『JOKER GAME』
2015/日本 上映時間106分
監督:入江悠
脚本:渡辺雄介
製作:藤村直人
甘木モリオ
製作総指揮:門屋大輔
音楽:岩崎太整
撮影:柳島克己
編集:辻田恵美
原作:柳広司
キャスト:亀梨和也
伊勢谷友介
深田恭子
60点
”こんな間の抜けたスパイ映画観たくないよ”
あの入江悠監督作史上最大のビッグバジェット大作。
”あの”とは、インディーズ映画史上、いや、日本映画史に残る傑作『SRサイタマノラッパー』シリーズの入江悠と言うことで、その名を世に知らしめたSRシリーズから追っかけている身としては、ここまで登り詰めてのビッグバジェット大作。否が応でも感慨が湧いてくるし、同時に不安なんかもあったり。
予告から受ける印象は上々。
上映時間もいつも通りタイトに106分。
去年テアトル新宿でリバイバルされた『SRサイタマノラッパー』を観に行った際のトークショー。
入江さんの話はプリプロ段階に入ってる『ジョーカー・ゲーム』に及んで、今作に掛ける熱も伺い知れたし、相当な期待を胸に劇場へ。
な、なんでだ…。
どうしてだ…。
才能を既に発揮している若手実力派監督も、様々な利害が絡むビッグバジェット大作ではこうなってしまうのか…。
涙。
入江さんお得意の演出が効果的に効いてる、テンポ良くワンシーンで見せていく序盤の訓練シーン。カットは割られているけども、長回し(風)に見せていた中盤でのチェイスシーン等々今作の様なアクション映画でもその手腕は確かに健在。
この辺りはやっぱり流石で、次作以降の希望が残る部分。
役者陣も良かったです。
亀梨和也さんの鋭利な顔立ちはスクリーン栄えするんだなと感じたし、何よりハットがよく似合う。
フカキョンのボンドガール的な役回りも、この部分に関しては可愛げの部分に感じられてマイナスな気持ちはありません。
個人的に嬉しかったのは、山下監督作品の常連、山本浩司さんが美味しい役で出演していたこと。
山下監督と同年代の入江監督作品に山本浩司さんが出てることに、なんだか勝手に喜んだり。
何よりアガったのは、クレジットに”監督 入江悠”の文字が出た時。
ここは本当に感慨深かった。
監督の、作品の評価と収入が全く比例せず、極貧時代を過ごしていた過去を知っている映画ファンは、なんなら涙していてもおかしくない瞬間。
その極貧時代についてwikipedeaからですが記述があったので引用しますと、
”2010年5月23日、自身のブログで「なぜか東京を去る理由」と題して、自身の金銭的苦境を吐露。「映画を見せようと努力すればするほど貧乏になる。それは映画自体や作り手の評価とはまったく別ものだ」と記し、1年以上に渡って『SR サイタマノラッパー』シリーズ2本にかかわり、その間、一切の収入がなく、家賃の支払いが出来なくなり、実家のある埼玉県に越したとされる。これがツイッターで伝播し、TBSラジオ『小島慶子 キラ☆キラ』の中でライムスター宇多丸がこの件を取り上げる等、話題となった。「この“狂った”日本の映画状況を変えたいと思っています」と〆ている。”
入江悠 - wikipedia より引用
映画ファンとして素直に喜ぶべき、監督の苦労がやっと報われた瞬間。
本当に良かった…!!
ただ、ただですよ。
今作、脚本があまりにずさん過ぎる。
脚本渡辺雄介と知ったとき悪い予感はしてましたけど、後半にいくにつれどんどん粗が出始める。
まず伏線の張り方がただの後出しで、盛り上がるべきところが全く盛り上がらない。
前半の小出恵介さんの件は、あれじゃただのミスリード。あんなものは伏線とは言わない。
捕まった時の対処法もただの後からの説明で、理解は出来ても盛り上がらない。巧く無い。
一番残念だったのは、中盤の任務の最中でのフカキョンとのイチャツキ。
あれ程の重要な任務。その最中に劇中では優秀とされてるスパイがハニートラップに引っ掛かる展開に唖然。
そのシーン自体も小屋でフカキョンとシーツに包まってって謎。
あなた今逃走の真っ只中、重大な任務の最中でしょうが。
優秀なスパイとされている者がこの体たらく。
心底観る気が失せたと言いますか、少なくとも真面目に観る気は失せました。
こういった部分を、初期007的なユルさ、もしくはプログラムピクチャー的な可愛げと取るべきなのか。私はそうは取れません。
そもそも盛り上がりがない上にお話が下手だから、可愛げなりユルさがただの粗にしか見えません。
小出さんが持ってる銃がワルサーPPKだったり、時計台が『スパルタンX』だったり等々、過去の名作映画のオマージュが散りばめられてますが、そう言った遊びの部分もただの目配せにしか感じません。
そう感じてしまう程までに鑑賞中の私のこころは荒んでいました。
くさくさしていました。
なぜなら、入江さんならもっと出来たと思ってしまうから…!!
少なくともこれだけは言えます。
入江監督、もう日テレとは組まない方が良いと思います。
007の新作が公開される2015年。
こんな間の抜けたスパイ映画は観たく無かった。
ただこれも、入江監督へのお布施だと思えば。
次回作に期待を胸に。
<あらすじ>
第2次世界大戦前夜の陸軍士官学校。上官の命令に背き、極刑となるはずだった嘉藤は、陸軍内に極秘裏に設立された諜報組織「D機関」の結城中佐に助けられる。数々の訓練を経て諜報員となった嘉藤は、初めての任務として、米国大使グラハムが持つ「ブラックノート」と呼ばれる機密文書を奪取するよう命じられる。しかし、そんな嘉藤の前にグラハムの愛人でもある謎の女リンが立ちふさがる。
映画.comより
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