的かノリノリな音楽。
これで画を保たせます。

今回マーク・ウォールバーグが地面を叩き付けるシーンを無駄にスローにしていたのが印象的でした。

それらが凝縮されたマイケル・ベイ監督作「アサヒスーパードライ」のCMがありますのでご覧下さい。







これに爆発とどんがらがっしゃんのエスカレーションっぷりが加わって、カメラがぐわんぐわん動けばトランスフォーマーの一丁出来上がりです。

とにかく160分間に情報を詰め込み詰め込み。
観てるこっちが麻痺する程に。

観終わった後、劇場の外にあるなか卯で親子丼を食べたんですよ。
これがもの凄く美味しくてですね。
よっぽど鑑賞に体力使ってたんだと食べながら実感。






今回はそれプラス、明らかにお金の匂いが全体にプンプン。
まず、製作国に中国が名前を連ねてる通り、後半の舞台は香港。

今や世界で一番の市場となった中国。
それを意識して、『アイアンマン3』『ゼロ・グラビティ』『パシフィック・リム』等々、劇中に中国に向けた要素を盛り込む大作映画が多い中で、今回の『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』はお金の匂いが度を超してプンプン。

例えば、緊迫した最中に急に冷蔵庫からパックのジュースを取り出してちゅうちゅう。
道に散らばったボトルをおもむろに映して、そこから一つ取り、ぐいっと飲んで捨て台詞を吐くマーク・ウォールバーグ。
もちろん商品名ばっちりカメラに向いてます。

もはやCMが合間に挟まっているよう。

そうしてこの”広告”で集まった中国マネーで出来たのがトランスフォーマー/ロストエイジ!!どかーん
そしてやってることはいつもと変わらない!!!がっしゃーん


確かに、露骨にマネーの存在がちらついているのは気になるんです。
でも、それでどんなにお金が集まっても、やってることはいつもと変わらぬどんがらがっしゃん。
いつもと変わらぬベイの姿がそこにある。
そのクレイジーさは変わらない。
むしろ、この姿勢がよりベイのクレイジーさを浮き彫りにしてる。


もうこの姿勢には脱帽するしかないです。






今回は新三部作の一作目とのことなんですけど、今回の終わり方を観るにちょっと物語はとんでもない方向に向かってますよ。

映像だけでなく、お話も風呂敷を広げ出してます。
でもこの感じも、嫌いじゃない。

好き嫌いはあるにせよ、現状ハリウッドのショウビズ最前線にある作品であることは間違いないです。
これがハリウッドの今です。

ベイは今作を最後にトランスフォーマーシリーズから降板するとのことなので、これが最後のチャンス。

ベイの足し算思考、ここに極まれり。



<あらすじ>
人類の存亡をかけ、メガトロンとセンチネル・プライムの野望を打ち砕いたシカゴでの戦いから4年後。オプティマス・プライムらオートボットの面々は、トランスフォーマーを厳しく取り締まろうとする政府の手から逃れていた。ひとり娘のテッサと暮らす廃品工場のオーナーで発明家のケイドはある日、古いトラックを安価で手に入れるが、そのトラックこそ、車に変形して身を隠していたオプティマス・プライムだった。その頃、人類滅亡を目論む新たなディセプティコンが地球に襲来。恐竜からトランスフォームする謎の第三勢力ダイナボットも現れ、新たな戦いが巻き起こる。
映画.comより





2014年8月13日水曜日

るろうに剣心 京都大火編


るろうに剣心 京都大火編
2014/日本 139分
監督:大友啓史
脚本:藤井清美
大友啓史
製作:上木則安
畠中達郎 他
製作総指揮:ウィリアム・アイアトン
音楽:佐藤直紀
原作:和月伸宏「るろうに剣心 -明治剣客浪漫潭」

キャスト:佐藤健
武井咲
藤原竜也
伊勢谷友介 他

57点




”キャスト良し、アクション良し、その他ダメ”





前作をスルーしていたので、前日にDVDにて鑑賞。
事前に聞いていた、”アクションは良い。ドラマパートはダメ”の声に納得。

ただ今回は原作でもテンション高めな京都編。
このチャンバラ加減でやってくれさえすればもしかしたら・・・!!

と、予告の段階ではかなりの期待を込めてたんですが、ふたを開けたらやってることは前作と一緒。


思うに全ては監督の責任。

素材は良いのに調理が雑。
挙げ句、他の人が作った料理にさえ手を加える。

ただこの監督さん、そのことに気が付いていないのが問題で。






ドラマパートに関しては画がとにかく間抜け。
キマッたショットなんて一つもありゃしない。

これは前作の段階で感じた違和感なんですけど、何かやけに演劇臭いと言うか、テレビ臭いと言うか。
カットが割られてるのに全体にテンポが悪いんですよ。
やたらとカメラは動くし、役者さんは好き勝手に動いてるようだし、突然平気でカメラに背を向けるから画が乱れる。

初めは、この人下手だなぁ、とただ思ってたんですけど、気になって調べてみると何やら事情が違うようで。

どうやら監督の大友さんは複数のカメラを同時に回して、そこから上がった素材を編集する”マルチカメラ”なる撮影法を使っているそうで、これは私が感じた違和感そのもの。

あ、ただ下手なんだと思ってたけど、これ好んでやってたんだ。


恐らくは大河ドラマ『龍馬伝』の際に考案した技法なのでしょう。
タイトなスケジュールで効率よく撮影して、尚かつ役者の素の演技も引き出せる。

すごく良いと思います。
テレビではね。

どうでしょう、これを映画でやるのは。
結果失敗してる訳ですし。

それにですよ。
もし効率の面を優先したのであれば、その態度全く許せませんし、映画を舐めているとしか思えません。


全体のテイストも、前作でも薄々気が付いてましたけど、この監督さん本当に『ダークナイト』がお好きなようで。

『プラチナ・データ』でも『ダークナイト』に登場する監視システムをもろパクリしてましたけど、前作含めて全体の雰囲気はダークナイト風味。
それに加えて今回は『ダークナイト ライジング』から、白昼のベインの手下と警官隊が衝突するシーンの臆面の無いパクリ。


その結果やけに鈍重で軽やかさにかける話運び。
劇中の剣心同様、あっちに行ったりこっちに行ったり落ち着きの無い脚本も気になる。

”マルチカメラ”なんて余程の技量がないと成立しない撮り方をする無鉄砲さ。
近々作品、しかもよりによって『ダークナイト』をやっちゃう無邪気さ。


何と言うか、無知って怖いなと言うか。






ただ、これは沢山の方が褒めてますけど、アクションはべらぼうに良いんですよ。

今回は特に宗次郎対剣心戦。
手数の多いチャンバラで、体勢を低くして高速移動、からのハイジャンプ。
これは神速の剣心、宗次郎そのもの。
見ていて本当に気持ちいい。

お互い手を合わせてくるくる回るところなんてエクストリームスポーツか何かの類いですよ。良い、すごく良い!!

聞けば剣心のジャンプはワイヤーを使わずに佐藤健さん本人のジャンプ力だって言うじゃないですか。
なんたる身体能力。

御庭番衆の翁対蒼紫戦。
特にトンファー装備の翁とそのキレッキレの動きもすごく良かったですよ。


しかし、この京都大火を防ぐエピソード、全体はすごくいいアクションの見せ場なのに、それを前述のドラマパートがぶった切るんですよ。

アクションパートの出来は、アクション指導及びそれを受ける役者、スタントの方々の功績。素晴らしいです。


大友監督、折角のアクションシーンで大演説大会初めてどうするのよ。



この神速を見よ!!!!!



大作日本映画では良い方だ、とのポジティブな声もある本作ですけど、個人的にはダメダメだと思います。
雰囲気でごまかしている分悪質。

少なくともドラマパートに関しては映画ではありません。
映画みたいなちょっとお金の掛かったドラマです。

はっきり言って、こんな撮り方を続けるならば、この監督に映画を撮る技量は無いと思います。

映画とドラマは同じ映像メディアってだけで根本で違うのだから、この感覚で何本作ろうが良い映画なんて生まれる訳が無い。

映画とドラマどちらが上だとかそう言う話ではありません。
そもそもの資質が無いのだと思います。

ただ、何度でも言います。
アクションは素晴らしい。
役者さんもハマってる。
間違いなく見所はあるんです。


次は遂に十本刀との対決、志々雄との決戦ですから、よりテンションの高いアクションシーンの連べ打ちが期待出来る。
そのポテンシャルはあるのだから出来るはず!!

ただこの大友監督、今作までの流れだとまた戦いの中でだらだらだらだら台詞合戦を始めそうな予感。
間違いなく同時に撮影していただろうからその可能性の方が高いかも。

ぬる〜い気持ちで9月13日公開『るろうに剣心 伝説の最期篇』を待ちたいと思います。




・追記
予告編にもの申す。
予告でパルクールチャンバラ、ブレイクダンスチャンバラを観られると期待して劇場に行ったのに本編に無し。
恐らく次作から抜いたんでしょう。

こんなの絶対ダメ。
詐欺ですよ詐欺。


・追記その2
巻町操を演じた土屋太鳳さん。
アクションキレキレ、飛び切りキュート。
すごく良かったです!!!!
あの見事な開脚蹴りに、私の心にクリティカルヒット。



巻町操を演じた土屋太鳳さん



<あらすじ>
かつては「人斬り抜刀斎」と恐れられた緋村剣心は、新時代の訪れとともに穏やかな生活を送っていた。しかし、剣心の後継者として「影の人斬り役」を引き継いだ志々雄真実が、全身に大火傷を負わせた明治政府へ復讐を企てていると知った剣心は、逆羽刀を手にとり、単身で志々雄のいる京都へ向かう。
映画.comより




2014年8月9日土曜日

思い出のマーニー


思い出マーニー
2014/日本 上映時間
監督:米林宏昌
脚本:丹羽圭子
米林宏昌 他
製作:鈴木敏夫
プロデューサー:西村義明
製作担当:奥田誠治 他
美術監督:種田陽平
原作:ジョーン・G・ロンビンソン「思い出のマーニー」

キャスト:高月彩良
有村架純
松嶋菜々子
寺島進 他

80点





”てらいの無い”大好き”に、どれだけ救われるか”




米林監督の前作にして長編アニメ初監督作品『借り暮らしのアリエッティ』
これが個人的に大っ嫌いな作品でして。

2010年のワースト1。
この間見返してもやっぱりダメ。

とにかく物語がこの作品には皆無。
その上登場人物の行動がいちいち意味不明で、会話も成り立っているようでめちゃくちゃ。
何が一番ダメかって観ている間その全てが合わさってイライラしてくるんですよ。
ダメなものはダメ。
描き込みに力を入れましたなんて言われても、そんなことする前に脚本を磨きなさいよと。

こんな調子で今まで『借り暮らしのアリエッティ』に散々文句を言っていた訳です。

そんな米林監督の新作が公開されると聞いても、苦い経験をしたもんだから、ついつい観る前から悪態を付く訳です。

どうせ今回もダメなんだろ?
挙げ句、今回だめならジブリ終わるな、なんてことも言ってましたよ。
ああ言ってましたよ。

観ました。

ここに謝罪させて下さい。

『思い出のマーニー』、とても良かったです。


ネタバレ含みますのでご注意を!





2014年8月8日金曜日

複製された男


Enemy
2014/カナダ・スペイン 上映時間90分 R15+
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ハビエル・グヨン
製作:ニブ・フィッチマン
M・A・ファウラ
製作総指揮:フランソワ・イベルネル
キャメロン・マクラッケン 他
音楽:ダニー・ベンジー 他
原作:ジョゼ・サラマーゴ「複製された男」

キャスト:ジェイク・ギレンホール
メラニー・ロラン
サラ・ガドン
イザベラ・ロッセリーニ 他

70点





”まんまと支配されてたってかい”




日比谷のシャンテで鑑賞。

噂通り、ラストでどよめきと悲鳴が上がりました。
私はと言うと、ただただ唖然
しかしこの煙に巻かれる感覚、全く以て嫌いじゃない。

パンフレットの高橋諭治さんのコラムから引用するならば、
"説明過多のわかりやすさより曖昧であることの豊かさを優先し”ですよ。

ただ、ズルい映画作るなぁ。


間違いなく予備知識がない方が楽しめます。
ネタバレ全開なのでご注意を。





2014年8月3日日曜日

怪しい彼女


怪しい彼女
2014/韓 上映時間125分
監督:ファン・ドンヒョク
脚本:シン・ドンイク
ホン・ユンジュン 他
製作:イェイン・プラス
音楽:モグ
撮影:キム・ジヨン

キャスト:シム・ウンギョン
ナ・ムニ
パク・イナン
ソン・ドンイル 他

87点







”最高級のベタ”




評判を聞きつけ急いでTOHOみゆき座へ。

最高です。
大当たり大当たり。

”シム・ウンギョン”、今日はこの名前をだけでも覚えて!!

そして急いで劇場へGO!!
これを観ないのは勿体ない!!






70歳のおばあちゃんが20歳に戻っちゃった!!

まずこの思いっ切りの良い設定が凄くいい。
なんで戻ったか、そんなことには突っ込まない。
この思いっ切りも良い。
見ている我々も全く気にならない。

何故なら、若返ったおばあちゃんを演じるシム・ウンギョンちゃん。
彼女の佇まい、仕草、言動、全てがおばあちゃんにしか見えないから。
彼女の存在そのものが何よりの説得力!!!!

と同時に飛び切りキュートでもある彼女。
とにかくシム・ウンギョンちゃんがパワフル過ぎてもう、永遠に観てられる。
周りの役者さんとの演技合戦も見てて幸せになるくらいに楽しい。
『サニー 永遠の仲間達』でも感じましたけど、可愛いのに動きが気持ち悪いってズルいですよ。

韓国版の『のだめカンタービレ』ののだめ役に決まったとのことですが、間違いないです。画が浮かびます。

彼女が画面に出て来ただけでわくわくするのは何なんでしょうか。






一歩間違えればべったべたぎっとぎとに出来るお話なのに、ウェットになる部分は最小限に抑えて、尚かつ最後までしっかり取っておく。この部分凄く好感。

観た直後は、ちょっと情調に流されて甘さが残るかなとも思ったんですけど、息子との対面を最後まで取っておく等々、実はちゃんと考えられてることに気が付いてそんなことはもう気にならない!!

しかも、その次のラストはちゃんと笑えるシーンで締める。
これですよ。
このバランス感覚凄く好き。


ベタな箇所は所々目立ちますけど、それがちっとも不快じゃない。
ちゃんと計算された、考えられたお話。
ベタってちゃんとやれば心地いいんだ。


月並みですが、「何度人生をやりなおしても、またあんたの親になる人生を選ぶよ」
この台詞には涙してしまいました。ほろり。

良い余韻。
良い映画。


<あらすじ>
頑固で毒舌な70歳の老女オ・マルスンは、ある日突然、20歳の姿に若返ってしまう。これまで女手ひとつで育児と生活に追われ、自由な生き方ができなかった彼女は、オ・ドゥリとして新たな人生をスタート。キュートなルックスと類まれな歌唱力、歯に衣着せない物言いで、思いどおりの人生を突き進んでいくが……。
映画.comより





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