2013年12月6日金曜日

もらとりあむタマ子

2013/日本 上映時間78分
監督:山下敦弘
脚本:向井康介
撮影:芦澤明子
プロデューサー:斎見泰正
根岸洋之
主題歌:星野源『季節』

キャスト:前田敦子 (坂井タマ子)
康すおん (坂井善次)
伊東清矢 (仁)
鈴木慶一 (坂井啓介)
中村久美 (坂井よし子)


90点


”この3人で作る映画なら何本でも観たい”
初新宿武蔵野館。
上映前のチャイムがスバル座みたくとてもいい。
お客さんの雰囲気もとても良くて、そんな環境で観る映画は絶対外れが無い。

とても良い映画でございました。


監督は個人的に大大大大好きな山下敦弘監督で、脚本はその”相棒”向井康介。
そして主演は山下監督の前作『苦役列車』にも出ていた前田敦子。

”女優”前田敦子の話をすると何故か回りの人から笑われていた身としては、今作は正に我が意を得たりと言った感じです。ほれ見たことか!!
心の底からおすすめ出来ることが嬉しくて仕方が無いです、ほんと。

『苦役列車』で既に実証済みですが、あっちゃんやっぱり山下監督との相性バッチリですね。
前田敦子の映画であると共に、いやそれ以上に山下監督の映画しっかりなってる。
要するに、山下監督が作り出す映画の空気感にあっちゃんが見事に解け合ってます。

監督山下敦弘、脚本向井康介、主演前田敦子のトリオで作った映画なら何本でも観たいです。






元々はMUSIC ON!TV企画のショートムービー(ステーションID)から始まった企画で、それを長編映画化したのがこの映画『もらとりあむタマ子』
その為なのか、上映時間がとても短い!78分!!
上映時間が短いのがこの映画の唯一の欠点です。
もっと観たいぞ!!


大学を卒業したものの実家に帰ってぐうたら。
服がださい。ノーメイクだから肌のトーンが暗い。逆ギレする。漫画を読む。食う。寝る。パシる。

そんなタマ子を前田敦子が好演と言うより体現。これがまず素晴らしい。

そんなタマ子に、呆れながらも甲斐甲斐しく世話をする父親の善次。
このふたりのやり取りが山下監督節全開のオフビート感で本当に心地いい。



特に食事シーン。
必要以上にベタベタせず、どんなに険悪なムードでも一応は顔をつき合わせて飯を食う。
この関係凄く好きです。
あの親子の可愛げを感じるし、外から見ていてとても心地よい空気感が生まれていて、いつまでも観ていたいと思わせてくれる。

返事の仕方もいいですよね。
基本全ての返答を「ん」で表現する辺りが凄く好きです。
「ん」「んー」「ん!?」「ん?」
使い勝手いいんですよねぇ。

他にもいい台詞が沢山。


「何食いたい?」
「肉」
「豚?」
「ぎゅー」


だとか。

基本親との会話って単語になりますよね。


あと、地元で同級生と再会しての「甲府スポーツじゃん!!」には心底笑わせてもらいました。
タマ子の高校時代が垣間見えて、何気ないけど本当に気の利いたいい台詞。


ノベライズ版だとこの台詞の妙をもっと味わえますよ、ぜひ!!
ノベライズ版に出てくる、「本当ですか?ありがとうございます」が前田敦子そのもので本当に笑ってしまう。



ストーブ給油じゃんけん



食卓に流れる生活音も雰囲気作りにプラスに働いていてとても良い。
この映画劇判がほぼ無いんですけど、代わりに生活音がBGMに。
ロールキャベツを食べる音、漬け物を噛む音が凄く響く。
何でも音響が5.1chでミックスされてるそうで。
なるほど、どうりでお腹が空く訳だ。



「私もそれいいと思ってたー」



夏になって、善次の再婚話が持ち上がり、焦りを覚えて相手の女性曜子さん(富田靖子)に接触を試みるタマ子。
でも、この焦りは自分の居場所が無くなってしまうかもしれないからで、父を心配してるからじゃないんですよ。この時点では。

相手の女性がやっているアクセサリー教室に”手下”の中学生仁を先に行かせる辺りも最高。

その後、曜子さんとふたりで話すタマ子。
そのうちに父に対するあれこれを話しだすタマ子。

実は考えてたんですね、タマ子も。

親子の距離感ってこれぐらいですよね。
前田敦子さんもパンフレットのインタビューで言ってますけど、初対面の人だからあんなにぺらぺら話した訳で、タマ子自身も父に対する気持ちを自覚してない可能性もありますからね。
いや、タマ子は絶対自覚してないと思う。

思い合ってるのかは分かれないけど、ふとした時ににじみ出る何気ない気持ち。
このくらいの距離感いいですよね。



”ある計画”を秘密に実行しようとして散髪、失敗。

”ある計画”がバレてやけ食い


一念発起して、”ある計画”を秘密に実行するけど結局ぽしゃって全てを諦めやけ食いの件も最高の一言。
だっさい服着て神社で無心に団子を頬張るタマ子(計画の為にダイエットしてたから)。

その日の食卓の会話ももう最高。


「いや、かわいいって、タマ子。お前、全然イケてるって。大丈夫だって」
「それが嫌なの!そういうのが嫌なの!」


爆笑でした。最高。

思い返すと好きなシーンいっぱいあるな。
これが山下監督映画だ。


ダメ男を描かせたら右に出る者はいない山下監督ですが、ダメ女もいけますね。
そして前田敦子さん、やっぱりいいぞ。




追記/パンフレットが凄くいいってこと

劇場にてパンフレット購入。
山下監督の過去作のパンフも売ってました。
『タマ子』と『リンダリンダリンダ』のパンフレットを購入。


大判の新聞みたいなデザインで、受け取った時はえっ!?紙??と驚きましたが、中身が濃く充実していてとてもいい。
本編に隙間が沢山ある映画なんで、パンフの情報でいろんな妄想が膨らみますね。

タマ子がいきものがかりを好きになった理由笑えます。


写真たっぷり

劇中で登場した履歴書

全てがタマ子っ”ぽい”!!

コラムも凄いよかったです。
やっぱり女性の方がタマ子の気持ちがより分かるのかも。

『リンダリンダリンダ』のパンフも買えて大満足

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