かぐや姫の物語
2013/日本 上映時間137分
監督:高畑勲
脚本:高畑勲
坂口理子
製作:氏家齋一郎
音楽:久石譲
制作会社:スタジオジブリ
キャスト:朝倉あき (かぐや姫)
高良健吾 (捨丸)
地井武男 (翁)
宮本信子 (媼)
80点
”千に命を宿す”
ここまで原作に忠実だとは。
お話の流れは古典『竹取物語』とほぼ同じ。
高畑監督がずいぶん前からあたためていた企画らしいですが、なるほど、エネルギッシュで生命に満ちあふれたかぐや姫の世界になってました。
個人的には相当好きな作品ですね。
なんて愛くるしいんだまったく |
お話は原作にほぼ忠実、なんですが、原作の隙間として存在する、人物の心情や性格を絵のタッチと、プレスコを使った声でしっかり補完しています。
つまり、元々古典であった物語を、物語の大筋は変えずに、表現方法を駆使してしっかり現代にも通じるテーマを持ったお話とし語り直されているんです。
水彩画のような濃淡美しい独特な絵のタッチ。
えんぴつで書いた線を引き延ばすとああなるそうですが、この線で描かれた絵がまず素晴らしくて、一本いっぽんの線が命を持っているかのよう。
人、動物はもちろん、草木、ひらひら落ちる桜の花びら一枚一枚が躍動感を持って命に満ちあふれている。
かぐや姫の疾走、桜の木下での踊りから、何気ない仕草や表情を取っても全てがエネルギッシュ。
みんな生きたキャラクター達になってます。
かぐや姫のよちよち歩きなんて観ているだけで愛くるしくて、思わず顔がほころんじゃいます。命!!って感じです。
その生きたキャラクター達に声を当てる俳優さん達も素晴らしい。
特に地井武男さん。
翁と子供達との絶叫合戦は、観ているこっちの血圧も上がりますよ。
朝倉あき、高良健吾の横道世之介コンビももちろん素晴らしい。
プレスコのおかげで、俳優さん達のはみ出さんばかりの熱量がしっかりキャラクターに命を吹き込んでます。
線の濃淡、余白の使い方、どれも美しい |
キャラクター達が生き生きしている程に、世界が生命で満ちあふれている程に、姫の犯した罪と罰が際立つんです。
原作だと、姫は犯した罪を償う為に地上にやって来たことになってますが、今作の解釈だと、地上の世界に憧れ、愛してしまったことが姫の罪なのだと私は解釈しました。
だから、作品全体は生命観に満ちあふれている程、地上での生活、触れたもの、愛したものその全てを忘れ、全てを無かったことにして元居た月に帰るラストが、冷たさを持って際立つんです。
原作の通り、天衣の羽衣を羽織ったことで一瞬で記憶が無くなる訳ですけど、原作よりもよりエッジィに、より無情さが際立ってて、このやるせなさ相当好きです。たまらん。
かぐや姫と捨丸のスーパーマンよろしくなシーンも好きですねぇ。
若い男女が走ってるだけでもう、若いっていい!!
予告の印象が相当変わってただけに受け付けきれるか心配でしたが、とても素晴らしかったし、何よりストレートに面白い作品でもある。
古典だって面白いんだ。
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