2013年8月16日金曜日

この空の花 -長岡花火物語

2012/日本 上映時間160分
監督:大林宣彦
脚本・撮影台本:長谷川孝治
大林宣彦
主題曲:久石譲

キャスト:松雪泰子 (遠藤玲子)
高嶋政宏 (片山健一)
原田夏希 (井上和歌子)
猪股南 (元木花)
寺島咲 (元木リリ子)
筧利夫 (松下吾郎) 他


100点


”この雨、痛いな!!"
ずっと前からこの映画の噂みたいなものを聞いていたんですよ。
この作品というより、大林宣彦監督作品はどれもアヴァンギャルドで、しかも年々それが増しているらしいと。この映画ではその"大林演出"が炸裂していると。

そんな噂を聞いてたので、なんだか観るのおっくうだなぐらいに思ってたんですけど、イクスピアリの映画館で一週間リバイバル上映されると聞いて、この期逃すまじと観て参りました。

混沌でした。カオスでした。涙が止まりませんでした。






のっけから噂の"大林演出"炸裂。
とにかく画面からの情報量が多い。多すぎる。
こっちに何かを考える隙を与えてくれない。ただただ受け身に映画に包まれてる感じ。

そうやってこの異様さに面食らっていると、本当に唐突なタイミングで松雪泰子の回想シーンになり、長髪のカツラを被った高嶋政宏が「この雨、痛いな!!!」とあまりに不自然な台詞を言った辺りから、もう考えるのは止めて、ただ圧倒されようと心に決めました。

演出が唐突、台詞が不自然、時系列はシャッフル。
当時の空襲についての紙芝居を読んでいると、回想シーンになって、それがそのまま劇中劇に繋がる、みたいな感じで、場面がシームレスに繋がってるんです。
しかも、その膨大な情報を補うように、なんと画面下にテロップが登場するんですよ。
長岡の花火を説明するシーンになると、台詞を補完するようにテロップが。
他にもいたるところで登場するテロップにいよいよ思考はオーバーヒート、くらくらです。






その混沌が極に達するのがクライマックスの劇中劇、「まだ戦争には間に合う」。
全てのシーン、台詞、回想、人物が登場して、もうめまいがするような映像と迫力で物語が結実するんです。
今まで絶えずオーバーヒートしてた思考は、もうただただ圧倒されるしかなくて、気が付いたらぽろぽろ涙を流してました。
お話で強く感情が揺さぶられるとかの類いではなくて、いたって心は冷静。落ち着いて観れてはいるんです。でも、涙が止まらない。なんでだ。自分は一体全体何に感動しているのかが分からない。
劇も終盤に向かって盛り上がり、久石譲の音楽も激しくなって、感情はもう飽和状態。そして物語の全てが一つになった瞬間に、無数の花火が夜空に。涙腺決壊。
訳が分からない。一輪車に乗った少女達が「さようならぁ、さようならぁ」「まだ戦争に間に合いますか」と叫び、筧利夫が踊り狂い、久石譲の音楽が流れ、大輪の花火が夜空に。そしてテロップで、

大団円


混沌ですよ。訳が分からない。でも、涙の量は増えるばかり。頭は至って落ち着いてるのに。








こんな映画もちろんこれまで観たこと無かったですし、これからも恐らく無いでしょう。そのくらい異様な映画体験でした。
こんな体験をさせてくれた映画ですから、自分の中では文句無しで満点です。こんな点数を付けること自体おこがましいことではありますが。

この映画で描かれているテーマ以上に、特殊な映画体験っていう意味で本当に沢山の人に観てもらいたい映画です。

長岡の花火は、空襲や地震で亡くなった人たちへの追悼の花火なのだそうです。
来年は絶対花火を見に長岡へ行こうと決意。

たまにはこんな真面目なこと書いたっていいでしょ。

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