『思い出マーニー』
2014/日本 上映時間
監督:米林宏昌
脚本:丹羽圭子
米林宏昌 他
製作:鈴木敏夫
プロデューサー:西村義明
製作担当:奥田誠治 他
美術監督:種田陽平
原作:ジョーン・G・ロンビンソン「思い出のマーニー」
キャスト:高月彩良
有村架純
松嶋菜々子
寺島進 他
80点
”てらいの無い”大好き”に、どれだけ救われるか”
米林監督の前作にして長編アニメ初監督作品『借り暮らしのアリエッティ』
これが個人的に大っ嫌いな作品でして。
2010年のワースト1。
この間見返してもやっぱりダメ。
とにかく物語がこの作品には皆無。
その上登場人物の行動がいちいち意味不明で、会話も成り立っているようでめちゃくちゃ。
何が一番ダメかって観ている間その全てが合わさってイライラしてくるんですよ。
ダメなものはダメ。
描き込みに力を入れましたなんて言われても、そんなことする前に脚本を磨きなさいよと。
こんな調子で今まで『借り暮らしのアリエッティ』に散々文句を言っていた訳です。
そんな米林監督の新作が公開されると聞いても、苦い経験をしたもんだから、ついつい観る前から悪態を付く訳です。
どうせ今回もダメなんだろ?
挙げ句、今回だめならジブリ終わるな、なんてことも言ってましたよ。
ああ言ってましたよ。
観ました。
ここに謝罪させて下さい。
『思い出のマーニー』、とても良かったです。
ネタバレ含みますのでご注意を!
『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』と続いて、今作はもう一度こども達のためのジブリ作品を作りたかったと語る米林監督。
その気持ち、見事に良い形で成功していると思います。
監督が言う所の、”そっと寄り添うような作品”に十分なれていると思います。
世界を”内側”と”外側”に分けて、自分は”外側”の人間なんだと言う杏奈。
そんな杏奈に対して、なんの損得も打算も抜きに、あなたのことが大好きと平然と言ってのけるマーニー。
誰かが自分のことを無条件で受け入れてくれることで、どれだけ気持ちが救われることか。
杏奈が継母に抱いてた小さな不信感は、頭では理解していても自分がいることでの少しの損得を感じてしまってのことだし、あの頃の思春期の人間関係なんて打算の塊。
それこそ『桐島、部活やめるってよ』的な世界じゃないですか。
そんな生きづらい世界の中で、自分のことを優しく受け入れてくれるマーニーは何より大切な存在。
そして、クライマックスで明かされるある事実で、マーニーの存在と自分の記憶が輪になって繋がった時、その大きな愛の拠り所を知って思わずほろり。
ラスト、湿っ地屋敷の窓から手を振って杏奈を見送るマーニーの姿にまたほろり。
なんて爽やかな映画なんだ。
てらいの無い”大好き”ってすごくいいし、今作のキャッチコピー「あなたのことが大好き」すごくいいと思います。
全体に説明過多な部分と、キャラの描き込み不足は否めないです。
特におばさん夫婦の描写はいくらなんでも不自然なレベルで杏奈に無関心過ぎます。
見ている間、実はこの二人も杏奈の想像上の人物達?
と言うことは、この街全体が!?
と少しディック的な妄想も。
原作と変えられている箇所で気になったのは、原作だと割と嫌な面も見せてた街の人々がみんな”いい人”になっていること。
その結果薄い人物描写になってしまってるのは確かなんですけど、この、みんないい人過ぎて逆に自分が嫌になる!!って、当時の気持ちとしてすごーーーくよく分かる!!
お祭りでのお願いごとを勝手に読まれるシーン。
あの感じ何だかよく分かってしまう。
これがぐらつき加減が思春期ってやつ。
頭じゃないんです、衝動なんです。
誠実で真摯な作品。
これがヒットしないのは実に勿体ない。
スタジオジブリの映画部門からの撤退が決まって、現状ではこれが最後のジブリ作品。
自分が揶揄したことがこんな形で現実になるなんて。
まだ観てない人、観てね!!
<あらすじ>
札幌に暮らす12歳の内気な少女・杏奈は、悪化するぜん息の療養のため、夏の間、田舎の海辺の村に暮らす親戚の家で生活することになる。しかし、過去のある出来事から心を閉ざしている杏奈は、村の同世代の子どもたちともうまくなじむことができない。そんなある日、村の人々が「湿っ地屋敷」と呼び、長らく誰も住んでいないという湿原の古い洋風のお屋敷で、杏奈は金髪の不思議な少女マーニーと出会い、秘密の友だちになるが……。
映画.comより
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