2015年4月13日月曜日

博士と彼女のセオリー


 『The Theory of Everything
2014/英 上映時間124分
監督:ジェームズ・マーシュ
脚本:アンソニー・マッカーテン
製作:ティム・ビーバン
リサ・ブルース 他
音楽:ヨハン・ヨハンソン
撮影:ブノワ・ドゥローム
編集:ジンクス・ゴッドフリー

キャスト:エディ・レッドメイン
フェリシティ・ジョーンズ
エミリー・ワトソン 他

95点





”宇宙の始まりと愛の始まりは同じだったりする”



ポスターアートから受ける勝手なイメージで、所謂”難病もの”の甘ぁ〜い話なのかなぁと思っていたらこれが全く違う。

凄く誠実に作られた恋愛映画でもあるし、熱いバディムービーのようでもある。
良い意味で期待を完全に裏切られました。
大好きな作品です。







まず表面的な話として、全体に色彩が鮮やか。
それぞれの衣装も映画から浮きすぎない程度に色彩に凝っていて美しい。
2人が出掛けるダンスパーティ、そのブラックライトを使った光りの演出も目に鮮やかで楽しいし、その後打上る花火も美しい。
ジェーンがいつも着ているのは青い衣服。ホーキングの病気が発覚後、初めて彼に会いにいく場面、彼が居る赤いカーテンを通った光りで真っ赤になった部屋に、青い服を着たジェーンが入っていく。こう言った色彩を使った語り口も見事。






物語全体が2人だけの関係として自閉したものになっていない辺りが本当に素晴らしい。
映画序盤、ホーキングの病気が発覚し、別れることを彼の父から勧められたジェーンは、皆で協力し合おうと答えます。この台詞に個人的にグっときてしまいました。

凡百の映画ならば、2人の悲恋に焦点を当ててベッタベタに描いてもおかしく無いところ、今作は2人の関係を中心に描きながら、2人を取り巻く人々との関係もしっかり描く。
そのおかげで物語全体の風通しが良くなってるし、爽やかさすら感じます。
映画序盤のこの台詞は態度として圧倒的に正しい。
加えて、全編通して2人がうじうじ悩むような件がほぼ無いんですよ。
悩んだとしてもホーキング博士のおどけた様子で流れる。
ここも凄く好感を持てました。


2人の関係に第三者が加わっての中盤からの”メロドラマ”展開も楽しい。
介護役として家族に加わったチャーリー達を映すモンタージュ、その最後の意味深なカットに、遂にその危ういバランスが崩れることを暗に示すキャンプシーンのこれまた意味深な、ほぼジェーンの夜這いとも取れるカット。博士のオペラ観劇とのカットバック。ここのスリリングさが堪らない。

対するホーキング博士も、無邪気な少年のように新たな恋に落ちてしまう。
ここに2人の人間としての泥臭さを感じて、どうしようもなく魅力的でチャーミングだと感じずにはいられませんでした。
映画としての見た目の美しさの中に、ちゃんと人間としても泥臭さもあって物語に深みが出てる。






そして唸った、これまでの人生を逆回転させる最後の演出。
博士の研究についてあまり詳しくはクローズアップさせていない今作において、唯一劇中で詳しい説明があるもの。それが宇宙の始まり、つまりビッグバン理論について。
序盤でのこの理論についての説明を、映画の最後の最後に、彼等の人生に当てはめて見せる。
全てはそこから始まった。愛の始まりは、宇宙の始まりと同じくらいに偉大と尊いものだということを、最後の最後で見事に見せる。
ここは完全に不意をつかれて涙してしまいました。

劇中で繰り返し登場する時間を表す円のモチーフ。
時間を逆回転させることで、序盤での花火の意味が変わるところも巧い。まさにビッグバン。





主演の2人の見事さは言わずもがな。
オスカー受賞も納得。




<あらすじ>
物理学の天才として将来を期待される青年スティーブン・ホーキングは、ケンブリッジ大学在学中、詩を学ぶ女性ジェーンと出会い、恋に落ちる。しかし、直後にスティーブンはALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症。余命2年の宣告を受けてしまう。それでもジェーンはスティーブンと共に生きることを決め、2人は力を合わせて難病に立ち向かっていく。
映画.comより



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